他人に変身できる薬を用いた”変身実習”ー。
そんな授業が当たり前のように行われている世界ー。
今日も、とある学校では
いつものように”変身実習”が行われようとしていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
変身講師の萌奈は、
萌奈の姿に変身している生徒たちを見つめながら、
”何度見ても、わたしだらけって不思議な気分ー”と、
心の中でそう呟きながら、生徒たちに向かって微笑むー。
家庭科室にいる生徒たちは、先生以外、
全員、萌奈の姿をしているー。
ただ、変身薬を飲む際に先生が、
首からぶら下げる名札を配っているために、
全員がそれを身に着けていて、
見た目は全員萌奈でも、”誰が誰だか”は
分かるようになっているー。
時々ー、その名札を交換してイタズラするような子も
いるものの、そういうのは、”仕方のない”ことだったー。
”本物です”と書かれた手作りの名札をぶら下げながら、
萌奈は”わたし”に変身している生徒たちを見つめるー
「ーーあんまり変なことはしないでくださいねー」
照れ臭そうに笑う萌奈ー。
「え~~…せっかく変身したんだから色々試したいなぁ~」
萌奈に変身した男子生徒の一人がニヤニヤしながら言うと、
「ーあっ!悪そうなわたしー!」と、
萌奈は少し冗談めいた口調でそう言葉を口にするー。
萌奈の姿に変身した生徒たちと、萌奈は楽しそうに
雑談をしているー。
やがてー、しばらく”自由”にさせていた
家庭科の向井先生が、
生徒たちに向かって、”授業”を始めるー。
保健体育的な話をしつつー、
日常的な部分の話も交えながら、
授業は進んでいくー
今は”スカートでの座り方”などの話を
しているようだー。
「ー先生~~!滝原くんがわざと足、開いて座ってますけど~!」
女子の一人が、変身実習を楽しみにしていた竜馬を指差しながら
そんな言葉を口にするー。
もちろん、二人とも”萌奈”の姿をしているー。
”スカートでのちゃんとした座り方”の話をしている最中にー、
竜馬はわざと足を広げて、ニヤニヤとしていたのだー。
足を広げて座りながらニヤニヤしている萌奈と、
それを指摘して呆れ顔の萌奈ー…
二人とも、萌奈の姿をしているため、
そんな風に見えてしまうー。
”変身薬”での変身は、変身相手の服装まで含めて変身するために、
今は全員、変身講師の萌奈と同じ姿・同じ服装をしている状態ー。
男子からすれば、普段履くことのないスカートを履いている状態と
なっていて、とても新鮮な状況だったー。
そんな状況を前に、変身実習を1週間以上前から楽しみにしていた
竜馬は、とても上機嫌だったー。
そんな萌奈姿の竜馬に対して
向井先生は呆れ顔で、「滝原くんー。ちゃんとした座り方はー」と、
そう説明し始めるー。
「ーーまったく、アイツ、ホント好きだなー」
変身実習を面倒臭がっている竜馬の友人・達哉は
呆れながらそう呟くー。
もちろん、達哉も萌奈の姿をしているものの、
”萌奈の姿に変身している竜馬”とは、同じ姿ながら
別人のような雰囲気で、妙に落ち着いた雰囲気を醸し出しているー。
「ーーー」
そんな、萌奈に変身した達哉は
すぐ近くの座席の彼女・亜梨沙に対して、
「それにしても、スカートってなんか落ち着かないけどー、
これって、普段から履いてると慣れるもんなのか?」
と、そう言葉を口にするー。
「え?」
やはり、”萌奈”の姿になっている彼女の亜梨沙は
”久野 亜梨沙”と書かれた名札をぶら下げながら、
首を傾げるー。
「あぁ、いやー…なんか座り方も気を遣わないといけないしー、
足が全部覆われてない分、なんかこう、寒いしー
頼りない感じって言うかー」
萌奈姿の達哉がそう言うと、
萌奈姿の亜梨沙は「ーあ~~~…」と、頷いてから
「でも、普段から履いてると、落ち着かないとかはないよねー。
”寒い”って言うのは分かるけどー」と、
笑いながら返事をするー。
周囲から見れば”萌奈と萌奈の会話”ー。
男子生徒の一人が、
「っていうかいつも思うんだけど、全員クローンになったみたいで怖いよな!」と、
萌奈の姿で言うー。
このクラスの生徒は全部で28名ー。
本物の萌奈を含めて、現在、家庭科室には29人の萌奈がいる状態に
なってしまっているー。
萌奈は「ふふふー」と、笑いながら、
「ー変身薬の効果はちゃんと設定した時間で切れるし、大丈夫ですよ~」と、
そう言葉を口にするー。
”変身薬”は、1時間用・2時間用・3時間用がそれぞれ用意されていて、
授業や、講習など、用途に応じて利用されるー。
変身したまま逃亡するなど、
”万が一”の事態に備えて、”永遠に変身する”ことができないようにされていて、
設定された時間になると、勝手に変身は解除される仕組みだー。
そのため、変身講師たちが、
自分の姿に変身されたままになってしまうことはなく、
ちゃんと安全性が確保されているー。
「ーーでも、どうして”先生”は変身講師になったんですかー?」
萌奈の姿をした女子生徒の一人が聞くー。
変身講師は教員ではないため”先生”ではないものの、
生徒たちは、変身講師のことも”先生”と呼ぶことが多いー。
「ーわたし?
わたしはー…小さい頃、”変身実習”にワクワクしてたし、
いつか実習をする側になれればいいなって思ってー、
それで、変身講師を目指して、合格した感じですねー」
萌奈はそう言葉を口にしながら、穏やかに微笑むー。
「ーでも、俺たちみたいのに変身されて、気持ち悪いとか
思ったりしないんですかー?」
萌奈の姿をした男子生徒の一人ー、
巨体の男子がニヤニヤしながらそう呟くー。
彼も竜馬と同じく、変身実習をとても楽しみにしている男子だー。
ただー、今は萌奈に変身しているため、
体格はみんな萌奈と一緒になっていて、
変身した直後には「やっぱり身体が軽いぜ!」などと
嬉しそうに飛び跳ねていたー。
「ーあははー
そんな風に思うんだったら、変身講師は目指してませんしー、
それにー…
”いろいろなわたし”が見れるのって、結構不思議で面白いですよ?」
萌奈はそう言いながら、”わたし”に変身した28人の生徒の姿を見つめるー。
”まぁ、本当はーー
それが一番の目的なんだけどー”
萌奈は心の中で呟くー。
萌奈が変身講師を目指した一番の目的は
”色々なかわいいわたし”を見たいからー…だった。
小さい頃から萌奈は、自分のことを可愛いと思っていて、
自分の”見た目”が大好きだったー。
それを表には出さないようにして生きてきたために、
萌奈が”わたし、可愛いー!”な、タイプであることは
萌奈の友達も知らないものの、
萌奈が変身講師になった一番の理由は、
この仕事をしていれば、”色々なわたし”を見ることができるからだったー。
同じ顔・同じ姿・同じ声でも、
”中身”が違うだけでまるで違う”萌奈”を見ることができるー。
あんな風に、ニヤニヤしながら
下品な笑みを浮かべることは、萌奈本人にはなかなかできないし、
クールな表情を浮かべている”萌奈”も、
萌奈本人にはなかなかできないー。
こういう”自分じゃない自分”を見れることに
萌奈は快感を覚えていたー。
がー、そんなことは生徒たちには言わずに、
「ーせっかくだから、遠慮せずに色々試したり勉強して下さいねー。
もちろん、ルールの範囲内でー」と、
穏やかに言葉を口にしたー。
”ーーえぇっ!?変身講師になるつもりなのー!?”
大学時代ー。
”変身講師”を目指していると友達に話した時には
心底驚かれたー。
そんなことを、授業をしながら思い出す萌奈ー。
”変身講師とか、やめた方がいいよー
だって、萌奈の姿で、ガキが変なことするかもしれないよー?”
子供嫌いの友人は、そんな言葉を口にしていたー。
けれど、萌奈は言ったー。
「ーー子供のころは仕方なくない?
わたしだって、小さい頃、変身実習楽しみだったし、
色々したしー」
萌奈のその言葉に、萌奈の友人は
「まぁ、あんたがいいならいいけどさー…」と、
そう言葉を口にした上で、続けたー。
「ーわたしは、変身実習嫌いだったから
その気持ちはよく分からないけどー…
でもまぁ、あんたが変身講師になるって言うなら応援はするよ」
萌奈の友達はそんな言葉を口にしたー。
萌奈の友達曰く、
自分の身体が”変身”することで、
何か自分の身体が壊れるんじゃないかと心配になること、
そして、クラス全員”同じ顔”になるのを見るのが
何となく気持ち悪く感じる、とそんなことを言っていたー。
「あはははー」
萌奈は笑いながらも、
心の中で思ったー
”でも、可愛いわたしだらけになったら、
すっごい景色だし、目の保養になるよねー”
とー。
ただ、萌奈は自分のことを可愛いと思っている、
そんな雰囲気は周囲には一切出さないようにしていてー、
この友達にもそれを打ち明けることはなかったー。
そして今ー
”楽園ッ…”
萌奈は嬉しそうに、”萌奈の姿をした28人の生徒”がいる光景を見つめるー。
少しうっとりとした表情を浮かべながら、
向井先生の方をチラッと見ると、
よほどヤバい顔をしていたのか、向井先生の方が目を逸らしたー。
”変身した状態”での授業は続いていくー。
女子にとってすれば、”同性”の変身ー。
しかし、男子にとってすれば、”異性”への変身ー。
それぞれ、感じ方は大きく異なるー。
今日の変身実習では、男子生徒たちが全体的にハイテンションで、
女子は逆に落ち着いた様子だったー。
「ーーあ~~…わたしもこんな姿だったら、
いっぱいおしゃれとか楽しめたはずなのにぃ~!」
ただー、中には張り切っている女子生徒もいるー。
彼女は、暴食気味の女子生徒で、明るい性格ではあるものの、
容姿には恵まれておらず、萌奈の姿に変身した自分を
うっとりとした様子で見つめていたー。
「ーーあんただって、痩せればまだ間に合うかもよ!」
その子の友達が、やはり萌奈の姿でそう叫ぶー。
変身実習の中盤ー。
生徒たちが色々な話をしたり、
色々な発見をする様子を見つめながら
家庭科の教師の向井先生は少しだけ微笑むー。
「ーそれにしても、みんな嬉しそうですねー」
向井先生が、変身講師の萌奈に声を掛けるー。
向井先生は、中年の女性教師ー。
”少し疲れた感じのおばさん”という感じの先生だー。
「ーー……ふふーー
なんだかずっと遊んでる子もいますけどー」
萌奈がそう言葉を口にすると、
「ーまぁ、変身実習って大体そうなりますよねー」
と、家庭科の向井先生も、そう言葉を口にしたー。
変身実習は、
自由時間と、班ごとの討論のような時間ー、
先生が主導で色々なことを体験させる授業形式の時間ー、
そして最後にレポートを書く時間が
それぞれ用意されているー。
現在は、自由時間でー、
”ルールの範囲内で”自由に変身した状態を体験して、
自分とは異なる立場の人のことを色々と学んでいくー。
「ーえへへへへー…今なら触り放題ー」
ニヤニヤしながら、変身実習を楽しみにしていた竜馬が
萌奈の姿で胸を揉んでいるー。
「ーおいおいー、あまりやりすぎるなよー。
成績にも影響するぞ?」
変身実習に興味がない達哉は、萌奈の姿になってからも、
胸を触ったりはほとんどせずに、
呆れ顔でそんな言葉を口にしているー。
「ーーーあ、そうだー達哉ー」
そんな達哉の元に、”名札”を確認しながら、
彼女の亜梨沙がやってくるー。
みんな萌奈の姿であるため、
名札をしているとは言え、誰が誰だかを確認するのも大変だー。
「ーレポートのこの部分なんだけどー」
萌奈の姿をした亜梨沙の質問に、萌奈の姿をした達哉が答えるー。
変身実習はいつも通り進みー、
やがて、感想や学んだことなどをレポートに
まとめる時間に突入していくー。
そんな様子を見つめながら、
変身講師の萌奈は思うー
”あ~…もうすぐわたしだらけの楽しい時間も終わりかぁ…”
とー。
変身講師になった理由が
”かわいいわたしだらけの時間を楽しみたい”な、萌奈は、
変身実習が終わることを名残惜しそうにしているー。
「ーーーーー」
そんな萌奈の様子を横目で見つめる
家庭科の教師・向井先生ー。
向井先生は少しだけ表情を曇らせると、
ポケットに隠し持っていた”何か”を手に、
意を決したように歩き出したー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
もしも、こんな授業があったら、
絶対に、ずっと遊び続けてる子が出て来そうですネ~笑
(調理実習でも、そういう子はいましたケド…笑)
続きはまた明日デス~!!
コメント