<寄生>寄生虫の恋②~いじめ~

人間を乗っ取り、
寄生虫の遺伝子を持つ人間の出産を目論む
寄生虫…。

しかし、彼は人間に恋をしてしまう…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーどうして、わたしなんかのためにー…?」
絵梨花を乗っ取っている寄生虫は、
不思議そうに”絵梨花”としてそう言葉を口にしたー。

「ーーえ?あははー…
 だってー…相馬さん、何も悪いことしていないのに
 高塚さんたちから嫌がらせされててー…
 なんだか、放っておけないからー」

生徒会副会長の晴美が言うー。

絵梨花は、少しだけ表情を曇らせるー。

”絵梨花”の記憶を辿ると、
特にこの生徒会副会長の晴美とやらと親しかったわけではないみたいだし、
何らかの接点があったわけでもないー。

が、寄生虫が絵梨花を乗っ取る前から
絵梨花のことを何かと気にかけてくれていた、というのは
記憶に残っているー。
最も、この絵梨花本人は”わたしなんか放っておいていいよ”と、
いう考えだったようだけれどもー。

「ーーー……ありがとうー」
絵梨花が、そう言葉を口にすると、
晴美は「どういたしまして」と、優しく微笑むー。

その表情を見て、ドキッとしてしまう絵梨花に寄生している寄生虫ー。

「ーーー……そ、そのー…本当に、ありがとうー」
急に照れ臭くなってそう言葉を口にすると、
晴美は「ふふー。これからもわたしに力になれることがあったら、言ってね」と、
穏やかに微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夜ー。

絵梨花は”人間のご飯”の美味しさを噛みしめながら
満足そうに部屋に戻ると、
「ーーそろそろだねー」と、ニヤリと笑みを浮かべたー。

そしてーーー

「ーーうっ… オェッ…」
と、嘔吐するかのように苦しそうにし始める絵梨花ー。

やがてー、絵梨花の口から一匹の寄生虫が吐き出されるー。

普通であれば、口から”虫”が出て来たら、
あまりの恐怖に悲鳴を上げてしまうかもしれないー。

が、寄生虫に身も心も支配されている絵梨花は
嬉しそうに自分の口から”生まれた”寄生虫を見つめると、
「ーふふふー…僕の子供だー」と、笑みを浮かべるー。

寄生虫の繁殖ー。
人間の体内は寄生虫の繁殖に適していて、
人間を乗っ取った寄生虫は妊娠するための相手を
女の身体で探しながら
その体内を使って寄生虫の繁殖も行うー。

繁殖スピードは遅めではあるものの、
数日に1回程度、こうして仲間を増やすことができるー。

最終的には、乗っ取った女の身体で出産し、
寄生虫の遺伝子を持つ人間をどんどん増やしていき、
人間という種族そのものを自分たちが支配するのが目標であるものの、
こうして、寄生虫自体を増やすことも大事な目的の一つだったー。

「ーーさ、明日、人間の身体に寄生させてあげるね」
絵梨花はそう言葉を口にすると、
たった今、自分の体内から生み出した寄生虫を、
手で掴んで自分の耳の中にそれを押し込むと、
ニヤリと笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

”お人好しの晴美”に仲間を寄生させようと、
意気揚々と学校にやってきた絵梨花ー。

がーー
校舎裏ではいじめっ子の日葵が、
生徒会副会長の晴美に絡んでいたー。

偶然、その現場を目撃した絵梨花は
表情を歪めるー。

「ーあんた、あんな根暗女を庇って、何のつもりー?
 優等生ヅラするようなあんたみたいなやつー
 マジでウザいんだけど」

日葵はそう言い放つと、晴美の髪を引っ張りながら
「ーそんなにアイツを守りたいなら
 あんたも同じ目に遭わせてやる」と、
怒りの形相を浮かべるー。

「ーー…た、高塚さんのやってることはただのいじめー…!
 それを止めようとして何が悪いのー…?」

晴美が痛みに耐えながらそう言葉を口にするー。

が、日葵は怒りの形相で晴美をビンタすると、
「決めたー。これからはあんたのこともひどい目に遭わせてやるからー」と、
そう宣言するー。

いじめっ子の日葵から、絵梨花を庇った
晴美は自分自身もいじめのターゲットになってしまったのだー。

「ーーー……だったら、いじめるのはわたしだけにしてー」
晴美はそう言い放つー。

「は?」
なおも不満そうに呟く日葵ー。

「ーー相馬さんのことはいじめないでー。
 いじめるなら、わたしだけにしてって言ってるの!」
晴美のその言葉に、日葵は思わず笑うー。

「あんた馬鹿でしょー?
 あんな根暗女のために、何必死こいてるの?
 マジでウケるんだけどー」

日葵のその言葉に、晴美は表情を曇らせるー。

がー、日葵は何度か頷くと、
「いいよー。アンタマジでウザいからー
 これからはアンタを痛めつけてやるー」と、
敵意をむき出しにしながらそう言い放ったー。

そのまま立ち去っていく日葵ー。

日葵が立ち去って行ったのを確認すると、
物陰からその様子を見ていた絵梨花は
思わず「つ、辻野さんー!どうして!」と、
飛び出しながらそう言葉を口にするー。

「ーー!相馬さんー…み、見てたの?」
気まずそうな表情を浮かべる晴美に対して、
「わ、わたしのためなんかに、どうして!?」と、
絵梨花は戸惑いながら言葉を口にしたー。

「ーーだってー…放っておけないからー」
晴美が辛そうに、けれども優しくそう言葉を口にすると、
「でも、よかったー。これで、相馬さんはもういじめられないかもー」と、
安堵の表情を浮かべるー。

「ーよ、よくないよ!
 今度は辻野さんが、あの子にいじめられてー!」
絵梨花が、そう叫ぶと晴美は
「でも、そうすればあなたを守れるでしょ?」と、優しく微笑んだー。

「~~~~~~~…」
顔を赤らめる絵梨花ー。

「ーーーー…」
絵梨花に寄生している寄生虫は、”晴美に、昨日生み出した仲間を寄生させる”
絶好のチャンスだと考えるー。

けれどー……
できなかったー。

「ーーーーーわたしのことは心配しないでー」
晴美はそれだけ言うと、「そろそろ教室に行かないとね」と、
微笑みながら立ち去っていくー。

「ーーー…」
一人残された絵梨花は
「辻野さんー」と、それだけ言葉を口にすると、
晴美に仲間を寄生させられなかったことに自分でも戸惑いながら、
小さくため息を吐き出したー。

”寄生される相手なんていくらでもいるー
 別に、あの女を選ぶ必要はないー それだけだし”

心の中でそんなことを思いながら
絵梨花はゆっくりと教室に向かって歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、ごめ~ん!」

昼休みー。
日葵が生徒会副会長の晴美が昼食を食べている背後から
わざとぶつかって、晴美が弁当を落としてしまうー。

「ーー…ーーー!」
5時間目開始時ー…
晴美が戸惑いの表情を浮かべるー。

数学の教科書を昼休み中に隠しておいた日葵が
ニヤリと笑みを浮かべるー。

そんな様子を見ていた絵梨花は舌打ちをするー。

”この女のために、代わりにいじめられる道を選ぶなんてー
 あの女ー馬鹿なやつー…”

とー。

心の中では冷ややかな考えを巡らせる絵梨花ー。
しかしー…

”晴美に嫌がらせをする日葵”に対して、
絵梨花はいつの間にか激しい怒りを感じていたー。

授業が終わり、
”わざと”晴美の机にゴミを放り投げる日葵ー。

それを見た絵梨花の幼馴染・紗愛は
「なんか、辻野さんにいじめのターゲット変えたのかな?」と、
不思議そうに首を傾げるー。

「ーーー…そうみたいだね」
絵梨花はそれだけ呟くと、怒りの形相で日葵の後ろ姿を睨みつけたー。

そしてーーーー

「ーーーー!」
部活帰りの日葵を待ち構えていた絵梨花は、
既に日が沈んで暗くなった校舎の廊下で、
日葵の前に姿を現したー

「ーーー…あ、あんたー…何よー…?」
少し驚いた様子の日葵ー。

そんな日葵に対して、絵梨花は言ったー。

「ー人間って汚いよねー。
 特に、”お前”みたいな人間は醜悪だー。吐き気がするー」

いつもとは別人のような絵梨花の態度に、
日葵は「な、なに言ってんの!?」と、表情を歪めるー。

「ーー…自分が支配される側の生き物だとも知らずにー
 調子に乗りやがってー」

絵梨花の高圧的な態度に、
日葵は「な…何なの…?」と、混乱しながらも、
「ーー…ど、どいて!邪魔!」と、絵梨花を突き飛ばして
そのまま立ち去ろうとするー。

突き飛ばされた絵梨花は、クスクスと笑うと、
「ー吐き気がするよ、本当にー」と言いながら
背後から日葵の腕を掴んだー。

「ー!?!?!?」
驚く日葵ー。

絵梨花の口から、”寄生虫”が顔を出すー。
絵梨花に寄生した寄生虫ではなく、
先日、絵梨花の体内で生み出された、新たな寄生虫ー。

本来は晴美がターゲットだったものの、
絵梨花に寄生した寄生虫は、日葵をターゲットに変えたー。

「ーーーお前みたいなクズでも、僕たちのために妊娠して
 寄生虫の遺伝子を出産することはできるからねー」
絵梨花がそう言うと、日葵は怯えた表情を浮かべるー。

「ーいいねいいねーその顔ー。
 ”わたし”をいじめてた時の偉そうな態度はどうしたのぉ~?」
絵梨花の口調で煽るー。

「ーーひっ…た、たすけてー…」
日葵の泣きそうな表情を見て、
絵梨花は思わず嬉しそうに笑うと、
「ーー大丈夫ー。僕たちのために男を見つけて妊娠して出産するだけだからー」
と、笑みを浮かべながら
そのまま寄生虫を送り込むために、絵梨花は日葵にキスをしたー。

苦しそうにうめき声を上げる日葵ー。

やがて、日葵は笑みを浮かべると、
「ーー…これが、人間の身体ー…」と、嬉しそうに自分の身体を
見つめ始めたー。

「ーーふふー そんなクズの身体でごめんねー。
 でも、見た目はそれなりだから」
絵梨花がそう言うと、日葵は「ーーへへー…全然ー。ありがとうー」と、
人間に寄生させてくれたことを感謝する言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

寄生虫に”親子関係”はないー。
絵梨花に寄生した寄生虫によって、絵梨花の体内で生み出され、日葵に寄生した寄生虫ー。

生まれたばかりではあるものの、既にほかの寄生虫と同じ知性を持ち、
人間に寄生したことで、人間の知識も手に入れたー。

あっという間に、”独り立ち”することができるのだ。

「ーーー高塚さんには、話をつけておいたよー」
絵梨花が、生徒会副会長の晴美にそう言葉を口にするー。

高塚 日葵に仲間の寄生虫を寄生させて、支配したー
などとは言えないものの、
もう”晴美のことをいじめないでほしい”と、話をつけ、
元々いじめられていた絵梨花も、絵梨花を庇っていじめのターゲットに
なってしまった晴美も、いじめられなくなった、と、
絵梨花はそう説明したー。

「ーー……ほ、ホントにー?相馬さんー何かされなかった?」
晴美がそう言うと、絵梨花は
「大丈夫ー…それより、わたしの代わりにいじめられるようになっちゃったのー
 見過ごせなくてー」と、そう言うと、
晴美は「ーー相馬さんー…本当にありがとうー」と、そう言葉を口にしたー。

そんな笑顔を見て、絵梨花はドキッとしてしまうー。

”この人間を、守りたいー”と、
そう思ってしまったー。

「ーーーわたしこそ、ありがとうー」
最初にいじめから庇ってくれたことを思い出しつつ、
絵梨花は、思わず晴美を抱きしめてしまうと、
晴美は驚いた表情を浮かべながらも、
「ふふー相馬さんってばー」と、それを受け入れたー。

晴美に抱き着きながら、絵梨花は暖かい気持ちになって微笑むー。

なんだか、今まで感じたことのない気持ちー。
絵梨花は、晴美からようやく離れると、
顔を赤らめながらこう思ったー

”人間にも、素敵な人っているんだなぁー…”
とー。

そしてーー
晴美のことを考えると、ドキドキしている自分がいることに気付いて
絵梨花は少し照れ臭そうな表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
晴美のことが頭から離れないー。

昼休みー
一人、そんなことを考えながら、顔を赤らめていた絵梨花ー。

がーー

”これってーーーー…”
絵梨花の記憶を探りながら、寄生虫は思うー

”これってー…恋ってやつー???”
そんなことを思う寄生虫ー。

がーーーー
寄生虫が人間に恋をするー、ということはあってはならないことー。
既に人間界に潜んでいる”同胞”に知られれば、裏切者扱いされるのは間違いないー。

「ーーーーーーーーー」
そんな迷いを抱いている絵梨花を、教室の外から
見つめていた幼馴染の紗愛は、少しだけ表情を曇らせるーー。

”やっぱりー、いつもと雰囲気が違う気がするー”
紗愛はそんなことを思いながら、絵梨花の方を今一度見つめると、
そのまま、絵梨花に声をかけることなく、その場から立ち去って行ったー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

人間が気になってしまった寄生虫…★!
どんな結末を迎えるのかは、明日のお楽しみデス~!!

今日もお読み下さりありがとうございました~~!

PR
寄生<寄生虫の恋>

コメント