<入れ替わり>代わってあげることができるなら①~余命~

病院で入院中の幼馴染ー。

ある日、彼はその幼馴染が余命あとわずかであることを
知ってしまうー。

そんな中「せめて、俺が代わってあげることができればー」と、
そう思っていたところ、身体が入れ替わってしまいー…?

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幼馴染の梅村 朱音(うめむら あかね)が
入院中だと知ったのは半年前のことだったー。

小さい頃から仲良しで、
よく一緒に遊ぶ間柄だったー。

高校生になって、互いに別々の高校に進学してからも、
連絡は取り合っていたし、時々小さい頃と同じように
遊んだりもしていてー、
男女の関係ー…と、いうよりかは、それを越えた
幼馴染…家族に近いような関係で、
とにかく、お互いにとって、特別な存在だったー。

けれどー、1年生の夏ぐらいからだろうかー。
だんだんと直接会う機会がなくなっていき、電話で
話をしたり、メッセージのやり取りをすることはできるものの、
前のように遊びに行くことはなくなってしまっていたー。

心配した幼馴染の彼ー、
宮森 直樹(みやもり なおき)は、
今は隣町に引っ越した朱音の家を直接訪れたー。

そこでー、小さい頃から面識がある朱音の母親から
”朱音は入院中”だと聞かされたー。

その時、直樹は初めて幼馴染の朱音が入院中であることを知ったー。

「ーーー何だよー…言ってくれればよかったのに」
朱音が入院中だと知った直樹は、早速朱音が入院している病院に足を運び、
お見舞いに来ていたー。

「ーーー言ったら、直樹、心配するでしょー」
病室のベッドにいる朱音が少しだけ笑いながらそう言葉を口にするー。

「ーそりゃするよー。俺たち、兄妹みたいなもんだしー」と、
直樹がそう言うと、朱音は少しだけ笑いながら「わたしがお姉ちゃんねー」と、
そう言葉を口にするー。

”小さい頃”からの二人の”お約束”的なやり取りー。
小さい頃は二人でよく”俺がお兄ちゃんだ!” ”わたしがお姉ちゃんなの!”などと
子供ならではの言い争いをしていたー。

そのことを思い出しながら「ま、弟でもいっかー。朱音の方がしっかりしてるし」と、
直樹は笑うー。

「ーーでもまぁ、元気そうでよかったー」
思ったよりも朱音が元気そうであることに安堵の表情を浮かべる直樹ー。

「ーーうんーまた元気になったら、前みたいに一緒に遊びに行こうね」

「ーーあぁ」

小さい頃と同じように、楽しそうに雑談をする二人ー。

やがて、”あまり長居しちゃ悪いな”と、直樹が立ち上がると、
朱音は「そういえばー、直樹って彼女とかできたの?」と、
そんな言葉を口にするー。

「ん~~?ははー全然。そっちはー?」
直樹がそう言うと、朱音は「好きな人はいるけどー」と、笑うー。

「ーはは、そっかー。じゃあ、その好きな人に告白するために
 早く退院しないとなー」
直樹はそれだけ言うと、「じゃ、また」と、そのまま病室の外に出て行ったー。

「ーーーーー…はぁ~~~~~…」
大きく息を吐き出す朱音ー。

直樹が出て行った途端、朱音は途端に笑顔を消して、
辛そうな表情を浮かべるー。

直樹の前で見せている姿から、イメージできるよりもー、
朱音の体調はずっと、悪かったー。

「ーーー心配かけちゃうからねー…」
朱音はそれだけ言葉を口にすると、疲れ果てた様子で
ベッドに横たわったー。

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秋が深まりー、秋が終わりー、
冬がやってきたー。

それでも、朱音は一向に退院する気配はなかったー。

「ーーー朱音ー」
直樹は”お見舞い”に行ってあげるぐらいしか
してあげられることのない自分に無力感を感じつつも、
”その分、退院したらたくさん朱音を楽しませてあげようー”と、
そんなことを考えるー。

春には朱音の誕生日もあるし、
朱音が行きたがる場所なら、どこへでも連れて行ってあげたいー。

朱音は小さい頃からずっと”家族”のような存在なのだからー。

「ーーえ~?じゃあ、来年の春までには退院しないとね」

この日も、朱音のお見舞いに来ていた直樹ー。

直樹が”今度の朱音の誕生日には、すごいプレゼント用意しておくからな!”と、
そう伝えると、朱音は嬉しそうに”来年の春までには退院する”と、
そう宣言したー。

「ーーじゃあーー今年はこれで最後かなー。
 また来年ー。良いお年を」
直樹がそう言葉を口にして立ち上がるー。

朱音も笑いながら返事を返すー。

病室を出た直樹ー。

だがーーー
直樹は”知って”しまったー。

「ーーー桜が咲く頃まで持たせるのは、難しいかとー。
 持ってあとーーー…1ヵ月ー…
 奇跡が起きても、2カ月が限界でしょうー」

「ーーー!!!」

偶然だったー。
医師と、朱音の母親が話をしているのを
聞いてしまったー。

しかも、その内容は”朱音の余命”についての話だったー。

「ーーう、嘘だろー…?そ、そんなー」
呆然とする直樹ー。

来年の春までに退院するどころかー、
朱音はーーー

12月である今から
1ヵ月ー、奇跡が起きても2カ月だとすると、
1月か2月ー…春本番を迎える前に、
朱音は命を落とすことになるー。

朱音の誕生日は3月ー。
誕生日を祝うこともできないー。

「ーーくそっ…なんでー」
直樹は悔しそうに歯ぎしりをするー。

余命を知っていてなお、あんな風に、
いつものように明るく振る舞っている朱音の姿を思い出すと、
とても、やりきれない気持ちになるー。

帰宅してからも、ご飯が喉を通らないぐらいになってしまった
直樹はー、自分の部屋に戻ると
小さい頃の写真を見ながら、思い出に浸っていたー。

余命宣告を受けた幼馴染に、何をしてあげればいいのかすらも
分からなかったー。

呆然としながら、小さい頃の写真を1枚1枚、振り返っていく直樹ー。

ふとー、
小さい頃の写真の1枚を手にとって、
手を止めるー。

「ーーー…」
神社で小さい頃の直樹と朱音が楽しそうに写っている写真ー

それを見てー、直樹はあることを思い出したー。

”ねぇねぇ知ってる?
 ここには神様がいて、満月の日の夜に
 ここでお願いすると、”ひとつだけ”何でも願いを叶えてくれるんだって!”

小さい頃ー、朱音がそんなことを言っていたことをー。

”ーえ~、神様なんているわけないじゃん~!”
当時、直樹はそんなことを言ったのを覚えているー。

けれど、朱音は”願い事は、叶うもん!”と、そう言っていたー。

「ーー満月の日の夜ー」
直樹は、そんなことを思い出すと、
今の”月”が、どんな状況かを調べるー。

そして、ちょうど”もうすぐ満月の日”であることを突き止めると、
迷わず、その日に神社に足を運ぶことに決めたー。

ーー数日後。
満月の日の夜に、小さいころ、朱音とよく一緒に遊んでいた神社に
やってきた直樹ー。

その場にたどり着くと、
只々、直樹は”朱音の無事”を願うー。

”どうか、朱音を助けて下さいー
 どうか、朱音をーー”

そんな願いを繰り返すー。

そしてー、
”代わってあげることができるならー
 俺が代わってあげてもいいー
 だから、どうかー”

と、繰り返し祈るようにしてお願いを繰り返すー。

「ーーーーーーーーーー」

余命宣告を受けた人間が、
そう簡単に生き延びることができるなんてことはないー
と、いうことは分かっているー。

でも、せめてー、
せめて、代わってあげることができるならー…
代わってあげたいー。

直樹は、そんな思いを胸に何度も何度もお願いを繰り返すと、
やがて小さく息を吐き出して、そのまま家に向かって
歩き始めるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーえっ」

翌朝ー。
目を覚ますと、そこは”見知らぬ天井”だったー。

周囲の風景を見渡すと、
どうやら、ここは”病院”のようだー。

直樹は一瞬、寝ている間に、俺の身に何かあって
病院に搬送されてしまったのかー?と、そう思ったー。

けれど、すぐに昨日の神社でお願いしたことを思い出すと、
”まさかー…俺が病気になって、朱音は元気になったのかー!?”
と、そんなことを考える直樹ー。

「ーーーーーー」
”まさか、本当に俺が病気になって朱音が元気になるなんてー”と、
一瞬、”不安”にも似た感情を覚えるー。

どんなに大切な人が相手であっても、
どんなに”代わってあげたい”と思っていても、
いざ実際にそうなると、
この先何十年もあるはずだった自分の人生が、
”もう残りあとわずか”の状態になるわけだから、
単純に”やったぜ!”という感情だけではいられないー。

人間の感情はもっと複雑で、繊細だー。

「ーーー…」
けれどー、それでも”朱音が助かるなら”と、そう思いつつ、
「よかったー」と、そう言葉を口にすると、
直樹は「は?」と、周囲に誰もいないのに、自分自身でそう言葉を口にしたー。

何故なら”よかった”と、いう言葉が、
自分の声ではなく、”女”の声で発されたからだー。

「へ?」
困惑しながら自分の身体を見下ろすと、
そこには、”自分の髪の長さ”では顔を見下ろしても
視界に入らないはずの”髪”と、
胸の膨らみー、
あり得ないものがたくさん見えたー。

「ーーー…な、なんだこれ?」
思わずそう言葉を口にしながら、股間のあたりに手を触れるとー、
そこにはー…手に触れるはずのものがなかったー。

「ーー!?!?!?!?」
思わず、もう一度触り直してしまうー。

「ーーーえ……??????えええ????」
心底戸惑いながら、窓のほうを見つめると、
”自分の顔”が、窓に反射したー。

いやー、反射したのは”自分の顔”ですらなかったー。

「ーーーあ、あ、あ、あ、朱音が何でそこに!?!?!?」

窓に朱音の姿が反射したことに思わず声を上げる直樹ー。

せっかく神社での”願い事”が叶って
朱音の代わりに自分が病気になったのに、
朱音も病気のままでは意味がないー。

二人して余命宣告を受けるような状態になってしまっては何もー

「ーー…って、この声ー…聞いたことあるようなー…」
直樹は、先ほどから自分の口から発されている”女の声”に
聞き覚えがあるような気がして
そう言葉を口にするー。

「ーーーーー…」
記憶の中を辿るー。

その”声”は小さい頃から馴染みのある声であるはずなのに
少し、記憶と一致させるのに時間がかかったー。

何故なら、
”自分の口から出ている声”と、
”自分以外の人間として聞く声”では、
少し聞こえ方の印象が違うからだー。

自分の声を、電話や映像で聞くのと少しイメージが違うのと似ているー。

「ーーって、ーー俺の声が、朱音の声ー?」
直樹は、そう言葉を口にすると、
ようやく窓に反射した”朱音”の姿を見てー、
”何が起きた”のかを理解したー。

「って、ええええええ!?!?!?
 お、俺が朱音になってる!?!?!?」

朱音になってしまった直樹は、そんな風に叫ぶと、
「ーか、代わってあげたいって思ったけど、え??俺が朱音にー?」
朱音(直樹)は、そう言葉を口にしてから、
自分が朱音になっていると思ったら急にドキドキして、
顔を赤くしながらソワソワした様子を見せ始めたー。

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「ーーーー…~~~~~~」
一方、直樹になってしまった朱音は、
さらに困惑の表情を浮かべていたー

「ーーえ……????何これー…?」
直樹(朱音)は、鏡の前で戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーー????? ????」
ひたすら”?”しか出て来ないー。

直樹には、自分が神社で願ったからー、という
”心当たり”があったものの、
朱音には、全く心当たりがないー。

「ーあっ…」
がー、やがて、直樹(朱音)は、あることを思いつくー。

「ー調子が悪い時に寝てると、変な夢みるもんねー」
直樹(朱音)は”直樹になっているこの状況”が夢だと判断して、
「ーなんかごめんねーこんな夢見ちゃってー」
直樹(朱音)は、自分の身体になった直樹の身体を見つめながら謝罪すると、
そのまま直樹のベッドに横たわるー。

「ー夢にしては、随分リアルだなぁ…」
直樹(朱音)は苦笑いしながら、”夢の中で寝れば目が覚めるかなー”と、
そう思いつつ、目を閉じるー。

しかしー…その30分後ー。
再び目を覚ました直樹(朱音)は
「ゆ…夢じゃないー?」と、呆然とした表情を浮かべると、
困惑しながら”わたし”が入院しているはずの病院に向かって
慌てて家を飛び出すのだったー

②へ続く

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コメント

入れ替わりのお話デス~!!!

今回の作品は、リクエスト特典で飛龍様から頂いたリクエストを元に
した作品デス~!

頂いたリクエストの原文は

・・・

重病で入院している女の子がいて余命僅かと言われている。
その幼馴染の男の子がいて、まだ元気なころは良く遊んでいたのだが
最近はお見舞いに行く事しかできず身を案じている。
余命僅かと立ち聞きで話を聞いてしまい、神社にお祈りして
「俺が変わってやれたら…」と思っていたら、2人の体が入れ替わってしまう。

・・・

と、いうものでした~!★
この内容を元に考えたのが今回の作品デス~!!

結末は…私が頭の中で膨らませたものを書いていくので、
②以降も楽しんでくださいネ~!!

今日もお読み下さりありがとうございました~~!

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