幼馴染の余命はあとわずかー。
”代わってあげたい”と願ったことで起きた
幼馴染との入れ替わりー…。
二人を待ち受ける運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーわたし、知らなかったー」
病室に入って来た直樹(朱音)が、そう言葉を口にしたー。
朱音(直樹)は、重たい身体を起こしながら、
「ーー知らなかったってーなにがー?」と、言葉を吐き出すー。
どんどん弱っていく身体は、少し動かすだけでも
とても”重たく”感じるー。
こんなに華奢な身体なのに、とても重たく感じるー。
「ーーーー”余命”のことー」
直樹(朱音)がそう言うと、
朱音(直樹)は「えっー」と、そう言葉を口にしたー。
確かに、朱音と入れ替わってから
一度も医師や、朱音の両親からそんな話はされなかったし、
自分からも言わなかったー。
そうー、”朱音”は余命のことを両親から知らされていなかったのだー。
「ーー…わたし、普通に退院できると思ってたー。
だから、入れ替わっちゃったのに元に戻る方法も探さないで
直樹のことー……”わたしの身体を奪う目的”って思っちゃってたー…
”もう少し入院すれば治るのに、何考えてるの?”ってー」
直樹(朱音)が目に涙を浮かべながら言うー。
「ーーあ、朱音ー」
自分から勝手に入れ替わったとは言え、
余命あとわずかの身体を押し付けて、あとは無視!みたいな
振る舞いの朱音に不信感を抱いていた朱音(直樹)ー
しかし、それは誤解ー
お互いのすれ違いであったことに気付きー、
安堵の笑みを浮かべるー。
”朱音”は、自分の余命宣告を知らなかったー。
”直樹”は、それを知っていたものの、朱音が”知らない”とは知らなかったー。
だから、二人はお互いに誤解したまま不信感を抱いてしまったー
朱音は、自分が死ぬとは思っていなかったから、
”何で入れ替わったままでいたい”と言うのか、理解できなかったし、
直樹のことを”わたしの身体が目当て”だと誤解してしまったー。
直樹は、朱音が余命宣告のことを知らないとは思っていなかったため、
入れ替わった直後から、無視されているような状況に
”こんなに冷たい子だったなんてー”と、そんな誤解をしてしまっていたー。
けれど、お互いにそれはすれ違いであったことを理解したー。
「ーーごめんー…わたしのこと、助けようとしてくれたのにー
わたしの身代わりになろうとしてたのにー…」
直樹(朱音)が言うと、
朱音(直樹)は体調不良で辛そうな表情を浮かべながらも、
「ーーーははーいいよー。”余命”のこと知らなかったならー
確かに俺、”幼馴染の身体を奪おうとしてる変態”って
思われても仕方ないしー」
と、そう言葉を口にするー。
「ーーー…でもーー…わたし、まだ怒ってるー」
直樹(朱音)がふとそんな言葉を口にするー。
朱音(直樹)が「えっ?」と、返すと、
「ーわたしの代わりに勝手に死のうとするなんてー
そんなのダメー」と、そう言い放つ直樹(朱音)ー
「ーわたしだって死にたくないけど、それはわたしの身体なんだよ?
直樹を身代わりにして生き延びたってわたし、嬉しくない!」
直樹(朱音)は、そう言葉を口にすると、
朱音(直樹)は、苦笑いするー。
そうー、
”そう言われると”思ったー。
神社にお願いして、入れ替わってしまったあと、
朱音はそういう反応をすると思っていたー。
やっぱり、そうだー。
「ーー…でも、朱音が無事なら、俺はーー」
朱音(直樹)がそう言うと、
直樹(朱音)は「よくない!」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーーーーーー
朱音には、生きてほしいんだー」
朱音(直樹)が弱々しくそう呟くと、
直樹(朱音)は「わたしだって、直樹に生きてほしいよ!」と、
そう言い返すー。
「ー自分だけ満足して、勝手に死なないで!」
直樹(朱音)がそう叫ぶー。
すると、朱音(直樹)は、ふっ、と笑うー。
「ーー自分に泣かれながら死ぬ人生ってー変な気持ちだなぁー」
とー。
「ーーーー…ふざけたこと言ってないでー…
元に戻る方法、探そうよー」
直樹(朱音)が涙ながらにそう呟くと、
朱音(直樹)は心底困惑した表情を浮かべてから、
「ーー二人生き残る道はないんだー。
どっちか一人しか、生き残ることができないならー
俺は、朱音に生きてほしいー」と、
それだけ言葉を口にするー。
「ーーーわたしだって、直樹に生きてほしいもんー」
直樹(朱音)はすぐにそう返すー。
「ーーー」
お互い、相手に生きてほしい気持ちは同じー。
朱音(直樹)は複雑そうな表情を浮かべるとー
「ーー俺、朱音に見捨てられたと思ってー
そのー、勘違いしてちょっとだけムッとしてー
……ーーー」と、
気まずそうに言い始めるー。
ちょっとだけ、ムッとして胸を揉んだり、Hなことをしてしまったー。
とー。
「ーーーーーだからーー
悪いことをしちゃったからー、
俺はー」
無理矢理、直樹(朱音)を納得させようとする朱音(直樹)ー
けれど、直樹(朱音)は
「絶対に元に戻る方法、探すからー!」と、そう言い放つと、
そのまま悲しそうな表情を浮かべたー。
元に戻る方法を必死に探す直樹(朱音)ー。
けれどー、朱音(直樹)は毎日のお見舞いで
”日に日に弱っていく”のがハッキリと分かってしまうほどだったー。
「ーーーーー……」
直樹(朱音)は”満月”の日を確認するー。
あと数日ー。
”2月の満月”のタイミングまであと少しー
けれどー、もう”朱音の身体”は限界だー。
”ーーやっぱり、あの神社にお願いしてー…
もう1回お願いしてー元に戻るしかー”
”願いが叶う”
そう言われているあの神社ー。
その力で入れ替わったのだから、
また入れ替わるには、やはり神社にお願いするしかないー。
けれど、先月の満月の日にお願いした時には
”元に”戻らなかったー。
直樹は、朱音と入れ替わる前日に、あの神社でお願いしていたと
そう言っていたー。
だから、最初に入れ替わった理由はあの神社の力だとは思うー。
でもー、どうしてー?
「ーーーー!!!」
直樹(朱音)はふと、”小さい頃”に自分が直樹に言った言葉を思い出すー。
”ここには神様がいて、満月の日の夜に
ここでお願いすると、”ひとつだけ”何でも願いを叶えてくれるんだって!”
「ーーひとつだけー…」
直樹(朱音)は表情を歪めるー。
朱音と直樹が入れ替わったのは
”直樹”が「代われるものなら代わってあげたい」とお願いしたことによるものー。
叶う願いはひとつだけー。
”直樹”のお願いは既に”ひとつ”叶えられてしまっているー。
「ーー…わたしは、直樹の身体だから、”直樹”扱いで、
もう、お願いが叶え終わった扱いになってるってことー…?」
直樹(朱音)はそう言葉を口にすると、
ハッとして、病院に向かって走り出したー。
そしてー、
「ーー直樹!今すぐ神社に一緒にいこう!」
と、直樹(朱音)は叫ぶー。
「ーーーえ……… ーーー外出は、もうー禁止でー」
朱音(直樹)は、虚ろな目でそう呟くー。
もう、”いつ死んでも”おかしくないぐらいに体調が悪化しているー。
「ーーいいから!!!」
直樹(朱音)は、無理に
”これがルール違反”であることも理解した上で、
それでも病院の車いすに朱音(直樹)を乗せて、
そのまま病室を飛び出したー。
事前に、直樹(朱音)が用意しておいた
”わたしが直樹に無理を言って頼みました
どうしても行きたい場所があってー
終わったら、戻ります
ごめんなさい”と
書いたメモを病室に残してー。
こうしないと、”元に戻ったあと”
直樹が”死にそうな幼馴染を病院から強引に連れ出した人”扱いされて、
最悪、罪に問われる可能性もあったため、
そのメモを残したー。
身体は直樹でも、筆跡は”朱音”ー。
だから、朱音が書き残したメモだと、病院の人たちは
理解してくれるはずだー。
意識が朦朧と仕掛けている朱音(直樹)をなんとか神社まで
つれて来るとー、
直樹(朱音)は言ったー。
「ー”わたしの身体”でなら、まだお願いできると思うの!
だから、お願いだから、”元に戻してください”ってお願いして!」
直樹(朱音)が泣きながら言うー。
朱音(直樹)は少しだけ笑うとー、
「ーーーー…ダメだよー」と、そう言葉を口にするー
けれどー、直樹(朱音)は食い下がるー
「このままじゃ、わたし、一生、直樹のこと引きずっちゃうよー!
こんなことされても嬉しくない!
だから、元に戻して!」
とー。
朱音(直樹)は、そんな直樹(朱音)を見つめるとー、
少しだけ考えてから、頷いたー。
「ーーーーわかったー」
とー。
”嘘”だー。
元に戻してください、とお願いする気はないー。
代わってあげることができるならー
そう思って朱音と入れ替わったのだー。
もう、戻る気はないー。
ーー
少しだけ笑みを浮かべると、朱音(直樹)は、
”ーー朱音が健康で、幸せでいられますようにー”と、
とにかく、朱音の無事だけを願いー、
満月の空を見上げたー。
願いが終わると、二人は神社を去っていくー。
「ー明日の朝には戻ってたりしてなー」
苦しそうに息を吐き出しながら、朱音(直樹)は言うー。
入れ替わった時と同じなら、戻るのは明日の朝ー。
最も、”元に戻してほしい”なんてお願いしていないから
戻ることはないけれどー、
”願ったけど、戻らなかった”と、
朱音には納得してもらおうと思うー。
そしてー、願いがもう一度叶うのであれば、
朱音は健康でー、そして幸せな人生を送ることができるはずだー。
朱音(直樹)はそう思いながら
どこか満足そうに微笑むと、
「ーーーもし、俺がこのまま死んでもー
できるだけのことはしたんだしー、
朱音は、何も気にする必要はないからー」
と、そう伝えるー。
直樹(朱音)は「そんなこと言わないでー。
絶対に明日、元に戻るから」と、言い返すー。
朱音が言うには、
この神社の伝承では、強い想いを持ち、
そして、私利私欲ではなく、純粋な願いをぶつけると、
叶えてくれるのだというー。
だから、きっと願いは伝わるー、と、
直樹(朱音)はそう言い放つー。
「ーーははーそっかー」
朱音(直樹)はそう思いながらも、
”ごめんな朱音ー願ったのはー、朱音の健康と幸せだからー”と、
心の中でそう呟いたー。
その日の夜ー。
朱音(直樹)は急変したー。
いよいよ、危篤状態ー。
薄れゆく意識の中、朱音(直樹)は、
”こんな苦しい思いをー、こんな寂しい思いをするのが、朱音じゃなくてよかったー”
と、そう最後に思うのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーーー」
直樹は”病院”を訪れていたー。
そこにはーー
”朱音”の病室がまだあるー。
病室に入ると、そこには看護師とーー
朱音の姿が見えたー。
「ーーあっー」
直樹はそう言葉を口にすると、「朱音ーーー顔色もよくなったねー」と、
そう言葉を続けるー。
朱音は、穏やかに笑いながら「うんー」と、答えるー。
昨日まで、”いつ死んでもおかしくない”と分かるぐらい弱り切っていたのに、
今日は病気のせいで、やせ細ってはいるものの、顔色はいいー。
「ーーー昨日、日付が変わった頃から急に回復したんですよー」
看護師の女性が微笑むー。
「先生も言ってましたー。あの状況から、奇跡だってー」
看護師の女性はそう言うと、さらに”検査”の結果で、
病気の原因となっているものが急激に消失していることも
教えてくれたー。
”奇跡”が起きたー
昨日、危篤状態になった朱音が、
日付が変わったころから急激に容体が回復し、
さらに病気自体まで、完治し始めていたー。
その理由はーー
”ーー朱音が健康で、幸せでいられますようにー”と、
あの神社で願ったことー。
最初に入れ替わった時にお願いしたのは”直樹”ー。
でも、今度は”朱音(直樹)”がお願いしたことで、
朱音はまだお願いしていないと扱われたのか、”願い”が叶ったー。
朱音が健康で、幸せにー。
その願いが叶い、朱音の身体の病気は急激に回復したのだー。
直樹が、急激に回復したという朱音を見つめながら
少し驚いた表情を浮かべていると、
病室のチェックを終えた女性看護師が、
「ゆっくりして下さいねー」と、
部屋から退出していくー。
そしてー
直樹と朱音が二人きりになると、
直樹は言葉を口にしたー。
「ーー回復してよかったー
でも…どうなってるのー?」
とー。
そうー、
二人はまだ、元に戻っていなかったー。
当たり前だー。
”朱音の無事”を願っただけだから、元には戻らないー。
朱音(直樹)は少しだけ戸惑ったような様子で
「実はー」と、
昨日、神社で最後にお願いしたことを明かすー。
”入れ替わった状態から元に戻りたくない”ではなく、
とにかく”朱音の健康と幸せを願った”のだとー。
「ーーーーてっきり、俺は死んで、
俺になった朱音が健康で幸せになってくれると思ってたんだけどー…」
朱音(直樹)が自分の手を見つめながら言うと、
直樹(朱音)は「”わたしの身体”になってる直樹が
健康になったってことねー」と、苦笑いするー。
「ーーーそ、そうみたいだー
昨日までが嘘みたいに、調子がいいしー、朱音の身体ー」
朱音(直樹)がそう言うと、
直樹(朱音)は戸惑いながら
「でも、とにかく直樹と、わたしの身体が無事でよかったー」と、
嬉しそうに笑うー。
”朱音”は死なずに済んだー。
この先も、生きていくことができるー。
ただーーー
「ーーでもさーー…
これってー…
わたしたち、ずっとこの先も入れ替わったままってことー?」
直樹(朱音)が戸惑いの表情を浮かべるー。
「ーーーー…えーー…ーー
あ…いや…クラスのやつに神社でお願いしてもらえば
戻れるかもー」
朱音(直樹)が言うと、
直樹(朱音)は「人を巻き込むようなお願いは、聞いてくれない気がするー」と、
そう言葉を返すー。
「ーーーえ……じ、じゃあー」
朱音(直樹)は顔を赤らめるー。
「ず、ずっと、このままーなのか?」
朱音(直樹)がそう言うと、
直樹(朱音)は戸惑いの表情を浮かべながら
「そ…そうかもー」と、そう言葉を口にするのだったー。
余命あとわずかの幼馴染を救ってー、
代わってあげた自分も助かることができたー。
でも、まだー、
大変な日々は続きそうだー。
これからもー。
おわり
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コメント
最終回でした~!★
①のあとがきで書いたように、
飛龍様のリクエストによる作品でした~!★
結末はお任せだったので、
今回は二人とも助かる(でも元には戻れない)エンドに
してみました~~!★
ズブズブぐしゃぐしゃ★案もあったのですケド、
あまりにも酷い内容だったので今回はやめました~笑☆
お読み下さりありがとうございました★!
コメント
死なずに済んで良かったです!☆
元には戻れなかったですが…(-_-;)汗
ズブズブぐしゃぐしゃの案もあったんですネ!★
無名さんが1番、恐ろしやぁ~~~!★(*´艸`)笑
感想ありがとうございます~!☆
ずぶずぶ…ぐしゃぐしゃ★!