<憑依>辻斬り少女①~妖刀~

妖刀ー
”黒霧”

幕末の怨念が、その刀に宿っていると言われている。

そんな刀を手にしてしまった女子高生の物語ー。

死にたくない…

死にたくない…。

幕末ー。
世の混乱に乗じて、盗みや詐欺を働いていた男は、
”辻斬り”に襲われて、血だらけになって
横たわっていた。

しばし、この時代には、道端で武士や
浪人が、人を斬る行為ー
辻斬りが行われていた。

己の信じる正義のために人を斬るものもいれば、
意味もなく人を斬る者もいる。

この辻斬りはー
”意味もなく人を斬る”男だった。

幕末と言う時代への不満かー。
男の使っていた刀は、血に染まり、
その血が固まり、黒ずんでいたことからー
”黒霧”と呼ばれていたー。

時は流れ―

辻斬りの男は死んだー。
その男が使っていた刀も、いずこかへと消えたー

そしてー
現代ー。

「---今日の数学のテスト、難しかったよね~!」
ポニーテールと眼鏡が良く似合う
可愛らしい女子高生・北森 沙綾香(きたもり さやか)が言う。

「本当だよね~」
親友の剣道部副部長の少女・倉谷 鈴子(くらたに すずこ)が
笑いながら言う。

「あの先生、試験範囲で宣言したところの外からも
 問題出すから困っちゃうよね~」
鈴子が言う。

数学教師の川原田先生は、
何故か試験範囲と宣言したところ以外からも問題を出す。
わざとなのか、年のせいでボケていいるのかは分からない。

「---あ、そうだ!そんなことより…!」
鈴子が笑いながら沙綾香の方を見た。

「ーー剣道部の後輩が言ってたんだけど、
 学校の裏にある山林の中で、刀みたいなものを
 見つけたんだって!」

剣道部副部長の鈴子が目を輝かせながら言う。
ショートヘアーで、活発そうな彼女は
見た目通り活発で、”剣道部のエース”でもある。
そして、無類の刀好きなのだ。

「---へ~刀が?
 そんなことあるんだ~」

沙綾香がほほ笑みながら言う。

剣道部の後輩が、山林で虫取りをしていたところ、
山林の奥に刀が安置された祠のようなものを
見つけたのだと言う。

「ねぇ、沙綾香~!
 このあと時間ある?」
鈴子が言う。

「え…あ、あるけど?」
沙綾香が言うと、
鈴子はにっこりとほほ笑んだ

「その刀、見に行こうよー」

沙綾香は、「え~」と言いながらも
目をキラキラと輝かせている親友を見て
「仕方ないなぁ」とほほ笑んだ。

部活で使った木刀を背に背負いながら、
鈴子は、”謎の刀”を拝むために、
山林へと向かったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

山林地帯にやってきた二人。

今日は試験日だったから、
学校は昼前に終わったから
まだ、周囲は明るい。

「--ねぇ~、鈴子!もう疲れたよ~」
沙綾香が言う。

真面目で大人しい沙綾香と活発な鈴子。
二人は小学生時代からの付き合いで、
性格は違えど、互いを補い合うような親友だった。

小さいころから、鈴子にはよく振り回されている。
今日も、そうだー。
沙綾香としては、明日もテストがあるから、
早く帰って勉強したいのだが、
親友・鈴子の頼みをついつい聞いてしまい、
こんな山奥に、怪しい祠に祭られている刀を探しに来たのだ。

「--確か、この辺って言ってたかな。
 水が流れてるところって言ってたから」
鈴子がそう言いながら周囲を見渡す。

「あ~あれかな?」
鈴子が指をさした方向には、祠のようなものがあった。

二人が、祠に近づくと、
そこには、黒く輝く刀が置かれていた。

「--うわぁああああ~かったな~~~!
 かっこいい~!」
鈴子が興奮した様子でその刀を見つめる。

「--誰が置いたんだろう?」
沙綾香が不思議そうにつぶやく。

沙綾香はこの祠を知っていた。
前に、沙綾香が所属する美術部の活動で
スケッチのためにここに来たことがあるが、
そのときは”刀”はなかった。

「---確かにね~
 こんな立派な刀なのに」

鈴子が言う。
その刀の輝きは、魅力的だった。

刀を嬉しそうに見つめる鈴子。
沙綾香はやれやれ、という様子で
背後からその様子を見ていた。

「---!?」
その時だった。
刀の輝きから、沙綾香は目を離せなくなった。

「-------…」
とても魅力的な輝き。
吸い込まれそうな感覚を味わいながら
沙綾香は歩き出した。

「---すっごい刀だな~
 誰のなんだろう~?」
鈴子が刀を拝むようにしていると、
沙綾香が後ろから近付いてきた。

そしてー
沙綾香が、刀を手にした。

「---沙綾香?勝手に触るのはまずいんじゃ…?」
鈴子が苦笑いしながら言うと、
沙綾香が突然刀を鈴子の方に振ってきた。

「---って、ひぃっ!?」
鈴子がなんとかそれを避けると、叫んだ

「ちょっと!沙綾香!危ないじゃない!
 何するのよ!!」
鈴子が叫ぶと、
沙綾香が「あ・・・うあ・・・あ」と奇妙な声をあげた。

「ーーあ・・・ああ…鈴子…
 た、、、助けて…身体が・・・勝手に…」
沙綾香の言葉に、鈴子は「冗談はよしてよ!」と
言おうとしたが、沙綾香の表情を見て、その言葉を止めたー。

沙綾香の表情は冗談を言っている様子などではなく、
本気で青ざめていた。

「あ・・・あ・・・」
沙綾香が次第にうつろな目になっていき、
ゾンビのように、襲い掛かってきた。

「きゃぁ!」
鈴子は、思わず悲鳴をあげた。

そしてー
手に傷が出来て、そこから血が流れ始めた。

「---ひっ!」
鈴子は恐怖した。

沙綾香の握っている剣は、本物だー。
剣道部の試合とは違うー。

「---かまえろ・・・」
沙綾香が、うわごとのように呟いた。

「---あ・・・あ・・・あ」
身体がビクンビクンと震えている。

そしてー
その刀―”黒霧”からは、
黒い煙のようなものがあふれ出し、
沙綾香の耳や鼻、口から、沙綾香の中に
入っていっていた。

「--や、やめてよ!沙綾香!ねぇ!」
鈴子は必至に叫んだ。

しかし、沙綾香はなりふり構わず
襲いかかってきた。

ーその動きは、
操り人形のようにぎこちなかった。

刀に、操られているのだろうか。

「--沙綾香…!」
鈴子は剣道部で使っている木刀を構えた。

沙綾香の手から刀を落とすことができればー、
沙綾香が正気に戻るかもしれない。

そう思った。

「---わたしを舐めないで!」
鈴子は叫んだ。

自分は剣道部のエースなのだ。
剣に操られているような、ゾンビのような
動きをしている状態の人間に、
負けるはずはない。

「--たあっ!」
鈴子は、剣道部のエースにふさわしい身のこなしで、
沙綾香を圧倒した。

「---うあぁあああ・・・ああ」
沙綾香が身体を震わしている。

剣を叩き落とそうと、鈴子は
懸命に闘った。

しかしー

「---はぁあぁっ!」
沙綾香がバック転をして、
鈴子の木刀をかわす。

スカートとポニーテールがふわりと風を切るー。

「--ふふふ…だんだん…馴染んできた」
沙綾香の口調がさっきよりもはっきりとしている。
動きが、操り人形のような動きではなく、
ちゃんとした人間の動きになってきた。

「---くふふ・・・今回の”器”は、
 イイじゃないか…興奮するぜ」

沙綾香がニヤリと笑みを浮かべる。

大人しい沙綾香が普段浮かべることない表情ー。

「--さ、沙綾香…!」
鈴子は恐怖しながらも、
沙綾香に向かっていく。

あの黒い刀を落とすことができれば…

黒い刀からは今も、謎の黒い霧のようなものが
溢れだしている。

そしてーそれが、沙綾香の体内に侵入している。

「--くくくくく…血だ…血を見せろ!」
沙綾香が叫んだ。

「---ふざけないで!」
鈴子が沙綾香の間合いに入るー

ーーー!?

さっきとは違う、
超人的な反応で沙綾香が、宙を舞う。

そして、
鈴子を斬りつけた。

「きゃああああっ!」
鈴子の身体から血が噴き出して、
木刀が、真っ二つに折れて地面に落ちる。

「あ・・・あ…」
鈴子が苦しみながら地面に蹲る。

「---ふふ・・・うふふ・・・♡」
沙綾香は嬉しそうに刀についた血を
舐めているー

「--これだ…この感覚…
 ヒトを…もっともっと人を斬りたい…」

興奮した様子で笑う沙綾香。

「--な…な…何者…なの?」
鈴子が沙綾香を睨みながら言う。

「--俺か?」
沙綾香がニヤっと笑った。

沙綾香は俺なんて言わない。
確実に何かに乗っ取られている。

「--俺はな、この刀自身…」
刀を見つめながら笑う沙綾香。

「--幕末…人を斬って斬って斬って斬って
 斬りまくった男がいてなー
 その男の邪念と、その男に斬られたものたちの
 怨念ー。
 その集合体だよ…うひひひひ」
沙綾香が表情を歪めて笑う

「もっと…もっと、人を斬りたい…」

沙綾香の表情には狂気が浮かんでいた。

鈴子は、身体を震わせる。

「--さ、、沙綾香を返して!」
鈴子が叫ぶと、沙綾香は自分の身体を
舐めまわすように触る。

「--イヤだね。
 この身体は、俺の道具だ^。

 昔は人間が俺を使った。
 だが、今は違うー
 俺が人間を使うんだよー。
 俺を振る為の道具としてな

 けひひひひひひ」

沙綾香はそう言うと、
鈴子の方を見て笑った。

「---ひっ…や、、やめて!」
鈴子が叫ぶ。

身体が動かないー
血が止まらないー

沙綾香はそんな鈴子に笑いながら近づいてくる。

「--やめて!ねぇ!沙綾香!!!沙綾香!!!」
大声で叫んだ。

だがー
刀の完全に乗っ取られている沙綾香には
そんな言葉、届かなかったー。

山林に、悲鳴が響き渡る。

「--ふふ・・・♡ ふふふふふ♡ うふふふふふ♡」
亡骸となった親友の身体を舐めながら、
血の味を味わった沙綾香は、
刀を舐めはじめた。

「--俺の身体を、掃除しなくちゃな」
沙綾香は嬉しそうに刀についた血を丁寧に
舐め終えると、刀を握りしめて、
亡骸となった鈴子を、近くで流れている水に蹴り飛ばした。

流れていく鈴子の亡骸。
それを笑いながら見届けると、
そのままその場所から立ち去った。

「--クク…斬りたい…斬りたい…斬りたぁいいい!!!」
沙綾香はそう叫びながら、街の方へと向かっていくのだった。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

刀に支配されてしまった沙綾香。
果たしてどうなるのでしょうか!

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憑依<辻斬り少女>

コメント

  1. より:

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    普通の子でこうなると、それこそ剣道部の娘だったら、考えるだけでも恐ろしい。
    剣道部エースが(敗因は本気を出せなかったのもあると思うが)、歯が立たなかったから止めるのは無理だが、もし阻止する人がいたら凄いと思う。まあその人も同じように乗っ取られたら意味無いが
    自分的に思い付いた方法はあるが結構ばくちだし難しいだろうなあ。こう言う場合自分はメガンテ的発想で、斬られたら憑依術発動みたいな呪いを自らに掛ける無茶したり。
    せめてか〇はめ波みたいに一撃で刀消し飛ばせれば良いんですけどねー

    あとリクエストになりますが、これとは違う感じで刀に憑りつかれるとエロくなるのを希望します。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます~
    リクエストもありがとうございます~!
    同じ刀モノなので、時期を空けて書くので
    気長にお待ちください~!