<寄生>寄生虫の恋③~恋の行方~(完)

寄生虫の遺伝子を持つ人間を出産するために、
人間を乗っ取った寄生虫。

しかし、人間に恋をしてしまった寄生虫は、
その運命を大きく変えていくことにー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへー
 俺もこの女の体内で”仲間”を増やしましたよー」

いじめっ子だった日葵ー…

絵梨花に寄生した寄生虫が絵梨花の体内で生み出した寄生虫に
寄生された日葵は、昼休みにそんな風に声をかけて来たー。

「ーーへぇーすごいじゃん。早かったねー。
 繁殖に適した身体だったのかなー?」
絵梨花がそう言いながら、足を組んで座ると、
日葵は「ーーへへへー誰を仲間にするか迷いますよねぇ」と、日葵も近くに座りながら
そう言葉を口にするー。

いじめっ子だった人間が敬語で話しているのも不思議な気分だー。

絵梨花は、先日”2匹目の寄生虫”を体内で生み出すことに成功して、
絵梨花の母親を”仲間”にしたー。

このペースで寄生虫が増殖できるなら
人間を全て乗っ取ることもたやすいことー。
ただ、同じ人間の体内では寄生虫を作り出すのに限度があるため、
増えることができるのは個体差はあれど、せいぜい10匹程度が限界だー。

寄生虫を作り出す能力がなくなったあとは、
乗っ取った身体で妊娠して、出産することを目指すのを主に生活していくことになるー。

一番の目的は、寄生虫自体を増やすのではなく、
乗っ取った人間の身体で、妊娠・出産して、”寄生虫の遺伝子を持つ人間”を生みー、
人類という種族そのものを乗っ取ることなのだからー。

「ーーーー辻野さんとか、どうですかね?
 あの真面目な人間ー」

日葵がそう言葉を口にすると、
絵梨花は表情を歪めたー。

「ーーーつ、辻野さんはやめた方がいいよー
 あの手の人間は、寄生するときに抵抗されそうだし」
絵梨花はそう言葉を口にするー。

絵梨花に寄生した寄生虫は、日葵から”いじめ”を受けていた際に
辻野 晴美から助けられてー、
晴美を好きになってしまったー。

”女同士”であることも理解しているけれどー
寄生虫たちにとって性別の概念が人間よりも薄いことー、
そして、何よりも晴美のことが好きでたまらなくなってしまったー。

あんなに、優しくされたのは初めてだったからー。

「ーーそうですかねぇ…ーへへー
 まぁでも、”絵梨花”が言うならー」
日葵は笑いながらそう言うと、
「こいつの友達、乗っ取ることにしますよ」と、
それだけ言いながら立ち去っていったー。

「ーーーー」
ふぅ、とため息を吐き出す絵梨花ー。

空き教室から絵梨花が外に出ると、
そこから出てきた絵梨花の姿を偶然見ていた幼馴染・紗愛が
「ーー絵梨花?」と、不思議そうに表情を歪めたー。

絵梨花といじめっ子の日葵が同じ部屋から出て来たー。
その様子を見てしまった紗愛は、首を傾げるー。

「ーーーーーー…」
紗愛は少しだけ表情を曇らせると、
そのまま絵梨花の様子を見張るように、静かに歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーえ~?ホントに~?辻野さんって優しくて可愛くて
 勉強もできて、ホントにすごい!」

翌日ー

絵梨花が生徒会副会長の晴美とお昼を食べながら
嬉しそうにそう話していたー。

「ーふふー」
そんな絵梨花を見つめながら、晴美が笑うと、
「ーー相馬さんー…すっかり元気になったみたいでホントによかったー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーえ…あ、あぁーあははー」
絵梨花は少し気まずそうに笑うー。

”やばいやばいーこの人間、こんなに明るいタイプじゃないもんなー”
絵梨花の記憶を読み取りながら、
晴美の前だとついハイテンションになってしまう自分を反省する寄生虫ー。

がーー
晴美はにこにことしながら、
「ーー明るい相馬さんの方が、可愛いと思うよー」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーえっ… あはーー… えへへへー」
絵梨花は顔を赤らめながら照れ臭そうに笑うと、
晴美の方を見て、緊張した様子で言葉を口にしたー。

「ーーあ…あのー…つ、辻野さんじゃなくてー…は、晴美ちゃんって呼んでいいー…?」

”人間は、仲良しになると名前で呼ぶ”
そんな記憶を頼りに、絵梨花はそう言葉を口にするー。

「ーーーーふふー…もちろんー
 じゃあー、わたしも、絵梨花ちゃんって呼んだほうがいいー?」

晴美はそう言うと、絵梨花は心底嬉しそうに「うん!」と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー。

「ーねぇねぇ、絵梨花ー」

幼馴染の紗愛が、絵梨花に声をかけて来たー。

「あー、紗愛ー」
絵梨花が振り返ると、
紗愛は「最近、いじめも落ち着いたみたいだね?」と、
そう言葉を口にしたー。

紗愛は絵梨花の幼馴染で、いじめに関しても
影ながらある程度助けてくれていたー、と、そんな記憶が
絵梨花の中に残っているー。

が、絵梨花とは対照的に紗愛は明るい性格であるために、
交友関係は、絵梨花とはまるで違っていて、
小さい頃はよく遊んだものの、最近は遊ぶ機会が減っていたようだったー。

紗愛と雑談しながら、帰路につく絵梨花ー。
絵梨花は一瞬、次に寄生虫を増やしたら、”紗愛”に寄生させようと考えるー。

がー、晴美と一緒にいたからだろうかー。
人間らしい思考がどんどん強まっていくのを感じて、
この紗愛に対しても、寄生虫を寄生させることを躊躇してしまう自分がいたー

”こんなザマを仲間に知られたら、裏切者扱いされるかもなぁ…”
絵梨花に寄生した寄生虫はそう思いつつも、
また生徒会副会長の晴美のことを思い出して、首をぶんぶん横に振るー。

「ーそういえばさー…、
 この前、”虫が人間に恋するお話”読んだんだけどさー」

紗愛が笑いながら言うー。

「ーえ?」
絵梨花は少しだけ表情を歪めるー。

「ー”虫”が人間に恋をするとか、身の程知らずだよねー…」
紗愛はクスッと笑うー。

「ーーさ…紗愛ー?」
絵梨花が少し青ざめながら言うと、
紗愛は絵梨花の方を見て言ったー。

「虫は虫ー、人間は人間ー
 それぞれ住む世界が違うのー」

紗愛が低い声で言うー。

「ーーーえ……あ、あははーー そ、そうだねー」
絵梨花はそう言葉を口にしながら、
冷や汗を流すー。

が、紗愛はそれ以上は何も言わず、
「ーそんなびっくりした顔しないでよ~!」と、それだけ言うと、
そのまま後は何も言わなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した絵梨花は、”自分の親”と言える存在の
寄生虫に連絡を入れるー。

その寄生虫は、OLを乗っ取り、既に
妊娠、もうじき出産を控えていたー。

”ーあんたの学校に、わたしたちの同胞がいるかって?”
OL・梨沙子(りさこ)の言葉に、
絵梨花は「うんー」と、そう言葉を口にするー。

寄生虫は、”自分たちの同胞が誰に寄生しているのか”
全てを把握していないー。
時々、間違えて”既に寄生されている人間に、生み出した寄生虫を寄生させようとしてしまう”
トラブルが起きることもあるぐらいだー。
最も、2匹目以降は弾かれるだけで、それ以上は問題にはならないものの、
時々そう言うことが起きるー。

「ーーー…この身体の幼馴染の紗愛って子はー…”同胞”ー?」
絵梨花がそう確認すると、
”情報通”でもある梨沙子が”後で調べ直して、結果を送るでもいい?
今、もうすぐコイツの夫がお風呂から出て来るから”と、そう言葉を口にするー。

「あははー…もちろんー…じゃあーまた」
絵梨花はそう言うと、スマホの電源を切るー。

”紗愛”が同胞だとすれば”恋”を知られた可能性があるー。
そうなればー、絵梨花自身も、何も知らない晴美も危険だー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーきゃあああああああああああっ!?!?」

後日ー
遊園地を訪れた絵梨花と晴美ー。

しっかり者の晴美がお化け屋敷で悲鳴をあげたのを見て、
絵梨花は笑うー。

「晴美ちゃんってば、意外と怖がりなんだね~」
絵梨花の言葉に、晴美は絵梨花にしがみついてきて、
絵梨花はドキドキしながら
晴美の頭を撫でるー。

”えへへへへー…晴美ちゃん、ホントかわいいー”
寄生虫は心の中でそう思いながら、
寄生虫は”遊園地デート”と思っている今日、この日を存分に楽しんだー。

”ーーーーーー”
がーー
絵梨花の振る舞いに違和感を感じ、
遊園地にまで尾行してきていた”同胞”は、
不満そうに、二人を見つめていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー今日は、ホントに楽しかったー」
晴美が観覧車の中でそう言うと、
絵梨花は「わたしもー!」と、嬉しそうに微笑むー。

「ーーーまた、遊びに来ようね」
晴美の言葉に、絵梨花は「うん!」と言葉を口にすると、
”人間は、好きな人にキスをする”という記憶を頼りにー、
突然、晴美にキスをしたー

「ーーえっ!?!?えっ!?!?」
ドキッとした様子で顔を赤らめる晴美ー。

「ーーわたし、晴美ちゃんのこと好きになっちゃったー」
絵梨花が照れ臭そうに言うと、
「ーーも、もちろんー…女の子同士でそういうのはーー
 イヤかもだけどー…で、でもー」
と、必死に、寄生虫自身も戸惑う感情を吐き出すと、
晴美は顔を赤らめながらも、優しく微笑んだー。

「ーーーーーそんなこと考えたこともなかったけどー、
 絵梨花ちゃんならー

 いいかもー」

とー。

「ーーえっ!ホントに!?」
絵梨花は心底嬉しそうに言うー。

晴美は静かに頷くと、
絵梨花は嬉しそうに晴美に向かってもう一度キスをしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最高の1日を終えて、晴美と別れた絵梨花ー。

スマホに”梨沙子”からの連絡が届いていることに気付き、
それを確認するー。

先日幼馴染の”紗愛”について確認してもらった件だー。

「ーーー!」
その返事を見ると同時に
「裏切者」という声が背後からしたー。

「ーーー!?」
絵梨花が振り返ると、そこにはー
クラスメイトの姿があったー。

「ーーー…まさか、人間のこと好きになってるとは思いませんでしたー」
そこにいたのは、いじめっ子だった日葵ー。

絵梨花に寄生した寄生虫が体内で生み出した寄生虫に寄生され、
乗っ取られた日葵だったー

「なんか、おかしいと思ってたんですよー
 あの辻野さんって人間に随分入れ込んでいたみたいだからー
 監視していましたー」

日葵の言葉に、絵梨花は表情を歪めるー。

「ーーー人間なんて、ただの器ー
 この女も、その女もー、そして、辻野さんって女もー

 そうでしょう?
 仲間を増やして、そして妊娠して出産するためだけの道具」

日葵がそう言うと、絵梨花は「ーそれはーー…」と、困惑するー

「裏切りは許さないー。
 他の仲間に報告すればー……

 ”あんた”は終わりですよー?
 その身体ごと、粛清されるー
 それに、辻野さんって器もね」

晴美も始末される、とそう言いながら笑う日葵ー。

「ーーーーーー」
絵梨花は、日葵を睨みつけながら
どうにかしようと頭をフル回転させるー

「ー辻野さんはー…晴美はー
 本当に、本当にー、いい子なんだー!
 だからー!」

絵梨花はそう言うと、
日葵は「”器”がいい子か悪い子かなんて関係ないー
誰であろうと乗っ取り、妊娠させて出産させるーそれだけ」と、
冷たい目で言葉を口にするー。

がーー
その時だったー

「ーちょっと!何してるの!?」
背後から声がするー。

「ー!」
日葵と絵梨花が声がしたほうを向くと、
そこには引き返してきた生徒会副会長の晴美の姿があったー。

「ーーー…!」
日葵が表情を歪めるー。

「ーーまた絵梨花ー…ーううん、相馬さんのこといじめようとしてるの!?」
晴美が怒りの形相で言うと、日葵は「ーーー…いや、それはー」と、
表情を歪めるー

寄生虫たちは、人間の前で表だって本性は見せないようにしているー。

「ーーー…絵梨花、大丈夫だったー!?」
晴美は絵梨花に近付くと、絵梨花を心配そうに見つめるー。

絵梨花と別れたあと、日葵とすれ違った気がして
心配になって引き返してきたのだというー。

「だ、大丈夫ー。うん、ありがとうー」
絵梨花は照れ臭そうに晴美の方を見つめるー。

日葵はそんな”絵梨花の顔”を見つめながら
ため息を吐き出すと、
「ーーわたしは、もういじめはしないしー、
 もう、あんたたちに近寄らないー」と、
”日葵”として言葉を口にしたー。

「ーーー…ホントに?」
晴美が、絵梨花を守るようにして前に立ちながら言うと、
日葵は「約束するー」と、それだけ言葉を口にして立ち去って行ったー。

絵梨花は、晴美に感謝の言葉を口にしながらも、
立ち去った日葵が仲間たちに”裏切者”だと暴露するであろうことを恐れて、
表情を曇らせたー。

自分で生み出した同胞によって、
絵梨花に寄生した寄生虫の恋は、おわるー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー転校!?」

数日後ー
日葵が転校することになったー。

「そう。転校」
日葵はそれだけ言うと、絵梨花は戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーーー…人間に恋した寄生虫なんて、もう同胞じゃないー
 この学校に、仲間なんていなかったー。」

日葵は小声でそう言葉を口にするー。

「ーー!」
絵梨花が日葵の方を見ると、
日葵は「ー人間になりたきゃ、なればいいー。俺はあんたのことなんて知らない」と、
不愉快そうにしながらそう言葉を口にすると、
「ー人間に恋したお前を見てると不愉快だーだから転校して全部忘れるー」
と、日葵はそれだけ言葉を続けたー。

「ーーー…」
絵梨花は悟るー。
日葵に寄生している寄生虫は”見逃してくれる”のだとー。

絵梨花に寄生している寄生虫が、生み出した存在だからなのかー
それとも別の理由があるのかー

とにかく、日葵は絵梨花のことを見逃してくれるようだったー

「ありがとうー」
絵梨花がそれだけ呟くと、
日葵は「ーー”人間”にお礼を言われる筋合いはないー」と、
それだけ言葉を口にして立ち去って行ったー。

絵梨花はため息をつくー

”その学校に、あんたが知っている以外の仲間はいない”
先日、寄生虫仲間の”梨沙子”から届いたメッセージを再度確認する絵梨花ー。

幼馴染の”紗愛”は、同胞ではなかったー。
つまり、寄生されていない普通の人間だー。

改めて、絵梨花に寄生した寄生虫は絵梨花に脳にある紗愛の記憶を探るーー

すると、紗愛は”虫が大嫌いで、虫のことになると攻撃的な発言が多い”ということが
分かったー

先日の”虫が人間に恋するなんて身の程知らず”という発言も、
絵梨花に遠回しに忠告しているのではなくー、
単に、虫が人間に恋をする話を見て、不快に思った紗愛が
たまたまそう言葉を口にしただけだったー。

絵梨花が他の子と話をしていると、少し嫉妬するような一面が
あることも分かったー。

この先ー、紗愛との人間関係が上手くいくかどうかは別としてもー、
紗愛自身は特に警戒する必要のない、普通の幼馴染であることが分かったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーそれでねー、これ見てー」

昼休みー
今日も、晴美と絵梨花は楽しそうに
2人で談笑しながらお昼を食べていたー。

晴美の方を見て、心底嬉しそうに微笑む絵梨花ー。

”晴美ちゃんと一緒に居られて、本当に幸せー”

絵梨花はそう思いながら、
今日も大好きな晴美との時間を、
心の底から楽しむのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

寄生虫が人間のことを好きになってしまうお話でした~!☆

ハッピーエンド…にも見えますケド、
いじめていた日葵はともかく、
寄生されちゃった絵梨花から見ればバッドエンドですネ~…笑

お読み下さりありがとうございました~!☆

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寄生<寄生虫の恋>

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