<他者変身>変身実習③~変身で楽しむ実習~(完)

学校で当たり前のように行われている
”変身実習”ー。

そんな実習も終盤を迎えて…?

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ポケットに隠し持っていた何かを手に、
異を決したように、変身講師の萌奈の方に
近付いていく向井先生ー。

「ーどうかされましたか?」
28人の生徒が”自分”の姿に変身している様子を
楽しそうに見つめていた萌奈が、
そんな向井先生に気付くと、
首を傾げながら、向井先生の方を見つめるー。

「ーー…授業が終わったら、少しお願いがあるのですが」
向井先生のその言葉に、
萌奈は「お願い、ですかー?」と、そう言葉を口にするー。

向井先生はチラッと、
萌奈に変身した生徒たちの方を見つめるー。

28人の生徒全員が、”萌奈”の姿に変身していて、
それぞれ、変身実習終盤ということもあり、
レポートを書いているー。

家庭科室には中年のおばさんである向井先生以外は、
全員”萌奈”ー。
そんな光景が広がっているー。

向井先生は少しだけ苦笑いすると、
手に握っていたものを萌奈に見せながら
小声で何か言葉を口にすると、
萌奈は少し戸惑うような表情を浮かべてから
「分かりましたー」と、そう答えて、
再び視線を生徒たちの方に向けたー。

そんな、先生と”変身講師”の会話を他所に、
生徒たちは変身実習の締めくくりとなる
”レポート”を書き始めていたー。

変身実習の最後の方には決まって行われることで、
このレポートを書いて、提出することによって
変身実習の一通りの流れが終了するー。

「あ~~もうすぐ終わりかぁ、名残惜しいなぁ」
萌奈の姿に変身している変身実習大好きな男子・竜馬が、
胸を触るー。

「お前、よく平気で本人の前でそういうことできるよなー」
竜馬同様に、それなれにHな感じではあるものの、
”変身講師”の目の前でそういうことをするのはちょっと…と、
考えている男子生徒がそう呟くー。

もちろん、彼自身も萌奈の姿に変身しているものの、
竜馬とは違って胸を揉んだり、そういったことをする気配はない。

「ーーー」
気まずそうにチラッと、変身講師である萌奈の方を見つめながら、
続けて、平気で胸を揉んでいる萌奈姿の竜馬を見つめるー。

「ーへへへ、だって、変身の先生は会うのは”今日限り”かもしれないし、
 だったら今のうちに楽しんでおいた方が得じゃねー?
 明日からは、あの人に会わないかもしれないんだしー」

家庭科室の前の方に向井先生と共に立っている萌奈を
見つめながらそう呟く萌奈姿の竜馬ー。

「ーーははー…俺にはそこまで開き直ることはできないなぁ
 ってか、揉んでないで早くレポート書けよ」
萌奈姿の男子生徒が呆れ顔で言うと、
「もう少し!次の変身実習はまた来月だしー
 その時はまた男かもしれないしー」
と、萌奈姿の竜馬は、そんな言葉を口にしたー。

「ーーーー…」
離れた座席にいる竜馬の友人・達哉も
呆れ顔で、その様子を見つめるー。

ニヤニヤしている萌奈と、呆れ顔の萌奈ー。
同じ”顔”であるはずなのに、まるで別人のように
見えてしまうから不思議だー。

「ーー前回の変身実習とは大違いだねー」
達哉の彼女で幼馴染の亜梨沙が萌奈の姿で言うー。

「ーはは、前回は講師の人が男だったからなー」
萌奈の姿をした達哉がそう言うと、
亜梨沙は「ふふー確かにー」と、頷くー。

レポートに”変身して見て感じたこと”や
”気付いたこと”など、色々なことを書いていくー。

そんな中でも、”誰なのか”を判別するための名札を
あえて交換してイタズラしている生徒や、
竜馬とはまた別のHなことを楽しんでいる生徒ー、
”早く終わらないかなぁ”とあくびをしている生徒ー、
色々な生徒の姿が見えるー。

変身薬を飲んだ28人の生徒は、みんな萌奈の姿であるため、
変身薬を飲む際に判別するために配った”名札”を
交換してしまうと、もはや、それが誰なのか分からないー。

「ーえへへへー…お前っ…ぶふっー」
相手の”彼女”と名札を交換して、彼女のフリをして
その男子生徒に話しかけていた男子が笑うー。

「お、お、お、お前!?涼子(りょうこ)じゃないのか!?」
声を上げる萌奈の姿をした男子生徒ー。

彼女の”涼子”の名札をぶら下げていたため、
目の前にいる”萌奈”が、彼女だと思い込んで
喋り続けていた男子生徒が、萌奈の姿のまま
顔を真っ赤にするー。

「ーへへへー俺だよ俺ー、
 さっき涼子ちゃんと名札を交換してもらってさ」
ニヤッと、萌奈の姿で笑う男子生徒ー

「ぐ…ぐぬぬぬ…だましたな!」

そう叫んだ彼は、その男子を追いかけ始めるー。

家庭科室で始まる”萌奈”と”萌奈”の追いかけっこー、とも
言わんばかりの光景に、
本物の萌奈は笑いながらその様子を見つめるー

”あ~…わたしだらけの教室って目の保養になるー…”

内心でそんなことを思いつつ、
「ーあ、最後に一ついいですか?」と、
萌奈は家庭科の向井先生に提案するー。

「はい?」
向井先生の言葉に、
萌奈は「わたし、最後にいつも記念撮影させてもらってるんですー
もしよければ、みんなと一緒に集合写真を撮りたいなって」と、
穏やかに笑いながら、カメラを手にするー。

萌奈はいつも、自分が受け持った変身実習の最後に
”集合写真”を撮るようにしているー。

表向きは、”変身実習の記念”と、
説明してはいるものの、実のところ、
萌奈が個人的に持ち帰って
”色々なわたしの写真”を見たい、というのが目的だー。

向井先生から許可を貰った変身講師の萌奈は
「それじゃ、皆さんーもう少しで変身実習は終わりなので
 みんながわたしの姿の状態で
 集合写真を記念に撮りたいと思うんですけどー、
 ちょっと前に集まって貰えますか?」と、
そう言葉を口にしたー。

「うぉぉ…へへー、変身した状態で集合写真かぁ~」
萌奈姿の竜馬が嬉しそうに言うー。

「ーー後から見ても、誰が誰だか分からなそうー」
萌奈姿の亜梨沙が、そう言葉を口にすると、
横にいた萌奈姿の達哉も「だよなー」と、頷いたー。

とは言え、別に断る理由もなく、
クラスの28名は、家庭科室の前の方に行って、
集合写真撮影のための準備を始めるー。

萌奈はそんな様子を、ニヤニヤしてしまうのを
我慢しつつ見つめると、
”あ~…わたしだらけって最高ー”と、
内心でそう思いつつも、
真面目な表情を浮かべたまま
「じゃあ、写真を撮りますね~!」と、
そんな言葉を口にしたー。

萌奈に変身した状態の集合写真ー
28人の萌奈に変身した生徒たちと、
萌奈本人が写る写真を、萌奈は満足そうに見つめると、
「ご協力ありがとうございましたー」と、
ぺこりと頭を下げたー。

やがてー、変身薬の効力が切れていくー

薬の効き目は大体、設定した時間通りに終わるものの、
それぞれの生徒が飲んだタイミングや、
体質による”ごくわずかな個人差”によって、
全員が一斉に戻るわけではなくー、
時間になり始めると、一人、また一人と、
どんどん萌奈の姿から、元の姿に戻っていくー。

自分の姿に戻って喜ぶ者ー。
名残惜しそうにする者ー。
特に何も意識してなさそうな者ー。

それぞれが元の姿に戻っていきー、
やがて家庭科室に残っている萌奈は”ひとり”ー

本物の萌奈だけとなったー。

「あ~あ…終わっちまったかー」
残念そうに呟く竜馬ー。

近くにいた別の男子生徒が
「お前、ずっと変身してられるって言われたら
 ずっと他人の姿で過ごしてそうだよな」と、
冗談めいた口調で言葉を口にするー。

「ーははは、いやーでも、さすがにずっとはきつくねー?
 1か月ぐらいはその姿で過ごすかもしれねぇけど」

そんな会話を繰り広げつつ、
レポートを提出していくー。

遊んでいて間に合わなかった生徒は”提出期限”までに
レポートを提出する約束で、レポートを持ち帰るー、
そんな仕組みになっていて、
一部の生徒はレポートを今、この場で提出することはせずに
後日提出しようと、そのままレポートを持ち帰る準備を始めるー。

「ーー先生!また来てくださいね!」
男子生徒の一人が、萌奈に対して言うと、
萌奈は「あははー…学校からお願いされたらまた来ますねー」と、
笑いながらそう言葉を口にしたー。

「ーは~楽しかったー最高だったぜー」
変身実習を楽しみにしている竜馬がそう言うと、
友人の達哉と、その彼女の亜梨沙は、呆れ顔で笑うー。

「ーー次の変身実習も、女の変身講師がいいな~」
竜馬のそんな言葉に、
達哉は「次は男だろー。たぶん」と、そう言葉を返したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーそれでー、さっきのお話はー?」

授業が終わり、休み時間に突入すると、
家庭科室に残っていた変身講師の萌奈がそんな言葉を口にしたー。

家庭科の教師ー…中年のおばさんの向井先生が
少しだけ申し訳なさそうに、
「先ほどお話した通りー…早瀬さんにわたしも変身してみたくてー」と、
そう言葉を口にしたー。

授業中、萌奈に変身薬が入った容器を見せながら
そうお願いした向井先生ー

萌奈は少しだけ不安そうに向井先生を見つめるー。

「ーー変身講師の方にこんな話をするのはアレなんですけどー
 わたし、小さい頃から、こんな感じでー
 自分の容姿に自信がなくてー」

向井先生はそう言葉を口にするー。

”容姿”に恵まれなかった向井先生ー。
小さい頃から自分の容姿に自信がなく、
教師になって、おばさんになった今でもそれを引きずっているのだというー。

そしてー、
実家を出る時に父から貰ったおしゃれな洋服も
自分に自信がない故に、一度も着ることができないまま年を重ねて、
その父も先日、亡くなってしまったのだと向井先生は説明したー。

「せめて、一度でも父に買ってもらったあの服を着てみたくてー。
 でも……もうわたしもいい歳ですし、自分に自信がないのも
 そのままですしー」

向井先生のその言葉に、萌奈は少しだけ微笑むー。

父の形見の服を一度は着てみたいけど、
今の自分に着る自信がないー。
だから、萌奈に変身させてほしいー、
ここで、それを着てみたいー、

と、そういう話なのだろうー。

「そういうことでしたらー」
萌奈は少しだけ笑うー。

学校の実習に萌奈のような若い変身講師ー…特に女性が
呼ばれることは少ないー。
思春期の男子が萌奈のような姿に変身すれば
”どうなるか”は目に見えてるし、
実際、今日もHなことをしている生徒はいたー。

だから、あまり学校側も、萌奈のような変身講師は呼ばない。

”学び”を得る意味では高齢者だったり、
何らかの不自由なところを持つ人だったり、
そういう人に変身した方が得るものも多くあるため、
呼ばれる変身講師はそういう人が多いー。

萌奈自身も”高校の実習?”と、少し疑問を持ちながら
今日、変身実習に来ていたものの、その理由が
何となく分かったー。

向井先生が、萌奈のような人に変身したかったのだー。

向井先生は、萌奈に変身の許可を貰って
「生徒たちには、秘密にしてくださいねー」と、
そう言葉を口にすると、短時間の変身を楽しみー、
そして夢を叶えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌年ー。

家庭科の先生も変わり、
今年度最初の”変身実習”の日を迎えた竜馬たちー。

「ーへへへへ!今日も女の人がいいなぁ」
相変らずテンションの高い竜馬に、
呆れ顔の達哉ー。
達哉の彼女・亜梨沙も苦笑いしながら、
家庭科室にやって来るー。

「ーそれでは、宜しくお願いしますー」
今年度の家庭科の教師を務める
男性教師が、準備室で待機していた変身講師を呼ぶー。

その姿を見て、男子生徒を中心に歓声が沸くー。

「ーーおいおい、お前ら、変な期待をするなよ?」
家庭科の教師が呆れ顔でそう言い放つー。

現れた”変身講師”は
昨年の萌奈よりも若い感じの女性で、
男子受けがとても良さそうなキラキラした感じだったー。

「やったじゃんー。お前の大好ーーー」
達哉が少し揶揄うような口調で変身実習を楽しみにしている
竜馬にそう言い放つー

がーー
竜馬は青ざめていたー。

「ー…なんだよー。どうした?」
達哉が不思議そうに言うと、
竜馬は汗をタラタラと流しながら言葉を振り絞ったー

「あ、姉貴ー…??」

やってきた”変身講師”は、
昨年大学を卒業した、竜馬の”姉”だったのだー。

「ーーえ?」
困惑した様子の達哉ー。

また、今日の変身実習も大変な実習になりそうだー。
達哉はそんな風に思うのだったー。

おわり

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コメント

変身実習が行われている世界のお話でした~!☆

私も変身実習に参加してみたいデス~☆笑
あえておじさん体験とかもしてみたいですネ~!

講師側になるのは…
私が20人ちょっとになっちゃった光景を考えると、
なんだか怖いので、参加する側で~☆笑

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他者変身<変身実習>

コメント

  1. 葉月/リーフ より:

    すごく面白かったです!

    これの続編も見てみたいし、これの話の1つも考えてみたいと思った

    • 無名 より:

      わわ~!☆ありがとうございます~!☆

      まだまだ、同じ設定を使って
      色々な授業の風景が作れそうな気はしますネ~!☆

      変身実習のリーフ様が考えたお話…!
      それも面白そうデス~!