<入れ替わり>代わってあげることができるなら②~不安~

幼馴染が余命あとわずかだと知ってしまった男子高校生ー。

彼は、小さい頃にその幼馴染と足を運んだ
”何でも願いがひとつだけ叶う神社”で、
”代われるものならー…”とお願いしたところ、その子と入れ替わってしまいー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーー!!!!!」

直樹の身体になってしまった朱音は、
自分が入院している病院へとやってきていたー。

”いったい、どうなってるのー?”
そう思いつつ、直樹(朱音)は、
自分が入院していた病室の前までたどり着くー。

「ーーーーー」
”何が起きているのか分からない”

病室の扉を開けたら、
自分が死んでいる可能性もあるし、
普通に”いつも通り”に過ごしている可能性もあるー

色々なことを考えながら、病室に足を踏み入れると、
直樹(朱音)は、朱音(直樹)の姿を見つめて、
心底困惑した様子で、
「あ…あのーーー」と、そう言葉を口にするー。

そんな直樹(朱音)の姿を見て、
朱音(直樹)は「ーーあ…朱音ーーーーか?」と、
不安そうに言葉を口にするー。

朱音になった直樹にとっても、
”やってきた直樹の中身が朱音である確証はない”状況だったために、
恐る恐る、そう言葉を口にしたー。

「ーー…う、うんー…も、もしかして、な、直樹ー…?」
直樹(朱音)が言うと、朱音(直樹)は静かに頷くー。

「ーえっ…えっとー、こ、これ、どういうことー?」
直樹(朱音)は、心底困惑したような表情を浮かべると、
朱音(直樹)は「え、えっとー…そ、そのー」と、
目を逸らすー。

「ーじ、神社でお願いしたんだー
 ほ、ほらー…」

”ねぇねぇ知ってる?
 ここには神様がいて、満月の日の夜に
 ここでお願いすると、”ひとつだけ”何でも願いを叶えてくれるんだって!”
小さい頃、朱音がそう言っていた神社のことを話題に出す朱音(直樹)ー

「ーー…え…えぇ…?どうしてそんなことしたのー?」
直樹(朱音)が、困惑した様子で言うー。

「ど、どうしてってー…代わってあげたかったからー…」
朱音(直樹)はそれだけ言うと、
「ーーも、もちろんこんな風に身体が入れ替わっちゃうなんて
 思わなかったけど…でも、俺は朱音をー」
朱音(直樹)はそんな風に言葉を口にすると、
直樹(朱音)は「そんなことお願いしてないよー…」と、
心底困惑した様子で言うー。

お互いに、”目の前に自分がいる”という状況に
違和感を感じながらも、言葉を続けるー。

「ーーで、でも、俺は、朱音が元気でいてくれればそれでー!」
朱音(直樹)がそう叫ぶー。

”自分が死ぬ”ことへの恐怖はあるー。
けれど、それでも、朱音の前ではそれを見せずに、
代わってあげたいー、そんな風に思いながら、
「俺は大丈夫だからー」と、そう言い放つー。

「ーー何が大丈夫なの!?大丈夫じゃないでしょー」
直樹(朱音)は、さらに戸惑った様子を見せるー。

「ーと、とにかく元に戻る方法を一緒に探そ?」
直樹(朱音)は戸惑いながらそう言葉を口にすると、
朱音(直樹)は「い、いやー、それはダメだー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーだ、ダメって…じゃ、じゃあこのまま生活しろって言うの?
 直樹の身体でー?」
直樹(朱音)が、困惑しながら言うー。

「ーーそ、それはー…それは、ごめんー」
朱音(直樹)は申し訳なさそうに言葉を口にするー

”代わってあげたい”とは思ったけれど、
まさか身体が入れ替わるとは思わなかったー。

「ー直樹はわたしの身体で、
 わたしは直樹の身体でこの先暮らすってこと?」
直樹(朱音)は混乱しながら言うと、
朱音(直樹)は「ーーそれしか、ないと思うー」と、そう呟くー。

「ーー…えぇ…なんでー?
 元に戻る方法いっしょに探そー?
 もう一度、あの神社でお願いすれば元に戻れるかもしれないしー」
直樹(朱音)は、なおも食い下がるー。

けれど、朱音(直樹)は「ごめんー」と言い放つと、
「俺、もう決めたことだからー」と、そんな言葉を口にしたー

「こんな結果になっちゃったけどー、
 朱音の病気を代わってあげられてよかったー」
朱音(直樹)が笑うー。

「ーーーーーっ…」
直樹(朱音)は不満そうな表情を浮かべるー。

そんな直樹(朱音)を見て、朱音(直樹)は
「ーーー自分の好きなようにしていいからー、
 ーーあ、でもー、母さんと父さんには言わない方がいいかもー」
と、そう言葉を口にするー。

「ーーー……」
直樹(朱音)は不満そうな表情を浮かべたまま、
「分かったー」と、そう呟くと、そのまま病室を後にしたー。

「ーーーーー…」
朱音(直樹)はため息を吐き出すー。

ほんのー、ほんの少しだけー
”ちょっとぐらい感謝したり、心配してくれてもいいじゃないか”と、
そう思ってしまったー。

思った以上に”朱音”が嫌そうな感じだったこと、
”わたしに直樹の身体で生きて行けってこと?”と言った時にも、
とてもイヤそうな口調だったことを思い出しながらため息を今一度吐き出すー。

「ーーーー」
”朱音の手”を見つめながら、朱音(直樹)は悲しそうな表情を
浮かべると、「ーーはは…まぁ……身体を奪われるのっていい気はしないかー」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからー、二人は
ほとんど会うこともないまま、時は流れて行ったー。

「ーーーーーー!!!!」
”直樹”として高校に登校していた朱音は、
間違えて女子トイレに入ってしまい、
慌てて外に飛び出すー。

「ー~~~~~~~…よ、よかったー」
入れ替わってから約1ヵ月ー。
未だに”女子”気分で色々勘違いしてしまうこともあるー。

男子トイレに入るのも大分当たり前にはなっていたけれど、
考え事をしながらトイレに入ったりすると、今でも結構危ないー。

それにー、男子トイレに入っても
どうしても違和感があって、立ってすることはできないからー、
必ず個室に入ってトイレを利用するようにしているー。

「~~~……はぁ…」
直樹(朱音)は大きくため息をつくー。

”俺はもう決めたから”

元に戻るつもりはない、その方法を一緒に探す気もないー。
そう言われた時には、心底ショックを受けたー。
強い、不満も覚えたー。

「ーーわたしが苦しんでるのを見て、代わってあげようと
 思ってくれたことは、嬉しいけどー
 でもーー…こんなのーおかしいよ」

直樹(朱音)は不満そうにそう呟くー。

そしてーーー
トイレを済ませると、スマホでカレンダーを確認するー。

”もうすぐーーー”
直樹(朱音)は、”あること”を考えていたー。

それはー
満月の日ー…
朱音が小さい頃に”願いが叶う神社”だと教えたその場所にー、
朱音はもう一度足を運ぼうとしていたー。

直樹は、あの神社で”お願い”したら身体が入れ替わったと言っていたー。
だからーーー

「ーーーー」
”もう一度お願いすれば”元に戻れるはずー。

そう思いながらー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーはぁ…」

病院では、朱音(直樹)が大きくため息を吐き出していたー。

日に日に体調が悪くなっていくのを感じるー。
余命はあと1ヵ月ー、奇跡が起きても2カ月ー。

医師はそう言っていたー。

それを聞いたのは既に約1ヵ月前ー。

その言葉は大体あっていると実感せざるを得ないー。

「ーあ~~~……くそっー」
朱音(直樹)は不満そうにそう呟くー。

別に、感謝されたかったわけではないー。
同情してほしかったわけでもないー。
”口だけ”だったわけでもないー。

怖いけれど、朱音の代わりになれるなら
死ぬ覚悟は、できていたー。

でもーーー

「ーーー俺のこと、”都合のいい幼馴染”にしか
 思ってなかったのかなー」

朱音(直樹)はそう呟くと、
不満そうに”こうしてやる!”と言わんばかりに
朱音の胸を少しだけ揉むー。

が、すぐにため息を吐き出して、
”まさか”あれ以降一度も何も言って来ないとは思わなかったー、
と、そんなことを思うー。

そう、入れ替わったあの日以降ー、
直樹(朱音)は直樹としての生活をエンジョイしているのか
一度も病院に来ていないのだー。
連絡も、ほとんどないー。

「ーーーーーー」
朱音と入れ替わってから、鏡で毎日見る”朱音”の顔ー。
けれど、今のままでは朱音のことを嫌いになってしまいそうだったー。

鏡の前でニヤッと笑みを浮かべて見る朱音(直樹)ー

「ー今、こんな顔して普通に楽しく生活してるのかなー…?」
朱音(直樹)はそう呟きながら咳き込むー。

余命あとわずかで、どんどん体調が悪くなっているのを
強く実感するー。

そのせいか、どんどん弱気になっていき、
直樹になった朱音に対しても、不満や苛立ちを覚えてしまうー。

”健康な直樹”なら、入れ替わった後の朱音が全く会いに来なくても
”朱音が無事ならいいか”と、そう思う心の余裕があったかもしれないー。

けれど、病気でどんどん死に近付いていく状況はー
思った以上に怖く、辛くー、そして気持ちの余裕すら失わせていたー。

スマホを手に、朱音(直樹)は
”朱音の代わりになって俺が死んで、朱音が無事ならそれでいいと思ってたのに”と、
そう不満を送りそうになってしまうー。

がー、朱音(直樹)は「くそっ!」と、呟くと、
スマホをそのまま置いて、
寸前のところで、その嫌味なメッセージを送るのをやめたー。

「ーーー…くそっ!くそっ!くそっ!」

感謝されたかったわけではないー
見返りを求める気持ちがあったわけでもないー。

でも、今の自分の気持ちに、
そして直樹(朱音)が、自分のことを放置している状況に、
苛立ちを覚えていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”満月”の日ー。

直樹(朱音)は、
小さい頃から知っている”願いが叶う神社”に向かって
”身体を元に戻してほしい”と、願い事をするつもりだったー

「ーー」
直樹(朱音)は、未だに”直樹に身体を奪われたこと”に
不満を感じていたー。

「ーー誕生日も、楽しみにしてたのに、
 こんなことになるなんてー」
”春”に迎える誕生日ー

”すごいの用意しておくから”と、そう言っていたのに、
何が直樹を変えてしまったのだろうかー。

そんな風に思いながら、
ふと、”ネットの履歴”を見つめていた直樹(朱音)ー。

特に何かを調べようとしていたわけではなかったー。
が、ただ、モヤモヤした気持ちの中、幼馴染の直樹のことを
少しでも理解しようとー、履歴を見ていたー。

するとー

”余命”
”余命宣告”
”余命宣告 助かる可能性”

そんな検索を繰り返していたことに気付くー。

ちょうど、入れ替わる直前だー。

「ーーー…何これー…」
直樹(朱音)は表情を歪めるー。

「ーーーーー…」
そしてー、
”直樹、もしかして病気なのー?”と、
直樹が余命宣告を受けていて、それで朱音と入れ替わり、
朱音の身体を奪ったのかと、そう考えるー。

がーーー
直樹と入れ替わって1ヵ月ー。
直樹の身体で体調不良を感じたことはないー。

「ーーーー…え…」
直樹(朱音)はあることを思い立ち、
すぐに行動を起こすー。

”わたしのお母さん”ーー
朱音の母親に、”直樹”として会いに行きー、
”確認”したー。

するとーーー

「ーー朱音には言わないであげてー」
朱音の母親は、そう言葉を口にした上で、
朱音が”余命宣告”を受けていることを口にしたー。

「~~~~~~~~~~~~!!!!」
直樹(朱音)は呆然とするー。

”朱音”は知らなかったー。
自分が余命宣告を受けていることを、
母親から聞かされておらずー、
退院できるとそう思っていたー。

だからこそ、身体が入れ替わってしまったのに
元に戻ろうとしない直樹に対して不信感を抱いてしまい、
”普通に退院できる病気なのに大袈裟”と思ってしまったり、
”退院したあと、わたしの身体で何するつもりなの?”と、
強い不信を抱いてしまったー。

その結果ー、朱音(直樹)に会いに行かずー、
避けるような行動を取っていたー。

「ーー…な…直樹ーもしかしてーー
 わたしの代わりにーー死のうとしてるのー?」

直樹(朱音)は目に涙を浮かべるー。

知らなかったー。
それなのに、避けてしまったー。

それにーー

「ーーーー…ーーーー」

それも、やっぱり、許せないー。

「ーわたしの代わりに死ぬなんて、ダメだよー…直樹!」
直樹(朱音)は、直樹が自分を守ろうと、入れ替わったままで
”代わりに死のうとしていた”ことを理解すると、
すぐにそのまま予定通り神社に向かったー。

「ーー直樹とわたしをもう一度入れ替えて下さいー」

”ここには神様がいて、満月の日の夜に
 ここでお願いすると、”ひとつだけ”何でも願いを叶えてくれるんだって!”

小さい頃、自分がそう言ったことを思い出しながら、
願い事を口にするー。

けれどーーー
その翌日ーーー

直樹(朱音)は、”そのまま”だったー。

「ーど、どうしてー…?」
呆然とする直樹(朱音)ー。

戸惑いながらも、直樹(朱音)はすぐに病院に向かうと、
朱音(直樹)の病室に駆け込んだー

「ーーー朱音…?」
すっかり弱っていた朱音(直樹)が、
”今更”直樹(朱音)が会いに来たことに驚くー。

直樹(朱音)は、そんな朱音(直樹)を見ると
「ーわたしー…知らなかったー」と、そう言葉を口にしたー

③へ続く

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次回が最終回デス~!
待ち構えているのはハッピーエンドか、
それともバッドエンドか、
ドキドキしながら楽しんでくださいネ~!!!

改めて、今月もよろしくお願いします~~!

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