<憑依>明日、また会えるよね?①~悲劇~

幸せが一瞬にして壊れたー。

彼女の突然の死ー。

けれどー
彼氏は諦めなかった。
祖父から譲り受けた禁忌の薬
「憑依薬」と、祖父が研究していた「時間逆行薬」を使い、
彼女を死の運命から救おうとするー。

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「ーー明日、何の日だか覚えてる?」

女子大生の小野寺 久美(おのでら くみ)が
微笑みながら訪ねる。
正統派の美人、という感じの女性で、
優しそうな雰囲気が漂っている。

「---ん?明日?」

彼氏の角谷 正輝(すみや まさき)が首をかしげる。

「----覚えてない?」
久美がそう尋ねると、正輝が笑う。

「--うーん…覚えてないや!
 何だっけ?バイトの日?それとも久美の欲しいものの
 発売日か何か?」

正輝が言うと、
久美が少し拗ねた様子で言う。

「え~~ひどいよ~~
 …ほら…わたしの…!」

久美が可愛らしく笑うと、
正輝が答えた。

「あっ!思い出した!
 アプリのボーナスイベントのスタートだ!明日は!
 教えてくれてありがとう!」

正輝が言うと、
久美が悲しそうな顔をして立ち尽くしている。

「---どうした?
 そんな顔して?
 お腹でも痛いのか?」

正輝が尋ねる。

「----違うわよ!」
久美が怒りっぽく叫んだ。

「---もう、知らない!」
久美は不貞腐れて、そのまま正輝を置いて一人
歩き出す。

「--ーーはは」
その後ろ姿を見て正輝は思う。

女の子って面倒くさいよな… と。

20歳の正輝と、19歳の久美。
二人は半年の付き合いだった。

女は面倒くさいー。
正輝はそんな風に思っていた。

けれどー、
面倒臭いけど、可愛い。
最近はそう思えるようになった。

「---さて、そろそろ謝るかな」

正輝には、明日が何の日だか分っている。

彼女の、久美の誕生日だ。

知っていて、わざと意地悪してしまった。

「----なぁ、久美」
叫びながら小走りで久美を追いかける正輝。

しかしーーー

キィィィィィィィ!

車の急ブレーキ音が響き渡った。

「----!?」
正輝が駆け付けると、そこにはーー
1台のトラックと…
血だらけになった久美が倒れていた。

「---く、、久美!?」
正輝は青ざめて久美に近づく。

「----…ごめん・・・・・・・
 バカ…やっちゃった…」

それだけ言うと、久美は意識を失った。

救急車で運ばれる久美。
正輝は慌てて久美の両親に連絡し、
自分は救急車で久美と一緒に病院へ向かう。

救急車で久美はうわごとのように呟いた。

「明日、また会えるよね…?」と。

正輝は手を握って
「あぁ、久美のそばにずっといるから!
 明日も、明後日も会えるさ」
と力強く言った。

しかし、久美は急激に弱っていき、
「眠くなっちゃった・・・おやすみ・・・」とつぶやいて
目を閉じた。

そしてーーー
心臓が停止した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後。

正輝は地獄のような哀しみに襲われていた。

スマホを開いては
久美と一緒に撮影した写真を見つめて涙を流すー。

正輝の机の上には、
小包が用意されていたー。

久美への誕生日プレゼントとして用意したものだー。

正輝は、久美の誕生日を忘れていたわけではない。
ちゃんと、覚えていた。
プレゼントも用意していたー。

けれどー、
忘れているふりをして、サプライズとしてプレゼントを
渡したかった。

だからー、
あんな意地悪をしてしまった。

久美が車にはねられたのは自分のせいだー。
悲しみのあまり久美はー、
不注意のまま道路に飛び出してしまったのだろう。

「-----」
涙も乾いてきたころ、正輝はおもむろに立ち上がった。

「禁」と書かれた箱を手に取る。

「---…俺は」
正輝が箱を開くと、そこには

”憑依薬”と書かれた薬と
”時間逆行薬”と書かれた薬が入っていた。

これはー、
正輝の祖父が研究していた薬。

祖父は既に他界している。

中学生のころ、正輝は祖父とこの薬について
話しをしたことがある。

祖父によれば、研究段階で結局ここまでしか作れなかった、
いわば開発途中の薬で、
からだに多大な負担がかかるし、どうなるか分からないから
絶対に使うんじゃない、とのことだった。

けれどー
祖父は「わしの研究を…誰かに覚えておいてほしい」と、
死の直前に正輝にこれを託したのだった。

”時間逆行薬”を手に取る。
殴り書きのメモには、念じた時間にまで戻ることができるー、
ただし”戻れる範囲”には限界がある

と書かれていた。

「---久美を救うためなら、俺は!」

飲めば何が起きるか分からない薬を、
正輝はひと思いに飲み干した。

その瞬間、激しいめまいに襲われる。

正輝は苦しみの中、必死に願う。

ーーーあの日に、戻りたいーーーー

と…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「違うわよ!もう、知らない!」

正輝が意識を取り戻すと、
目の前で久美が怒っていたー。

”時間が経ち過ぎると、戻れない”

祖父の説明を思い出す正輝。

「---これは…!」

久美が事故に遭う直前ー。
時間逆行薬で戻れるのはここまでー。

「---あ、ちょ、、久美!待って!」
正輝が叫ぶがーーーー

既にーー
久美はひかれていたーーーー。

「---明日、また会えるよね…?」

久美は、前と同じことを救急車の中で呟いた。

正輝は強く手を握った。

「あぁ…会える…
 俺が必ず会えるようにしてやる・・・!」

正輝が目に涙を浮かべて力強く叫んだ。

久美はーーまた、永遠の眠りについた。

正輝は状況を整理する。
時間逆行薬で戻れるのは、久美と喧嘩別れみたくなって、
久美が歩き出したところまで。

ひかれるまでは2分ちょい。

もし、今この時間から時間逆行薬を使えば
戻れる時間は、もっと前までになるのだろうか。

それとも、最初に使った時間を基準で考えるのだろうか。

もう一度、試してみる必要がある。

今回は初めてだったから、戸惑っている間に久美が
ひかれてしまった。

けれどー。

今度はそうはいかない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「もう、知らない!」
久美が叫んだ。

2度目の時間逆行。

今度の正輝は、迅速だった。

「--久美!なぁごめん!だから待ってくれよ!」
正輝は叫ぶ。

あの大通りに久美が行かなければ、轢かれることはない。

「---ふん!もういいよ!」
久美は完全に拗ねていて立ち止まろうとしない。

「---久美!」
正輝が久美をつかむ。

けれどー。

「離してよっ!」
久美は正輝を振り払って走り出してしまった。

そしてーーー

ドン!!!

元々の時間軸では久美は、早歩きで通りに行って
車に轢かれたーー。

今回は、正輝が数秒、立ち止まらせたが、
久美は走ってしまったため、結局同じ運命になった。

「---くっそぉおおお!」

正輝は叫ぶ。

そしてーー
再び時間逆行薬を使ったーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今度は”力づく”で!

正輝はー
久美を抑え込む。

「離して!離してよ!」

「ダメだ!離さない!
 お前はーーー~~~~」

”お前は死ぬ”
そう言おうとしたが、何故だか、喉から声が出ない。

そうこうしているうちに、久美は、トラックに轢かれてしまったー。

「明日、また会えるよね…?」
久美の”4回目”の言葉ー。

久美は涙を流しているー。

「---会える…!いや、会う!
 俺は絶対に会う!」

死にゆく久美に、正輝はそう叫んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

正輝は時間逆行薬を使おうとして、
突然、胸の強烈な痛みに襲われた。

「ぐふっ…!」
思わず胸を抑える正輝。

「---まさか…」

祖父は言っていた。
この薬は不完全であり、からだを蝕む恐れがある…と。

もしやーー

「…そっか…何度も何度もチャンスはないってことかよ」
正輝はそう呟くと、

時間逆行薬と一緒に封印されていた、
憑依薬というものに目を向けた。

試しに飲んでみる正輝。

すると、自分の思い通りに幽体離脱が出来るようになったのだった。

「こりゃすげぇ…」
正輝は呟く。

「---そうだ…これを使えば!」
正輝は自分の体に戻り、あらかじめ憑依薬を飲み、
そのあとで、時間逆行薬を飲み込んだ。

「---あの短時間で、久美を止めるのは難しい…
 なら、自分が久美の体に憑依すれば…!」

時空の渦を超えて、正輝は、あの事故の日へと再び戻る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「もう、知らない!」
久美が叫んだ。

ハッと我に返った正輝は、
慌てて幽体離脱をして、
久美のからだに突撃した。

「---ひっ!?」
久美のからだがビクンとなる。

「---ふ…あ、、い、、ま、マジで久美になってる!」
久美に憑依成功した正輝は叫ぶ。

久美のスカートから見える足を見て
「うわ~~やべっ…興奮しちゃいそうだ!」
と叫ぶ久美。

胸のふくらみを見つめて、
思わず顔を赤らめる。

だがーー
今はこんなことしてる場合じゃない。

安全な場所に移動して、
早く久美にからだを帰そう。

そう思った。

大通りに向かう方角ではなく、
裏路地の方に向かう久美。

「---車に轢かれなきゃ、だいじょう…」

腹部に衝撃が走った。

「----!?」
久美は驚いて顔を上げる。

レインコートを着た怪しい男が刃物を久美に突き刺していた。

「-----ひっ…!?ど、、、、、どうし…て」
久美はそのまま倒れる。

「-----!!」
公園に倒れていた正輝が起き上がった。
幽体離脱した正輝が憑依した久美が倒れたことにより
強制的に戻されたらしい。

「---くそっ!久美!」

正輝が裏路地の方に走って行くと、
久美は、苦しみの声をあげていた。

ひゅう…ひゅう…とおかしな呼吸になっている。

「まさき・・・わ、、たし…死にたくないよ…」

泣きながら嘆願する久美。

「----久美…」
正輝はその場に膝をついてうなだれた。

「----まさ・・・き」
久美が力なく倒れる。

どうして…

正輝は思う。

この公園は、大通りに続く道か、
裏路地に続く道しかない。

大通りで久美は轢かれる。

だが、それを阻止しようとして裏路地の方に向かうと、
久美は、レインコートの男に刺される。

正輝は、レインコートの男が何者か突き止めるため
時間逆行薬をすぐには使わず、男の逮捕を待った。

男は即日、発見されて逮捕された。

ーーー通り魔だった。

「---久美を助けることはできないってのかよ」
正輝は呟く。
前にも、後ろにも死が迫っているーー

でも、、、

「----俺は諦めない…
 久美…!また明日、会おうな…」

そう言うと、再び憑依薬と時間逆行薬を飲み、
正輝は”あの瞬間”へと戻っていくーー

運命(さだめ)は既に決まっているー
それを覆すことはーーーー

②へ続く

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ホワイトループ憑依小説(?)です!
果たしてどうなるのか、明日以降もお楽しみに!

憑依<明日、また会えるよね?>
憑依空間NEO

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