逃亡中の凶悪犯罪者が、
人と体を入れ替える能力を手に入れてしまったー。
入れ替わりを駆使して逃亡を続ける凶悪犯。
果たして、その行く末はー
凶悪犯罪者の室井 哲也(むろい てつや)は、
何人もの命を奪った極悪非道の男だ。
そんな彼はー
逃亡中に”入れ替わり薬”というものを偶然、
手に入れてしまった。
入れ替わり薬を手に入れた彼は、
次々と入れ替わりながら、
時には潜伏し、時には逃亡しー
警察の追撃を振り切っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--や、やめて!」
夜の街角ー。
女子高生が恐怖に満ちた表情で、
友人と思われる少女を見ている。
「---もう少し、この体で楽しみたかったんだけど・・・
あんたの方が可愛いから・・・
”あんたに引っ越し”するねー」
微笑む少女は、
とても高校生とは思えない邪悪な笑みを浮かべている。
「こ、来ないで!」
もう一人の少女は怯えきっている。
そしてー
「代わりに、わたしの身体をあげるから・・・ネ?」
そう言うと、少女は怯えている少女にキスをして、
お互いが意識を失い、その場に倒れた。
しばらくしてー、
少女が目を覚ますー。
「---ふふふ、いい身体だぜ」
さっきまで憑依していた女子高生とはまた違う、
少し幼い雰囲気の顔立ち。
「--くくく、、、今日から俺は、
この女になるぜ!くくく、あははははははは!」
入れ替わられる直前に流していた涙を
浮かべながら、少女は狂ったように笑い続けた。
「-もしもし」
早速、少女は、”自分の”ピンク色のスマホを手にして、
足を組んで近くの塀に座ると、
誰かに電話をし始めた。
「--あぁ、俺だよ。室井だ。
え?声が可愛い??くくく、今度ヤラせてやるよ」
少女の身体で笑う室井。
そしてー
「ひとり、”処理”して欲しいんだ」
入れ替わり―。
もう少しで、さっきまで自分が使っていた少女の身体で、
この少女が目を覚ます。
だから、始末しなくてはならないー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「う・・・ ん・・・」
少女が目を覚ました。
「おはよう、江麻(えま)ちゃん」
アイドルのようなフリフリした衣装を着た少女が声をかける。
「---・・・!」
江麻と呼ばれた少女は目を覚ました。
「ーーーえ」
江麻は驚く。
”目の前に自分が居る”ことに。
「--ククク・・・どうだ、お前の身体・・・
エロくていい体だなぁ!
幼い顔立ちってのも高ポイントだよ!」
少女はミニスカートから覗く、自分の身体を
舐めまわすように見つめて顔を赤らめる。
「--や、やめて!わたしの身体を返して!」
江麻は叫んだ。
「--ククク、イヤだね。
俺はこれから、お前として、菜月美(なつみ)として
生きていくんだからよ!ははははははっ!」
入れ替わり薬によって、
菜月美は、凶悪犯罪者の室井によって体を奪われ、
元々室井が利用していた体ー、
クラスメイトの江麻と入れ替わらされてしまった。
「--お前、自分の喘ぐ声を聴いたことはあるか?」
菜月美が笑いながら言う。
”自分の姿”見ながら、
江麻になった菜月美は、自分の身体を睨む。
「---か、返して・・・!わたしの身体」
江麻が言うと、菜月美は笑った。
「嫌よ。
明日からわたしはあんたとして学校に通うの!
こ~んな姿で、男子を誘惑したらどうなっちゃうかな♡
ふふ、楽しみ!」
自分じゃ絶対にしないような、男を誘うような格好を
している自分の身体を魅せつけられて、江麻は
泣き叫ぶ。
「---お前も”その体”の子と同じ運命にしてやるよ」
「----!!」
江麻の身体になった菜月美は、恐怖の表情を浮かべた。
そう言えばー
この体ー
元々の江麻はどこに行ったのか。
自分のように入れ替わらされたならー
「---1か月前の、ホームレスの失踪事件、知ってるか?」
菜月美は煙草を吸いながら笑った。
自分の身体がタバコを吸っているー。
やめさせたい、
けれど、恐怖から声が出ない。
「---あのホームレス・・・
どこ行っちゃったんだろうな」
菜月美がイヤらしく笑うー。
「---ーーまさか・・」
室井は、1か月前まではホームレスの身体で
活動していた。
しかし、通りすがりの女子高生、江麻を見かけて
江麻と入れ替わりをしたー。
ホームレスの体になってしまった江麻本人は、
失意のうちに、失踪した。
恐らくはもう、この世に居ないだろう。
「ーーお前も失踪するんだよ」
菜月美が笑うと、
江麻は「いや!体を返して!」と叫んだ。
「--ふふ、おいお前ら!
こいつは好きにしていいぞ!」
菜月美は協力者たちにそう叫ぶと、
協力者の男たちは、江麻の方に向かって、
イヤらしい笑みを浮かべて歩き出したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とある家庭。
凶悪犯の室井哲也を追う
警察官、生田 光輝(いくた みつてる)が家族に
対して苦笑いしながら言った。
「----上層部から呼び出されちゃってさ…
明日は遅くなるよ」
「へぇ、そうなんだ・・・お父さんも大変だね!」
一人娘の高校2年生、
可奈恵(かなえ)が言う。
「--お父さんいつも頑張ってるから、
出世話じゃない?」
可奈恵が言うと、
父の光輝は微笑んだ。
「だといいけど、たぶん違うんだよなぁ」
光輝は、現在、逃亡中の凶悪犯罪者、
室井哲也を追っていた。
きっと、そのことに関する話だろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
「--今日来てもらったのは、
例の犯罪者、室井のことについてだ」
上層部の男が言った。
「--先日、富士の樹海で、
パトロール中だった地元の団体が、
ホームレスの男を発見した
だが、そいつの様子がおかしいんだ」
上層部の男が、光輝に向けて映像を見せた。
「--わたし、里木 江麻なんです!
こ、この男に…体を入れ替えられて・・・」
ホームレスの男が風貌に似合わず、女言葉で
泣き叫ぶ様子が映し出されていた。
「---室井だ」
上層部の男が言った。
光輝は険しい表情でモニターを見ている。
「--室井が入れ替わり薬をとある研究施設から
盗み出したことは分かっている。
恐らく奴は、次々と体を入れ替えて逃亡を続けている」
ーー逃亡中の凶悪犯、室井哲也が入れ替わり薬を
手に入れたことは世間には公表していない。
むろん、マスコミにもだ。
警察内部で極秘にチームを結成し、
内密にこの件を処理しようとしている。
何故なら、入れ替わり薬の存在が世間に知れたら、
恐らくは大パニックを起こし、収拾がつかなくなるからだ。
「---それで…そのホームレスの言っている
里木江麻という子は・・・」
光輝が言うと、
上層部の男はうなずいた。
「里木江麻という子は実在する。
恐らく、ホームレスの身体の中に今居るのが
里木江麻本人で間違えないだろう。」
上訴部の男はさらに続けた。
「--里木江麻は、君の娘さんが通ってる高校の生徒だ。
娘さんを通じて、何か異変がないか、調べてくれ。」
上層部の男の言葉に、光輝はうなずいた。
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「おはよ~!」
いつもより短いスカート丈で登校した菜月美が笑う。
「--あれ?菜月美ちゃん、今日はなんだか・・・
派手だね?」
警察官の父を持つ可奈恵が言うと、
「ふふん…可愛いでしょ?」と言って
菜月美がクルッと回って見せた。
少しスカートの中が見えたかもしれない。
でも、これでいい。
「---そういえば、今日は江麻ちゃんは来てないね」
その言葉を聞いて、菜月美はニヤリとした。
当たり前だ。
菜月美は今、凶悪犯罪者の室井に体を乗っ取られている。
そしてその室井は、昨日まで、江麻の身体に居た。
昨夜、江麻より菜月美の方が可愛いと判断した
室井は、菜月美を拉致して”入れ替わり”したのだ。
今頃、江麻の身体になった菜月美は、
室井が金と女の身体で集めた部下たちに
好き放題されているだろう。
あるいはー
もう廃人になっているかもしれない。
「--なんか、家にも帰ってないらしいよ」
他のクラスメイトが言う。
「--ふぅん。大丈夫かな?江麻・・・」
可奈恵が心配そうに言う。
「--わたしのお父さんも最近、
事件だ事件だ!って忙しそうだし」
可奈恵の呟きに、菜月美が敏感に反応した。
「--ー事件?」
菜月美が問いかけると、可奈恵は笑った。
「ほら、わたしのお父さん、警察官でしょ?
最近、室井とか言う人を追ってるらしくて
忙しいみたいなの」
その言葉を聞いて
菜月美は思わず邪悪な笑みを浮かべてしまった。
「警察官の娘ー」
菜月美の中に居る室井は、笑いをこらえるのに必死だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー。
「--話って?」
菜月美に呼び出された、警察官の娘・可奈恵は
校舎裏に来ていた。
「---あなたの身体…ちょうだい!」
菜月美が言うと、可奈恵は「え?」と戸惑いの表情を浮かべる。
次の瞬間、菜月美が可奈恵にキスをするとー
二人はその場に倒れた。
「---うふふ♡ わたし、警察官の娘になっちゃった♡」
起き上がった可奈恵が嬉しそうにポーズを決める。
そしてーー
部下を呼び出して菜月美の身体を、アジトに運び込ませたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おはよう菜月美ちゃん」
ゴスロリ風の衣装を着た可奈恵が、菜月美を起こす。
「え・・・わ・・・わたし・・・」
戸惑う菜月美。
目の前にはーーー”自分”の姿がある。
「---えっ…な、なんでわたしが・・・?」
戸惑う菜月美。
そんな菜月美に、可奈恵は鏡を見せた。
「---入れ替わりって知ってる?
わたしと、あなたと体を入れ替えたの。
これからわたしは可奈恵として、
あんたは、菜月美として生きていくの」
菜月美は拘束された手足を動かしながら言う。
「な・・・何なの?わたしのからだ、返して!」
叫ぶ菜月美。
「---くくく・・・イヤだね」
可奈恵は、タバコに火をつけてそれを吸い始めた。
「や、、やめてよ!わたしの身体で、
そんなことしないで!!」
菜月美になった可奈恵が叫ぶ。
「--ふふ」
可奈恵を乗っ取った室井は、別にタバコ好きではない。
けれどー
入れ替わりの醍醐味は、
本人の目の前で、本人が絶対にしないことをさせて、
それを見せつけてやることにある。
「--どうだ?この衣装?ふふふ、可愛いでしょ?」
可奈恵が嬉しそうに言う。
「---や、、やめて!
わたしに恥ずかしい事させないで!
わたしの身体、返してよ!菜月美!」
その言葉を聞いて、
可奈恵は笑った。
「菜月美…ねぇ・・・
わたし・・・いや、俺はさ…
今まで、何人もの体を転々としてきたんだ。
今は可奈恵ー、そう、お前の身体で、
そして、その前は今、お前の身体になっている菜月美、
その前はお前らのクラスメイト、江麻。
そしてその前はホームレス」
そう言うと、可奈恵はある薬を取り出した。
「入れ替わり薬ー。
ヒトにキスをすることで、体を入れ替えることのできる薬だ」
その言葉に、拘束されている菜月美は驚きを隠せない。
「--この薬を使えば、次々と体を入れ替えて、
逃げることができる」
その言葉に、菜月美は呟く「・・・逃げる…ま、まさか・・・」
「そう!俺が今巷で話題の凶悪犯罪者、室井さんだよ!
はははははは!」
可奈恵は表情をゆがめて笑った。
「入れ替わりは最高だぜ!
逃げることができるし、そして何よりー
入れ替えさせられた子の”絶望”を見ることができる!」
可奈恵になった室井は、
可奈恵が絶対に出さない様な大きな声で笑った。
「--お前にも、絶望を見せてやるよ」
そう言うと、可奈恵になった室井は笑った。
そして、テレビを目の前に置く。
「今から俺は、お前として…可奈恵として
家に帰る。
お前には、その俺の生活を見せてやるよ。
ふふふ・・・今日からわたし、
お父さんを困らせる悪い娘になっちゃうの♡」
可奈恵の言葉に菜月美になった可奈恵が
反応した
「や・・・やめて・・・やめてよ!」
目からは涙がこぼれていく。
「--自分の身体が、悪い子になっていく様子…
溺愛していた娘が、非行少女に変わっていき、
困り果てる父親の様子。
最後に待つ家庭崩壊
それを、お前に見せてやるよ」
可奈恵は菜月美に顔を近づけながら不気味にほほ笑む。
「--自分が優等生から悪い子に転落していく姿を見れる…
最高のドキュメンタリーだぜ!はははは!」
可奈恵は大笑いしながらアジトから外に出て行った。
「待って!やめて!ねぇ!」
拘束されたままの菜月美は、叫ぶことしかできなかった・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜。
「ただいま」
可奈恵が帰宅した。
父の光輝が「おかえり」と返事をして、
目を疑った。
「---なに?」
可奈恵が、ピアスの穴をあけて、
ピアスをしていたのだ
「か、、可奈恵…それは…?」
父が戸惑う。
「--これ?別にわたしの勝手でしょ?」
そう言うと、可奈恵は愛想なく、自分の部屋へと入って行った。
”くくく・・・俺を追う刑事の娘の身体を奪えるなんてラッキーだぜ。
さぁ、、お前らを地獄に落としてやるぞ”
室井は心の中でそう囁いた。
「---違う!お父さん!それはわたしじゃない!!!」
アジトのテレビに流れてくる、映像を見ながら菜月美になった
可奈恵は叫んだ。
「---お父さん!気づいて!!!」
そう叫ぶ娘の想いは、父に届くのだろうか…。
②へ続く
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コメント
入れ替わりモノ…
普段は憑依モノメインなのですが、たまには…!
逃亡するなら憑依の方が絶対に楽だと思いますが、
この室井さんは、入れ替わり後に、相手が見せる絶望を見たくて
入れ替わり薬を手に入れたようです。
ちなみに、読んでなくても、全然問題ナシですが、
この室井さんは、
「凶悪犯罪者・室井」に登場した室井さんと同一人物です^^
あの時は憑依薬を使ってましたが、
奪われた側の相手の絶望を見たい室井さんは、
入れ替わり薬に手を染めたようです!
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