<憑依>消費期限切れの憑依薬③~終点~(完)

②にもどる!

消費期限切れの憑依薬を使ってしまったことで
起きた異変ー。

”大丈夫だろう”と、消費期限切れの憑依薬を使った者たちに
次々と襲い掛かる”副作用”の結末はー…?

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「う~~~~!あ~~~~!!!」
詩織が、奇声を上げながら、病室内で
身体をじたばたとさせているー。

その様子を見つめながら、彼氏の和幸は
困惑の表情を浮かべていたー。

彼女である詩織は、”消費期限切れの憑依薬”を使った男に
憑依された影響で、脳に異変が生じ、
靄が掛かったような状態となり、
正常に思考が出来なくなってしまったー。

もはや、詩織本人も、詩織に憑依した男も、
何が何だか分かっていないー、
そんな状態が続いているー。

「ーーー詩織ーーーー…どうして、こんなことにー」
笑いながら、赤ん坊のように足をばたばたさせている詩織を見て、
元の詩織を思い浮かべる和幸ー。

しかし、”消費期限切れの憑依薬”で”破壊された部分”ー、
そして”異変が生じた部分”は、もはやどうすることもできなかったー。

そして、和幸は彼女の詩織が”憑依”された挙句、
その際に使われた憑依薬が消費期限切れの憑依薬だったために
”こう”なってしまったなどということは
夢にも思わずに、和幸からしてみれば
”突然”おかしくなってしまった詩織のことを只々案じることしかできなかったー。

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「ーーー…なんでわたしの部屋にこんな服があるんだろうー…」

明美は、困惑の表情を浮かべながら
自分の部屋にあるバニーガールの服を見つめていたー。

これは”明美に憑依した男”が明美の身体で楽しもうと購入したものー。

しかし、”消費期限切れの憑依薬”による副作用で、
自分を明美だと思い込んでしまった彼は、
それを思い出せなくなってしまっていたー。

バニーガールの服のことを親にも言い出せず、
必死に隠しながらそれを処分することに成功した明美は
ため息を吐き出すー。

「ーーこれで、大丈夫だよねー?」
戸惑いながらも、安堵の表情を浮かべた明美は、
そのまま”普段の日常”へと戻っていくー。

本来の明美は”憑依”されたままで既にその意識は表には出ていないー。
そして、明美に憑依した男も自分を明美だと思い込んでしまっていて
もう、元には戻れないー。

本来の明美のような振る舞いをしているけれど、
”それ”は、もう明美でもなく、憑依した男でもない、
そんな存在になってしまっていたー。

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「ーー残念ながらーー」

医師は、路上で倒れて緊急搬送ー、
そのまま目を覚ますことなく命を落としたOLの真理恵(まりえ)の
親族に、そう言葉を口にしていたー。

”加恋”に憑依した健吾が学校に向かう途中にすれ違った
”嘔吐していたOL”だー。

OL・真理恵に憑依した男も、”消費期限切れの憑依薬”を使った男ー。
しかも、彼の場合は消費期限切れの憑依薬を使ってしまったことによる
副作用が非常に強く、最悪な形となって出て来てしまったー。

憑依されたOLの身体の全身が強い拒絶反応を起こして、
全身に異常が発生、そのまま死亡してしまったのだー。」

「ーーー…真理恵ー…どうしてー」
真理恵の姉は、急死してしまった妹の”真実”に
たどり着くことはないまま、悲しそうな表情を
浮かべることしかできなかったー。

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”おい!何でこうなる!?くそっ…!くそおおおおお!!!!”

憑依薬の販売業者の所在地を突き止めて、
憑依したまま、その業者にクレームを入れに行っていた男はー、
”立場が逆転”していたー。

元の身体の持ち主の意識が消えず、頭の中でずっと騒がれている状態だったものが
いつしか身体の主導権が逆転ー。

憑依された側である千穂(ちほ)が、自分の身体の主導権を
取り戻して、憑依した側の男が、
奥底に追いやられて、頭の中で騒ぐことしかできない
状態になってしまっていたー。

「ーーいい加減静かにして。わたしは、あなたのものじゃないの!」
千穂がそう反論すると、
男は”くそっ!お前に憑依したんだから、お前の身体は俺のものだ!”と、
内側から怒りの形相で反論するー。

しかし、男はやがて、内側から”騒ぐ”ことすらできなくなって、
この半月後には完全に”消滅”してしまうのだったー。

憑依した側が、身体を支配するどころか
飲み込まれてしまうという、
そんな結末を迎えてしまったー…。

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「ーーぐ…ぐぐぐぐぐ…
 なんだよこれー…?」

一方、加恋に憑依した健吾の”異変”はさらに進んでいたー。

加恋の身体が、まるで”健吾”のように変化し続けていて、
日に日に、それが悪化していたー。

「ーおいっ!!くそっ…!くそっ!!!ふざけんなー!!!」
さらに毛深くなった足を見つめながら、
自分の足を怒りに任せて叩くー。

さらには、元々中年太りしていた健吾の体格に合わせるかのように、
加恋の体重が急激に増え始めたー。

1日に2,3キロのペースで増えていて
明らかにおかしいー。

「ーー加恋ー最近、全然何も食べてないけど、大丈夫?」
加恋の母親が、そう言葉を口にするー。

加恋は「うるさい!!わたし口出しするな!」と、
苛立ちを露わにするー。

最初でこそ、”加恋のフリ”をしていた健吾ー。
しかし、最近は”身体が変化している”状況に
頭がいっぱいで、もはや他のことを考える余裕がなくなっていたー。

「少しは食べないとー…」
加恋の母親がそう呟くと、
加恋は「ー太りたくないんだよ!!お前は黙ってろ!」と、
鬼のような形相で言葉を口にするー。

「くそくそくそくそくそっ!!!!!」
食べる量を減らしても、体重の増加が止まらないー

ガリガリと頭をかきむしりながら、
爪をガリガリと齧る加恋ー。

「ーー何でこんなことにー…?何でこんなことにー…?」
加恋はそう言葉を口にしながら、
”何とかしないと”と、頭をフル回転させていくー。

がー、その翌日から、今度は”顔”が変化し始めたー。

「ーーおい…!!!おいっ!ふざけんな!!」
加恋は怒りの形相で自分の頬を引っ張るー。

しかし、その顔には”健吾”の要素が混じり始めて
急激にその可愛さは色あせて行くー。

中年太りと、不規則な生活が原因でかなり太っていた健吾の
体格を反映してか、身体がみるみるだらしなくなっていき、
既に小太りな状態になってしまった加恋ー。

「ーーーごめんねー。わたし、別に予定が入っちゃってー」
クラスメイトの”お気に入り”の子であった凛香も
最近は急に冷たくなってしまったー。

不自然に健吾の要素が混じり、醜悪になっていく加恋にー、
そして、容姿が乱れ始めたことで、
精神的な余裕を失い、常にイライラしているような振る舞いを
見せるようになった加恋に愛想を尽かしてしまったのかもしれないー。

「ーーう、嘘をつくなよ!わたしと遊びたくないんだろ!?」
加恋がそう叫ぶと、
凛香は「ーーーそういうところ」と、不満そうに呟くー。

「ーー最近、ずっとピリピリしてるんだもんー。
 一緒にいると、疲れちゃう」
凛香はそれだけ言うと、加恋に背を向けて立ち去っていくー。

「ーーーふざけんな!」
一人残された加恋は教室にあった机を蹴り飛ばすと、
一人で爪を齧りながら、苛立ちを露わにしたー。

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部屋の中でポテトチップスを貪る加恋ー。

”何をしても”太っていくー。
そんな状態に自暴自棄になった加恋は、
不摂生な生活を送るようになっていたー。

「ーー加恋ー…学校は行かないのー?」
部屋の外から心配そうに母親が声を掛けて来るー。

「ーーうるせぇ!黙ってろ!!!」
声も、男の声が混じったような奇妙な声になってしまった加恋ー。

両親は急激に太ったから、と、そう思っているものの
実際には違うー。

消費期限切れの憑依薬を使ったことによる
”副作用”によるものだー。

怒りの形相を浮かべながら、
加恋に憑依する前に好きだった深夜アニメを録画して
それを再生する加恋ー。

胸はそのままであるものの、
身体の色々な部分に”健吾”の要素が混じり、
不気味な容姿になってしまって、
学校にも行くことができなくなってしまったー。

「ーーへへへへ…へへへへー」
すっかり乱れ切った様子のまま、深夜アニメを
ニヤニヤしながら見つめる加恋。

そこには、もはや”元の加恋”の面影など
どこにもないと言ってもいいー。

「ーーー」
アニメを見終えると、自分が
”加恋でも健吾でもない化け物”であることを思い出して
苛立ちを覚えるー。

姿見を見ると、
そこには”中途半端に健吾であり、中途半端に加恋である”
そんな自分の姿があったー。

顔立ちは、健吾と加恋が混じったような顔にー。
髪は傷んで、少し薄くなっているー。
元々、健吾は既に髪が薄くなり始めていたために、
恐らくはそれが加恋の身体にも出て来てしまったのだろうー。

体格は中年太りと不摂生な生活で太っていた健吾の体格に
近い感じになるようにか、みるみるうちに太り、
手も健吾のような感じの手になっている。

一方、足の形は加恋のものそのものであるものの
毛深くなってしまっていて、
どんな手段を使って毛を落としても、また少しすると
生えて来てしまうー。

胸は加恋のままー。
アソコも、女の身体のままではあるものの、
全体的に加恋と健吾の要素が頭から足元まで
混じってしまっているー。

「ーー……こんなふざけた見た目なら、いっそのこと
 元に戻れた方がいいぜー…」
加恋は自虐的にそう言葉を口にすると、
大きくため息を吐き出したー。

このまま変異が続き、加恋の身体が”健吾”そのものになれば、
健吾はまた、健吾として生きていくことができるー。

今の状態ではもう、加恋として楽しい女子高生ライフを送ることも
できないし、かと言って元の人生を歩むこともできない。
どうせなら、自分が健吾なのか、加恋なのかはっきりしてほしいー。

”ー完全に”俺”になるまで耐えるしかねぇかー”
加恋に憑依した健吾は、心の中でそんな風に呟くー。

しかしー、加恋に憑依した健吾の”異変”は、
最後にある変化を生じたところで止まったー。

それはーーー
男であることを示す棒ー…
それが”生えてきた”ことだったー。

けれど、異変はそれを最後に止まったー。

胸は女のままー
でも股間は男の状態ー。

声や顔は混じったままで、
足は女の足なのに、毛は男のようなものーー
そんな状態ー

「くそっ!ふざけんなーー!!!
 どっちになるのかハッキリしろ!!!」
加恋は怒りの形相で鏡に向かってそう叫ぶー。

部屋の中で怒り狂って暴れ回る加恋ー。

「ーやめて!!加恋!!」
母親は”狂ってしまった娘”を前に必死に暴れる加恋を止めようとするー。

「ーどけ!!!」
加恋に突き飛ばされた母親が壁に腰を打ち付ける中、
健吾としても、加恋としても、男としても、女としてもー、
全てにおいて中途半端になってしまった加恋は、
家中が滅茶苦茶になるまで暴れ続けたー。

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「ーーどうしてそんなミスをしたんだ!」
憑依薬を販売していた業者の社長が
呆れた表情でそう言葉を口にするー。

「も、申し訳ありませんー
 確認を怠っておりましたー」
社員が青ざめた表情を浮かべながら
そう言葉を吐き出すー。

”消費期限切れの憑依薬”を販売していた業者ー。

しかし、消費期限切れを販売していたのには
”何か目的”があったわけではないし、
廃棄するのがもったいないからと、
意図的に消費期限切れの憑依薬を販売したわけでもないー。

消費期限切れの憑依薬を販売したのはー
”純粋な確認ミス”ー。
それ以上でも、それ以下でもないー。

そして、消費期限切れが届いたことに
気付きながらも欲望が勝りそれを使ってしまった者たちと、
そもそも消費期限切れに気付かずに使ってしまった者たちに
悲劇が降り注いだー。

「ーーー…とにかく、これ以上騒ぎになると困るー。
 ”隠蔽”するのだ」
社長がそう言葉を口にすると、
消費期限切れを出荷してしまうというミスを犯した社員は、
静かに頷いたー。

その後、”消費期限切れ”の悲劇は
隠蔽され、”ミスをした社員”もまた、消息を絶ったのだった。

おわり

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コメント

消費期限切れの憑依薬の
トラブルを描く作品でした~★★!

こういう大事なものは特に
ちゃんとしたものを使わないとですネ~!!

お読み下さり、ありがとうございました~~!!

「消費期限切れの憑依薬」目次

作品一覧

コメント

  1. 匿名 より:

    消費期限切れの薬の話、憑依薬版でも、面白いですね~☆

    憑依した側もされた側も、どちらも破滅してたり、憑依された側が助かったり、一応、乗っ取りには成功したりと、4者4様の異なる副作用、展開で実に楽しめました!

    ところで、千穂の話、単純に逆転して憑依者が消滅じゃなくて、二心同体で共存みたい展開でも、面白かったんじゃないかと、いう気もしますね。

    あと、単純に消滅して終わりではなく、後から千穂の精神がじわじわと自分の中に吸収した憑依人に影響されて精神男性化みたいな展開も面白かったんじゃないかという気もします。明美とは逆に、自分が憑依人の男だと千穂が思い込んだりするとかみたいな。そういう感じの続編がいつか見れたらとても嬉しいです☆

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!★
      憑依版を描くきっかけを下さって感謝デス~!
      (もし、あの時コメント下さった方と別の方でしたらごめんなさい~!★笑)

      消費期限切れの結末は
      まだまだ色々描けそうなので、
      また描く機会があれば描いて見たいデス~!!