<入れ替わり>変幻自在の逃亡者③~王手~(完)

入れ替わり薬を手に入れ、暴走を続ける凶悪犯罪者の室井。

そして、秘密裏にそれを処理しようと躍起になる、警察組織。

数多の女性が踏みにじられていく中、
ついに警察は室井のアジトを突き止めた…!

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「お待ちください!」
娘を室井に奪われた警察官・光輝が、
悲痛な叫び声をあげた。

上層部の男、早川警視正が足を止める。

「---秩序を維持するためには、
 多少の犠牲は仕方がない。
 既に、御子柴(みこしば)率いるチームを
 室井のアジトに送り込んだ」

早川警視正は淡々と語った。

「--じゃ、、じゃあ、私の娘は…!」
光輝が悲しそうに言う。

凶悪犯罪者の室井は娘の身体を奪った。

と、いうことはー
娘は誰かと入れ替えさせられている可能性が高い。

つまりは、別の身体で、室井のアジトに居る可能性が
非常に高いのだ。

「---残念だが」
早川警視正はそれだけ言うと、光輝を放置して
そのまま立ち去った。

「---室井。王手だ」
警視正は、そう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--あぁん♡ さいこぅっ♡」

女子大生の里音は、
嬉しそうに自分の身体をベタベタ触っていた。

チャイナドレス姿で、自分の太ももを舐めるように
して触っている。

その傍らには、
女子高生の菜月美と、可奈恵が拘束された状態で
その様子を見ている。

菜月美の身体には、警察官の娘である可奈恵が、
可奈恵の身体には、女子大生に扮した潜入捜査、里音の
意識が入っている。

「---あぁぁ♡ 女の子って…さいこう♡」
里音の身体を奪って、里音の身体で喘ぎまくるー。

「---」
もうすぐ、早川警視正が送り込んだチームがここに来るはず。

だが、それまでの間だとしても
自分の身体が弄ばれるのは不愉快だった。

可奈恵になった里音は、自分の一人エッチから
目を逸らす。

「うふっ…♡ あはっ…♡ あははははははははっ♡」
里音が絶頂に達したその時だった。

パァン…!

銃声が響いた。
次々と響く銃声

聞こえてくるのは、室井の配下たちの悲鳴。

「---なにっ?」
里音が叫ぶ。

可奈恵と菜月美の身体を拘束している部屋から
里音が銃を持って外に出ていく。

しかしーー

パァン!パァン!パァン!

容赦ない銃声が響き渡り、
血まみれになった里音の身体は床にたたきつけられた。

「いやあああああっ!」
可奈恵になった里音は叫んだ。

”自分の身体”が撃たれているー

どうして?
早川警視正は、わたしを助けてくれるんじゃ?

彼女はそう思った。

「かっ・・・あ・・・がはっ…」
里音は、信じられないと言う表情で
入ってきた警察たちを見た。

「--け、、警察が…こんなことして…」
里音は喉から声を振り絞った。

「--”表”が全てではない。
 終わりだ。室井」

秘密裏に動く警官隊を率いていた男、
御子柴は容赦なく引き金を引き、
里音を射殺したー。
凶悪犯罪者の室井もろともー。

静まり返る部屋。

「---ど…どうして!」
可奈恵が叫んだ。

可奈恵の中には潜入捜査官の里音が居る。

「--わ、、わたしの身体…!
 室井を確保したあとはわたしを元に戻してくれるって
 警視正は…」

パァン…!

可奈恵の身体が、跳ね上がるようにして衝撃を受け、
痙攣して、間もなく動かなくなった。

「----”跡形もなく消し去れ”と
 警視正からの指示だ」

御子柴は、可奈恵を射殺した。

決して表ざたにならない秘密の処理部隊。
それが、早川警視正の率いる部隊。

秩序を保つためなら、
非人道的なこともする。

「あ・・・あぁ…あ」
菜月美がおびえて震えている。
菜月美の中には、可奈恵が居る。

「--お嬢ちゃん。悪いな」
御子柴が銃を向ける

「え…や…やめて!」
菜月美になった可奈恵が叫ぶ

「わ、、わたしは、生田 可奈恵…
 父が警察官をやってるんです!
 お願いです!わたしはこの人たちの関係者じゃありません!」

既に屍になっている里音の方を見て叫ぶ。

タスカリタイー。
その、一心で。

「---悪いが、それは出来ないんだ。
 ”入れ替わり”を知る人間は一人でも多く処理しろ
 それが、上からの命令だ」

御子柴は銃を菜月美に向けた。

「---け、、警察が、こんなことするんですか!」
菜月美が叫ぶ。

「---警察にも”表”に出来ないことがあるんだよ」
御子柴が引き金を引こうとすると、
背後から声がした。

「やめろぉ!」
可奈恵の父、光輝だった。

「---生田さん」
御子柴は光輝の後輩にあたる人物だった。

「---お前、可奈恵か?」
菜月美の姿をした少女に声をかける。

「---う、、うん・・・」
涙を流しながら答える菜月美。

その横には可奈恵の身体が冷たくなって
横たわっている。

「貴様!」
光輝は御子柴の胸倉をつかんだ。

「---先輩。分かってるでしょう?
 きれいごとだけじゃこの世の秩序は保てない。
 入れ替わり薬のことが、世間に広まったら、
 どうなると思ってるんです?

 それこそ、大混乱ですよ。
 今までもこうして、表にできない事件を
 我々が処理してきた。

 だからこの国は平和が保たれてるんですよ」

御子柴の言葉に、光輝は御子柴を睨んだ。

「--それでも、何の罪もない人まで
 消す必要はないだろうが」

光輝が御子柴をつかむ腕に力を込めた。

「---先輩…!」

光輝の熱意が伝わったのか、
御子柴は悲しそうな表情を浮かべた。

パァン!

否ー。
”光輝も処理”しなければならなくなったことにー
御子柴は悲しそうな表情を浮かべた

「き…きさ…ま」
その場に倒れる光輝。

「いやぁああああ!おとうさん!」
菜月美になった可奈恵が叫ぶ。

「---ごめんな」
御子柴がそう呟くと、再び銃声がアジトの中に響き渡ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---ご苦労だったね」
早川警視正が感情のない声で言う。

「は…」
御子柴が頭を下げて、警視正の部屋から出ていく。

一人になった早川警視正は窓の外を見つめた。

「--これも、世のため。
 秩序を維持するためには、犠牲も必要だ」

ガチャ

誰かが部屋に入ってきた。

「---おとうさん!」
早川警視正の娘で、現役女子大生の美亜子だった。

「---ん?どうしたんだ?こんなところまで」
冷徹な早川警視正も、娘の前では”父”だった。
嬉しそうに笑いかける父。

「--おとうさん、忘れものよ!」

そう言うと、美亜子がスカートに隠れた太ももの部分に
巻きつけていたナイフを取り出し、父の首に突き立てた。

「---!?」
早川警視正は首を抑えながら
驚いて目を見開く。

「み…美亜子…?」

美亜子は微笑んだ。

「お父さん…あの世への切符、
 忘れてるよ?ふふふ♡」

自分の手を真っ赤に染めながら嬉しそうに言う美亜子。

「---が…あ・・・どうして…?」
驚いたまま必死に声を振り絞る早川警視正。

娘が、その父の身体を乱暴に押し飛ばして、
頭を踏みつけながら言った。

「---俺だよ…室井だよ」

その言葉に早川警視正は薄れ行く意識の中、驚く。

「何故だ…アジトで射殺したはず…」

「事前に強襲されるという情報が入ってな。
 あのとき、アジトに居た里音の中には、
 もう俺はいなかった。

 強襲直前に、近くに居たホームレスを捕まえて
 俺とそいつで入れ替わりをした。
 俺はホームレスになってアジトから抜け出し、
 ホームレスは里音とかいう女の身体になって
 喜んでた…

 お前らが、俺だと思って射殺した里音とかいう
 女の中には俺ではなくそのホームレスが居たんだよ」

美亜子は、狂ったような笑みを
浮かべながらそう告げた。

「---貴様・・・わ、、わたしの娘・・・を!」
警視正が叫ぶと、
美亜子は笑った。

「可愛い女子大生じゃねぇか。
 でもさぁ、
 わたし、お父さんを殺しちゃうから、
 もう人生終わりだね♡

 でも、今のわたし、すっごくゾクゾクしてる!」

美亜子が嬉しそうに全身を震わしている。

「わたしの娘を返ーー!」

そこまで叫んだ時点で、首に鈍い痛みを感じて、
早川警視正は息絶えた。

「--はぁ~あ!ばいばい、おとうさん♡」

美亜子が嬉しそうに刃物を放り投げて、
父が座ってた机の上に座り、足を組んで微笑んだ。

「--入れ替わり薬があれば、
 誰も俺を捕まえられない!」

「---どうかしましたか!?」

たまたま近くを通った新人婦警が
部屋にかけこんできた。

「こ・・・これは…」

早川警視正が血まみれで倒れていて、
警視正の机の上に足を組んで微笑む
女子大生が居る。

「---あ、、、あなたは・・・」

婦警がそう言うと、
美亜子は笑った。

「あぁ・・・こいつはもう犯罪者だから、
 この体に居るのはよくないな」

そう言うと、美亜子は婦警に近づいて、
そのままキスをした。

「---ふ・・・ふふふ♡」
婦警は不気味にほほ笑み、美亜子は倒れる。

「---だ、、誰か!誰か!」
婦警になった室井は大声で助けを呼び始めた。

「---違います!違います!
 わたしは、、わたしは!!!」

連行されながら、自分は美亜子じゃないと必死に
叫ぶ美亜子。

だが、周囲の警官はそんな言葉を聞き入れずに
美亜子を連行した。

何故ならー
一般の警察官に”入れ替わり薬”のことは
伝えられていないからだ。

「--ふふ」
新人婦警の有香(ゆか)はそのまま更衣室に向かうと、
自分の私服に着替えて、警察官の制服を
ゴミ箱に捨てた。

「--何が正義だ」
歪んだ表情でつぶやく有香。

「捕まえられるものなら捕まえてみろってんだ」

そう吐き捨てるようにして言うと、
有香は結んでいた髪をほどき、
そのまま嬉しそうに警察署を後にした。

その後の室井の足取りは、誰も知らないー。

彼を捕まえることのできる日は、来るのだろうかー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

逃げられてしまいました・・・。
どうやって捕まえましょうか・・・(汗)

ご覧いただきありがとうございました!

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