4人組の人気アイドルグループ…。
しかし、その中の一人である彼女は
ある恐ろしい事実を知ってしまうー。
それは…
”自分以外の残りの3人”がグループ結成時から
”憑依”されているということをー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーお疲れさま~!」
4人組人気アイドルグループ・ドリームヘブンー。
彼女たちは今日も、予定されていたイベントを終えて
会場の控室へと戻ってきたところだったー。
4人のリーダー的立ち位置の愛梨(あいり)ー、
明るい雰囲気のツインテール少女・真桜(まお)ー、
眼鏡がトレードマークの大人しい雰囲気の子・静奈(しずな)ー、
そして、4人の中で一番しっかり者な涼香(りょうか)ー。
その4人で結成されているドリームヘブンは
結成当初から、大の仲良しで、
これまで、互いに協力し合って歩んで来たー。
4人の努力も実り、
現在では、”ドリームヘブン”は、
人気アイドルグループの仲間入りをしていて、
元々開催していたイベントだけではなく、
テレビのバラエティ番組に出演したり、CMに出演したり、
色々な方面で活躍するようになっていたー。
「ーそういえば、階段で転んだ時、大丈夫だったー?」
しっかり者の涼香が言うと、大人しい雰囲気の眼鏡の子・静奈は
「あははー大丈夫大丈夫!」と、笑うー。
見た目はとても大人しそうな静奈であるものの、
実は4人の中では一番おしゃべりで、そしてドジだー。
「ーーちょっと打撲になってるけど、すぐ直るしー」
静奈が自分の腕を見つめながらそう言うと、
「ーー大事な時期なんだから、怪我しちゃだめだよ~」と、
リーダーの愛梨が笑うー。
愛梨は、ほんわかした雰囲気の優しいお姉さん的存在で、
グループのリーダーを務めているー。
一見、優しいだけに見えるものの、統率力もしっかりと
兼ね備えていて、しかも、実はー”キレると”怖いー。
以前、まだそれほどグループが人気になっていないころ、
イベントの帰り道で不審者の男に襲われた際に、
恐ろしい力を発揮して、荒い口調でその男を返り討ちにするのを
見てしまったことがあるー。
やる時はやるー
そんな、リーダーの愛梨は、他の3人から慕われていたー。
「ーーーー」
明るい雰囲気のツインテールの子・真桜は、
大人しそうに見えて明るい静奈とは真逆で、
いかにも活発そうな雰囲気なのに、物静かな子だー。
今日も、控室に戻ってくると一人で本を読みながら
静かにしているー。
「ーーーあ、そうだー今度のイベントだけどー」
そんな三人に対して、しっかり者の涼香がそう言葉を口にすると、
次のイベントのことを話し始めるー。
涼香は、見た目通りしっかり者な性格で、
スケジュール管理だとか、そういったこともきっちりとしている為に
グループにとっては欠かせない存在だー。
リーダーシップを持つ愛梨とはまた違った面で
しっかりしていて、上手く、二人は役割分担をすることが出来ているー。
がーーー
そんな涼香は知らなかったー。
”自分以外の三人”が、男に憑依されていることをー。
しかもーーーー…
”グループが結成される前”からーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー涼香さんーですよねー?
”ドリームヘブン”のー」
数日後ー。
収録が終わってオフの時間を過ごしていた涼香は、
そんな声を掛けられたー。
”有名人”であるが故の宿命ー。
眼鏡をかけて、髪型を変えー、
変装はしているつもりだけれどー、
それでも、ファンに見つかったりして
声を掛けられてしまうことはよくあるー。
「ーーー……ーー」
涼香が振り返って言葉を口にしようとすると、
相手の高校生らしき女ー
少しだけ、涼香たちより年下のその子は、
言葉を口にしたー。
「ーーあ、あの!せっかくのオフの時間にすみませんー。
涼香さんにーーどうしてもお話したいことがーー…」
その女は、そう言葉を口にすると、
涼香は「お話ー…ですか?」と、少し不思議そうに言葉を口にするー。
「ーーはいー…わたしはーーー
涼香さんと同じ、ドリームヘブンの一員のー……
”静奈”の妹ですー」
その女は、そう言葉を口にすると、
自らを、萌奈(もな)と名乗ったー。
「ーー…え…静奈のー?
あー、ごめんなさいー。
いつも、お世話になってますー」
相手が、まさか仲間のアイドルの妹だとは知らずに、
普通に振る舞ってしまったことを、涼香は軽く詫びながら、
「ーーそ、それでーー…わたしにお話したいことと言うのはー?」
と、相手のー…萌奈の深刻そうな様子を見て
ゴクリを唾を飲み込みながら、そう言葉を口にするー。
すると、萌奈は少し気まずそうに言ったー。
「涼香さんー。あなたは”正気”ですよねー?」
とー。
その言葉に、涼香は「え?」と、表情を歪めるー。
同じグループのアイドル・静奈の妹であるという萌奈は、
そんな涼香に、視線を注いでいるー。
まるで、”あなたは正気ですよね?”と問いかけられた
涼香の”反応”を観察するかのようにー。
「ーーそれは、どういう意味ー…?」
涼香が戸惑いながら言葉を口にすると、
萌奈は続けるー。
「ーもっと具体的に言えばー…」
萌奈は、そこまで言うと少しだけ躊躇う様子を見せるー。
「ーーー涼香さんは”憑依”されてないですよねー?」
萌奈の言葉に、涼香は「えっ!?!?!?」と、表情を歪めるー。
「ーーー………ーーーー」
その反応をじっと見つめる萌奈ー。
どう考えても、演技とは思えないー。
涼香は心底驚いているー。
そう読み取った萌奈は、ため息を吐き出してから、
「実はー、わたしの姉・静奈は憑依されていますー
男の人にー」と、そう言葉を口にするー。
そんな萌奈の言葉に、涼香は心底困惑した様子で
「え、え~っと…え…ーーー…どういうことですか?」と、
戸惑いを露わにすると、
萌奈はさらに続けたー。
「ーこの世界には”他人に憑依することのできる薬”が
裏で存在していますー。
その薬の力で、わたしの姉は、男に身体を乗っ取られて、
今は、身体は”お姉ちゃん”ですけど、中身は別の男なんですー」
とー。
「ーーー…あ、あはははーー…
そ、そうーー…」
しかし、涼香は本気でそれを受け止めなかったー。
むしろ、目の前にいる”静奈”の妹を名乗る萌奈とやらが、
本当に静奈の妹なのか、という点まで疑い始めたー。
「ーーあ、あのー
本当に、静奈の妹さんーですか?」
涼香がそう確認すると、萌奈は少しだけ不快そうな表情を浮かべたものの、
すぐに息を吐き出してから、
「そうですよねー。そうすぐには信じられませんよね」と、
納得した様子で頷くと、持っていたバッグから、
”写真”を取り出したー。
「ーわたしと、お姉ちゃんの写真ですー」
そう言いながら、萌奈は心底悲しそうな表情を浮かべるー。
大人しい雰囲気の静奈は、その通りの
穏やかで控えめな笑みを浮かべているー。
今、涼香と一緒に活動している”大人しそうだけどおしゃべりな静奈”とは
少しイメージが違って見えるー。
そして、
写真は少し前のものだろうかー。
静奈はグループが結成された数年前よりも少し若そうに見えたー。
「ーーーーー」
その写真に、”この子は本当に静奈の妹?”と、そう思いつつ、
萌奈の方を見つめる涼香ー
萌奈は身分証を出して、名字も静奈と同じであることを
証明してみせると、
「ーお姉ちゃんは、暗い性格だったんですけど、
自分を変えたいって思って、それでアイドルになったんですー。
それなのにー」と、悲しそうに呟くー。
「ーま、待ってー落ち着いてー。
静奈が”憑依”されているってどういう意味ー?」
改めて聞き返す涼香ー。
すると、萌奈は”言葉の通りです”と、そう言葉を口にした上で、
「ー涼香さんーー”あなた以外”は全員憑依されていますー」と、
そんな言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーあ、おはよ~~!」
翌日ー。
この後の番組収録の打ち合わせにやってきた涼香は、
グループのリーダー・愛梨に声を掛けられるー。
涼香は、チラッと愛梨の方を見つめるー。
”「ー涼香さんーー”あなた以外”は全員憑依されていますー」”
そんな、萌奈の言葉を思い出すー。
しかもー
萌奈によれば、グループが結成される前から、
愛梨、静奈、真桜の三人は男に憑依されていて、
そのことを知らないのは”涼香”だけなのだと言うー。
「ーーーー……どうかした?」
少し心配そうな表情を浮かべる愛梨ー。
「う、ううんー…大丈夫ー」
涼香は少しだけ引いた笑みを浮かべながらそう言葉を口にすると、
「悩みがあるなら、何でも相談に乗るからね?」と、愛梨が穏やかに微笑むー。
一瞬、リーダーの愛梨に昨日言われたことを相談してみようかと、
そう思ってしまう涼香ー。
愛梨は確かに”何でも相談に乗ってくれる”ー
しっかり者の涼香はグループの精神的支柱のような存在であるものの、
包容力的な部分は愛梨の方が優れているー。
”いつもの愛梨”なら、何を相談しても、
確かに親身になってそれを聞いてくれるだろうし、
解決策も示してくれるだろうとは思うー。
けれどー…
もしも、本当に静奈の妹を名乗る萌奈の言っていることが
本当だとしたらー?
「ーーーーーーーーー…」
それを聞いた瞬間、愛梨は豹変するかもしれないー。
「ーえ~~?ホントに大丈夫~?何かあったの~?」
大人しそうな雰囲気だけど、明るいムードメーカーな
静奈がそう言葉を口にするー。
昨日、”涼香さん以外は憑依されています”と言ってきた
萌奈は、この静奈の妹を名乗っていたー。
”ーーー萌奈ちゃんの話を出すぐらいなら、大丈夫かなー?”
涼香はそう思いつつ、静奈の方を見るー。
「ーいつも何でも解決してくれる感じの涼香が、
悩んでるとなんかすっごく心配~!」
そう言い放つ静奈ー。
そんな様子を明るい雰囲気のツインテールの子・真桜は、
少し心配そうに見つめているー。
そういえばー、明るい雰囲気の真桜が大人しくて、
大人しそうな雰囲気の静奈が、とても明るい子なのもー、
今まで気にしていなかったけれどー、
昨日の話を聞くと、”中身が別人だから”という理由が
頭の中に浮かんできてしまうー。
そんなことを思いつつ、涼香はふとあることを思いつくー。
「ーえ、えっとー、わたしの友達の話なんだけどー
妹と大喧嘩しちゃったみたいでー…
それで相談されてて、どうしたらいいかなぁって
ちょっと悩み中でー」
涼香はそう言葉を口にするー。
”静奈”に妹のことを遠回しに確認するための口実だー。
実際に”妹と大喧嘩した友達”はいないけれど、
適当に”妹”の話題を出すために、そんな言葉を口にしたー。
「ーーーへ~それで悩んでるんだね~」
静奈は”そっか~”と言いたげな表情を浮かべつつ頷くー。
そしてー…
「そういえば、静奈って妹さんいたっけ?」
涼香はそう切り出したー。
「ーえっ」
静奈は少しだけ表情を曇らせるー。
その反応を涼香は注意深く観察するー。
「ーーーーーーいるーー。いる、けどー」
静奈はそれだけ言うと、
「ーー妹とは、あたし、そのー…仲良くないんだよねー」
と、そう呟くー。
少し気まずそうな雰囲気だー。
いつも明るい静奈のバツの悪そうな反応ー。
それを見た涼香は”やっぱり何かあるのかもー”と、そう思ってしまうー。
「ーーあ、ご、ごめんねー。変なこと聞いてー。
えっとー……茉莉(まり)ちゃんだったっけー?」
わざと名前を間違えて、相手の反応を確認する涼香ー。
「ーえー、えっと、いやー…うーん、萌奈だったっけー…?
萌奈ー、うん!萌奈!」
静奈は少し変な反応をしながら、
そう答えるー。
”やっぱり、昨日、わたしと会ったあの子は、静奈の妹で間違えないみたいー”
そう思いつつも、涼香は静奈の反応に
さらに疑念を強めていくー。
「ーあ、そろそろ打ち合わせの時間だよ~」
リーダーの愛梨がそう言葉を口にするー。
「ーあ、うんーじゃ、行こっかー」
気を取り直して、頷く涼香ー。
”わたし以外の三人は、憑依されているー”
涼香は表情を曇らせながら、そのことを考えるー。
もし、それが本当ならー、
”どうして、わたしだけ”無事なのかー。
この三人の目的は何なのかー
そもそも、”憑依”なんて本当にできるのかー
色々なことを考えてしまうー。
逆に、もし”嘘”ならー、
静奈の妹・萌奈の目的は何なのかー。
そんなことを考えずにはいられなかったー…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
アイドルグループの”自分以外”のメンバーが
憑依されている…?
そんなお話デス~!!!
何が起きているのかは、明日以降、だんだん分かっていくのデス…!

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