<憑依>宣戦布告③~歪められた彼女~(完)

憑依されて奪われた彼女を前に
何もすることができない彼ー。

好き放題される彼女から、
”憑依した男”を追い出す方法はー…!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

パソコンの画面に表示された
”上杉 幸太郎”ー…彩菜に憑依している男の顔写真に
キスを続ける彩菜ー。

「ーーあぁ…上杉くん大好きー 大好き♡」
メイド服姿の彩菜がパソコンの画面を唾液で汚しながらキスを
繰り返しているー。

その光景に、吐き気すら覚えた亮太は
「ー彩菜の身体でこれ以上ー好き放題するな!」と、声を上げるー。

が、彩菜はそれを無視して
「あんな怖い男より、上杉君が好きなのー」と、
”憑依している自分”の名前を口にしながら、
笑みを浮かべるー。

「ーーおいっ!!」
パソコンの電源を無理やり切ると、
亮太は彩菜の腕を掴みながら、
「彩菜から出ていけー!」と、
今一度言葉を口にするー。

「ーーふふーい・や・だ♡」
彩菜はそう言うと、亮太を振り払ってメイド服を
脱ぎ始めるー。

「次は何を着せようかなぁ~」

「ー彩菜は着せ替え人形じゃないんだぞ!!」
亮太はなおも叫ぶー。

それを無視して、彩菜はチャイナドレス姿に着替えると、
嬉しそうに色々なポーズを決めていくー。

「ーあぁぁぁぁ…藤森さんのー
 藤森 彩菜の全てが俺のものだー」
興奮した様子で自分自身を抱きしめる彩菜ー。

「ーーもう、”藤森 彩菜”はお前のものじゃなくてー
 完全に俺のものなんだー
 ふふっ…ふひひ♡」
彩菜は自分を抱きしめながら、邪悪な笑みを浮かべるー。

「ーーいい加減にしろよ!!!
 好き勝手される彩菜の気持ちも考えろ!!」
亮太が、そう叫ぶも、
彩菜はそれを無視して、生足を嬉しそうに撫でまわすー。

「ーーおい!!!!こんなことしてタダで済むと思うなよ!
 必ず警察にー」
亮太がそこまで言うと、
彩菜は髪をぐしゃぐしゃと掻きむしりながら、
「あ~~~~~!ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせぇなー」と、
彩菜とは思えない恐ろしい声で叫ぶと、
「ー”俺のもの”で、俺が楽しく遊んでるんだから邪魔すんなよ!」と、そう叫ぶー。

そしてーーゆっくりと立ち上がると
チャイナドレスの上に上着を羽織って、
そのまま歩き出したー

「お、おいっ!どこに行くー!?」
亮太がそう言葉を発すると、
彩菜は「”わたし”がどこに行こうと勝手でしょー」と、
そんな言葉を口にして、部屋に外に向かって行くー

「おい!彩菜を返せ!」
亮太が叫びながら、アパートの部屋から飛び出すー。

がー、憑依された彩菜は、自分の部屋をそのまま放置して、
そのまま走り去っていくー。

「おいっ!…くそっ!」
合鍵を持っていない亮太は、彩菜の部屋を開けたまま
飛び出して行くわけにもいかず、戸惑いの表情を浮かべている間に、
憑依された彩菜を取り逃がしてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

彩菜の部屋で鍵を見つけて、とりあえず彩菜の部屋の
戸締りをして帰宅した亮太ー。

亮太は、彩菜に何度も電話を掛けたり、
メッセージを送ったものの、その返事はなかったー。

こうしている間にも、彩菜は好き放題されているー
焦りばかりが募っていくー。

がー、彩菜に 憑依した男・幸太郎の言う通りー、
警察に相談しようにも、それも難しかったー。

”彼女が上杉 幸太郎って男に憑依されました”
などと警察に相談しても、まともに取り合ってくれないのは分かっているし、
警察側が”それは大変だ!”なんて反応を見せたら、
それはそれで問題な気がするー。
憑依なんて、普通はあり得ないことなのだから、疑って当然なのだー。

「ーー……くそっー…」
亮太はどうにかしようと思いつつも、どうにもできずに、
2日後ー、大学に行く日を迎えてしまったー。

がーーー
大学に到着すると、友人の一人が困惑した表情で声をかけて来たー。

「ーーお前ー彩菜ちゃんと別れたんだってなー」
とー。

「ー!?」
確かに、”憑依された彩菜”から別れは告げられたー。
しかし、なぜ友人がそれを知っているのかー。

そう思っていると、
”彩菜”の姿が目に入ったー。

茶色に染まった髪にツインテールー、
お姫様のような、大学には少し不釣り合いな格好の彩菜が、
友達に楽しそうに話しかけていたー。

「ーうん!わたし、亮太とは別れたからー!」
彩菜がそんな風に言葉を口にしているー。

「え?ホントに!?どうして?」
友達がそう言うと、彩菜は「だってアイツ、つまんないんだもん」と、
そう言いつつ、「それでね、今度、上杉くんって人と付き合い始めたのー」と、
勝手にそう言葉を口にしているー。

「ーーーーおいっ!」
亮太が、友達と会話を終えた彩菜に話しかけると、
ツインテールを揺らしながら、彩菜が振り返るー。

「ーへへー”彼女”に俺好みの髪型と髪色にしてもらったんだー
 いいだろ?」と、
自分のツインテールを触るー。

彼女が、”新しい彼氏”に染められていくー
そんな様子を見せ付けられながら亮太は「ふざけるな!
どこまで彩菜を踏みにじるつもりだ!」と、そう叫ぶー。

しかしー

「ーえ~~?わたしは、わたしの意思で上杉くんの彼女になったんだよ~?
 振られたの受け入れらないって、みっともなくない~?」と、
煽り始めるー。

「ーーくーー…」
亮太が、なおも言葉を発しようとするー。

しかし、彩菜は他の友達に声を掛けられて、
そっちの方に行ってしまうー。

「ーーツインテールなんて、珍しくない?」
そんな友達の言葉に、
「ー”新しい彼氏”がねー、この方が可愛いって言うからー」と、
嬉しそうに言葉を口にするー。

亮太は、頭がおかしくなってしまいそうな気持ちになりながらも、
何とかしないとー、と、そんな言葉を口にしたー。

しかし、打つ手がないまま時ばかりが流れー、
彩菜が”染まっていく”姿を見続けるしかなかったー。

”ねぇねぇ、悔しいー?
 わたし、今日も”幸くん”のために色々な格好したのー
 ふふふ”

憑依された彩菜から”煽る動画”が送られてくるー。

最初は、彩菜に憑依した幸太郎は、自分のことを
”上杉くん”とそう呼んでいたー。

しかし、時間の経過と共に”幸太郎” ”幸くん”と
呼び方を変えていきー、
”元カノが新しい彼氏のものになった”というような空気を出して
挑発してきたー。

「ーーー…」
スマホを握りしめる亮太ー。

”絶対に許さねぇー”
そんな怒りの心は、常に抱いているものの、
どうすることもできないー。

彩菜の身体から、幸太郎を追い出す方法が分からない上に、
彩菜本人が何も抵抗できず、
身も心も乗っ取られている状態では、
人質に取られてしまっているようなものだー。

だがー、早くどうにかしないとー…
もっともっと、取り返しのつかないことになるー。

そんなことを思いつつ、亮太は”憑依”について調べ始めるー。
やつが、彩菜に憑依した方法、何を使ったのか、
具体的に把握できれば、彩菜から幸太郎を追い出す方法が
分かるかもしれないー、とー。

しかし、そうこうしているうちに
”憑依された彩菜”からまた動画が届いたー。

「ーー!?」
亮太は表情を歪めるー。

動画の彩菜は嬉しそうに
自分の手を見せながら
”ねぇねぇ見てみて~”と、笑いながらカメラの方に視線を向けているー。

そんな彩菜の指には”婚約指輪”らしきものが
はめられていたー。

”わたし、”幸くん”と結婚したの♡
 ふふっー わたし、今、と~っても幸せ”

婚約指輪を自慢しながら、彩菜が笑うー。

「ーーな…な…何を言ってー…」
亮太がそう言葉を口にすると、
動画の中の彩菜は嬉しそうに続けたー。

”ほら、これ見てー?”
そう言いながら、彩菜がカメラに向けたのは
”婚姻届”だったー。

上杉 幸太郎と彩菜の名前がそこには書かれていて、
既に受理されている様子だったー。

”えへへーわたし、幸くんの妻になったの!
 えへへへー!
 どう?元カノが人妻になった気分はー?
 えへへへへへへっ♡”

彩菜が下品な表情を浮かべながら笑うー。

「ー~~~~~~~~」
それを見た亮太は、自分しかいない部屋で
そんなことをしても意味がないのに、
怒りの雄たけびを上げたー。

「ーーお前!絶対に…!絶対に許さないからな!
 彩菜から引きずり出して、二度と動けないように
 してやるからな!!」
怒りのあまりにスマホを叩き割りそうになってしまう亮太ー。

”へへへへーー
 ”この手”が、彩菜の筆跡も再現できるからなぁ~
 俺と彩菜の名前を書いて結婚したってわけー”
ニヤニヤしながら彩菜が言うー。

”ってことで、これからわたしは”上杉”彩菜だからー
 よろしくねー”

彩菜は動画の中でそう言葉を口にすると、
既に”名字”を変えた身分証明書を画面の方に向けて微笑んだー。

「ーーーーぁ…ぁ…ーーー」
怒りの後には、声にすらならない絶望が押し寄せて来るー。

亮太は椅子に座ったまま頭を抱え込んで、
動画が終わったあとにも、何をする気力も沸いてこないー、
そんな状況が続くー。

もう、彩菜が乗っ取られてそれなりの時間が経ったー。
彩菜の優しい笑顔がだんだんと思い出せなくなるー。

彩菜の顔がだんだんと”イヤな奴”の顔に思えてきてしまうー。
人間の脳とは、無情だー。

相手は、憑依されているだけの被害者なのに、
その相手にイヤなことをされ続けると、
だんだんと、大好きな人のはずなのに、
助けないといけない人のはずなのに、
自然と嫌悪感が沸いてきてしまうー。

自分の中の感情が取り返しのつかないことになる前にー、
そしてー、彩菜が取り返しのつかないことになる前にー
彩菜を取り返さなくてはならないー。

絶対にー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、時は流れたー。

亮太は”何もしなかった”訳ではないー。
本当に、一生懸命ー、
あらゆる手を尽くした。

できることはなんでもしたー。

けれどー、
”憑依”などという”普通では遭遇しないような現象”を前に、
時間ばかりが過ぎて行ったー。

”憑依した本人”が、乗っ取った身体を捨てようとしない限り、
どうすることもできなかったのだー。

そしてーーー

”久しぶり~!”元カレ”のあんたにも報告しておこうと思って~!”
すっかり、別人のような雰囲気になってしまった彩菜が微笑むー。

”夫好みのわたし”になったとか何とか、以前、そう言っていたー。

そんな彩菜から、報告が届くー。

”ーーねぇねぇ見て~!わたし、”妊娠”したの♡ ふふっ”
彩菜が煽るような口調で邪悪な笑みを浮かべるー

”ねぇねぇ~人妻になって妊娠しちゃったわたしを見た
 今の気持ち、どんな気持ちぃ~?”

彩菜の心底悪意に満ちた表情を見つめる亮太ー。

誰の子供なのだろうかー。
上杉 幸太郎が彩菜の身体から抜け出して
そういうことをしたのかー、
あるいは憑依されているまま彩菜が他の男とー…

「ーーーー」
亮太は、動画の再生を途中でやめて、
彩菜の連絡先も何もかも削除ー、2度と彩菜からの連絡も受信できないようにして
そのまま呆然としたまま、ベッドに寝転んだー

もう、限界だー。
心が、壊れてしまうー
これ以上は、耐えられないー。

亮太は、”もう、俺の好きだった藤森 彩菜はいないんだー”と、
自分の頭の中で必死にそう言い聞かせて、
目から涙をこぼしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほんの少しだけーー

”彼”にも罰が下ったのかもしれないー。

「ーーはぁ!?!?一緒に育てるって約束だっただろ!?!?!?」
彩菜が声を荒げるー。

彩菜に憑依した上杉 幸太郎は、
高校時代からの”唯一の親友”に憑依のことを明かし、
彩菜の身体で子作りをしていたー。

全ては、亮太を煽って楽しむためー。

がーーー
”相手”から、”ー俺はお前の夫じゃないしぃ~?子供は自分でどうにかしろよ”と
約束を破られてしまっていたー。

「ーーーー」
泣きじゃくる赤ん坊を見て、彩菜は表情を歪めるー

「くそっ…!俺が一人で子育てだと?冗談じゃない!」
彩菜は苛立った様子でそう言葉を口にするー。

後先考えずに、学生時代の唯一の親友を誘惑した幸太郎ー

”女になったら一度出産も経験してみたいじゃん?”と、
ゲラゲラ笑いながら、面白半分で子供を作ってしまった幸太郎ー。

出産の想像を絶する苦痛を味わいながらも、
その後は、Hなことをする見返りに親友に子育てを押し付けようとしていたー。

がー、裏切られたー。

泣きじゃくる赤ん坊ー

「ーーうるさい!!!静かにしろ!!!」
憑依されている彩菜は怒りの形相でそう叫ぶと、
「くそっ!!くそっ!!何でこんなことにー」と、
一人頭を抱えるのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最後まで救いのないお話でした~…!

逆転ハッピーエンドのお話もあれば、
ダークに突き抜けたまま終わるお話も
あるのデス…★!

お読み下さりありがとうございました~~!★!

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憑依<宣戦布告>

コメント

  1. 匿名 より:

    少しですが、ざまあな結末ですね。
    あと、幸太郎は母性本能に目覚めたりとかはしないんですかね?
    このままではなんの罪もない子供がネグレクトされそうで可哀想すぎです。

    その後の続編の話が見てみたいですね☆

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!★
      幸太郎はとことん自分勝手な人間なので、母性本能も0デス~…!

      続編…!
      とっても大変なことになってしまいそうですネ~笑

      でも、考えてみるかもデス~