その寄生虫は”人間”に寄生するー。
しかし、一人の少女を乗っ取ったとある寄生虫は
己の使命も忘れて、クラスメイトに恋をしてしまうー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーひっ…!?た、助けて…」
怯えた表情を浮かべる少女ー。
その日は、雨の日だったー。
近くの高校に通う、相馬 絵梨花(そうま えりか)は、
不運なことに”寄生虫”のターゲットにされてしまったー。
水たまりに潜んで”獲物”を待っていた寄生虫ー。
彼らは”人間”に寄生し、
人間の身体を使って”知識”を学び、
さらには寄生虫の遺伝子を持つ子供を出産ー、
”人類”という種に、自分たちの遺伝子を持つ人間を増やしていき、
やがて、人類という存在そのものにパラサイトするつもりだったー。
寄生虫は、静かに繁殖を続けていてー、
寄生虫に身体を乗っ取られた人間の数も、微増し続けているー。
がー、まだ世間はそのことには気付いていない、
そんな状態が続いていたー。
「ーーこ、こっちに来ないで!」
大人しそうな雰囲気の絵梨花が、そう言葉を口にするー。
しかし、寄生虫は一歩、また一歩と絵梨花に近付くと、
そのまま絵梨花の足に飛びつきー、
振り払おうとした絵梨花の手を避けるようにして、
スカートの中に入り込みー、
そのままーー
絵梨花の体内に侵入したーーー
「ーひっ!?!?!?!?」
絵梨花がビクッと震えて、
雨の中、路上に膝をつくーー
そのまま、雨に打たれても反応することなく、
微動だにしない絵梨花ー。
がーーやがて、絵梨花はゆっくりと立ち上がると、
そのまま静かに歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーーこれで、よしー、と」
絵梨花は鏡を見つめながら自分の身なりを整えるー。
昨夜、”寄生”されてしまった絵梨花は、
もう、昨日までの絵梨花ではないー。
その身体も、精神も完全に支配されて、
絵梨花であって、絵梨花ではない、
そんな存在になってしまったー。
「ーーーー人間って、すごいなぁ…
ホント、色々なものを持ってるー」
絵梨花は鏡を見つめながら感心した様子で言うー。
絵梨花に寄生した寄生虫は、
絵梨花の脳から”情報”を手に入れたー。
これが、寄生虫の第1目標ー。
そして、このあとは、絵梨花の身体で”男”を捕まえて
妊娠ー、最終的に出産するのが目的だー。
寄生虫に寄生された人間が出産を行うことで、
寄生虫の遺伝子を持つ人間が生まれるー。
そうして、やがて”寄生虫と人間”は一つになり、
人類という種に、寄生虫が溶け込むことになるのだー。
「ーーまー…まだ焦らないけどねー」
絵梨花は笑みを浮かべるー。
人間に寄生して、高校生の年齢で出産するのは
色々とリスクが高いことを知りー、
しばらくの間は人間として、”情報収集”をすること、
そして彼氏を作っておき、将来的に”子作り”をするための
下地を作っておくことー、
それに集中することにしたー。
「ーーあとはー」
絵梨花はニヤリと笑みを浮かべるー。
寄生虫自身も”繁殖”することができるー。
人間の体内は繁殖に最適な環境で、
”寄生虫の子供”を体内で生み出すことができるのだー。
「ーー仲間も増やさなくちゃ」
絵梨花はクスクスと笑うー。
”寄生された人間”を増やせば、
寄生虫の遺伝子を持つ人間の出産ーーその数も増やすことができる。
だからこそ、どんどん仲間を増やしていく必要がある。
「ーーー……ーーーーー”友達”あんまりいないみたいね」
絵梨花は記憶を探りながらそう呟くと、
「ーー”ハズレ”引いたかなぁ」と、
少し残念そうにそう呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校にやってきた絵梨花は、
”記憶”を辿りながら数少ない友達の一人で
幼馴染の紗愛(さら)に声を掛けられたー
「ーーおはよ~」
紗愛が、絵梨花の方を見つめるー。
絵梨花に寄生した寄生虫は一瞬
”え?何か勘づかれたかー?”と、不安に思うも、
流石に、人間に”寄生されている人間”を瞬時に判別する手段はないだろうし、
そもそも”人間を乗っ取る寄生虫”の存在を
まだ人間は察知できていないー。
よほどおかしな行動をしない限りは問題ないはずだー。
「ーーど、どうかしたー?」
ただ、なんとなく居心地が悪い気がして絵梨花が紗愛に対してそう言うと、
紗愛は笑いながら「あ、ううんーなんでもないー。
ちょっと、いつもと雰囲気が違う気がしたからー」と、そんな言葉を口にしたー
”ーーー”
絵梨花に寄生している寄生虫は、少しだけ表情を歪めるー。
が、すぐに「えへへーそんなことないよーいつも通りいつも通り」と、
絵梨花自身の記憶を頼りに、いつも通りの振る舞いをしてみせると、
そのまま紗愛は「それなら良かったー」と、それ以上は
何も言わなかったー。
紗愛は絵梨花の幼馴染で、
小さい頃から大人しい性格の絵梨花とは対照的に
明るい性格の持ち主ー。
”人間のいじめ”と呼ばれるものに巻き込まれている絵梨花のことを
影ながら助けてくれているらしいー。
そしてーー
「ーーあ、ごめ~~ん!」
わざとらしく絵梨花にぶつかっていく女子生徒ー。
彼女は”絵梨花”をいじめている、陰険な性格の女子ー、
高塚 日葵(たかつか ひまり)ー。
自分を可愛いと思い込みー、プライドが非常に高い
厄介なタイプの子に、絵梨花は目を付けられているー。
「ーーーー…」
絵梨花はギリッと歯軋りをするー。
「ーー人間めー」
ボソッと呟く絵梨花ー。
「ーーーん?」
がー、その言葉が日葵の耳に入ったのか、
日葵はくるっと振り返ると、
「今、あたしになんか文句言った?」と、
にこにこしながら近づいて来るー。
「えっ…あ、…いえ…何もー」
絵梨花がそう言うと、日葵はじ~~っと、
絵梨花を見つめながらクスッと笑うー。
「ーーーーそれならいいよ」
日葵はそう言うと、そのまま立ち去っていくー。
「ーーー」
絵梨花に寄生している寄生虫は
”人間って面倒臭い生き物だなー”と、
そう思いながらため息を吐き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お昼ー。
絵梨花は、一人で昼食を食べながら
”人間のご飯ってうまいなー”と、
嬉しそうに、お昼を口に頬張っていたー。
寄生虫からすれば、”人間の身体で食べる”ご飯は
格別だったー。
そんな、感動を楽しみながら食事を続けていた絵梨花は
ある女子生徒に声を掛けられたー。
クラスメイトの一人で、生徒会副会長の、
辻野 晴美(つじの はるみ)ー。
真面目で、穏やかな性格の女子生徒だー。
「ーー相馬さんー…
さっきは大丈夫だったー?」
晴美のそんな言葉に、
「さっきー?」と、不思議そうに首を傾げるー。
「ーーー…ほら、高塚さんにまた嫌がらせされていたでしょ?
大丈夫ー?」
晴美が、そう呟くー。
「ーーあ、そ、そのことーー
うんー大丈夫」
絵梨花は、そう返事をすると、
”人間同士のいさかいなんて、こっちにとっちゃどうでもいいことだしー”と、
心の中でそう思うー。
所詮、”器”になる生き物たちー。
寄生虫からすれば”人間”は格下の存在だー。
だってー、こうして寄生すれば
この絵梨花という女のように簡単に全てを乗っ取ることが
できるのだからー。
絵梨花に寄生した寄生虫も、
例外なく、人間は格下の存在であり、
取るに足らない存在だと、そう考えていたー。
「ーわたしになんて、構わなくていいよー」
絵梨花は、それだけ言うと、
晴美は「そういうわけにはいかないでしょー…?」と、
心配そうな表情を浮かべるー。
「ーーー」
絵梨花は、そんな晴美の姿を横目で見つめながら
”寄生を広げる相手”にふさわしい相手として、晴美を
ターゲットに定めるー。
”こういうお人好しは、騙しやすそうー”
絵梨花は、そう思いながらニヤリと笑うと
口元を隠しながら
「とにかく、わたしなら大丈夫だからー」と、
そんな言葉を口にするー。
「ーーーーーーーそう…それならいいけどー」
晴美はそう言いながらも、絵梨花の方を見つめると、
「ーでも、相馬さんー…辛いと思ったらいつでもわたしに相談してねー?
できることは限られているかもしれないけど、わたしー…
相馬さんの力になるからー」と、そんな言葉を口にしたー。
「ーー…ーあーー…あははー…
あ、ありがとうー」
絵梨花はそう言葉を口にすると、立ち去っていく晴美の後ろ姿を
見つめながら微笑んだー。
”ーーあぁーーー元々、親切にしてくれてたんだなー”
絵梨花は記憶を辿りながら、
生徒会副会長の晴美は、元々絵梨花のことを
心配してくれていたのだということを知るー。
「ーーーいいじゃんー…”仲間”にしてあげるー」
絵梨花はクスッと笑うと、邪悪な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
幼馴染の沙羅と挨拶を交わしたあと、
着席した絵梨花は、クラスメイトの男子たちを
見つめながら記憶を探っていたー。
”今のうちに、この女を妊娠させてくれる人間を探さないとなー”
絵梨花に寄生している寄生虫はそんな風に思うー。
寄生虫にはオスとメスがいるものの、
”寄生対象”とする人間は、”女”ばかりだったー。
その理由としては”寄生虫の遺伝子を持つ人間を出産する”ためー。
以前、寄生虫たちも男を乗っ取って子作りをしたこともあったものの、
それでは、”寄生虫の遺伝子”を受け継いだ子供が生まれなかったー。
”母体”が寄生されていなければ、
寄生虫の遺伝子を受け継ぐ子供が生まれないのだー
それ故に、寄生虫たちはオスでもメスでも、女に寄生して
子作りを進めていたー。
「ーーー…この身体で妊娠すればー、
僕は、寄生虫の遺伝子を持つ赤ん坊を出産できるー」
小声でブツブツと呟く絵梨花ー。
「ーーーーー」
しかしー、
”この女、仲良しな男子、いないみたいだなぁ…”
そう思いながら、ため息をつくー。
”でも、この身体なら誰か適当に男子を誘惑していけばー、
上手く行くかなー?”
絵梨花はそう思いながら周囲を見渡すー。
そして、授業の前にトイレを済ませておこうと廊下に
向かって歩き出すー。
寄生虫の目的はあくまでも出産することー。
人間のような恋愛や結婚を望んでいるわけではないー。
とにかく、産めばいいのだー。
「ーーこの身体なら、ヤらせてあげれば飛びつく男もいるだろうしー、
妊娠するだけなら簡単かもねー」
廊下を歩きながら絵梨花がそう呟いていると、
「ーねぇねぇ、独り言、キモいんだけど」と、
たまたま廊下ですれ違った陰険な女子生徒・日葵が再び絡んできたー。
「あー…ごめん」
絵梨花は面倒臭そうに視線を逸らすと、
日葵は不満そうに「ーー何その態度ー」と、
絵梨花の髪を引っ張って来るー。
「ーーっ…痛いよー 離してよー」
絵梨花が、表情を歪めながらそう言うと、
日葵は「ーーあんた、いつもいつもウザいんだけどー」と、
そう言葉を口にするー。
”ーーーー”
しかし、寄生虫が絵梨花の記憶を探っても、
絵梨花から日葵に何かしたような、
そんな記憶はないー。
やはり、一方的に絡まれているようだー。
廊下の物陰に連れ込まれた絵梨花ー。
日葵は、絵梨花に対して持っていたペットボトルのジュースの中身を
突然ぶちまけて来たー。
「ーっ…」
ジュースがひっかかった絵梨花は表情を歪めながら
日葵を睨み返すー
「ーーーなにその目?」
絵梨花が普段しなかったような目つきに、日葵は不満の表情を浮かべるー。
”ーーー下等生物がー…
ーーお前の喉を食い破ってやろうかー?”
絵梨花の中にいる寄生虫はそんなことを思いながら、
日葵を睨むー。
人間の争いなど、取るに足らないー
このまま放っておいても、良いものの
絵梨花を乗っ取っている寄生虫は、人間ごときにこんな目に
遭わされることに不満も覚えていたー。
「ーーーー…ーーその目は何なのよ、って聞いてるの!」
日葵はそう言い放つと、絵梨花にビンタを食らわせるー。
絵梨花に寄生している寄生虫はカッとなって、
絵梨花の身体から一旦出て、日葵を”ひどい目”に遭わせてやろうとするー。
「ーーぁ…」
寄生虫が、アソコから外に出たことで絵梨花がその場に膝を折って
意識を失うー。
「ーーーえ?」
寄生虫には気付かず、日葵は戸惑うー。
がー、その時だったー
「ー相馬さんから離れなさい!」
背後から、生徒会副会長の晴美の声がしたー。
「ーー!」
いじめっ子の日葵が振り返るー。
「ーーはぁ?あんたには関係ないでしょ?」
日葵のその言葉に、晴美は
「ーー高塚さんのしてることはいじめだよ!
放っておけない!」と、そう言い放つー。
日葵は不満そうに晴美を睨みつけると、
「ーーーー……そういう優等生ぶるのー、マジでウザい」と、
吐き捨てるように言い放つと、そのまま立ち去っていくー。
「ーー」
晴美は、日葵が立ち去っていくのを確認すると、
すぐに意識を失ったままの絵梨花に近付きー、
「相馬さんー…大丈夫?」と、心底心配そうに言葉を口にしたー。
がー、絵梨花を支配していた寄生虫は、絵梨花のアソコから
外に出て、そのままいじめっ子の日葵を襲おうと、
スカートに隠れている太腿に張り付いている状態ー。
絵梨花の意識はすぐには戻らないー。
そんなことも知らずに、心底心配そうに絵梨花を呼ぶ晴美を見て、
寄生虫は少しだけ考えると、
そのまま、また絵梨花の身体の中に戻って行ったー。
「ーーーぁ……ご、ごめんー大丈夫だよー」
再び絵梨花を乗っ取った寄生虫は、絵梨花の口でそう言葉を口にするー。
「相馬さんー…!よかったー本当によかったー!」
生徒会副会長の晴美が、絵梨花を抱きしめて
涙目で喜んでいるー。
そんな、自分のことを心底心配してくれる”人間”を前に、
絵梨花に寄生している寄生虫は、今までに感じたことのない感情を覚えるのだったー…。
②へ続く
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コメント
人間を乗っ取った寄生虫が
恋をしてしまうお話デス~~!!
②以降もぜひ楽しんでくださいネ~!
今日もありがとうございました~!
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