護衛対象は絶対に守るー。
”成功率100%”と言われるボディガードの彼。
その方法は”護衛対象に憑依して、自分自身がその人物になることで守る”という
特殊な方法だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ククククー…
香奈枝(かなえ)ちゃんー
ついに、香奈枝ちゃんが僕のものになる日が来たよ」
ニヤニヤとしながら、男が夜道を歩く
ローカルのアイドルとして活躍している香奈枝の
後ろ姿を見つめるー。
「へへへへへー」
どこから手に入れたのか、相手を眠らせる力を持つ薬を
塗り込んだハンカチを手に、
男は邪悪な笑みを浮かべるー。
彼はー
香奈枝の”ストーカー”とも言うべき存在ー。
元々、香奈枝のファンの一人であったものの、
やがて、執着が強まり
その行動は狂気に染まっていったー。
香奈枝も、この男ー…田倉 栄太郎(たくら えいたろう)の
行動には困り果てて、恐怖を感じており、
先日、ついに栄太郎から
”来週の週末、僕が香奈枝ちゃんを迎えに行くからね”という
手紙が送られてきたことで、香奈枝は警察に相談ー
その上で、”ある男”にボディガードを依頼していたー。
その男は”成功率100%”を誇る男ー。
その護衛方法から”使いどころ”は限られてくるものの
”この日、この時間が危ない”と、具体的に予測出来ている場合には、
絶対的な力を発揮し、
これまで、何かが起きた際の成功率は100%とも言われる男だった。
香奈枝は、アイドル仲間に不安を打ち明けたところ、
その子から”闇の壁”の異名を持つボディガードを紹介され、
先日香奈枝はそのボディガードと接触、
週末の自分の護衛を依頼したところだったー。
「ーーへへへへへへ…」
その香奈枝の行動は正解だったー。
予告通り、ストーカー化した元ファンの男・栄太郎が
ニヤニヤしながら、香奈枝を連れ去ろうと
背後から迫って来ている最中だったからだー。
ただー…
夜道を歩く香奈枝の付近に
そのボディガードの男らしき姿はない。
そして今、栄太郎のことを見張っている人間もいない。
「ーーーー」
いるのは、栄太郎の前を歩く香奈枝のみ。
「くへへー
この先の駐車場に予め俺の車を停めてあるからー
そこに近付いたら香奈枝ちゃんをゲットするぜ」
栄太郎はそう言葉を口にすると、
自分の家に用意してあるウェディングドレスと、
ネットで調べた”相手に自分のことを好きだと思わせる術”の手順を
頭の中に思い浮かべる。
そしてー
意を決して、栄太郎は香奈枝に近付くと、
特殊な睡眠薬を練り込んであるハンカチを手に、
香奈枝の口にそれを当てようとしたー。
がーー
「ー来たな クズ野郎」
香奈枝が突然低い声でそう言葉を口にすると、
そのハンカチを回避して、
栄太郎の腕を掴み、腕をねじっていくー。
「ーーぅ… ひっ…!?か、香奈枝ちゃー…」
抵抗してくるはずがないー。
そう思っていたのか、香奈枝から思わぬ反撃を受けた
栄太郎は身体を強張らせながら
”信じられない”という様子で香奈枝のほうを見つめる。
それでも栄太郎は一度行動を起こしてしまったからと、
もう後に引けないのか、再びハンカチを香奈枝に
押し付けようとするー。
「ーーこんなにか弱い子にそんなことをしようとするとは、
呆れたやつだ」
香奈枝は自分のことを他人かのようにそう言うと、
栄太郎の急所を蹴り飛ばすー。
「がっ…」
香奈枝よりはるかに体格のいい栄太郎が苦しそうに表情を
歪めると、香奈枝は栄太郎の持っていたハンカチを手に、
それを栄太郎に押し付けるー。
「ーぁ……あ… うぁああ…」
皮肉にも、香奈枝を眠らせようとしていた
睡眠薬を練り込んだハンカチで逆に自分の方が眠らされてしまった
栄太郎はそのままその場に倒れ込むー。
香奈枝は面倒臭そうにため息を吐き出すと、
香奈枝のような子が持ちそうにないデザインのスマホを手に、
「ー俺だー」と、そう言葉を口にするー。
”ー”闇の壁”かー。こりゃまた可愛い声だなー”
相手の男がそう言葉を口にすると、
「うるせぇ。どんな声だろうと関係ないだろうー」
と、香奈枝はそう言葉を返すー。
その上で「この子を狙う男を撃退したー。
あとの処理は頼むー」と、香奈枝がそう言葉を口にすると、
男は”あいよ”と、それだけ返事をして
電話を切ったー。
倒れた栄太郎をそのまま裏路地に隠すと、
香奈枝はため息を吐き出してから、
そのまま、事前に知らされていた”自分の家”へと帰宅するー。
そして、部屋に到着すると、香奈枝から”煙”のようなものが
飛び出すー。
香奈枝は「うっ…」と、言葉を口にして、机に突っ伏すからのように
倒れ込むと、すぐに意識を取り戻したー。
”護衛は完了したー
君を狙う男は撃退済みだ。
じきに捕まるだろう。もう心配はない”
意識を取り戻した香奈枝は、少し驚いたような表情を浮かべながら
そのメッセージを確認すると、
安堵の表情を浮かべながら
”ありがとうございますー”と、そう返事を返すのだったー。
彼女はー、帰宅するこの瞬間まで、
”男”に憑依されていたー。
そう、”闇の壁”の異名を持つ男にー。
”闇の壁”の異名を持つボディガード…
彼は”護衛対象に憑依して、自分自身がその本人になる”ことで
護衛対象を守り抜くボディガード。
ただ、当然のことながら
護衛される本人は”憑依”されるために
その部分での不安はあるし、
使いどころは限られるー。
それでも、”闇の壁”の異名を持つ彼は、
護衛対象の身体を一時的に借りる代わりに
”確実にその対象を守り抜く”ことから、
自分の身に危険が及び、切迫した状態の人々が
彼に依頼することは少なくなかったー。
”自分の身体を短時間貸せば”
確実に自分の命を守ってくれる…というのであれば、
それを利用したい人間は山ほどいるー。
そして、”闇の壁”の異名を持つ彼自身ー
”憑依”はあくまでもボディガードとして
その対象を守るためにしか使わずー、
憑依した身体で悪さをしたり、
憑依対象が異性の場合に胸を揉んだり、欲望を楽しんだり、
というようなことをすることもなかったために、
これまでの利用者たちのクチコミで強い”信頼”も得ていたー。
「ーーーー」
依頼人であるアイドル・香奈枝からのお礼のメッセージを
確認すると、自分の身体に戻った”闇の壁”は、
安堵の表情を浮かべるー。
彼自身ー、”護衛対象に憑依する”理由は2つあったー。
一つは、その護衛対象を確実に守るため。
護衛対象の周囲でウロウロしているよりも、
自分自身が護衛対象になってしまった方が、
”命を狙われている場合”でも、本人を守りやすい。
護衛対象が自分勝手な行動をすることを避けられるし、
例えばトイレの際など、どんなタイミングであっても
本人から離れることなく、護衛を続けることができる。
そして、もう一つの理由が
”自分自身の命も賭けること”で、より強い力を
自分自身、発揮するためだ。
もちろん、通常のボディガードの命がけだ。
しかし、護衛対象が万が一死亡してしまっても、
場合によってはボディガードの方は生き延びることはある。
が、彼の場合、護衛対象に憑依しているため、
護衛対象の死は、自分の死でもある。
彼の憑依は、憑依している間にその身体が死ねば
自分も死ぬ。
死の直前に抜け出せば回避することはできるものの、
例えば憑依している身体が頭を撃ちぬかれて即死してしまえば、
そのまま死んでしまうし、
何より彼自身、”俺は命を懸ける”として、
万が一、護衛対象が死にそうになった場合にも
自分だけ助かるために憑依から抜け出す、ということは
絶対にしないと、固く誓っていた。
それ故に、護衛対象の命は、
護衛している間は”自分自身の命”でもあるー。
護衛対象の命だけではなく
自分の命も”あえて”賭けることで
彼はさらに力を発揮するー。
「ーー今回も無事に守り抜けたなー」
男は、そう言葉を口にすると、
自分の部屋に飾ってある1枚の写真を見つめる。
「ーー美音(みおん)ー…」
優しい笑顔を浮かべるその写真を見つめながら
男は静かにそう呟くと、
少しだけ間を置いてから、静かにため息を吐き出す。
”今度は”絶対に守り抜くー。
彼はそう思いつつ、また”次”の仕事に向かって歩み出すのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーつまりは、娘さんを護衛してほしいと、
そういうことですか」
”闇の壁”の異名を持つボディガード…
彼は今日、とある豪邸を訪れていたー。
「えぇ、そうですー。
しかし、相手は凶悪な犯罪組織ー。
手段を択ばずに、我々の命を狙ってくるでしょう」
豪邸の主ー。
とある企業のトップでもある男が、
そう言葉を口にするー。
「ーーなるほどー…」
”闇の壁”の異名を持つボディガードは
そう言葉を口にすると、真剣な表情を浮かべるー。
ある企業のトップの男ー、嘉山 源三郎(かやま げんざぶろう)ー。
その一人娘である嘉山 姫奈(かやま ひめな)が、
”犯罪組織”に命を狙われているというのだー。
嘉山 源三郎は、その護衛をしてほしいのだと言うー。
「ーしかし、俺の”護衛”はー」
”闇の壁”がそう言葉を口にするー。
彼は”憑依”で、護衛対象に直接憑依することで、
その身を守るー。
それ故に、”いつ狙われるか分からない”人間を守ることに関しては
適していないのも事実ー。
ずっと憑依し続けるわけにもいかないー。
もちろん、”通常のボディガード”としても、護衛をする能力は
十分にあるし、
そこらのボディガードと互角か、それ以上の力を
彼は持っている。
ただ、それでもー、”普通に護衛”するだけなら、
”闇の壁”の異名を持つ彼に依頼すれば
無駄に費用を使うことになってしまうー。
「ーーえぇ、分かっていますー。
実はー」
屋敷の主・源三郎はそう言葉を口にすると、
「ー予告状が届いたんですー。
犯罪組織アビスからー」と、
そう続けたー。
「ーーー」
”闇の壁”の異名を持つ彼は、その”予告状”を確認するー。
そこには、
”必ず娘を貴様の手から奪い取ってやるー
どこにいようとも”
と、そう書かれていたー。
「ーーー……」
そこには、日付が刻まれていて、
髑髏のマークが刻まれているー。
「ーーなるほど」
”闇の壁”の異名を持つ彼は、静かにため息を吐き出す。
「ー警察には?」
彼は、そう尋ねる。
ここまで日付を指定してきてるとなると、
警察にも訴えることができるのではないか?と、純粋にそう指摘する。
が、源三郎は「いえ…それは」と、歯切れの悪い返事をするだけだった。
確かに、”犯罪組織アビス”は、警察でも手を焼く組織だ。
しかし、予告状を送って来ている以上、
アビス本体をどうこうすることは出来ずとも、
その日、身を守ったり、その件に関して捜査してもらうことは
できるはずだー。
が、何か事情があるのだろうかー。
”ーーーー”
闇の壁の異名を持つ彼は、少しの間、考えるような表情を浮かべるー。
”犯罪組織アビス”は、厄介な組織だ。
もちろん、その場でお嬢様を守り抜く自信はある。
が、その日守り抜いても、アビスの組織力であれば
次の日、また次の日と、何度でもお嬢様を狙ってくるかもしれない。
「ーーーー」
それでもーー
”危険な仕事”であってもー…
「ーーー」
”闇の壁”の異名を持つ彼は、源三郎の娘である姫奈の写真を見つめるー。
その写真にはどこかー”美音”の面影があったー。
「ーーー……分かりました。やりましょう」
”闇の壁”の異名を持つ彼は、その仕事を引き受けたー。
犯罪組織アビスが絡んでくる仕事となると、
非常に難易度は高くなるー。
そして、自分自身もこの先、アビスに狙われるリスクも高まる。
それでも、彼はその仕事を引き受けたー。
「ーーただし、”俺の力”を使う以上は、
本人にも承諾を取らなくてはいけない。
勝手に身体を使うわけにはいきませんからね」
”闇の壁”の異名を持つ彼が、そう言葉を口にすると
「えぇー。もちろんです」と、依頼人の男・源三郎は
そう言葉を口にするのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
護衛対象に直接憑依して、
護衛するボディガードの男の物語デス~!!!
どんな風になっていくのかは、②以降の
お楽しみデス~!!
今日もありがとうございました~!!★

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