彼女の死の運命を覆すため、
彼氏は憑依薬を手に、何度も何度も時間を逆行し、
懸命に運命に抗い続ける。
しかし、死の運命はー、
”確定事項”として、避けられないものとなっていたー。
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「・・・・・」
久美に憑依した正輝は考える。
裏通りにあるこの公園。
大通りに出る道か、それともそのまま裏通りを抜けて、
別の道に出るか。
移動するのであれば選択肢は2つにひとつ。
ただし、これまでのやり直しによって、
大通りでは車に轢かれ、
裏通りでは通り魔に襲われることが分っていた。
裏通りは狭い。
通り魔を避けて通るのは厳しい。
ならば、やはり大通りか?
正輝はそう思った。
「---って、髪の毛じゃまだなぁ」
目の前に来た髪の毛を振り払い、久美は呟く。
「--女の子って、色々大変そうだなぁ…」
そう呟いていると、奇妙な笑い声が聞こえた。
「----!!」
目の前に、レインコートの男が立っていたーーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---くそっ!」
自分の体に戻ってしまった正輝。
公園の一目につかない場所で、
いつも憑依薬の力を発揮しているので、
レインコートの男に、自分のからだは
見つからなかったようだ。
血だらけになって久美が倒れている。
「---公園で、待機してても、
通り魔がやってくるのか」
正輝はそう呟いた。
久美が、弱弱しい声で泣いている。
「---まさ…き…痛いよ…わたし…痛い!」
久美が嗚咽まじりの声を出す。
「---久美…」
どうして、彼女の死をこんなに何回も何回も
見なくてはならないのか。
久美の手を強く握りしめる正輝。
「---おやすみ…久美」
助からない。
それは分かっていた。
だから、頭を撫でて、少しでも安心させてやろうとした。
「---おやすみ」
久美は少しだけ安心した様子で呟く。
「…明日…」
久美は、目を閉じながら呟いた。
「---会えるよ」
正輝は先に返事をした。
久美が何て言うかは分かっている。
このまま”永遠の眠り”についてしまうんじゃないかと
不安な久美は
「明日、また会えるよね?」と正輝に尋ねる。
いつも、そうだ。
だから、先に答えたー。
「そっか… ふふっ…」
久美はそう呟くと、ゆっくりと目を閉じ、
息絶えた。
「くっそぉ!」
正輝は、家に走る。
自宅につくとまた、
時間逆行薬と憑依薬を見つめる。
「やはり、大通りしかない。
反対側の路地からは、通り魔の野郎がやってくる。
大通りに行けば、トラックさえ避ければ久美は助かる。」
そう呟いて、正輝は2つの薬を飲みほした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーもう、知らない!」
久美が不貞腐れて立ち去るところから。
正輝はすぐさま憑依薬を飲んで久美に憑依した。
「ーーー急がないと」
スカートがヒラヒラして、走りにくい。
けれども、久美は走った。
大通りにトラックが来る前に、
大通りを抜けてしまえば…。
いつも走ってくるトラックは、まだ遠くに居た。
「---やった!」
久美はそのまま大通りを抜ける。
「やった!!!助かった!!!
久美!!良かったな!!!」
自分のことを他人のように言って喜ぶ久美。
「--そしたら、憑依から抜け出して、
自分のからだに戻ろう」
ーーーゴゴゴゴゴゴゴ!
大きな音がした。
久美にぶつかるはずのトラックが近くのビルにぶつかった。
「---……ふぅ」
ほっと溜息をついた久美。
しかし…。
ドガッ!!!!
強い衝撃が走り、
久美は意味も分からぬまま吹き飛ばされた。
宙を舞いながら久美が背後を見ると、
若者が二人乗りしたバイクが暴走していた。
「---やっべぇ~今、人に当たらなかったか?」
「当たってねーよ!」
そんなこと言いながら若者が走り去っていく。
「う・・・うそっ…」
久美は、頭を強く打ち付けて、
吐き気と猛烈なめまいに襲われてその場に倒れる。
「---な、、んで…」
久美はそのまま息絶えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---はぁっ…はぁっ」
自宅に戻った正輝は思う。
おかしいー、と。
どうしてこんなにも久美は助からないのかーと。
まさかーーー
”一度決まった運命は、俺が何をしようとも
変わらないのではないか”
正輝はそう思った。
時間逆行薬を使ったところで、
”運命”は変えられないのではないかーーーと。
ーーー正輝の推理はあたっていた。
時間を巻き戻しても、
この世界の”運命”は変わらない。
一度起きたことは、変えられない。
正輝の行動によって”ズレ”の生じた未来を
この世界は”修正”するー。
だからーーー
正輝が何をしようとも…
「--ふざけんな!俺は久美を助ける!」
正輝は咳き込んで、手に血がついたのを見て
少し驚いた。
「憑依薬と、時間逆行薬の副作用か…。
でも・・・俺は!」
正輝はそう叫ぶと、再び時間逆行薬を使用した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
久美は、レインコートの男と戦っていた。
”こいつを倒してしまえばー”
そう思ったのだ。
正輝は少しだけ、格闘術にも興味があり、
かじったことがある。
「---くそっ!動きにくい!」
スカートがヒラヒラして、とても動きにくい
「はぁ…はぁ…」
しかも、女のからだでは体力が足りなかった。
「---きぇえええええい!」
男は刃物を久美に突き立てた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「久美!お前は死ぬんだ!
俺は未来から来たんだ!」
正輝は叫んだ。
久美に憑依せず、正輝は久美に事実を
伝えることにした。
「---はぁ?バッカじゃないの!」
手を振り払われたー。
怒っている久美はそのまま大通りで
轢かれてしまった…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いいからこっちに来るんだ!」
正輝は乱暴に久美の手をつかみ、
強引に大通りか引き離した。
現れるレインコートの男。
正輝は、自分のからだなら
コイツを倒せると踏んだ。
正輝は激闘の末に、
レインコートの男を殴り倒した。
だがーー
振り返ると、久美は立ち去ってしまっていた。
慌てて大通りに行くと、久美は二人乗りのバイクに
跳ねられたあとだった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー近くの建物に隠れよう」
公園のある裏道から出るには大通りか、裏路地を奥に進んで
別の通りに抜けるかしかない。
けれどー。
その2つがダメなら…。
久美は公園の近くにあった、古い民家のインターホンを押す。
手でお願いのポーズを作り、
目を潤ませて
「あの…少しの間だけ、休ませてもらえませんか…
急にめまいが…」
と、言った。
あざとい…
正輝はそう思いながらも、家のおじいさんは久美を
招き入れてくれた。
「ゆっくりしていきなさい」
一安心する久美。
まさかレインコートの男もここまでは入ってこないだろう。
「--今、味噌汁作ってやるからな」
おじいさんは味噌汁を振る舞ってくれるようだ。
「---綺麗な手だな~」
待つ間、久美は、自分の手のニオイを嗅いで微笑む。
「--こ、、このぐらい、、いいよね?」
顔を真っ赤にして、味噌汁を待つ久美。
しかしーーー
「あっーーー!」
おじいさんの声がしたーー
次の瞬間、家は爆発したーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---あのじいさん…
何かガスの扱い、ミスるんだなきっと。
味噌汁は断ろう」
久美に憑依した正輝は、
おじいさんの家に入る。
また、あざといポーズをして…。
「---あ、お腹すいてないので
お気持ちはありがたいのですけど
大丈夫ですので」
久美がそう言うと、おじいさんは微笑んだ。
そしてーー
「君みたいな子がうちに来るなんて…」
「---え?」
「ムラムラしちゃうじゃないか!」
70歳ぐらいのおじいさんが、久美を襲ってきた。
「ひっーー?」
必死に逃げる久美。
しかし、おじいさんは背後からゴルフクラブで久美の頭を
強く殴りつけた。
「がっ…」
久美は、そのまま死んでしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くっそ…!なんだよ!あのジジイ!」
久美は怒声を上げる。
そして、頭をかきむしって叫んだ。
「どうして久美が死ななきゃいけないんだよ!」
イライラが募っていた正輝は、
憑依した久美のからだで、一人公園の中を荒々しく
歩き回り、ゴミ箱を蹴り飛ばしたり、
砂場の砂を滅茶苦茶にかき乱したりした。
「はーっ…はーっ…」
久美が息を切らして座り込む。
「どうしてだよ…」
砂場の砂を叩いて、涙を流す久美。
背後から足音がした。
例のレインコート男だろう。
「ははは……
どうせ殺すんだろ…
ははは、ははははははははっ…
ふざけやがって… ふざけやがって!!!」
久美はレインコート男に噛みつく勢いで
襲いかかったが、すぐに殺されてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
運命は変わらないー。
時の運命(さだめ)は変えられないー。
一度決まってしまった運命は
変えても”修正”されるー
久美は今日、死ぬ。
もう、それは、
変えられないー。
それでも、
それでも、正輝は…
正輝は久美のからだで必死に走った。
大通りのトラックを避け、
二人乗りのバイクを避け…
けれどもーー
工事現場からの落下物で、久美は事故死した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今度は落下物を避けるー、
けれど、その先で、ヒットマンに狙撃されて、
久美は死亡したー。
「---俺は負けない。絶対にーーー
俺は久美を救うーーー」
からだが痙攣を起こし始めている。
心臓の鼓動もおかしい。
けど、、
正輝は約束した。
明日会うって…!
憑依薬と時間逆行薬が正輝の体を蝕む。
ヒットマンのいる位置を回避したー。
けれど今度は、毒蛇にかまれて死んでしまったー
次は、毒蛇も回避したーー
「---はぁ…はぁ…もう終わりかな」
久美がそう言うと、突然からだに激痛が走った。
「----!?」
”今度は何だよ”
正輝はそう思ったー
死因はーー
急性心不全…。
「---嘘だろ」
正輝は呟いた。
心不全じゃ、防ぎようがない。
事故は避けられるー
レインコート男も回避できるー
けどーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
正輝は久美のからだで遊んでいた。
「どうせ♡ どうせわたしは助からないの♡
どうせ♡ あぁん♡」
自分の胸を弄んで喘ぐ久美。
目からは涙が流れている。
「---うふふふふ♡
なにしても♡ 助からない!!!助からない!!!」
スカートをめちゃくちゃにいじくりまくり、
服をびりびりに破いて、
正輝は久美のからだで欲求を爆発させた。
「-あははははははは♡
どうにでも、、どうにでもなれぇぇ♡」
久美の体は激しい快感に支配されて、
愛液をばらまいた。
「ははは♡ はは…」
座り込む久美。
目からの涙が止まらない。
「--どうして…
どうして…」
そして…
レインコート男に刺された。
「---」
自分のからだに戻った正輝は思う。
もう、無理だー。
と。
愛液まみれで倒れた久美を見て、
正輝は涙を流す。
「---まさき・・・・・・たすけて…」
久美がつぶやく。
「---久美…
でも…もう俺…どうにもできないよ」
正輝が言う。
久美は時間の逆行を認知できていないだろう。
「---俺さ…何度も何度も何度も何度も
久美を助けようとしたんだ…
でも…ダメだった」
正輝は言う。
しかも、久美のからだまで穢してしまった。
「---まさき・・・」
意識が朦朧としている久美は言った。
いつものようにー
”また、明日会えるかな”とーー
死にゆく久美。
「-----」
その表情を見て、正輝は改めて決意した。
「---ふざけるな」
正輝は空を向いた。
「そんなに久美を殺したいか?え???
ふざけるなふざけるなふざけるな!!!」
正輝はーー
”いるかもわからない”神様に向かって叫ぶ。
「--お前らが久美を殺したいなら、
俺は絶対に久美を守ってやるよ、
何十回でも何百回でも、何千回でも
やり直してやるよ!」
そう叫ぶと、正輝は再び
時間憑依薬を使う為に自宅へ向かった。
運命なんてないー。
久美は、俺が助けるー。
そう決意した正輝。
けれどー、正輝の体内組織は、急激に壊れ始めていた…
③へ続く
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無限ループに陥ってます^^
ちなみに、正輝君以外が、時間の逆行を認知できていません。
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