<憑依>辻斬り少女~妖刀再び~(中編)

怨念宿る”妖刀”ー。

現代社会に潜伏し、暫くの間、
休んでいた”それ”は、再び血を求めて暗躍し始めたー。

悲劇を止めることは、できるのかー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーっ…」
警察官の栄治は、表情を歪めながら
数時間前に通報のあった”遺体”の発見現場にやってきていたー。

「ーーくそっー。また”例の刀”の仕業かー」
険しい表情を浮かべる栄治ー。

遺体となっていたのは、尚子という女性ー。
趣味でバンドをやっていた大学生のひとりで、
先日、”妖刀”・黒霧に乗っ取られたまま姿を消し、
今朝、遺体となって発見されたのだったー。

笑みを浮かべたまま息絶えている尚子ー。
恐らくは、黒霧に乗っ取られたまま
自ら命を絶ったのだと、栄治はそんなことを思いながら
ため息を吐き出すー。

「ーーこれ以上、あの刀を野放しにするわけにはいかないー」
栄治はそう言葉を口にしながらも
”どうすればあの刀を止めることができるんだー?”と、
内心でそんな焦りを感じながら、歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

病院ー

”黒霧”は、そこにいたー。

病院に勤務している女性看護師・愛実(つぐみ)を乗っ取り、
”自分自身”が入ったケースを手に、笑みを浮かべながら
”目的地”へと向かうー。

この”愛実”という女に、妖刀・黒霧は興味はなかったもののー、
”目的を果たすため”には、この女の身体はうってつけだったー。

「クククーーーここか」
愛実は邪悪な笑みを浮かべると、
その病室をノックするー。

そこには”片目”を失明し、
”精神的なショック”から立ち直れず
入院している女子高生・北森 沙綾香の姿があったー。

”妖刀”・黒霧に宿る怨念が、
刀を介して最初に”憑依”した子だー。

彼女は、黒霧から解放された後、
乗っ取られた間に片目を失明しただけではなく、
自分がしたことを知り、その強いショックから
精神的に立ち直れないまま、入院を続けていたー。

最近は、”ほんの少しずつ”、以前よりかは
精神的に安定し、
まだまだ不安定ではあるものの、
わずかに回復の兆しを見せている状態だったー。

がー、妖刀・黒霧はそんなことお構いなしだったー。

「ーーーあ、あのー…?」
沙綾香が、看護師の愛実が病室に入ってきて、
大きなケースを手にしたままニヤニヤしているのを見て、
不安そうに言葉を口にするー。

すると、愛実は不気味な笑みを浮かべて言葉を口にしたー。

「ーー剣客はなー、
 最初に”使った”刀に愛着を抱くんだー。

 その後、どんなに多くの”刀”を振るおうとも、
 最初に振るった刀の切れ味や振るい心地は忘れられないー」

愛実のそんな言葉に、沙綾香は「か…刀ー?」と、
途端に怯えた表情を見せるー。

妖刀のせいで、親友の命をこの手で奪い、
数多くの罪を重ねた上に、片目まで失ってしまったー
そんな沙綾香にとっては、それがたとえ妖刀でなかったとしても、
”刀”を見ることも、”刀”という言葉を聞くことも、
トラウマでしかなかったー。

「ーーそう。刀だー。
 ”刀”に宿る怨念の集合体になった俺にとっても同じー。

 最初に”俺”を震わせた人間の”使い心地”が忘れられないー」

愛実はそう言うと、
持っていた大きなケースから、妖刀・黒霧を取り出したー。

「ーーひっ……」
沙綾香は心底怯えた表情を浮かべると、
そのまま逃げ出そうとするー。

がー、強引に腕を掴まれると、
邪悪な笑みを浮かべた愛実に刀を無理矢理掴まされて、
沙綾香は”刀”に再び魅了されていくー

「あ……い、いやっ…」
沙綾香が必死に刀から手を放そうとするも、
妖刀・黒霧から目を離すこともできないし、
手も言うことを聞かないー。

「ーーククーー」
看護師の愛実がそれだけ言葉を口にすると、身体から黒い霧のようなものを
発して、その場に倒れ込むー。

それが、妖刀・”黒霧”に戻って行きー、
さらには、黒霧を通じて、沙綾香に怨念が”憑依”していくー

「ぁーーーぁ…ひひ…ひひひひひひひ」
目に涙を浮かべながら笑いだした沙綾香は、
「やっぱり、この身体だー」と、そう言葉を口にすると、
刀を握りしめて倒れ込んだ愛実を見つめるー。

「ー”俺”の輸送、ご苦労さんー」
沙綾香はそう呟くと、愛実に刀を突き立てて、
返り血を浴びながら、興奮した様子で笑みを浮かべるー。

刀を手に、自分の身体を少し弄ぶと、
「ーククー」と、満足そうに笑ってから、刀で病室の窓ガラスを割り、
2階から飛び降りて、沙綾香はそのまま姿を消してしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーくそっー…またかー…」
通報を受けて病院に駆け付けた栄治は、
妖刀・黒霧に乗っ取られていた愛実の遺体を発見して
表情を歪めるー。

「ーーーこうなったらー」
そんな風に呟きながら病室の外に向かおうとすると、
そこに、重装備の捜査官たちが姿を現したー。

「ーー…ーあ、あなたたちはー?」
栄治が戸惑いながらそう言うと、
「ー我々は、目黒(めぐろ)警視正の元、特別に組織された
 ”妖刀対策チーム”だー」と、リーダーらしき男が
ヘルメット越しにそう言葉を口にしたー。

「ーーよ、妖刀対策チーム?」
栄治は戸惑いの表情を浮かべながらそう聞き返すー。

すると、顔を確認することもできない
重装備の隊長らしき男は
「一般の捜査官が出る幕ではないー。お前は手を引け」と、
高圧的にそう言葉を口にすると、
そのまま、”妖刀”に乗っ取られて姿を消したと思われる
沙綾香のいた病室へと入っていたー。

「ーー鬼道(きどう)さんー」
部下らしき重装備の男がそう言葉を口にすると、
「見つけ次第、妖刀を”破壊”するー。”器”ごと破壊しても構わないとの
 命令だー」と、隊長の男・鬼道 仁(きどう じん)は、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーじゃ、また明日!」

とある高校ー。
剣道部の”部長”である三島 健司(みしま けんじ)が、
部員の一人に手を振って、そのまま道を歩き始めるー。

が、家に向かう途中のトンネルに入ったその時だったー。

「ーーーそこの高校の剣道部の部長だなー?」
”眼帯をした女”が刀を手に、姿を現すー。

「ーーー…き、君はー…?」
刀を手にした”同じぐらいの年齢の女”の出現に
戸惑いながらも、健司はそう言葉を口にすると、
「ー妖刀・黒霧ー」と、黒霧に乗っ取られた沙綾香は
そう名乗りを上げたー。

「ーよ、妖刀ー!?」
健司は表情を歪めるー。

妖刀・黒霧に身体を乗っ取られるー。
そのこと自体は、あまり公にはされていないものの、
ネット上では既に噂となり、拡散されていて、
健司もそのことは知っていたー。

「ーーークククー”血”を見せてくれー」
前に乗っ取られた際に失明した片目を眼帯で隠している状態の
沙綾香が笑みを浮かべるー。

元々、沙綾香は眼帯をしていなかったものの、
再び乗っ取ったあとに、この方が”剣客”らしくなるー、という
妖刀・黒霧の怨念の”趣味”で眼帯を身に着けているー。

「ーー……ーーー」
ゴクリ、と唾を飲み込む健司ー。

「ーその子はーーー…お、お前が”乗っ取って”いるのかー?」
健司が、剣道部で使っている木刀を手にすると、
”ネットで見た話が本当なら”と、そう思いながら言葉を口にするー

「そうだー」
沙綾香は笑みを浮かべながら、そう答えるー。

「ーーーぐ…」
健司は、一瞬逃げようかと思ったものの、
”こんなに子を乗っ取るなんてー”と、持ち前の正義感からか
木刀で、”黒霧”をなんとか沙綾香の手から離させるかー、
あるいは沙綾香を気絶させようと考えるー。

「行くぞー」
乗っ取られた沙綾香が向かってくるー。

健司は、剣を容赦なく振るってくる沙綾香に応戦するー。

がーー
”この子は、この変な刀に乗っ取られているだけなんだー
 この子を、傷つけるわけにはいかないー”

優しい性格の健司は、自分が持っているのが木刀とは言え、
沙綾香を直接攻撃することを躊躇ってしまったー。

”なんとか、あの剣を落とさせることができればー”
そう思いながら、沙綾香の手と剣の部分を狙って
攻撃を仕掛けようとするー。

しかしーーー

「ーークククー戦いに”迷い”が見えるぞー?
 そんな戦い方では、剣と剣のぶつかり合いー
 死をかけた”死合”には勝つことはできんぞー?」

沙綾香は笑みを浮かべながらそう言うと、
”沙綾香を助けること”しか考えていなかった
剣道部部長・健司の隙をついて、その木刀を叩き斬るー。

「ーーー!!!」
健司が驚いた様子で、沙綾香のほうを見つめると、
「ーーもっと強い奴の血が欲しいー」と、沙綾香は邪悪な笑みを浮かべて
容赦なく、健司をその場に斬り捨てたー

返り血を浴びて、気持ちよさそうに身体を震わせる沙綾香は、
そのまま闇の中へと姿を消していくー。

そして、その翌日ー。
近くの別の高校の剣道部部長・大利根 明日香(おおとね あすか)の前に
姿を現すと、
沙綾香は、その子にも”勝負”を挑むー。

「ー我が名は”黒霧”ー」
沙綾香は、自分の名前ではなく、手にしている妖刀の名前を名乗ると、
明日香に向かって笑みを浮かべるー。

「ーーー…ーーーあ、あなたはいったいー?」
明日香は”妖刀”の噂を知らないのか
戸惑いながらも、木刀を手にすると、
そのまま襲い掛かって来た沙綾香に立ち向かうー。

しかしー、先日戦った健司よりも、明日香は
実力的に劣っていたのか、あっという間に斬られてしまい、
血を流しながら地面に手をつくー。

「ーおいおい、
 こんな腕前で師範きどりかー」

江戸時代の怨念の集合体である”黒霧”は、
沙綾香の身体でそう言葉を口にするー。

現代に潜伏し、現代の知識をそれなりに得たとは言え、
やはり、まだ完全ではなく、
”部活動”という概念をそんなに理解できておらず、
部活動の”部長”は、道場の師範とか、
そんな感じの存在だと、黒霧は考えていたー。

「ーーわ、わたしはー…」
明日香は苦しそうにしながら顔を上げると、
沙綾香は容赦なく明日香に刀を振り下ろし、
気持ち良さそうに返り血を浴びるー。

”道場破り”ならぬ、”部活破り”を始めた沙綾香ー。

やがて、警察側もその情報をキャッチし、
”妖刀対策班”を設置した警視正・目黒が、
チームに”指示”をするー。

しかしーーー

「ーーークククククー」
沙綾香は旨く、妖刀対策班を潜り抜けて、
”部活破り”を続けていたー。

「ー俺は”江戸時代”を生きて来たんだー
 あの時代の殺るか、殺られるかの時代を生きて来た
 ”俺たち”とお前らでは、潜り抜けてきた修羅場の数が違うー。」

沙綾香はニヤニヤとしながら、そう言葉を口にすると、
今日のターゲットである、南地区にある高校の
剣道部部長・東 重行(あずま しげゆき)の前に姿を現したー。

「ーーー!」
鋭い目つきの男子高校生ー
彼は、この地区の剣道部の大会で”準優勝”している実力者だー。

「ーーーお前が噂のー」
重行は、乗っ取られた沙綾香が名乗る前から、
沙綾香のことを理解したのか、そう言葉を口にするー。

「ーークククー知っているのかー
 そうだー俺が”黒霧”だー」
沙綾香は自分の名前ではなく、刀の名前を名乗ると、
眼帯に少し手を触れながら笑みを浮かべるー。

「ー女の身体を使うなんてー、大した変態だな」
重行はそう言うと、自分の”刀”を手にするー。

もちろん、重行の持つのは”木刀”ー
それでも、全く怖気づく様子もなく、
重行は自信に満ちた目を浮かべているー。

”こいつー、強いなーだがー”
沙綾香は内心でそう思いながら、
重行を見つめると、
「どうせ、誰かの身体を乗っ取らなきゃ、俺はこの時代で活動できないー
 だったらードキドキした方が楽しいだろー」と、
沙綾香は剣を手に、そのまま重行の方に向かうー。

がー、重行はーー
接近してきた沙綾香に足を引っかけると、そのまま沙綾香を
転倒させるー。

「ー本来、こんなのナシだけどー、
 人の身体を乗っ取るような奴にルールなんて無用だよな」
重行はそう言うと、沙綾香を”失神”させるために、
急所を狙って木刀を叩き込んだー

「がっー」
沙綾香が白目を剥いて、そのまま崩れ落ちるー。

「ーー気絶させて、その間に刀をどうにかすりゃ、
 この子も助けることができるだろ」
重行はそう言葉を口にすると、気絶した沙綾香に近付いていき、
妖刀・黒霧を見つめるー。

がーーー
その時だったー。

「ーー!?」

<後編>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

なんだかとんでもないところで切ってしまいましたケド、
毎週火曜日は予約投稿で書いている都合上、続きは来週デス~!!

次回が最終回なので、楽しんでくださいネ~!!

今日もありがとうございました~!

PR
憑依<辻斬り少女>

コメント