<入れ替わり>入れ替わり★ルーレット

”入れ替わりルーレット”ー。

ランダムで相手と入れ替わることができるという奇妙な”イベント”が
そこでは開催されていたー。

そんな噂を聞きつけて、今日も入れ替わりを目論む男が
やってきたー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーククク…ここが”噂”の入れ替わりルーレットかー」

男が、笑みを浮かべながらその場所にやってくるー。

彼の名は、奥山 栄太郎(おくやま えいたろう)ー。
彼という人間を一言で説明するのであれば、”変態”だー。

変態である栄太郎は、
”入れ替わりルーレット”の噂を聞きつけて、
この場にやってきていたー。

「あぁぁぁ~~~くっそぉおぉぉぉおお!!!」
眼鏡をかけた、肌がボロボロの体重は100キロを超えていそうな
巨体の男が、悔しそうに中から出て来るー。

「ーーーー」
栄太郎はその姿を見つめながら少しだけ笑うー。

”ルーレットで外したかー。愚かなー”

”入れ替わりルーレット”は、
自分の身体を賭けて、”入れ替わり相手”をルーレットで選ぶイベントー。

参加料を払い、入れ替わりルーレットに挑戦すると、
”6人の入れ替わり候補者”の中から、
ルーレットで止まった相手と入れ替わることになるー。

中年のおじさんから、美少女まで
幅広いジャンルの”6人”が用意されていて、
そこから、選ばれた身体と入れ替わるのだー。

つまりは、ギャンブルー。

”いい身体”を手に入れることができる可能性もあればー、
”最悪の結果”をもたらす可能性もありー、
どちらに転ぶかは、ルーレットを回して見なければ分からないー。

「ククー運のねぇやつはさっきのやつみたいになるってことさ」
栄太郎はそう言葉を口にしながら
”入れ替わりルーレット”が行われている建物に入ると、
バニーガール姿の女が「いらっしゃいませ~」と、にこにこしながら
近付いて来たー。

「ーククー。”ルーレット”挑戦させてもらえるかい?」
栄太郎はそう言うと、”ルーレット”の料金である100万円の札束を
カウンターに叩きつけたー。

「1~2枚多いかもしれないが、釣りはいらねぇ。取っておきな」
栄太郎が少しカッコつけながら、
「君みたいな綺麗なお姉さんへのチップだー」と、
受付のバニーガールの女に言い放つー。

「ーふふー」
バニーガールの女は少しだけ笑うと、
「ーーこれ、98枚しかありませんけどー」と、そう指摘するー。

「ーーー……」
カッコつけていた栄太郎は少しだけ青ざめると、
「クー、クク…”あえて”君の反応を試したんだ」と言い訳しながら
10万円を追加で支払い、8万円をバニーガールのチップとしたー。

「ありがとうございます~♡」
バニーガールの女は嬉しそうにチップを受け取ると、
「それじゃ、この先の会場に入ったら、ルーレットがスタートするので
 お客様の好きなタイミングで、ルーレットを止めて頂いて、
 ルーレットで決定された相手と入れ替わっていただきます」と、
そう説明を口にするー。

「ーただ、よく後からクレームをつけられることもありますので
 先に念押しをしておきますがー
 ”望まない身体”が選ばれた場合でも、
 後からキャンセルすることは出来ず、必ず入れ替わっていただきますー。

 それでも、本当によろしいですか?」

その言葉に、栄太郎は「あぁ、もちろんー」と頷くと、
「俺は”運”を持ってる男だからなー」と、そう言葉を口にするー。

「ーふふーなら、心配いらないですねー」
受付のバニーガールの女はそう言葉を口にすると、
「”万が一”後からクレームを付けられた場合は
 ”ペナルティ”が運営者より課せられるので、その点だけはご注意ください」と、
そう説明を付け加えたー。

「わかったー。俺はクレームなどつけないから安心しろー
 仮にブスとかおっさんが選ばれたら、また100万払ってルーレットを回すだけだー」

そんな栄太郎に対して、バニーガールの女は笑うと、
「それでは、この先が入れ替わりルーレットの本会場ですー
 ごゆっくりお楽しみくださいー」と、そう言葉を口にしたー。

複数存在する扉ー。
ルーレットの会場は3室ほど用意されていて、
今もNo002の部屋は使用中のようだー。

栄太郎は”入れ替わり相手のメニュー”の表示を見つつ、
No001とNo003の部屋を見比べてから、
No003の部屋の扉の前に立ったー。

「ーーーー」
そして、扉の前で栄太郎は一度立ち止まると、
振り返ってから笑みを浮かべるー。

「ところで、”君”は、身体と中身は一致しているのかー?」
とー。

「ーーーーー」
バニーガールの女は少しだけ間を置いてからクスッと笑うと、
「ーー”この身体”は、今はもう”わたしの”ものですよー」と、
自分の服を触りながら嬉しそうに微笑んだー

「ーククーそうかー
 俺も早く、君みたいになりたいものだなー」
栄太郎がそう言うと、バニーガールの女は
少しだけ笑ってから
「いいものですよー”女の身体”はー…
 面倒なこともありますけどー」と、それだけ言葉を口にしたー。

栄太郎はニヤッと笑うと、そのまま奥へと進んでいきー、
”入れ替わりルーレット”の会場へとやってきたー。

1、2、3、4、5、6ーと、
それぞれ表示されたガラス張りの部屋に、
一人ずつ、入れ替わり候補者がいるー。

1の部屋には、ツインテールの美少女がー、
2の部屋には、眼鏡の冴えないおじさん、
3の部屋には、どこかクールさを感じさせる美人の女性ー
4の部屋には、栄太郎から見てどう見てもブスにしか見えない女ー。
5の部屋には、仮面をつけていて男か女かも、年齢も分からない人物ー。
6の部屋には、バッタがいたー。

「ーーー6が出たら、俺はバッタと入れ替わるってことかー?」
栄太郎が少し笑みを浮かべながら言うと、
巨大ルーレットが設置された部屋に姿を現した
巫女服姿の女が微笑むー。

「そういうことですー。
 おじけづいたのであれば、お金だけおいて
 帰ることもできますよー?
 今なら間に合いますー」

とー。

「ふんー馬鹿言えー
 俺は悪運が強いんでなー。6が出ることはねぇよ」

ルーレットはあくまでも”運次第”ー
そうだと言うのに、栄太郎は自信満々な表情を
浮かべながらそう言い放つー

「大した自信ですねー」
巫女服姿の女がそう言うと、
「御託はいいー。俺も早く”あんたみたいに”なってみたいよー」
と、栄太郎は笑みを浮かべるー。

「ーわたしみたいに?」
巫女服姿の女が笑うと、
栄太郎は「ーあぁ。受付の女も、あんたもー
”身体と中身は違うひと”だろ?」と、ニヤッと笑うー。

巫女服姿の女はニヤッと笑うと、
「”2”の部屋にいるおっさんーーー 
 あれが”元々のわたしの身体”ですー」と、そう言葉を口にするー。

「へぇ…」
栄太郎はニヤッと笑いながら”2”を見つめるー。

「ーーまぁ、今はもう、その身体には”誰がいるのか”も
 分かりませんけどー」
巫女服の女はそれだけ言うと、
「ーー心の準備が出来たなら始めましょう。ルーレットをー」と、
本題に戻るー。

栄太郎の前には大きなボタンがあるー。
それを好きなタイミングで押すように、と、巫女服の女は
そう説明したー。

「いいぜー回しなー」
栄太郎がそう言うと、ルーレットが勢いよく回転を始めるー。

”1か3なら最良ー…
 5は仮面のせいで未知数だが、もしかしたら美女かもしれねぇー
 がーーー…”

栄太郎は目でルーレットを追いながら考えるー。

”仮面の下の顔が化け物の可能性もある。5は避けるに越したことはないー。
 2と4はハズレー…ま、だが、最悪の場合はやり直すこともできる、かー”

栄太郎は考えるー。

実はまだ”あと500万”用意しているー。
入れ替わりルーレットは、あと5回回せるのだー。

”ーーー6だけは避けないとなー、バッタになったら終わりだ”
栄太郎はそう考えながら、ルーレットを見つめるー。

「ちなみに今日は”何人ぐらい”あたりを引いたんだー?」
栄太郎がそう言うと、巫女服姿の女は、”4人ほどー。大体全体の3割の人が
理想の身体を手に入れてます”と、そう説明したー。

その映像を、会場のスクリーンに表示する巫女服姿の女ー。

冴えないサラリーマンのおっさんが、ポニーテールの美少女と入れ替わったり、
中年のおばさんがイケメンの男と入れ替わったりするシーンの映像だー。

「ーーへへー…」
栄太郎は笑みを浮かべると、
隣の部屋から嬉しそうな叫び声が聞こえて来たー。

隣の「No002」の部屋でルーレットに挑戦していた客の
喜びの声だー。

「ーーーあ~…隣のお客さん、いい身体を手に入れたみたいですねー」
案内役の巫女服姿の女が、モニターにライブ映像を表示するー。

ガッツポーズしている禿げ頭のおじさんー。
ルーレットは”3”を示していてー、
3は三つ編みの優等生の女だー。

確かに、あたりだー。

「ーーククーなら、俺も続くとするかー。」
回転を続けるルーレットを見つめながら、栄太郎はニヤリと笑うー。

慎重にタイミングを見定めながら
ルーレットの停止ボタンを見つめる栄太郎ー。

”ーーーーー”
その様子を、巫女服の女はじっと見つめるー。

そしてー、
栄太郎は”3″を狙ってボタンを押したー。

本当は”1”のツインテールの美少女の身体が一番欲しかったものの、
“3”のどこかクールさを感じる美人女性に狙いを定めたー。

理由は”万が一の事故”を防ぐためー。
1を狙うと、外した場合に”6”のバッタになってしまう可能性があるー。
そうなったら、終わりだー。

3を狙えば、万が一外しても2のおじさんか、4のブスー。
それなら、もう一度ルーレットに再挑戦すればいいー。

だから、3を狙ったー

「今だ!」
栄太郎がカッと目を見開いて、ルーレットの停止ボタンを押すー。

”3”ー

巫女服の女の手元にある端末にそう表示されるー。

「ーー流石ですねー狙い通りー」
栄太郎に聞こえないように、小声でそう呟く巫女服の女ー。

がーー

巫女服の女は、端末の”4”のボタンを押すとー、
”送信”ボタンを押したー。

”4”
ルーレットは”4”で止まったー

「チッ」
表情を歪める栄太郎ー。

入れ替わり相手は、栄太郎から見て”ブス”の女だー。

「ーでは、入れ替わっていただきますー。」
巫女服の女がそう宣言すると、天井から電流のようなものが放たれー、
気付いた時には栄太郎は、彼が”ブス”だと断じた女、透子(とおこ)になっていたー。

透子(栄太郎)は”4”と書かれたガラス張りの部屋から
”栄太郎”になった透子を見つめるとー、
「ーケッー…ブスかー」と、自分の身体になった”透子”の身体を
不満そうに叩くと、そのまま「もう一度ルーレットを回したい」と、
そう叫んだー。

「ーーーもちろんー」
ニヤッと笑う案内役の巫女服の女ー。

透子(栄太郎)はルーレットを再び回すー。
”景品”となる身体の顔ぶれも変わったものの、
今度は”6”に、ミミズが設置されているー。

6は絶対にハズレのようだー。

”2”ー
透子(栄太郎)は「チッ!」と、舌打ちをするー。

”3”のお嬢様を狙ったが外したー。
2は中年太りしたおじさんだー。

「ーーもう1回!」
おじさん(栄太郎)は叫ぶー。

「ーーーもう1回!!!」
ゾンビのような顔立ちの女の身体で栄太郎は叫ぶー。

「くそっ!!!もう1回だ!!!」
”それなりに可愛い”ものの、まだ満足できないのか、栄太郎はさらに叫ぶー。

そして、”最後の1回”がやってきたー。

”ーー人間は、愚かな者ー”
巫女服の女は、そう心の中で呟くと、
女の身体で、ルーレットを止めようとしている栄太郎を見つめるー。

”フェアじゃない勝負”と分かっていても、
人は”ゲーム”に挑戦してしまうー。
あと1回やれば”もっといいものが取れそうだとー”

”あなたたちは、ゲームコーナーに群がる子供と同じー”
ニヤッと笑みを浮かべる巫女服の女ー。

女(栄太郎)は、”4”のメイド服の女を狙ってルーレットを止めるー。

巫女服の女は手元の端末で「4」と表示されたのを確認するー。
栄太郎が”本来”この数字のタイミングで止めたことを示す数字だー。

がーー

”そろそろ終わりにしましょー。
 あなたの持ち金、それで全部でしょ?”

巫女服の女は内心でそう呟くと、
手元の端末で”6”と入力して、それを送信したー

”6”ーー

「ーーーー!!!」
女(栄太郎)が表情を歪めるー。

「ーーろ、ろくーー…????
 く、くそっ!」
女の身体で栄太郎が叫ぶー

今回の”6″は、”ナメクジ”ー。

ナメクジと入れ替わってしまった栄太郎は
その身体を必死に動かしながら、どこかへ向かおうとするー。

がーー

会場にやってくる前に話をしたバニーガールの女が姿を現すと、
「ーーさよなら」と、それだけ言葉を口にして
ナメクジになった栄太郎を踏み潰したー。

ここはーーー
”イカサマ”ルーレットー。

入れ替わりを聞きつけ、やってきた者たちに夢を与えー、
代わりに金を搾取ー、最後には絶望を与える
地獄の”イカサマ”ルーレットー。

”当たった”客たちは”サクラ”ー
つまり、入れ替わりルーレット運営側が用意した”役者”だー。

この者たちはー、
入れ替わりルーレットで金を、さらには身体を奪っているーー

「ふふーー…残念でしたぁ」
バニーガール姿の女はそう言葉を口にすると、
「お前の身体は、”大事に”使ってやるよー」と、
それだけ言葉を口にして、闇の中へと姿を消したー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話完結の入れ替わりモノでした~!☆

栄太郎が、途中で裏に気付くことができれば
違う結末が待っていたかもしれないですネ~!笑

お読み下さりありがとうございました~!☆!

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