隣人を乗っ取った直後に、
隣人の両親が遊びに来てしまったー…!
困惑の中、何とかやり過ごそうとする
彼だったもののー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー大丈夫?トイレ、随分長かったけれどー」
雅美がトイレから戻ってくると、
母・恵理子が心底心配したような表情で
そんな言葉を口にしたー。
「う、うんー大丈夫ー
ちょっとお腹の調子がよくなくてー」
雅美を乗っ取っている秀樹がそう言葉を口にするー。
「ーーーーごめんなー。
そんなに体調悪いのに、家に来ちゃってー」
父・幾三の言葉に、
雅美を乗っ取っている秀樹は
少しだけ”罪悪感”のようなものを感じるー。
”そんなに謝るなってー。
なんか俺が悪人のような感じがしてきちゃうだろー。
ま……他人の身体を乗っ取ってるんだからー
悪人には違いねぇかー…”
内心で秀樹はそう思いつつも、
「そんなに謝らなくていいよ」と、そう言葉を口にするー。
その時だったー。
突然、母・恵理子に額を触られて、
思わずドキッとしてしまう雅美ー。
顔を少しだけ赤らめてしまい、
慌てて平常心を装おうとしていると、
母・恵理子は「熱は…ないみたいねー」と、そう言葉を口にしたー。
”チッー…まぁ、ホントは体調が悪いわけじゃないからなー…
熱なんてあるわけねぇ”
雅美の中にいる秀樹が表情を歪めながら
心の中で呟くー。
しかしー
母・恵理子は雅美を乗っ取っている秀樹の”予想外”の反応を見せたー
「ーーねぇ…ホントに大丈夫ー?」
恵理子が心底心配そうな表情を浮かべて、
そう言葉を口にするー。
「ーあ、あははー大丈夫大丈夫ー。
”熱”だってないでしょ?
ちょっと調子が悪いだけだからー」
雅美がそう言うと、
母・恵理子は言葉を続けたー
「ーー”どうしてそんなに冷たい”のー?」
とー。
「ー!?!?」
雅美は表情を歪めるー。
自分の手を見つめるー。
そして、反対側の手で自分の手を触るー。
「ーーー…っ」
”妙に”冷たいー。
それに気づいた雅美は、母・恵理子の方を見つめるー。
「ーこ、これはー…そ、そのー…
ほ、ほら、今日、寒いから冷えちゃってー」
雅美は慌ててそう言葉を口にしたー。
”冷たい”
そうー…異様に冷たいー。
恐らくは”皮にしている”からー…。
雅美を乗っ取って”30秒ほど”で両親が到着してしまったー。
だから、雅美を乗っ取った秀樹もまだ、
”どんな影響が出るか”を熟知していなかったー。
雅美を乗っ取る前に”テスト”はしているが、
それは川辺にいたホームレスを”皮”にして、
乗っ取ることができるかどうか確かめただけで、
”具体的なこと”までは調べていないー。
”最初”玄関先で母親に抱き着かれた際には
恐らく、外からやってきた母親自身の身体も
冷えていたからかー、
あるいは、”まだ”皮にされて時間が経過していなかったことで、
今ほど”雅美”の体温も下がっていなかったから、
気付かれなかったのだろうー。
が、”今の雅美”は想像以上に冷たいー。
冬だから、手が冷えちゃって~!という言い訳が
成り立たないぐらいに、冷たいー。
「ーー雅美ー…ホントに大丈夫ー?
熱、熱測ってみてー」
母・恵理子が慌てた様子でそう言葉を口にするー。
それもそのはずー
娘の雅美の体温が”以上に低く”感じられたのだー
母親として心配するのは当然と言えるー。
「ーーー……ね、熱はーだ、大丈夫ー」
雅美は表情を歪めるー。
今、体温を計測したら”ヤバい数字”が出そうな気がするー。
いや、エラーが起きるぐらいの体温しかないだろうー。
”くそっー、このままじゃまずいー”
雅美は表情を歪めるー。
先に”皮にして乗っ取った身体”の体温が変化していることに
気付いていれば”体調が悪くて”みたいなオーラを出さないように
注意しながら振る舞ったと思うし、
身体に触れられないように注意したと思うー。
しかし、もう手遅れだー
「ーー大丈夫大丈夫ー。心配しすぎだって」
雅美は笑いながらそう言うと、
母・恵理子は「大丈夫じゃないでしょ!どうしてそんなに冷たいのー!?」と、
そう言葉を口にするー。
「おいおい、落ち着けー」
父・幾三が口を挟むー。
「ーーだって、雅美、”すごく冷たい”からー」
母・恵理子が心底心配そうに言うー。
雅美は両親から距離を取りながら
「大丈夫大丈夫ー。最近、冷え性だからー」と、
必死の言い訳をするも、
父・幾三も表情を歪めながら、雅美の方を見つめているー。
「ーーー……ホントに大丈夫なのか?雅美ー」
幾三のその言葉に、
雅美は「大丈夫大丈夫ー熱は、測らなくても、大丈夫ー」と、
そう言いながら苦笑いするー。
”ー冗談じゃねぇ…!せっかく身体を手に入れたのに、
こんなところでバレてたまるかー”
そう思っていると、母の恵理子が雅美に近付いてきて、
雅美の手に触れたー。
「ーーや、やっぱり変よー…!?
雅美ー…!」
雅美の”手の異様な冷たさ”に驚く母・恵理子。
父・幾三にも、「雅美の手ーこんなに冷たいのよ?」と、
心配そうに言葉を口にするー。
「ーーーさ、触らないで!」
雅美は少し苛立ちを露わにするー。
「ー雅美ー…!
無理しちゃだめよー…!
と、とにかく熱を測って」
母・恵理子のその言葉に、
雅美は険しい表情を浮かべるー。
そうこうしているうちに、父・幾三にも
身体を触られてしまい、
「ーー…こ、これはー…」と、
困惑の表情を浮かべているー。
「ーき、救急車を呼んだほうがいいかもー」
戸惑いながらそう言い放つ母・恵理子ー
”き、救急車ー!?”
雅美を皮にしている秀樹は表情を歪めるー。
”人を皮にして乗っ取っている状態”ー
それが”病院”で分かってしまうのかどうかー、
秀樹には分からないー。
”外”からでは何をしても分からない可能性は十分にある一方で、
何か、検査をされたら”普通の人間は示さない反応”が
出てしまったりして、バレてしまうかもしれないー。
「ーーー…よ、呼ばなくていいから!」
雅美が声を荒げると、
母・恵理子と父・幾三は心底心配そうに
雅美を見つめるー。
「ーー大丈夫!ホントに大丈夫だから!
病院呼ぶなんて大事にしないで!
近所の人も、何事かと思うでしょ!」
雅美として、そう叫ぶ秀樹ー。
今のは上手く言えたー。
そんな風に内心で喜びながら、二人の方を見つめるー。
がー、それでも雅美の両親は心配そうに
表情を曇らせていたー。
「ーーで、でもー…
じ、自分でも分かるでしょ!?雅美!」
母・恵理子は心底心配そうに、そう続けるー。
「ーーー身体があまりにも冷たすぎるわー」
恵理子の言葉に、雅美は「チッ」と舌打ちをしてしまうー。
雅美のそんな態度に、
父・幾三は「何かー…何かあったのかー?」と、違和感を抱き始めるー。
「ー何かってー?」
雅美はギクッとしながらも、不快そうに言うー。
すると、父・幾三は言ったー。
「いつもと全然、雰囲気が違うー」
とー。
「ーーーっ!!!!!!」
雅美は言葉を失うー
”くそっ!くそっ!くそっ!
俺の心の準備が出来ていないのに
お前らが勝手に遊びに来るから、こんなことに
なってるんだろうがー…!”
半分逆ギレのような感じで、秀樹は内心でそう思うー。
しかし、”これ以上”抵抗すると
さらに怪しまれるー。
そう判断して「ーーわ、分かったー。熱は測るからー」と
ため息を吐き出しながら、母・恵理子の言葉に従ったー。
体温計を使いながら、両親の隙をついて
何とか熱を上げようとするも、上手くいかずに、
体温計はエラー表示になってしまったー。
「やっぱり、熱が低すぎるのよ雅美ー」
母・恵理子が言うー。
父・幾三も深刻に捉えたのか、
「雅美ー…他の具合の悪いところはないかー?」と、
心配そうに言葉を口にするー。
「だ、だから!!大丈夫だってば!!」
雅美が苛立って声を上げるー。
しかし、そんな態度に両親はさらに疑念の目を雅美に向けるー。
「ーーー~~~~~…」
雅美の”中”にいる秀樹は、頭をフル回転させながら
”この場を逃れる手段”を考えるー。
”どうするー…?どうするー…?”
秀樹は、”雅美を諦める”ことも考えるー。
しかし、隣人の雅美を乗っ取る夢を捨てきることはできなかったうえに、
”人を皮にする針”は使い捨てー。
既に、雅美を乗っ取った以上、他の人間に使うことはできなかったー。
”くそっーもう1個買うほどの金はねぇしー…”
雅美はソワソワした様子で両親の方を見つめながら、
さらに頭をフル回転させていくー。
両親は、”病院に雅美を連れていく”の一点張りだー。
もはや”病院”を回避する方法はない気がするー。
しかし、病院に行けば、”何か”余計なものが見つかる可能性は高いー。
”皮にされた雅美”が”医療”を前にどんな結果を示すのかは、
秀樹にも分からないー。
例えば、血液検査をしたらー?
例えば、脳の検査をしたらー?
例えば、聴診器を当てたらー?
”どういう反応”が出るのか分からないー。
”異常なし”で終わればそれでいいー。
がー、万が一、
”普通の人間ではあり得ないような結果”が出たらー?
雅美を乗っ取っていることが”分かる”ような結果が出てしまったらー?
”俺の人生は終わるー”
秀樹はそう考えると、
”この女を諦めて逃げるかー?”と考えるー。
両親を振り払って家から逃走しー、
雅美を脱いで逃げるー。
”皮”にされた人間は脱いだ状態で1時間放置していると
元に戻ると説明書に書かれていたから、
どこかのトイレの個室にでも入り込んで、雅美を脱げば、
少なくとも秀樹は逃げることができーーーー
「ーーー!!」
そこまで考えて、秀樹は目を見開くー。
”チッ、ダメだー”
雅美を皮にする直前、針を刺した秀樹の方を見て
雅美が「え…」と言っていたのを思い出すー。
雅美は直後、”皮”になったものの、
秀樹の方をハッキリと見ていたー。
心底驚いた表情でー。
元に戻れば”秀樹に何かされた”と、すぐに理解するはずー。
”くそっ…ダメだダメだダメだー”
雅美は頭を抱えると、
大きく息を吐き出したー。
残る手段は”ここから逃亡して、雅美を脱ぎ捨てて、皮から人間に戻る前に
処分するー”か、”病院での検査を受ける”しかないー。
そしてー…
彼は”病院で検査をしても何も異常が見つからない可能性”にかけて
渋々と診察を受けることに決めたー。
それがーー…
今の状況で最良だと判断したからー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
両親に従い、病院にやってきた雅美ー。
雅美の異様な低体温に驚いた医師は、
早速、原因を調べるために検査を提案したー。
”へへー…そう簡単に、”人を皮にしている”なんてこと
分からねぇだろうしー、なんとかとぼけながらー…”
そう思っていると、
医師が首を傾げたー。
「表面は低体温ですがー、
身体の内面はちゃんとした体温がー…」
そう言葉を口にする医師ー。
母・恵理子と父・幾三が「どういうことですかー?」と、
そう言葉を口にすると、
医師は何かの機器を取り出して、
「ーーーー分かりませんーこんな状態は初めてでー」と、
言いながら「少し、調べて見ます」と、
何かの機器を雅美に向けたー。
するとー…
「ーこ、これはー…?」
医師が呆然とした表情を浮かべるー。
「ーーど、どうかしましたかー?」
母・恵理子が不安そうに表情を浮かべると、
「ーーそ、それがー」
と、医師は不安そうに言葉を口にしたー。
雅美を乗っ取っている秀樹は、
内心で心臓をバクバクさせながら医師の言葉を待つー。
そしてーー
「ーーー”内側”に何かー…」
医師がそう言い放つー。
雅美は表情を歪めるー。
「ーー内側にー…”人間”がいるような反応がー…?
これは、いったいー…?」
医師のその言葉に、
両親は驚きの表情と困惑の表情を浮かべながら雅美を見つめるー。
”もうダメだー”
雅美を乗っ取っている秀樹は、そのまま医師を突き飛ばして
診察室から逃亡するー。
「くそくそくそくそくそくそくそくそ!!!
どうしてこうなった!!??
くそくそくそ!!!」
物陰で雅美の皮を脱ぎ捨てて、
それをぐしゃぐしゃにして、どこかで燃やそうと走り始める秀樹ー
がーーー
その時だったー
強い衝撃が、秀樹の身体を襲ったー。
自分の身体が宙を舞い、訳の分からないまま
反対側の歩道まで吹き飛ばされるとー、
”雅美の皮”は、その近くの公園にゆっくりと、
落ちていくのが見えたー。
「ーーが… ぁ… な、なんだー…?」
秀樹は苦しそうにしながら、顔を動かすー。
そこにはー
大型のトラックが停車して、運転手が慌てて駆け寄って来るのが見えたー。
「ーーーーぁ……」
車に跳ね飛ばされたのだと、秀樹は理解するー。
”悪運尽きたかー”
秀樹はそう悟ると、思わず笑みを浮かべるー。
「ーはははっ…ははははははっ…」
雅美を乗っ取る前にしていた”終活”ー。
本当なら、”秀樹”として生きるのをやめて、
これから”雅美”として生きる意味での終活だったものの、
本当の意味での終活になってしまったー。
「ーははっ!!ははははは!これが俺の人生かー
ははははっ!」
まさか、こんなところで”死ぬ”なんて思ってもみなかったー。
”死ぬ心の準備”なんてできてないー。
秀樹はそう思いながら、薄れゆく意識の中、笑うことしかできなかったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
自業自得の最後(?)を遂げるお話でした~!
立ち回りがもう少し違っていれば、
彼にとってのハッピーエンドもあったかもしれませんネ~!
お読み下さりありがとうございました~!☆!
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