”感染型憑依薬”の力で、
周囲に自分の魂を憑依させていく彼ー。
ついには意中の子にも自分の分身を憑依させることに成功するもー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーへへへへー
どうだ?すごいだろー?」
正彦が好きだった相手ー、天坂 麻奈美が
メイド服姿を披露しながら、笑みを浮かべているー。
「あ~~~!くそっ!千里より、俺も天坂さんがよかった!」
正彦の妹・千里もメイド服姿のまま悔しそうに言葉を口にするー
メイド服が好きな正彦は、
憧れの麻奈美の身体でメイド服を着て楽しんでいたー。
「ーいいなぁー…」
正彦本体も、”麻奈美に憑依した俺”のことを羨ましがりながら
そう言うと、麻奈美が「へへー”俺”の本体は身体を移動できないだもんなー」と、
少し同情するような表情を浮かべるー。
正彦の家で”欲望の時間”を過ごす正彦たちー。
妹の千里も、両親も既に”感染型憑依薬”の餌食である以上、
誰も、麻奈美を連れてきても、その麻奈美にメイド服を着せても、
何も言うことはないー。
「ーへへーそろそろさー、”天坂さん”としちゃおうぜー?」
麻奈美がニヤニヤしながら言うと、
近くにいた正彦の親友・俊太が「お、俺にもやらせろ!」と、叫ぶー。
俊太も既に”正彦の分身”に憑依されているー。
「俺も!」
妹の千里も叫ぶー。
「ーおいおい、千里の身体とじゃ、女同士になっちゃうだろ?」
麻奈美が言うと、千里は「それでもいいだろ別にー!」と、そう言い放つー。
賑やかな正彦の家ー。
やがて、正彦たちは”順番に”麻奈美の身体を堪能すると、
夜までお楽しみを続けたー。
がーー
「ーーー会社はもうだめだなー」
帰宅した正彦の父親が言うー。
父親ももう、”正彦”に憑依されている状態ー。
嫌々会社には行っていたものの、会社内でも
”感染型憑依薬”による正彦の分身体の感染・憑依が続き、
会社が機能停止したと、父親は言葉を口にしたー。
「ーえぇ、ど、どうにかならないのか?」
正彦本体よりも先に、妹の千里がそう言うと、
「いやぁ…だって、”俺”に経営なんてできないだろ?」
正彦の父親が言うと、
正彦も、千里も、麻奈美も、俊太も、
「ま、まぁーそうだなー」と、頷くー。
「ー会社の専務だけは”俺”になってないけどー、
もう専務に俺が移るのも時間の問題だろうしー
仕事は別に探すしかないなー」
父親に憑依している正彦の分身体はそこまで言うと
「ーっていうか、俺も天坂さんと遊ばせてくれ!」と、
急に声を上げるー。
「ーーへへーもう何人も相手にしてるから、
流石に天坂さんの身体もくたくたなんだけどな」
麻奈美がそう言うと、
正彦は「明日も、取り合いだろうなぁ…みんな”俺”なんだし」と、笑うと、
麻奈美は「ーはぁ~…ある意味、この身体に憑依した”俺”も大変かもなー」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーそろそろ、”感染”をどうにかしないとなー」
数日後ー、学校にやってきた正彦は
クラスメイトたちを集めて、そう言葉を口にしたー。
最初に分身に憑依された女子生徒・由奈が
「もうクラスは全員、俺だもんなー」とそう言うと、
ポニーテールの女子生徒が「いや、D組も全員俺になったぞー」と、
そう口を挟むー。
どんどん、広がり続ける”俺”ー。
正彦は戸惑いながら
「ーーで、どうやって”感染”止めるんだー?」と、
そう言葉を口にすると、
麻奈美がスマホを手に呟くー。
「ー感染型憑依薬を購入したサイトに問い合わせするしかないだろー
俺たちには止める方法なんて分からないしー」
と、そう言葉を口にしながらー
「ーへへ、”女王様”の言う通りー」
男子生徒の一人が笑うー。
正彦が”好きな女子”だったせいかー、
麻奈美に憑依した正彦の分身体は、
今や女王と呼ばれて他の正彦から崇められていたー。
麻奈美に正彦の分身体が憑依して、
”正彦”になっても、
周囲が全員正彦になったことで、結局、正彦が麻奈美に
相手して貰うためには、”正彦同士の競争”に勝たなければ
いけなくなってしまったのだー。
「ーーへへー俺のご機嫌を取るのが上手だな~!
今日の夜、遊んでやるよ」
その男子生徒の肩を叩く麻奈美ー。
「ーおい!俺にも遊ばせろ!」
ツインテールの女子生徒が声を上げながら、麻奈美の方に駆け寄るー。
「えへへー分かってるってー
でも、”天坂さん”の身体は一つだからなー
順番順番ー」
麻奈美がご機嫌そうにそう言葉を口にすると、
クラスで”根暗”などと言われていた男子生徒が、
「くっそ~~!ずるいぞ!」と、
”憑依した先の身体の格差”に不満を漏らすー。
「ーおいおいおい、俺同士で争うなよなー」
正彦本体がそう言うと、麻奈美も、他の正彦になった者たちも
「本体の言うことはちゃんと聞かなくちゃな!」と、
そんな言葉を口にするー。
正彦の分身体たちは、”本体”である正彦には
それなりに敬意を払うような動きをしていて、
”麻奈美”同様に、ある程度大事にされているー。
「ーとにかく、”感染型憑依薬”を売ってたところに連絡してみようー
このままじゃ、学校も終わりだしなー」
正彦がそう提案すると、他の正彦になった者たちも、静かに頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーどうも、佐久間(さくま)ですー」
拡散型憑依薬を開発・販売していた研究機関の主任・
佐久間 隼人(さくま はやと)が、やってくると、
「ー実はあの憑依薬はまだ開発中で、うちの社員の一人
勝手に広告を出して先着1名にと売ってしまったものでー」と、
佐久間主任はそう説明したー。
佐久間主任は、”正彦”の分身に憑依されないように、
特殊なマスクをしていたー。
”こんな姿で申し訳ありませんが、感染型憑依薬を飲んだあなたと
お話する際には必要な対応ですのでー”と、そう言葉を口にした上で、
説明を続けるー。
「誰も怪しくて買わなかったみたいなんですがー
あなたが買ってしまったようでー」
佐久間主任の言葉に、正彦は”あんなものを買うなんて馬鹿”と
遠回しに言われているような気持ちになりながらも
苦笑いすると、
「それで、感染を止める方法はあるんですか?」と、
そう言葉を口にするー。
「えぇ。”感染”した人間から魂の分身体を取り除くための
用意がありますし、
それとー、あなた自身の”感染型憑依薬”の効果を
消す方法も用意ができていますー。
それを使えば、感染は止められますし、
あなたの分身体に憑依されてしまった人々を
元に戻すことも可能、ということですー」
その言葉に、正彦は表情を歪めるー。
”感染型憑依薬”による正彦の憑依感染拡大を止めなくては
ならないのはそうだー。
しかし、麻奈美の身体で”卒業”した今となっては、
麻奈美まで正気に戻ってしまうのは、
少しためらいがあったー。
「ーそ、そういえば、”俺”に憑依されている人たちの
その間の記憶はどうなりますか?」
正彦がそう言うと、
佐久間主任は「安心して下さいー。憑依されている間の記憶は残りません」と、
そんな言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
正彦は、佐久間主任の研究施設を
1週間後に訪れることを約束し、
そのまま帰宅したー。
「ーーー天坂さんだけ、何とか俺に憑依されたままにできねぇかなー」
正彦はそう言葉を口にすると、
妹の千里がやってきて「俺たちは、消えるってことかなー?」と、
少し心配そうに呟くー。
「ーいやーー消えないだろー
みんな、元は俺なんだからー、俺に戻るだけだー」
正彦がそう言うと、千里は少し拗ねた様子で、
「ーーまぁ、”本体様”からすりゃあまり関係ないことかー」と、
そう呟くー。
「おいおいおい、俺同士で争うのはやめようぜー?」
正彦がそう言うと、千里は少し苦笑いしてから「だなー」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
”大統領が、突然おかしな行動を取り始めてー、
会談は中止となりましたー。”
「ーーーーー」
そんなニュースを見ていた妹の千里は青ざめながら
「お、おい!”俺”!!」と、叫んで正彦の部屋に駆け込むと、
「テレビを見てくれ!」と、テレビのある部屋に正彦を連れて来るー。
するとー、
とある国の大統領が困惑した表情で、
「お、俺はただの高校生だぞ!!?大統領なんてできない!」と、
そう叫んでいる姿が映し出されていたー。
しかもー、ニュース番組のコメンテーターとして出演している
女性評論家も、番組を休んでいて”もしかすると”という不安が広がるー。
「ーマ、マジかー…
な、何で大統領にー”俺”がー?
俺、大統領と会ったことなんてないし、
海外の友人なんていないぞ!?」
正彦が叫ぶと、千里は言うー。
「いやいや、父さんも”俺”になってるし、
先生も”俺”になってるしー、
もう俺と全く面識がなくても、いつ誰が”俺”になってるか分からないんだよ!」
とー。
「~~~~~~~」
”感染型憑依薬”は、正彦本人だけではなく、
正彦の魂の分身が”感染”した人間からも広がっていくー。
そのため、既に正彦とは全く面識のない人間にも広がりー、
同級生から、同級生の親へー、そして職場の人間へー、
さらには取引先へー、と感染は広がり、
既に海外まで拡大していたー。
「ーや、やべぇだろー…
も、もう天坂さんがどうこう言ってる場合じゃねぇ」
正彦は、好きな女子である”麻奈美”だけは、
自分の魂の分身を憑依させたまま終えたいー、と、
そう思っていたものの、もはやそんなことを
言ってられなくなってしまったー。
「ーーくそっ!佐久間さんのところに行ってくるー」
正彦はそう叫ぶと、
千里は静かに頷くー。
がーー、
街中にも「お、俺!やべぇことになってるぞ!」と、
知らない女が駆け寄って来るなどしてー、
既に”正彦”だらけになっていたー。
「ーーーーー」
バスを待っていたものの、バスもやってこないー。
どうやら、バスの運転手にも”正彦の憑依”が広がり、
もはやバスの運行も止まってしまっている様子だったー。
「ーくそっ!!くそっ!!!くそっ!!!」
正彦はそう叫びながら、研究施設にたどり着いて中に入るー。
しかしーーーー
「ーーーーーーーーーー」
佐久間主任は、正彦を見ると表情を歪めたー。
「ーーど、どうかしましたか?」
正彦がそう言うと、佐久間主任は困惑した表情を浮かべながら言ったー。
「ーーー悪いー…そのー…”俺”なんだー」
とー。
「ーーー!!!!」
正彦は青ざめるー。
”感染型憑依薬”の対処法を知っている佐久間主任や、
その研究チームのメンバーも、”正彦”になってしまっていたー。
正彦の前では防護用のマスクを身に着けていた主任ー。
しかし既に感染は”別方面”から広がり、
今朝までに全員、正彦の分身が憑依した状態になってしまっていたー。
「ー残されたデータから、元に戻す方法を探そうとしたけど、俺じゃ分かんねぇ」
白衣の癖毛の女が近付いて来るー。
「ーど、どうすりゃいいんだー?」
佐久間主任が、正彦にそう言葉を口にするー
「い、いやー…わ、分かんねぇよー…分かんねぇよー」
正彦は青ざめながら「こ、この研究所内に”俺”になってない人はいないのか!?」と、
そう叫ぶー。
けれどーーー…
既に、”感染型憑依薬”を作った施設の人間は、全員、
正彦になってしまっていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3か月後ー
「ーーーー…ーーー」
停電して、水も出ないー
そんな状況で、正彦はボロボロになった状態で
麻奈美の方を見つめるー。
麻奈美は苦笑いしながら、
「ーーもう、”俺”しかいなくなっちまったなー」と、
そう言葉を口にするー。
近くにいた妹の千里も「食料も確保できないしー」と、
絶望の表情を浮かべるー。
ついにー、全人口のほとんどが”正彦”になってしまったー。
正彦は必死に”社会を維持しようと”
憑依してしまった人々の元の仕事を続けようとしたもののー、
憑依相手の”記憶”は読めないためー、
正彦の知識しかなくー、
”専門的なこと”は何もできなかったー。
分からないことだらけで、勉強するにも時間がないー。
あっという間に社会のシステムは崩壊しー、
今では、”正彦”たちが無法者と化して各地で略奪を行う、
混沌の世界になってしまっていたー。
「ーーー…こんなことになるなんて、思わなかったー」
正彦が涙目でそう言葉を口にすると、
麻奈美も、千里も目に涙を浮かべながら
「ーーーーもう、終わりだー」と、
そう言葉を口にするのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ついに全員が”正彦くん”になってしまいました~…★
恐ろしい結末ですネ~…!
危険な力は、使う前によく考えなくちゃダメなのデス!
お読み下さり、ありがとうございました~!★!
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