<憑依>正気なのはわたしだけ?③~真相~(完)

自分以外の3人のメンバーが憑依されているー…

そんなことを知ってしまった彼女は、
”真相”へと迫っていくー。

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「ーーーーー」

涼香がいつものようにやってくると、
リーダーの愛梨が、戸惑いながら涼香の方を見つめたー。

「ーーちょっと、”今日”話があるんだけどー」
愛梨のその言葉に、涼香は表情を曇らせるー。

「ーーーー」
が、すぐに”3人で出かけていること”に関することー…
つまりは”憑依”が絡む何かについてだと、そう思い、
涼香は「わかったー」と、だけ言葉を口にするー。

そんな涼香に対してリーダーの愛梨は
「涼香ー」と、そう言葉を口にすると、
「ーわたしは、涼香の”敵”じゃないからー」と、
それだけ言葉を口にしたー。

「ーーー」
立ち止まって振り返る涼香ー。

もし、愛梨を含む3人が本当に憑依されているのならー、
”何かされる”可能性も十分にあるー。
身の危険も感じずにはいられないー。

けれど、今の愛梨の言葉で、ほんの少しだけ楽になったー。

「ーーー…わたしは、このグループが大好きだし、
 みんなのことも大好きー。」
涼香はそれだけ言うと、リーダーの愛梨は少しだけ微笑むー。

その表情は、どこか寂し気だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”本当に3人は憑依されているのー?”
そんな、”現実逃避”をしてしまう涼香ー。

けれど、先日の真桜の反応ー、
そして、今朝の愛梨の呼び出し、”何かある”のは間違いないー。

仮に、3人とも憑依されているのだとすればー、
”どうして”自分だけが正気の状態で
グループが結成されたのだろうー。

事務所側が何も知らずに、たまたまそうしたのかー、
あるいはーー…

そう思いつつ、呼び出された部屋に行くと、
そこには、所属事務所の社長・船越(ふなこし)の姿があったー。

船越 雅恵(ふなこし まさえ)ー
所属事務所の敏腕女社長だー。

「ーーー…」
涼香は、この瞬間、
”事務所”も、3人の”秘密”を知っているのだと、確信するー。

そして、この瞬間、
自分の身に迫る危険をさらに感じ取るー。

「ーーーふふ、そんなに驚かないでー。
 とりあえず、座ってー」
船越社長はそう言うと、そのまま涼香に座るように促したー。

「ーーはいー…失礼しますー」
涼香が緊張した様子で座ると、
背後から、リーダーの愛梨ー、
そしてメンバーの静奈・真桜の三人も入って来たー。

まるで、”逃げ道を塞ぐ”かのように後から入ってきた3人ー。

「み、みんなー…」
涼香が戸惑いながら振り返ると、
リーダーの愛梨は「怖がらないでー。大丈夫だからー」と、
そう言葉を口にして微笑むー。

その笑みは、とても不気味な笑みに、涼香には見えたー。

「ーーーー色々、嗅ぎまわっているみたいだけどー」
船越社長は、そう言葉を口にすると、
「ーーこれ以上、あなたを不安にするわけにもいかないし、
 単刀直入に言うわねー」と、自分の目の前に置いた
ティーカップを手に取ると、
涼香の前に置かれたティーカップの方を見つめながら、
「ーーあなたにとってはつらい話になるかもだけどー」と、
そう言葉を続けたー。

「ーーー」
涼香は、ティーカップの中の飲み物を見つめるー。
実は毒が入っているんじゃないか、とも思ってしまうー。

そう思っているうちに、
船越社長は言葉を続けたー。

「ーー”憑依”ー」
とー。

「ーーー…!」
涼香が表情を歪めるー。

「ーーふぅ」と、息を吐き出す船越社長ー。

「ーその反応を見ると、”知って”しまったのねー」
と、そう言葉を口にするー。

涼香が”探る”ような行動をしているのを察知した社長と、憑依されている3人は
”涼香がどこまで知ってしまったのか”を、確認した上で
言葉を続けたー。

「ーーー社長ーー…
 ”わたし以外の3人”が男の人に憑依されているって話は、本当なんですかー?」
涼香が戸惑いの表情を浮かべながら聞くー。
これ以上、遠回しに聞いても仕方がないー。

何をされるか分からないけれどー、
聞くしかないー。

背後にいる愛梨・真桜・静奈の3人が険しい表情を浮かべるー。

「ーーいったい、どういうことなんですかー!?」
涼香が悲しそうに叫ぶと、
背後にいた愛梨が言葉を口にしたー。

「ー本当よー」
とー。

振り返る涼香ー。
背後に立っていたリーダーの愛梨は悲しそうな表情で、
「ーわたしの中身は”男”ー」と、それだけ言うと、
大人しそうな顔立ちの静奈も口を開くー。

「ー”俺”はこの子に憑依してるんだー」
とー。

そして、明るい雰囲気だけど大人しい真桜も言うー。
「僕は、この子にー」
とー。

「ーーー…」
目に涙が溢れそうになる涼香ー

「ーわたしのこと、騙してたのー…?」
そう言い放つー。

愛梨・真桜・静奈の3人は
表情を曇らせながら、涼香の方を見つめると、
やがて、愛梨が言ったー。

「ーーーーーそう言われても仕方ないー。」
とー。

「ーーー」
涼香は強くショックを受けながら、
「ーどうして…どうして、人の身体を乗っ取るなんてこと!?」と、
そう叫ぶー。

しかしー、
船越社長が口を開くー。

「ーー”事故”のことはー?」
とー。

「ー事故?」
涼香が聞き返すと、船越社長は静かに頷いてから、
「ーーあなたたちがまだグループを結成する前の事故ー」と、そう言葉を口にするー。

「ーどういうことですかー?」
涼香がそう確認すると、船越社長は続けたー。

愛梨・静奈・真桜・涼香がまだ”ドリーム・ヘブン”を結成する前ー
見習いのアイドルとして活動していた頃ー、
あるイベントに出席するために、バスで移動をしていたー。

しかし、移動中にそのバスは”事故”を起こしたー。
事故で”4人”のスタッフが死亡し、その当時はニュースにもなったのだと言うー。

「ーーー……それと、何の関係がー?」
涼香が言うと、静奈が言ったー。

「ーこの子たちに憑依している俺たちは、その時の事故の死者ー」
とー。

「ーーえ」
涼香が表情を歪めるー。

すると、明るい雰囲気だけど大人しい真桜が言うー。

「ー僕たちは、事故のあと、目を覚ましたら
 一緒にバスに乗っていたこの子たちに…憑依してしまっていたー」
とー。

愛梨・真桜・静奈に憑依している3人の男はー、
この事務所で働いていたスタッフー。

移動中にバスの事故に巻き込まれて
3人の肉体は死亡ー、しかし、目を覚ました時には
それぞれ、愛梨・静奈・真桜に憑依した状態になってしまっていたのだというー。

「ー当然、元に戻る方法は探したー。
 この子たちに身体を返す方法はー

 ううんー。今も探してるー。
 でも、方法が分からないー」

リーダーの愛梨はそう言い放つー。

驚きの表情を浮かべている涼香に対し、
船越社長は言うー。

「3人と相談して、”いつ、この子たちが正気を取り戻しても
 アイドルとして活動できるように”、
 この子たちが、正気を取り戻すまで、アイドルを続けてもらうことにしたのー」

とー。

憑依した状態で、アイドルを辞めてしまえば、
愛梨・真桜・静奈の3人はアイドルとしての道を絶たれてしまうかもしれないー。
だから、”3人が正気を取り戻すまで”アイドルとして、
憑依した男たちが代わりに活動するー、そういうことに決めたのだー。

そして、社長は”憑依された状態の者たち”を、まとめたグループを結成したー。
他の”無関係の子”たちとグループを組ませるわけにはいかないし、
3人が正気に戻った時に、互いに同じ境遇にいる子が側にいた方がいい、と
そう判断したためだー。

「ーーで、でも…萌奈ちゃんは”憑依薬”ってー」
涼香が、静奈の妹・萌奈に言われたことを思い出しつつ言うー。

すると、船越社長は
「確かに、この世界にはそういうものもあるみたいねー。
 でも、”その子たち”は違うー。
 事故でそうなっちゃっただけー」と、そう説明しながら
”バス事故”が実際にあったことを証明するために、スマホで
当時のニュースを表示させて、それを見せて来たー。

もちろん”表向き”は、事務所スタッフが死亡しただけで、
アイドルに憑依してしまった、などということは発表されていないー。

”憑依薬”は確かに存在するー
萌奈は調べているうちに、それが原因だと思ったー
けれど、愛梨・静奈・真桜たちへの憑依はー、
薬などによるものではなく、事故によって偶然起きたものだったのだー。

「ーー…」
涼香は、「そうー…」と、そう呟きながら戸惑うー。

「ーだからーーわたしたちは、別に悪事を働こうとしてるわけじゃないのー。
 ずっと、ドリームヘブンとして過ごして今は本当にこのグループが大事だし、
 涼香のことも、仲間だと思ってるー」

リーダーの愛梨がそう言い放つと、涼香は「でもー」と言葉を続けるー。

”結成後”から、ずっと今の状態だったならー、
確かに今の”絆”は本物かもしれないー。
けれどーー

「ーでも、それならどうして”わたしだけ”、憑依されていないわたしだけ
 このグループに所属してるんですか!?」

涼香はそんな疑問を発したー。

今の話が本当なら、
”ドリーム・ヘブン”は、憑依当事者である愛梨・静奈・真桜の三人でいいはずー。
そこになぜ、涼香がーー

「ーあなたも”そう”だからー」
船越社長は言ったー。

「ーーえっ…」
涼香が戸惑うー。

その様子を見た愛梨は言ったー。

「ーあなたも”同じ”ー」
とー。

「ーーーえ…どういうー…?」
涼香が振り返ると、
大人しい真桜が気まずそうに言ったー。

「ーーー”君”も、僕たちと同じ、事務所スタッフの一人ー…
 ーーーーーその子ー…涼香ちゃんじゃないー」
とー。

「ーーー……え…????え…???ち、ちょっと待ってー?
 わ、わたしは涼香ー」
涼香がそう言うと、
静奈は悲しそうな顔をしながら言ったー。

「ー”お前”だけ、”記憶”がないんだよー」
とー。

「ーー!!」
涼香は表情を歪めるー。

”バス事故”の際にー、
涼香は頭を殴打していたー。
幸いー助かったものの、
事故当時の記憶を失いー、
そしてーー”涼香に憑依してしまった男”は
自分の記憶を失ったー。

自分を涼香だと思い込み、
そのままずっと生活してきたー。

ただー”憑依”状態にあることは、
ある脳波の検査で確認済みでー、
涼香の中には、確かに事務所スタッフの男の一人が憑依しているー。

「ーーーあなたは他の3人と違って
 元の自分の記憶を失ってる状態で、その子に憑依してるのー。

 ーーー…記憶がないとは言え、あなたも同じ”憑依”の当事者ー
 だからーーー…
 ”ドリーム・ヘブン”のメンバーなの」

船越社長のその言葉に、涼香は震えるー。

「ーそ、そんなーわ、わたしがーー…」
動揺する涼香ー。

3人は、3人だけで出かけていた理由は
”涼香だけ、憑依の自覚がないから、相談できなかった”と、
そうした上で、
「ずっと言い出そうと思ってたけど、言えなかったー」と、
愛梨・静奈・真桜の3人は謝罪の言葉を口にしたー

「ーこれが全てー
 他に隠していることは、ないわー」
船越社長がそう言うと、
茫然とした表情を浮かべながら、涼香は愛梨たちの方を見つめたー。

「ーーーーー…今まで黙っていてごめんなさい」
愛梨はそう言葉を口にすると、
涼香は動揺しながらも、ようやく落ち着いてきたところで、
言葉を口にしたー。

「ーーー…愛梨ー…お願いがあるのー」
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ーーー

愛梨、静奈、真桜、涼香の4人は、
”ドリーム・ヘブン”としてライブを行っていたー。

全てを知った涼香のお願いー

それはー
”今まで通り、みんなで頑張っていきたい”
と、いうものだったー。

もちろんショックだったし、
まだ、自分が涼香じゃないという現実味もないー。

けれどー、
少なくとも、他の3人が悪意を持って
”憑依”しているわけでも、騙していたわけでもないことは理解したー。

3人は、いずれ”この子たち”が目を覚ました時のために
アイドル活動を続けているー。
もしも、身体を返す方法が見つかれば、
自分たちが消えることになっても、身体を返す覚悟だと3人は言ったー。

そして、元に戻る方法が最後まで見つからなかった場合でもーーー…
その時は、全力で最後までアイドルとして駆け抜けるー、と。

涼香に憑依している状態の彼の記憶は戻らないけれどー、
涼香は「わたしもーーみんなと同じ気持ちー。だって、わたしたちはチームなんだからー」と、
穏やかにそう微笑んだー。

静奈の妹・萌奈には謝罪した上で事情を説明、
何とか納得してもらい、”見届ける”と、そう言われたー。

「ーーー」
涼香は、今日もステージの上でアイドルとしての
イベントをこなしていくー。

大切な、仲間たちと一緒にー。
いつか、この子たちに身体を返す方法が見つかるその日までー。

おわり

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コメント

最終回でした~!★

乗っ取られちゃってることには変わりないですケド、
今回は悪意のないタイプの憑依でした!!

いつか、元に戻れる日が来るのか、
それとも来ないのかは…
まだ、分からないのデス…★

お読み下さりありがとうございました~!★!

コメント

  1. TSマニア より:

    予想できない展開でした!☆

    今回の憑依は仕方ないですネ!

    ダークな展開とかも想像してました笑

    涼香も憑依されるかも!?って思ってました笑

    元アイドルのかれんたん(原かれん)に憑依したいのデスぅ~~~☆\(^o^)/☆笑

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~~!☆

      仕方のない憑依だったのデス…!

      むむ…
      TSマニア様も仕方のない憑依を装って憑依を…!?

      • TSマニア より:

        流石の展開でした!☆

        むむむ…

        無名さんにバレバレでしたネ(*´艸`)笑

        仕方ない憑依を装って

        かれんたんのスタイル抜群のカラダに憑依しちゃうのデスぅ~☆\(^o^)/☆笑

  2. 匿名 より:

    自分を本物だと思い込んでいる、身体を奪っている自覚のない憑依は厄介ですね。

    仮に身体を返す方法が見つかったとしても、はたして、その時に涼香は潔く身体を返せるのですかね?

    あと、もし、身体を返す方法が見つかったとしても、時期によっては悲惨なことになりそうですよね。

    例えば、40代とかそれ以上の高年齢になっている遅すぎるタイミングで身体を返したとしたら、浦島憑依の話と同じで憑依された当人にとっては絶望でしかないでしょうし。

    なので、場合によっては身体を返さないままで一生憑依しといた方がむしろ救いな気がします。

    • 無名 より:

      ありがとうございます~~!★

      他の3人は、自覚した上でアイドル活動を続けているので、
      身体を返す方法が見つかったら返しそうですケド、
      涼香は…確かに怪しいですネ~笑

      40代まで元に戻れない…★
      そうなっちゃったら、感想にも書かれている通り
      そのままの方が幸せかもデス…★!