<憑依>2人とも憑依されている③~知らないこと~(完)

お互いに相手も自分と同じように
憑依されていることを知らない二人ー。

知らないほうが幸せなのか、
それともー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーホントに邪魔しちゃって、いいの?」
妹・絵里の親友、寧々が少し気まずそうな雰囲気を浮かべるー。

「ー大丈夫大丈夫ー。
 それに、前に寧々ちゃんが遊びに来た時、
 お姉ちゃん、寧々ちゃんのこと気に入ってたしー」

絵里が、そう言いながら
真面目そうな雰囲気の眼鏡をかけた親友・寧々を
家の前まで連れて来るー。

時々、絵里のことを揶揄うような口調で
”絵里おばあちゃん”などと呼んでいる寧々ー。

今日は、絵里がその寧々を連れて
自分の家の前までやってきていたー。

もうすぐ、期末試験があるため、
”いっしょに勉強しよっ!”と、そう誘ったのだー。

”あ~~…JK同士で試験勉強ーむふふふ”
絵里に憑依している60代の男・淳二が
心の中でそんなことを呟きながらニヤニヤするー。

そんな、ニヤニヤしている絵里を見つめながら、
友達の寧々が思わず笑うと、
「え?なにニヤニヤしてるの?」と、そう言葉を口にするー。

「ーあ、いやー、な、なんでもないよ!
 ほら!早くわたしの部屋にいこっ!」
絵里が慌てた様子でそう言うと、玄関の扉を開けて、
「ただいま~!」と、そう言葉を口にするー。

がーー
その直後、廊下にいた二人の姿が目に入ったー。

姉の尚美と、その親友の萌奈ー。
たくさんの服を持ってるおしゃれな子で、
尚美はいつも、萌奈がどんな格好で大学にやってくるか、
楽しみにしているー。

その萌奈が、尚美と絵里たちの家にいたのだー。

「ーーあ」

「ーーーえ」

偶然、姉の尚美も、親友の萌奈を家に連れてきていて、
お互いが、お互いの親友を連れてきているー、
そんな状態になってしまったのだー。

「ーーあーーーど、どうもー…」
妹・絵里の親友である寧々が少し顔を赤らめながら、
姉・尚美の親友・萌奈の方を見つめるー。

萌奈は今日もとてもおしゃれで可愛らしい格好をしていたー。
それを見て、寧々が少しドキッとしたようだー。

妹の絵里も、”わぁ…綺麗な人ー”と、思いながらも
「お、お姉ちゃんー、その人って、もしかしていつも言ってるー?」と、
そう言うと、姉の尚美が「あ、うんー萌奈だよ!可愛いでしょ!」と、
まるで自分のことのように、萌奈を見せながら自慢するー

「ちょ、ちょっとー!やめてよ!」
恥ずかしそうに苦笑いしながら萌奈が言うと、
萌奈は、尚美の妹である絵里と、その親友の寧々の方を見て、
「あ、わたしは尚美の親友の萌奈ー。よろしくねー」と、
そう自己紹介したー。

姉の尚美は、妹の親友・寧々と面識があるものの、
妹の絵里は、姉の親友・萌奈のことは姉から話を聞かされたことが
あるだけで、面識はなかったー。

「ーーーーーそっちの子はー?」
萌奈が、絵里と一緒にいた絵里の親友・寧々の方を見ると、
寧々は「あ、絵里ちゃんの友達の寧々ですー。よろしくお願いします」と、
ぺこりと頭を下げたー。

「ーまさか、偶然同じ日に友達を連れて来ちゃうなんてー」
姉・尚美が苦笑いしながら言うと、妹の絵里も笑いながら
「あ、寧々ちゃんー、気にしなくて大丈夫だからね」と、
そう言葉を口にしながら、家の中へと寧々を招き入れたー。

「お邪魔しま~す…」
寧々は少し気まずそうにしながら、
絵里と共に、絵里の部屋へと向かって行くー。

「ーーふふーなんだかかわいい子だねー」
姉・尚美の親友の萌奈がそう呟くとー、
尚美は笑いながら「みんな可愛く見えちゃう~」と、
そんな言葉を口にしたー。

尚美からすれば、周囲の女子大生も、
妹や、その周りの女子高生も、
”みんなかわいい”のだー。

何故なら、尚美の”中身”は、30代男性の泰明なのだからー。

「ーーー…!」
何気なく雑談をしながら自分の部屋に、
親友の萌奈と共に入っていく尚美ー。

が、そこで尚美はハッとしたような表情を浮かべるー。

それもそのはずー。
Hなゲームのケースをうっかり置いたままに
してしまっていたのだー

「ーー~~~~~~~~~~~~!!!」
部屋に入ると同時に、それが置かれている場所に
突然ダッシュすると、尚美は慌てて
それを回収して、自分の机の中にしまうー。

「えっ!?えっ…?なに…???」
尚美の突然の行動に、戸惑いの表情を浮かべる萌奈ー。

そんな萌奈に対して、尚美は慌てたような表情を
浮かべながら「な、なんでもないよ~」と、
そう言葉を口にしたー。

”最高の女子大生ライフ”を失わないためにもー、
憑依していることを気付かれるわけにはいかないー。
そう、誰にもー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへ~そうなんだ~!」

結局ー
姉・尚美と親友の萌奈、
妹・絵里と親友の寧々ー、
4人は、萌奈の部屋の方に集まって、
4人で過ごしていたー。

「ーーーえへへーちょっとだけですけどねー」
妹・絵里が笑うー。

絵里が”コスプレを少しする”ことは、姉の尚美も知っているー。
そのぐらいでは、”憑依”に結び付くことはないだろうという
絵里に憑依している淳二の判断だー。

が、過激な衣装も含めてコスプレすることは
隠しているし、衣装も”こんなにたくさん持っている”とは
思っていないだろうー。
もちろん、自分のコスプレ姿に興奮していることも知らないー。

「ーー萌奈さんは、コスプレとかはしないんですか?
 お姉ちゃんからいつもおしゃれだって聞いてますけどー」
妹の絵里はそんな言葉を口にするー。

女子大生の萌奈と言えども、
”絵里”の中身である60代中盤の淳二からすれば
”はるか年下”の子ー。
しかし、身体が絵里である以上、身体に合わせて敬語で接するー。

「ーー…あ~わたしはコスプレはしないかなぁ~…
 日常的なおしゃれが好きっていうかー、そんな感じー」
萌奈はそんな言葉を口にすると、
絵里の姉・尚美が「ーいつもどんな格好で来るか、すっごく楽しみー」と、
ニヤニヤしながら言うー。

「ーやっぱ尚美ー。前世、おじさんでしょ?」
いつものようなやり取りをする萌奈ー。

が、そんな言葉に、そう言われた尚美ではなく、
妹の絵里の方がドキッとしてしまうー。

”前世”ではないけれど、自分自身、中身は”おじさん”ー
いいや、この子たちから見ればもはや”おじいさん”だからだー。

「ーーで、で、で、でも、今はいい時代ですよねー!
 コスプレも昔に比べたら全然自由にできますし!
 買う時もネットで買えば恥ずかしくないですし!」

妹・絵里が話題を変えようとしてそう言葉を口にするー。

がー、
その言葉に、姉の親友・萌奈が首を傾げるー。

「ーーもう!絵里ちゃんー
 また”絵里おばあちゃん”になってるよ!」
横にいた絵里の友達ー、眼鏡をかけた真面目そうな寧々が
そう言葉を口にするー。

「ーーえっ!?あ、いやー、ちがっー!
 昔は、ほら、おじいちゃんがそう言ってたからー!」
絵里が慌てた様子でそう言うと、
絵里の親友・寧々が
不思議そうな顔をしている萌奈に対して
「絵里ちゃん、たまにおばあちゃんみたいなこと言うのでー
 絵里おばあちゃんって呼んでるんですー」と、
苦笑いしたー。

「ーー…へ~~…なんかおもしろいね~」
萌奈はそう言いながら、
自分の親友である尚美と、その妹の絵里を見つめるー。

「前世おじさんの尚美に、絵里おばあちゃんー
 ふふふー」

冗談めいた口調で言う萌奈ー。

その言葉に尚美も、絵里もそれぞれギクッ!と心の中で思うー。

「ーあははー、わ、わたしがニヤニヤしちゃうのは
 萌奈が可愛すぎるからいけないんだからね~!」
話題を逸らそうと、姉・尚美がそう言うと、
尚美の親友の萌奈は
「ー尚美だって可愛いでしょ」と、そうツッコミを入れたー。

妹・絵里とその親友の寧々の勉強をサポートしながら、
姉・尚美と親友の萌奈は楽しそうに色々話を続けているー。

「ー寧々ちゃんってすごいね~…!わたしなんかより滅茶苦茶頭いいしー」
勉強を教えていた萌奈がそう言うと、
寧々の隣にいた絵里が言うー。

「寧々ちゃん、すっごく頭がよくてー、いつも学年1位なんですよー」
とー。

「ーへ~~!すごい~!」
萌奈のそんな言葉に、姉の尚美も感心した様子で頷くー

「ーーそ、そんなにすごいってことはないですけどー」
寧々は眼鏡をいじりながらそれだけ言葉を口にするー。

4人とも色々な話をしながら、
やがて時間が過ぎていくー。

「ーあ、わたしはそろそろー」
寧々が時計を見てそう言うと、
尚美の妹・絵里は「ーあ、そうだねー。ごめんね。あまり勉強できなかったね」と、
本来、試験勉強のために集まったにも関わらず、
話し込んでしまってあまり勉強できなかったことを口にするー。

「ーううんー女子会みたいで楽しかったしー」
寧々がそう言うと、
絵里は「えへー…今はそういう風に言うんだよねー」と、
ニヤニヤしながら笑うー。

「ー出たーまた絵里おばあちゃんになってる」
寧々がいつものようにそう言葉を口にすると、
親友である絵里の姉・尚美の方を見て「お邪魔しました」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーううんーまた遊びに来てね」
尚美はそう言いながら
心の中で”えへへー…妹の友達…なんか響きがエロイぜー”と、
尚美に憑依している泰明は心の中で笑みを浮かべたー。

「ーーー…」
親友のおしゃれな萌奈は、そんな尚美の方を横目で見つめながら
”やっぱ、前世おじさんなんじゃー?”と、
心の中でそう言葉を口にしたー。

「ーー…あ、わたしもそろそろ」
萌奈がそう口を開くと、尚美も「あ、うんー今日もありがと」と、
そう返事を返したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

姉・尚美と妹・絵里は二人とも憑依されているー。
そして、お互いにそのことには気付いていないー。

「えへへへへー」
涎を垂らしそうになりながら、Hな動画を見つめる尚美ー。

今日も女の身体で欲望を楽しみながら
”こんな姿、絵里に見られたら絶対、”お姉ちゃんを返して!”とか
言われちゃうから気を付けないとなぁ”と、
憑依している泰明は改めて心の中で思うー。

しかし、隣の部屋では妹の絵里が
過激なコスプレ姿で自撮りをしながら、
「うへへー…あのお姉ちゃんに嫌われたら悲しいし、
 そうならないようにしないとー」と、
絵里に憑依している60代男性・淳二がそう言葉を口にするー。

お互いにー、
相手が憑依されているとは夢にも思わないー。

今までも、そしてこの先も、
二人とも憑依されていることに、二人は気付かないー。

そしてーーー

「ーーーーま、僕は頭良くて当然なんだけどー」
妹・絵里の親友・寧々ー。

絵里たちの家から帰路につきながら、
眼鏡がトレードマークの寧々はそう言葉を口にしたー。

彼女もーー
”憑依”されているー。

勉強一筋で青春を味わってこなかった男に、
憑依されていて、成績が異様に高いのはそのためだー。

彼からすれば”高校の勉強”など、とても簡単なことー

だから、寧々はいつも成績1位なのだー。
優等生風の見た目ながら、どこかハッキリとモノを言ったり、
アンバランスな面があるのは、そのためー。

しかし、寧々自身、親友である絵里が憑依されていることは知らないし、
憑依薬を使って他人を乗っ取っているのは自分だけだと思っているー。

「ーーーあの人、ほんとおしゃれだったなぁ」
寧々は、親友・絵里の姉である尚美の親友・萌奈のことを思い出すー。

がー、
その萌奈も”同じ”ー

「ーーせっかく女になったんだから、おしゃれにするに決まってるじゃんー?」
同じころ、別の場所で家に向かっていた萌奈が呟くー。

姉・尚美の親友の萌奈も”憑依”されているー。
容姿に恵まれず、いじめを受けてきた男ー。
彼が憑依薬を手に入れ、萌奈を乗っ取り、おしゃれを楽しんでいるー。

高校以前の”卒業アルバム”には、元々滅茶苦茶地味で大人しかった
萌奈の写真が写っているもののー、
今の”憑依された萌奈”は絶対にそれを見せようとしないー。

「ーーそれにしても、尚美ってばー、
 ホントに前世おじさんみたいで笑っちゃうー
 いつも、わたしのこと見てドキドキしてそうだしー」

萌奈はそれだけ呟くと、
少しだけ笑うー

「でもー、憑依のことは気付かれないようにしなくちゃー
 さすがに尚美も、わたしの中身が男だって気付いたら
 逃げるだろうからー」

萌奈はそう言葉を口にすると、
そのまま家に向かって歩き出したー。

姉・尚美と妹・絵里は知らないー。
妹がー、姉がー、二人とも憑依されていることをー。

そして、自分たちのそれぞれの親友も
”2人とも憑依されている”
ことをー。

おわり

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コメント

登場人物みんな、
それぞれ憑依されているお話でした~☆!

4人とも、他の3人が憑依されているとは知らず、
そんなこと夢にも思っていないのデス…!

お読み下さりありがとうございました~~!

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