ある日を境に、
謎の美少女に執拗に追跡されるようになってしまった彼ー。
ごく普通のサラリーマン生活を送っていたはずの彼を
付け狙う彼女の目的とはー…!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー今日はお先に失礼しますー」
入社3年目のサラリーマン・倉岡 裕司(くらおか ゆうじ)は、
先輩社員や同僚たちにそう言葉を口にすると、
そのまま会社の外に向かって歩き始めるー。
「ーおぅ 倉岡ー 今日は早いなー」
そんな裕司の姿を見つけた同期の男・杉田 英悟(すぎた えいご)が、
裕司に声を掛けて来るー。
英悟はちょうど、部署の部屋の外の休憩スペースで
コーヒーを飲んで休憩している最中のようだったー。
「ははーまぁなー。」
裕司が苦笑いしながら言うと、
英悟は「へへー覚えてるぜ?確か、雅美(まさみ)さんの誕生日だろ?」
と、そう言葉を口にするー。
「ーーーよく覚えてるなー…
前に1回話しただけだった気がするけどー」
裕司が、呆れ顔で笑うー。
大学時代に出会った彼女と、卒業後に結婚した裕司には、
妻がいるー。
結婚してから既に3年になるものの、
今でも喧嘩することなく仲良しの裕司ー。
今日はその妻・雅美の誕生日であるために
半休…午後は休みを取っていて、午前中だけで仕事を切り上げていたのだー。
「ーーははー俺は物覚えがいいんでな」
英悟が少し得意気な表情でそう言い放つー。
「ーーいやぁ、人の妻の誕生日を覚えてるなんてー
なかなかそんなやついないよー」
裕司が冗談めいた口調で言うと、
英悟は飲んでいた缶コーヒーの残りを飲み干してから笑ったー。
「ー俺には”誕生日を覚える妻”がいないからなー
へへー」
自虐的に笑う英悟ー。
そんな彼を見て、裕司は少し笑うと、
「ー杉田だって、その気になりゃ結婚できるだろー?」と、
そう言葉を口にするー。
しかし、英悟は苦笑いしながら
「おいおい、俺みたいな結婚できないやつに簡単に言うなよー?
結婚ってできねぇやつには、世界一周するよりムズイことなんだからな?」
と、諭すように呟くー。
「ーーー悪い悪いー」
裕司は少しだけ申し訳なさそうに謝ると、
英悟はニヤニヤしながら、
「いや、まぁ、俺の場合は生涯独身でもいいって思ってるから、
こうなんだけどなー」と、そう言葉を付け加えるー。
そして、時計を見つめると
「って、雅美さんの誕生日なのに俺なんかと話してる場合じゃないだろ?
せっかく半休取ったんだから、早く帰ってやれよ」
と、英悟は裕司の肩をポンポンと叩くー。
「ー悪いなー。仕事に穴を開けちまってー」
裕司のその言葉に、英悟は「いいってことよー」と、言いながら
「さ、生涯独身の俺は仕事だ!」と、ふざけた口調で言い放つと、
そのまま自分たちが所属する部署のある部屋に向かって歩いて行ったー。
「ーーーさて、とー」
裕司はそう呟くと、雅美の好きなチョコレートケーキを予約してあるお店に
ケーキを取りに行こうと、車を走らせるー。
裕司の人生は、順調だったー。
大学時代に、今の妻である雅美と出会い、
大学生生活を無難にこなし、”それなり”の企業に就職し、
入社3年目の現在、すっかりと仕事にも慣れて、それなりに重宝されているー。
会社自体もブラック企業ではなく、こうして半休を取ることも、
必要であれば有休をちゃんと取ることもできる職場だし、
パワハラ上司もいないー。
そんな、理想と言ってもいい職場だー。
夫婦関係も悪くなくー、
20代にして、学生時代から貯めていたお金も使って、
夢のマイホームも手に入れたー。
全ては順調ー。
急に億万長者になったり、若くして企業して大成功したり、
そういう、特別キラキラ輝く人生ではないけれど、
”無難に順調”な人生を送ることができている、ということは
とてもありがたいことだったし、幸せだったー。
「ーー…予約していた倉岡ですがー」
ケーキ屋に入ると、裕司は店員にそう伝えて、
妻・雅美の好きなチョコレートケーキを受け取るー。
会計を済ませると、裕司はケーキの入った箱を大事そうに手にしたまま、
そのままお店の外へと出たー。
がーー
その時だったー。
「ーーあ、いたいたー」
「ー!?」
裕司が店を出ると同時に、知らない女に声を掛けられたー。
どこかー
お嬢様のような雰囲気の美少女ー。
「ーーー?」
裕司は、一瞬”会社の誰か”かと思い、頭の中で考えたものの、
こんな見た目の子は会社にはいないはずだー。
そう思っていると、
その美少女は突然、言葉を口にしたー。
「ーー倉岡さんー
わたし、ずっと、あなたのことが好きでしたー!」
とー。
「ーー………」
裕司はケーキの箱を手にしたまま、
きょとんとした表情を浮かべるー。
正直、意味が分からないー。
「ーわたしと、付き合ってください!」
美少女はそう言葉を口にすると、裕司は戸惑いの表情を浮かべながら
「ーーえ…あ、いや、あのー…誰かと間違えてませんか?」と、
思わずそう言葉を口にするー。
会社の関係者じゃなさそうだし、学生時代の友人にも
こんな子はいないー。
妻・雅美の関係者でもないだろうしー、
全く”見覚え”がない美少女に突然告白されたー。
しかも、見た目的に自分よりも年下に見えるー。
下手をすれば、高校生ぐらいのようにも見えるその子に
いきなり告白されて、裕司は心底困惑していたー。
「ーーー倉岡 裕司さんですよねー?
間違えるわけないじゃないですかー」
美少女はそう言葉を口にすると、
裕司は、さらに戸惑いの表情を浮かべたー。
「ー間違えるわけなんてないー…」
ボソッと呟く美少女ー。
が、その言葉は聞き取れなかった裕司は
「ーーーそ、その、どこかでお会いしましたか?」と、
困惑しながら言葉を続けるー。
相手が”誰”なのかが分からないー。
もし、会社関係の人ならあまりぞんざいに扱うことはできないし、
学生時代の後輩だったりするのであれば、
あまり雑に扱いたくはないー。
裕司としては、妻の雅美一筋で浮気など想像もしたことなかったし、
相手がどんな美少女だとしても、そういうことをするつもりは
全くないために、”付き合ってください”を断ることには変わりないものの、
裕司は、そもそも”この子は誰なんだ?”ということが分からずに
困惑していたー。
「ーーえ~っとーーー
なんて言えばいいかー…」
美少女はそう言葉を口にすると、
裕司は美少女の煮え切らない反応に、
「ー失礼ですが、お名前はー?」と、そう言葉を口にしたー。
こっちのことを”倉岡 裕司”だと知っているのであれば
名前を聞いても失礼はないだろうー。
そう思いながら、名前を聞くと、
「あーわたしはーーーーー」と、少し考えるような素振りをし始めるー。
不自然に間が相手から、
「あ!そうだー。」と、美少女は意味不明な言葉を口にしてから、
「わたしは宮森 萌奈(みやもり もな)と言いますー」と、自分の名を名乗ったー
「ーー宮森 萌奈ーーー」
その名前を、頭の中で考えるー。
が、やはり”宮森 萌奈”という人物と会った記憶はないー。
「ーーー…ーーー…」
裕司が少し表情を曇らせながら、
今のこの状況を前に、どうするか考えていると
やがて、萌奈が言葉を口にしたー。
「ーーー付き合ってもらえますかー?」
とー。
「ーー…い、いやいや、
そのー、俺は結婚してるのでー…。
そういうのは、無理ですー。すみません」
裕司は頭を下げると、
そのまま「もう、いいですかー?」と、
ケーキの入った箱を示すー。
”ここで話をしていると温くなってしまう”と言いたげな裕司ー。
「ーーーふふふー そうですかー
ありがとうございますー」
振られた萌奈はあっさりと引き下がると、
ぺこりと頭を下げるー。
裕司は、そんな萌奈の姿を少し横目で確認しながら、
”なんか、ヤバそうな子だなー”と、思いつつ、
そのまま足早に車の方に向かうー。
そんな、立ち去っていく裕司の姿を見つめながら
萌奈は静かに笑みを浮かべるー。
「ーーー…俺は絶対にお前を許さないー」
そう、言葉を口にしながらー。
そして、萌奈は言葉を続けたー。
「ーこの女の身体で、お前を破滅させてやるー」
とー。
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「ーただいまー」
帰宅した裕司は、妻の雅美に
買って来たケーキを手渡すー。
「ーーわぁ!ありがとう!」
雅美が嬉しそうのそのケーキを見つめると、
裕司は「ははー喜んでもらえて良かったー。
味も美味しければいいけどー」と、
チョコレートケーキを眺めるー。
「ーえ~?絶対美味しそうに見えるし、大丈夫でしょ!」
雅美は嬉しそうにケーキを眺めているー。
今日買って来たのは、いつもより奮発して
よく買うチョコレートケーキよりも高めのものー。
つまり、初めて食べるチョコレートケーキであるため
その味は食べて見ないと分からないー。
「ーーあ、そうそうーお寿司も買って来たよー」
裕司がそう言いながら、ケーキの前に
スーパーで購入した寿司を見せると、
雅美は「え~!そんなに食べられるかな~」と、笑うー。
裕司と雅美はいつものように楽しそうに話をしながら、
家でのひと時を過ごすー。
結婚する前から変わらず、結婚した今も仲良しな
裕司と雅美ー。
裕司も、この幸せがこの先もずっと続くことを
信じて疑わなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーお帰りなさいませー」
執事のような格好をした男が、
帰宅した”お嬢様”に向かってそう言葉を口にするー。
先程、街中で突然裕司に告白した謎の美少女・萌奈は
「ただいま」と、だけ言葉を口にしながら
自分の部屋に入ると、
お嬢様らしからぬ雑な座り方で、椅子に座るー。
「ーーは~~~~~~……
ーーー………倉岡 裕司ー」
萌奈はそう言葉を口にすると、
「ーー俺の人生を滅茶苦茶にしたお前を、俺は絶対に許さないー」と、
そう呟くー。
その可愛らしい顔立ちに似合わぬ、憎しみに満ちた目で、
”裕司”の写真を見つめるー。
「ーーー絶対に、お前の人生を滅茶苦茶にしてやるー
お前だけ幸せなんて俺は認めないし、絶対に許さないー」
ギリギリと歯軋りをしながら、萌奈は裕司の写真を
殴りつけると、はぁはぁと荒い息をしながら
怒りの形相を浮かべるー。
「ーーーーー」
そして、チラッと可愛らしい机の方を見つめると、
その引き出しの中にしまい込んだ、あるものを手にするー。
これはー”憑依薬”ー
このお嬢様…”萌奈”に憑依するときに使った薬だー。
「ーー”この女の身体”でお前のことを
破滅させてやるー」
萌奈は、笑みを浮かべながら一人呟くー。
”自分の身体”で、裕司を破滅させるのは正直、難しいー。
できることと言えば、物理的に裕司に復讐を果たすことぐらいだー。
だが、それではつまらないー。
仮に裕司を殺すことはできたとしても、
それでは裕司が苦しむのは一瞬だー。
死ねば、何も分からないー。
天国とか、地獄とか、そういうものがあるという人もいるけれど、
少なくとも萌奈に憑依している男は、死後の世界を信じていないー。
死ねば、人間は等しく土に還り、無となる。
それまで積み上げた人生は、零になるー。
苦しむのは、死ぬまでのわずかな時間だけだー。
「ーーー俺はーお前に苦しんでもらいたいんだー
できるだけ、長くーー」
萌奈はそう言うと、「ククククー」と笑い始めるー。
もうすぐ、復讐の本番の始まりだー。
それを想像した萌奈は、部屋の外にまで響きそうな
大きな笑い声をあげ始めたー。
「ーーーお嬢様ー…?」
とある企業の社長の娘である萌奈ー。
が、最近は何だか様子がおかしいー。
部屋の中から、狂ったように笑う萌奈の声が聞こえて来て、
執事は心配そうにそう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーじゃ、行ってくるよー」
翌日ー
今日も、いつものように会社へと向かう裕司ー。
昨日遭遇した”萌奈”のことなど忘れてー、
いつものように通勤し始めるー。
裕司は、小さなことはあまり悩まないタイプー。
昨日の、萌奈の件も、
”たまたま遭遇した変なやつ”ぐらいにしか思っておらず、
妻の誕生日の楽しい思い出に、そんな出来事は上書きされて、
もう、何とも思っていなかったー。
しかしーーー
会社に到着して、車を止めた裕司の前にーー
昨日の美少女ー、”萌奈”が姿を現したー
「ーー!き、きみはー…」
裕司がそう言葉を口にすると、
萌奈は「ふふー…いい会社ですねー」と、
会社の建物の方を見つめながら
不気味な笑みを浮かべたー…
②へ続く
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コメント
憑依されている美少女に執拗に付き纏われるお話デス~~!!
…まだ①では2回しか姿を現してませんケド…笑
続きはまた明日デス~!!

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