トイレの幽霊に身体を奪われてしまった彼ー。
何とか、誰かにこのことを伝えようとするも、
悪霊退治をしている親友がトイレにやってきてしまいー?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー…ま、待って!」
トイレの中で、
花子さん(直人)はそう叫んだー。
「ーーー…?」
”トイレの花子さん”を退治しようと、トイレにやってきた浩太は
その言葉に札を持っている手を止めるー。
花子さん(直人)は、手をカタカタ震わせているのが見えて、
浩太は少しだけ、表情を歪めるー。
「散々、みんなを驚かせていたのに、
そんなに怖がるなんてー、不思議な悪霊もいたものだねー」
浩太は呆れ顔でそう言い放つー。
「でも、ここで君を見逃せば、
君はまたみんなを驚かせようとするー。
そうだろうー?」
浩太はそこまで言うと、
花子さん(直人)は慌てた様子で、
「ま、待って!ち、違う!違うんだ!」と、叫ぶー。
「ーどうせ、”わたしはただ、遊びたかっただけなの”って
言うんだろー?
僕にはお見通しだよ」
浩太はそう言い放つー。
”トイレの花子さん”から、遊びましょ?と言われるー
そんな話を浩太も聞いたことがあるー。
この幽霊は、そういう言い訳をするのだろう、と、
そう思いながら「僕は騙されないー。人を騙そうとする
悪い幽霊とたくさん戦って来たから」と、そう言葉を口にするー。
悪霊の中には”人間を騙そうとする存在”もたくさんいるー。
昨日もちょうど、帰り道に
”人間を悪の道に引きずり込もうとする悪霊”と遭遇したー。
その悪霊は、女子高生に万引きをさせようと言葉巧みに誘導していてー、
それを見かけた浩太は、早速その幽霊を退治したー。
そうー、悪霊は人をだますのだー。
色々な形でー。
「ーーち、ち、ち、違うんだ!僕は!僕は鈴村だよ!
鈴村 直人なんだよー!」
花子さん(直人)が、髪を揺らしながら必死に叫ぶー。
その言葉に、浩太もさすがに驚いたような表情を浮かべたものの、
すぐに、ふっと笑ったー。
「ーーそんな見え透いた嘘までつくなんてー」
浩太はそう言うと、札を手にするー。
「僕だって、好きでこんなことをしてるんじゃないしー、
出会った幽霊全てを退治してるわけじゃないー。
それにー…みんなには君達幽霊の姿は見えないし、
声も聞こえないし、触れることもできないー。
おかげで僕はみんなから変わり者扱いされてるしー…
いいことなんてないよー。
でも、君達みたいな”悪霊”は放っておけば
誰かが辛い思いをするー。
だから、退治するんだー」
浩太が悲しそうな表情で言うー。
いつも、直人の前では、楽しそうに悪霊退治の話をしてくれる浩太ー。
けれど、浩太自身にも色々葛藤があるのかもしれないー。
「ーーぼー、僕ー、は、花子さんに身体を奪われてー!
い、今、僕の中に花子さんがー!」
花子さん(直人)はなおも食い下がるー。
冷たい手で、浩太に触れながら
花子さん(直人)は言うー。
「ーぼ、僕、嫌だよー!
幽霊として消えていくなんて!
トイレの中からずっと出られないなんてー!」
花子さん(直人)の必死の叫びに
浩太は言うー。
「ーーー…鈴村くんは、こんな僕の話を笑わずにー
嘘だとも言わずに真剣に聞いてくれるんだー。
ーーそんな鈴村くんの名前を勝手に名乗るなんてーーー
絶対に許せないー!」
とー。
「ーー!!」
花子さん(直人)は、”僕は直人だよ!”と言ったことが、
逆効果になってしまったことを悟り、青ざめるー。
”「ー悪霊退治ー、お願いしちゃおっかなー?」”
直人になった”花子さん”の言葉を思い出すー。
花子さんは、浩太くんを利用して
”僕”を消すつもりだと、直人はそう悟ったー。
「ーー僕と出会ったのが、運の尽きさー」
浩太は、”花子さん”に対してそう言い放つと、札を手にして、
花子さんを退治しようとするー。
「ーーーーー!!」
そこに、直人(花子さん)がやってくるー。
「ーー!」
浩太もそれに気づくと、すぐに言葉を口にするー。
「今、ちょうど”花子さん”を退治しようとしてるところだからー、
君は下がっててー」
とー。
「ーー」
直人(花子さん)はチラッと花子さん(直人)の方を見つめるー。
花子さん(直人)は、”親友に退治されそうになって”
泣きじゃくっていたー。
「ーーなんでー…僕、花子さんとただ遊ぼうとしただけなのにー」
そう呟く花子さん(直人)ー
そして、半分諦めたかのように、
ボソボソと言葉を口にするー。
「ーーでも、今なら花子さんの気持ちも分かる気がするー
ずっと、トイレの中なんて寂しいもんねー…
ーーー…そうだったら最初からそう言ってくれれば
僕の身体、時々貸してあげたり、僕がいつでも話し相手に
なったりしてあげたのにー
なんで、僕がこんな目にー」
とー。
それを聞きながら、浩太は、
「ーー悪あがきはやめて、大人しく成仏するんだー」と、
自分の手に持つ札で、花子さん(直人)を消し去ろうとするー。
「ーーーーーー」
花子さん(直人)は、悔しそうに目を閉じるー。
”浩太くんの言う通りー、興味本位で花子さんと
会おうとなんてしちゃいけなかったんだー”
そんなことを心の中で思うー。
”ちゃんと、人の言うことを聞かなくちゃだめって、
お母さんにも言われてたなぁ…”
続けてそんなことを思いながら、
花子さん(直人)はこんな風になってしまったのは
自分のせいだと、そう思いながら
”諦め”の気持ちで、”浩太くんに消されるならー…それもいっかー…”と、
心の中でそう呟いたー。
がーーー
「ー待ってー!」
背後にいた直人(花子さん)が声を上げたー。
「ーーーえ?」
まさに今、花子さん(直人)に札を使おうとしていた浩太が
動きを止めると、
花子さん(直人)も閉じていた目をそっと開くー。
「ーーそ、その幽霊が言ってることは本当ー
僕ー、いいや、わたしが”花子さん”なのー」
直人(花子さん)は、突然、本当のことを打ち明けると、
浩太は「えっ!?」と、驚きの表情を浮かべるー。
花子さん(直人)も、”花子さん”の予想外の行動に
少しだけ驚くー。
そんな二人を見つめながら、
直人になった花子さんは、
「ーーその子は、
身体をとりかえっこしようして遊ぼうって言ったら、
わたしと遊んでくれたのー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーー…」
浩太は唖然としながら、
「ーーい、いくら幽霊を実際に見れて嬉しいからってそんなウソはー」と、
戸惑いの言葉を口にするー。
元々、”幽霊”に興味を持っていた”直人”が
花子さんが消されないように嘘をついているのだと、
浩太はそう思ったのだー。
しかしー、
直人(花子さん)は首を横に振ると、
「ーーーわたしが花子だもんー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーーそ、そんな嘘ついてもダメだ!
みんなを困らせる悪霊は退治しないとー」
浩太はそれでも、その言葉を信じず、
目の前にいる花子さん(直人)に対して、
悪霊を退治する札を向けるー。
がー
「ーーわたしが花子って言ってるでしょ!!!!!」
直人(花子さん)はそう言葉を口にすると、
目を真っ赤に光らせてー、
髪の毛を逆立たせながら、浩太の方を睨みつけたー。
「ーーー!!」
普通の人間では、絶対にできない芸当ー。
直人の目が赤く光っているのを見て、
「ーーま、まさか本当に二人はー!?」と、
戸惑いながら二人を交互に見つめるー。
「ーー…うー…うんー
ごめんー…浩太くんの言うこと聞かなかったからーこんなー」
花子さんになってしまった直人もそう言葉を口にすると、
浩太は戸惑いながら「ーーご、ごめんー君を消してしまうところだったよー」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
直人(花子さん)が浩太に全ての事情を説明したー。
そして、
直人(花子さん)が、花子さん(直人)の近くに寄って来るー。
「ーーーわたしと遊んでくれてありがとうー」
直人(花子さん)がそう言葉を口にするー。
「ーーう、うんー」
戸惑う花子さん(直人)ー。
「ーーそ、その…何で、僕をー?
花子さんが、僕のこと消そうとして、浩太くんに僕の居場所、伝えたんじゃないの?」
花子さん(直人)はそう尋ねるー。
”「ー悪霊退治ー、お願いしちゃおっかなー?」”
この前、トイレにやってきた直人(花子さん)は、そう言っていたー。
だから、花子さんが、浩太に”花子さん(直人)”の退治をお願いして、
浩太がここに来たのだと、花子さん(直人)は思っていたー。
「ーーー確かにそう言ったけどー…
あれは揶揄っただけで、わたしは何もー。
あなたが、色々な人に助けを求めようとして
”花子さん”のうわさが学校で広まったからー」
直人(花子さん)はそう説明したー。
浩太がここに来たのは”花子さん”が何か仕組んだわけではなく、
直人が花子さんの姿でたくさんの人にトイレで助けを求めた結果ー、
”トイレの花子さん”の目撃情報が増え、
それで浩太が除霊に本腰を入れ始めただけだとー。
「ーーー…放っておこうと思ったけどー…
ーーーー…わたしのこと、怖がらずに遊んでくれたのー…
あなただけだったからー」
直人(花子さん)はそう言うと、花子さん(直人)の方を見つめたー。
「ーもう、戻りましょー。
十分、楽しかったー」
にっこりと笑う直人(花子さん)ー。
花子さん(直人)は「ーーー本当に、いいのー?」と、
そう言葉を口にすると、
直人(花子さん)は「とりかえっこは、おしまいー!」と、
そう言いながら、手を差し出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
直人と花子さんは、元に戻ったー。
久しぶりの”人間”の身体に、直人は安堵するー。
「ーーー……」
花子さんは、自分のおかっぱ頭の髪を触りながら
少しだけ寂しそうに笑うと、
「ーこれからも、時々遊びに来てくれる?」と、
直人を見つめるー。
「ーう、うんー。幽霊が友達なんて、変な気分だけどー
でも、僕も嬉しいよー」
直人がそう言うと、花子さんはにっこりと笑ったー。
がーー
その時だったー
浩太が札を手に近付いて来るー。
「ー!」
花子さんの表情が強張るー。
それに気づいた直人も、慌てて花子さんを
守るかのように立ちはだかるー。
「ーーーだ、だ、だめだよ浩太くん!
花子さんは、悪霊なんかじゃないよ!」
直人が花子さんを守ろうとしてそう言うと、
花子さんは意外そうな表情を浮かべるー。
「ーーわ、わたしー、身体を奪おうとしたのにー」
そう呟く花子さんー
が、浩太はそのままさらに近付いて来るー。
「ーダメだってば!」
直人がそう叫ぶと同時に、浩太は突然札を投げつけたー。
覚悟して目を閉じる花子さんー。
しかしーー
その札は、花子さんの背後の壁に当たったー。
「ーーー!?」
直人と、花子さんも驚くー
するとーー
札が当たった壁の中から、黒い悪霊のようなものが姿を現したー
「ぐふふふふふふふふ…
ー幸せな結末なんて、クソ喰らえだぜー…」
壁の中から姿を現す悪霊ー
「う、うわああああ!?」
その悪霊が、直人にも見えたのか、
慌ててその場から離れるー。
「ーこいつは”ハッピーエンド”を喰らって
”バッドエンド”にする悪霊だねー」
浩太はそう説明しながら、
「君と花子さんが和解した空気を嗅ぎ付けて
出現したんだろうー」と、そう言葉を口にするー。
「ぐふふふふふふー
希望からの絶望こそ快楽だー」
黒い魔物のような形の悪霊がそう呟くー。
がー
浩太は札を手に、
「僕がいるところに出て来るなんて、君も運が悪いなー」と、笑うー。
そしてー
「ーーわたしも、手伝うよ!」
花子さんも、浩太の近くにやってきて、
そう言葉を口にするー。
「ーー! ーー幽霊に手伝ってもらうなんて、不思議だなー」
浩太はそう言いながらも、少しだけ笑うと、
”花子さん”と協力して、その悪霊を除霊するのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
「ーそうだー。浩太くん!聞いてよ!
僕、幽霊が見えるようになったよ!」
直人が嬉しそうに言うー。
「ーーー…え?どうしてー?」
浩太がそう言葉を口にすると、
直人は「分からないけどー、たぶん、花子さんと入れ替わったからじゃないかなー」
と、苦笑いしながら言うー。
「ーーははー…それで、花子さんとは?」
浩太が、歩きながらそう言うと、
直人は「昨日も、お話したよ!放課後に」と、嬉しそうに笑うー。
「ーそっかー」
浩太は少しだけ笑うと、
札を手にして直人の方を見るー。
「ー”見える”ようになったなら君にも手伝ってもらおうかなぁ?」
そう笑いながら札を少し揺らしながら笑う浩太ー。
「ーえぇっ!?僕に浩太くんみたいなこと、できるのかなぁ~?」
直人は、そう言いながら
今日も楽しそうに学校へと向かうのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!!★
①のあとがきで書いた通り、
特典(※現在はリクエストの一般受付はしていません~!ごめんなさいデス!)で
飛龍様より頂いたリクエストを元にした作品でした~!
頂いた原文をご紹介する約束を①の時にしていたので、
ご紹介しますネ~!!
・・・・
・主人公は男子小学生。親友くんは霊を見て物理干渉ができる(触れたり殴ったりできる)霊能力者で、
人を脅かす悪霊を退治したりしている。
主人公だけはその話を信じてくれるのでよく話してくる。
主人公は霊が見えないので内心羨ましがってる。
・ある日親友から学校のトイレで生徒を脅かすトイレの花子さんの話を聞く。
・興味本位で誰もいない時にトイレで花子さんを呼び出すと本当に出てきてしまう。
花子さんから遊びましょと言われ、もちかけられた”入れ替わり”を深く考えず承諾してしまうと
主人公と花子さんの心が入れ替わってしまう。
花子さんの心が入った主人公は男の子の体を面白がってトイレを出て行ってしまう。
主人公の心が入った花子さんは追いかけようとするが、
トイレから出られない。助けを求めようとしてもお化けとして怖がられてしまう。
・お化けが出たという被害報告が増えたので親友くんが退治のためにやってきて……
(・花子さんの容姿は”トイレの花子さん”で画像検索したら出てくるような感じの吊りスカートにおかっぱ頭の少女)
・・・
↑が、頂いた原文でした~!★
これを元に作ったのが今回のお話ですネ~!
私も普段あまり書かないタイプのシチュエーションだったので、
新鮮な気持ちで執筆できました~!★
またいつか機会があればチャレンジしてみたいデス~!
ここまでお読み下さりありがとうございました!!★
あ、ちなみに③の~悪霊の末路~というサブタイトルは、
花子さんのことじゃなくて、最後に出てきた
黒い悪霊のことでした~笑☆
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