<憑依>実はわたし 人生2回目なの①~秘密~

勉強もスポーツも、何でもできて何でも知っている
憧れの友達ー。

しかし、ある日、そんな彼女から
とんでもない言葉を告げられるー。

それは、”実はわたし、人生2回目なの”という言葉だったー。

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「橋口さんって、ホントなんでもできてすごいよね~!
 なんでも知ってるしー」

とある学校ー。

昼休みに、とある悩み事を解決してもらった
小山 美穂(こやま みほ)が、そんな言葉を口にしたー。

「ーえへへー…そんなことないよ~」
美穂から感謝の言葉を口にされた、橋口 涼香(はしぐち りょうか)は、
少し照れ臭そうにそう言葉を口にすると、
「ーーまた困ったことがあったら、何でも言ってねー」と、
そう言葉を口にしながら、座席へと戻っていくー。

涼香はー、
誰にでも優しくて、成績も優秀で、何でもできて、何でも知っているー。
そんな、完璧な子だー。

自分たちと同じ、ランドセルを背負っている年代とは思えないぐらいにー、
とても優秀でー、
先生よりも物知りに感じることもあるぐらいに、
何でも知っているー。

そんな涼香は、クラスでも男女問わず、とても信頼されていて、
頼れるお姉さん的存在となっていたー。

美穂も、涼香のことをとても信頼しているし、
涼香は”親友”と呼べる間柄だー。

”ホントに、橋口さんってすごいなぁ…”
美穂は、そんなことを思いながら、
他の友達と楽しそうに話している涼香を見つめるー。

”どうしたら、あんな風になれるんだろうー…”
憧れにも似たような感情を抱きながら、
美穂はそんな言葉を口にしたー。

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「ーーーう~ん、それはこうした方がいいんじゃないかなー?
 親だって完璧じゃないんだし、
 大人になってみると案外分かるけど、
 人間って大人になっても、
 身体が大きくなってるだけで、案外、中身って子供のころと
 あんまり変わらないからねー」

放課後ー。
涼香は、友達の一人から、親と抱えているトラブルを
相談されて、そんな風に答えるー。

「ーーー~ーあははーー…
 涼香ちゃんー、”大人になったこと”あるのー?」
相談していた友達がふと笑うー。

「えっ!?あっ!?
 ううんー。お、おばあちゃんから聞いたお話でー!
 ほら、わたしが色々知ってるのも全部”おばあちゃん”のおかげだからー」
涼香が少し慌てながらそう言うと、
「ー涼香ちゃんのおばあちゃんって、ホントにすごいなぁ~」と、
友達はそう言葉を口にしたー。

「でも、おかげで少し気持ちも楽になったかもー!
 また、お母さんとちゃんと話をしてみるね!」
涼香に悩み事を相談していた友達は、
そう言葉を口にすると、そのまま嬉しそうに歩き出すー。

「うん!頑張って!」
涼香もそう言いながら、その友達に手を振ると、
「ふぅ」と、ため息を吐き出したー。

「ーー危ない危ないー
 ”つい”たまに口を滑らせちゃうよなー…
 まぁー…このぐらいの年齢の”ガキ”なんて、
 いくらでも口で誤魔化せるけどー」

ボソッとそう呟く涼香ー。

「ーーククー
 それにしても、”2回目の人生”は最強だよなー。
 ”知識”はそのまま、ガキに戻ることができるんだからー」
涼香はそう言葉を口にすると、自分の華奢な手を見つめるー。

”何でも知ってる頼れるお姉さん的存在”の、涼香はー、
”憑依”されていたー。

元々、涼香は1年生や2年生のころまでは”目立たない”存在で、
いつも教室の隅っこで本を読んでいるような子だったー。

それが、3年生ー、4年生になった頃から、
急激に成績が上昇し、今に至っているー。
元々、クラスで目立たない存在だったからか、
その”豹変”に、あまり違和感を抱く者もおらず、
いつの間にか”何でも知ってる頼れるお姉さん”的ポジションになったー。

先生や、両親も驚いたもののー、
元々、このぐらいの年代の子は色々と変わることもあるためか、
周囲はその変化を受け入れてしまったー。

”本来の涼香”は、憑依されて、
その身体を乗っ取られてしまったというのに、
その異変には誰も気づかないー。

「ーーーー」
涼香は、下校中にそのまま真っすぐに家には帰らずに
”隠れ家”へと足を運ぶー。

”涼香の家”とは別に、
涼香に憑依した男が、廃墟地帯に作った”自分の隠れ家”だー。

「ーへへへー
 家では”涼香”を演じてないといけないからなー」

そう言葉を口にしながら、椅子に座ってガムを噛み始める涼香ー。

”涼香”はまだ一人暮らしをすることができる年齢ではないし、
家を勝手に出れば問題になってしまうー。
だから、家では大人しく、いい子にしていないといけないー。
それはそれで、彼にとっては悪いことではなかったものの、
やはり涼香に憑依している彼自身は”大人”であるために
ある程度の”自由”は欲しいー。

だからこうして、時々、”隠れ家”にしたこの場所に遊びに来ていたー。

「しかし、ガキどもは、扱いが楽でいいぜー。
 俺にとっちゃ、あんな勉強、どうってことないからなー」

まだ5年生である涼香の勉強は
”大人”である彼にとっては”余裕”だったー。
周囲の知らないような知識や、”大人の頭脳”を使って
涼香は瞬く間に人気者ー。

そんな状況を、涼香に憑依している男は堪能していたー。

「ーーま、俺も好きでこうなったんじゃねぇけどなー」
涼香はガムを噛み終えると、それを吐き捨てて立ち上がるー。

彼ーー…
彦坂 雄太(ひこさか ゆうた)は、
別に”望んで”こうなったわけではなかったー。

雄太は、40代の独身男性ー。
小さい頃から勉強に全力を注ぎ、一流大学に入学し、
大企業に就職ー、
それなりのポジションにまでのし上がった男だー。

その代償として、プライベートは犠牲になり、
それほど結婚願望もなかった故か、気付いた時には婚期も逃して
40代の中盤になっていたー。

が、それでも彼自身、人生に大きな不満はなく、
”それ”が起きる直前までは、
”老後の計画も、そろそろ本気で練り始めなくちゃな”と、
そんな風に思っているところだったー。

だがーー…
彼は”暴走した車”に跳ねられてしまったー。

完全に、”不運”だったー。
アクセルとブレーキを踏み間違えて暴走した車が
突っ込んで来て、彼の人生はあっけなく終わったー。

「ーーーーぁ………」
彼は”死の間際”、強く思ったー。

まだ、死にたくないー
死ぬわけにはいかねぇー、
と、何度も何度も、意識が遠のくまで
そう呟き続けたー。

そしてーーー…
気付いた時にはー、
その事故現場を目撃した”涼香”に憑依していたのだー。

”神が、俺に2度目の人生を与えてくれたー”

涼香に憑依した雄太は、そんな風に考えていたー。

「ーへへへー…でもまさか、2度目の人生が女だとは思わなかったけどなー」
涼香はそう思いながら立ち上がるー。

「ー今は今で楽しんでー
 そのうち、JKとかJDになったら、今度は別のお楽しみもしながらー
 じっくり2度目の人生、楽しませてもらうぜー」
涼香はそう言葉を口にすると、静かに笑みを浮かべながら
時計を確認するー。

「ーっと、そろそろ”お母さん”たちが心配してるだろうからなー
 帰るとするかー」

隠れ家から外に出る涼香ー。

”子供ってのは楽でいいぜー”

1回、”社会人”を経験した雄太にとっては
”子供”として過ごす今は、とても楽だったー。

学校が終わる時間も、会社に比べたら圧倒的に早いし、
彼にとって学校での生活は
”思い出のリトライ”のような感じで、
特別、苦ではないー。

しかも、中身は大人である故に、
彼は周囲から、本当に頼りにされていて、
とても心地が良いー。

「ーしかしまぁ、子供のうちは
 ”天才少女”でいられるからー
 最高だぜーへへ」

涼香に憑依した雄太は、笑みを浮かべながら
ゆっくりと自宅に向かって歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーえ~すごいー…どうしてそんなことまで知ってるのー?」

翌日ー
今日も美穂は、学校で授業中に
難しいことまで簡単に答えてみせた涼香に対して
憧れにも似たような表情を浮かべながら
そう言葉を口にしたー

「橋口さんーって本当に何でも知ってるねー」
担任の先生も、感心した様子で笑うと、
涼香は「あははー…おばあちゃんが色々教えてくれたのでー」と、
そう言葉を口にするー。

”子供では知らないようなこと”まで知っていることを
感心されたり、逆に違和感を抱かれたりしたときには
”おばあちゃんが~”と、そう答えるようにしているー。

何となく、最もらしい理由であるように思えるし、
”おばあちゃんに確認する方法”が、先生や周囲の友達には
ないため、嘘の理由だとバレにくいー。

”涼香”のおばあちゃんはちゃんと健在で、
涼香はおばあちゃんが大好きで
夏休みや冬休みにはいつも遊びに行っていたらしいー。

涼香に憑依してからも”それ”は続けていて、
確かに”おばあちゃんに甘えている時間”はとても楽しいー

”俺が小さい頃に死んじまったばあちゃんにちょっと似てるしなー”
涼香となった雄太は、涼香の祖母に自分の祖母のことを
重ねながら、そんな風にも思っていたー。

「ー橋口さんー、これ教えて!」
「ーあ、わたしもー!」

昼休みになると、涼香の周りには
友達が集まって来るー。

”へへへー”
雄太自身も小さい頃から勉強熱心であったため、
”頼りにされる”ような経験がなかったわけではないー。

しかし、自分がこのぐらいの年齢だった頃より
今は”遥かに知識量も上”で、
当時の自分よりも、圧倒的に”頭がいい”状態だー。

既に自分は、40年以上生きて来たのだから、当然だー。

しかもー、容姿はそれほどー…
そう、自分でも”微妙”と感じるような、
そんな容姿だったー。

しかし、今は違うー。
容姿にも恵まれて、完全に”美少女”ー。

美容のための知識も、自分なりに調べたりして、
おしゃれの勉強も始めたー。
今までの自分とは縁のなかった世界に、
憑依している雄太からすれば、
新鮮かつ、元々勉強が嫌いではない彼からすると
日々、新鮮で楽しかったー。

「ーーえ~っと、これはね~」
「ーあ、こっちはこうすれば簡単だよー」

涼香は、友達の質問に一つ一つ答えながら
友達からお礼を言われて優越感に浸るー。

”へへへへー…あ~…天才少女ライフは最高だぜー
 ってか、ようやく”橋口さん”って呼ばれるのにも
 慣れて来たなー”

そんなことを思いつつ、涼香は今日も
”楽しい日々”を過ごしていくー。

そんな涼香に憧れる美穂は、
涼香と”一番仲良し”な存在だー。

美穂は今日も、涼香と一緒に下校しながら、
色々なことを話していたー。

もちろん、この美穂は”人生1回目”で、
涼香のように”誰かが憑依している”などということはないー。

「ーーそれにしても、橋口さんってやっぱりすごいよね~
 今日だって、先生もびっくりしてたし!」
美穂がそう言うと、涼香は「あははー…おばあちゃんのおかげー」と、
そう答えるー。

「ほんとに~?
 なんだか、橋口さんって1回大人になったことがあるんじゃない?
 って思っちゃうぐらい、何でも知ってるんだもんー」
美穂が笑いながらそう言うー

そんな言葉を聞いた涼香は、
”へへーまぁ、1回大人になったことあるんだけどなー俺は”
と、内心で笑みを浮かべると、
少し揶揄うつもりで言葉を口にしたー。

「ー実はわたし、人生2回目なのー」
とー。

「ーーーえっ…?」
美穂が驚くー。

「ーー1回死んで、今、”2回目”なのー」
とー。

「ーーえっ…!?えっ…!?」
美穂は驚いたような表情を浮かべたまま涼香を見るー。

涼香に憑依している雄太が”憑依”のことを明かすつもりはないー。
”子供”だし、”子供の嘘”で、このぐらい言っても大丈夫だろう、と
そう判断しての言葉だー。

「ーな~んちゃってー。 えへへー」
涼香がそう言葉を口にすると、
美穂は「も~~!驚かさないでよ~!」と、
涼香をぺしぺしと軽く叩くー。

「あはは~ごめんごめん」
笑いながらそう言葉を口にする涼香ー。

そのまま二人はいつものように、
帰り道が一緒の場所まで楽しく会話しながらやってくると、
「また明日ー」と、そう言葉を口にして別れたー。

「ーーーーーーーーー」
一人残された美穂は、静かに呟くー。

「2回目の人生ー…生まれ変わりってーあるのかなー」
そんな言葉を口にして、少しワクワクしたような表情を浮かべる美穂ー。

美穂は、涼香の”人生2回目”という言葉に目をキラキラと
輝かせながら、そのままゆっくりと家に向かって歩き始めたー…

②へ続く

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コメント

憑依で”2回目”の人生…★
何回か書いたシチュエーションですネ~!

今回はその時とはまた違う形で描いていきます~!!

続きはまた明日~★!

コメント

  1. 匿名 より:

    狙って憑依したわけじゃないとはいえ、結果的に理不尽に人生を奪われた本物の涼香は気の毒ですよね。しかも、誰にもそれを気づいてもらえてないのでなおさらです。

    同じ2回目の人生と言っても、憑依とかだと転生系のモノと違って、人生を奪われた被害者がいるので、その時点でダークな感じしますよね。

    • 無名 より:

      こちらへの感想もありがとうございます~!☆★

      奪われちゃった本人からすれば
      最悪のバッドエンドですネ~…

      このままずっと気付かれないままなのもダークデス…★