<入れ替わり>英雄なんかじゃないんですけど!③~英雄ふたり~(完)

エイリアンに侵攻された世界ー。

反撃作戦の決行の時は、着々と近づいていたー。

入れ替わったままの”英雄”と”少女”ー。
二人に待ち受ける運命はー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「作戦の概要を再確認しますー」
地球連合軍の指揮官の一人である男が言うー。

しかし、彼自身も”極度の人員不足”であるために
英雄・霧島拓斗より年下だー。

「ーー最新鋭のこの戦闘機・ヴェロスは
 宇宙空間での飛行、戦闘が可能になっており、
 ここ、地下発射場から地上に向けて発射、
 そのまま宇宙まで飛行して貰いますー。

 地球周辺には、ご存じの通り
 敵エイリアンの母船と思われる飛行物体が
 地球周辺を周回するようにして浮遊しており、
 ちょうど、間もなくこの地域の上を通過します。」

その言葉に、
拓斗(晴美)は手を震わせるー。

戦闘機の操縦方法も知らないし、
何の訓練も受けていないただの女子高生である晴美が
その反応を示すのは当然と言えたー。

「霧島さんがあんな顔をしてるの初めてみたー」
同僚の連合軍隊員・一真がそう言葉を口にすると、
隣にいた新人隊員も「それってやばいんすか?」と、言葉を口にするー。

「あぁ、ヤバいさー。激ヤバだー。
 霧島さん、どんな時でも冷静なのにー
 あんな緊張した顔してー」

入れ替わっていることを知らない一真が、
拓斗(晴美)を見つめながら
少し不安そうにそう言葉を口にするー。

「ーー戦闘機には、
 エイリアンの殺戮兵器を回収、分析したデータをもとに作り出した
 エイリアンの母船を腐食させるためのミサイル
 エイリアン・デストロイヤーが搭載されています。

 母船への接近に成功したら、
 それを撃ちこみ、すぐに離脱して下さいー。

 エイリアン・デストロイヤーの効果の発揮まで1分ほどかかりますので
 効果を見届けることができればベストですが
 難しければ直ちにその場を退避して頂いて構いません」

司令官の男が、そう言葉を説明し終えると、
「分かりましたー」と、拓斗(晴美)は、静かに頷いたー。

手が震えー、顔は青ざめー、緊張からか呼吸も
荒くなっているー
そんな状態ー。

「ーー霧島さんー…なんかおかしくないっすか?」
新人隊員の言葉に、隣にいた一真も、表情を歪めるー。

だがーー

「発射30秒前ー」
入れ替わった状態のまま、戦闘機・ヴェロスが発射態勢に入ってしまうー。

「ーーーー」
拓斗(晴美)は、もはやどうすることもできず、
発射を待つだけの身ー

”わたし、宇宙で死ぬの??”
”宇宙で死ぬの??”
”あ~……来週、地下街に友達と遊びに行く約束してたのにー”
”こんな目に遭うんだったら学校遅刻した方がマシだったなぁ”

拓斗(晴美)は色々なことを考えながら発射を待つー。

「10秒前ー。
 9ー…8ー…」

カウントが進んで行くー。

だが、その時だったー。
部屋の扉が開き、そこに晴美(拓斗)が入って来たー。

「ーえっ!?誰?」
新人隊員が戸惑うー。

「ーーちょっとー…?
 ここは高校生の入って来る場所じゃー」
一真がそう言いながら、晴美(拓斗)を制止しようとするー。

が、既に発射5秒前ー
一真に構っている時間も、事情を説明している時間もなかったー。

「ーーすまん!」
晴美(拓斗)は、一真の急所を軽く蹴りつけると、
一真は「ぐふっ!?」と、その場で痛みにもだえ苦しみ始めたー。

「ーーーーくそっ!停止は間に合わない!なら!」
晴美(拓斗)はそう叫ぶと、
発射台の方に走っていきー…

信じられないことに、戦闘機ヴェロスのコックピットの部分にしがみついたー。

「ひっ!?」
拓斗(晴美)は、突然窓の外に”自分”が飛びついて来たことに驚くー。

「ーーは!?!?」
連合軍の指揮官の一人も困惑した表情を浮かべるー。

”0ー”

そしてーーー
戦闘機はそのまま発射されたー…

「ーぐおおおおおおおおおおおおおっ!?!?!?」
振り払われそうになりながらも、晴美(拓斗)は、
意地で戦闘機にしがみついたー。

そんなことできるのかどうか、
彼自身にも分からなかったが、
なんとか戦闘機にしがみついたまま、
晴美(拓斗)は、「ーーそこを押せ!」とジェスチャーを送ると、
拓斗(晴美)は困惑しながらも指示された通りにボタンを押したー。

上空を戦闘機・ヴェロスが舞う中、
開かれたコックピットの扉から、後部座席の方に座り込むと、
晴美(拓斗)は「はぁ…はぁ…間に合って良かったー」と、
戦闘機にしがみついていたせいで、
風圧でボサボサになった髪型のまま、
ひと息ついたー。

そしてー…

「ーー本当は俺が前に座りたいが、今からだと
 位置を入れ替えるのは無理だー。」
と、そう言葉を口にすると、後部座席の方から手を伸ばして、
「すまないが、君にも手伝って欲しいー」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーあ……は、はいー」
戸惑った様子で頷く拓斗(晴美)ー

だが、その表情は、”誰かが来てくれたこと”で、
かなり安堵したような表情にも見えたー。

コックピットのミラーのようなもので、
”自分の身体”の、風でボサボサになった髪を見て少しだけ笑うー

「ーー何か?」
晴美(拓斗)が言うと、
「い、いえーすごい髪だなぁってー」と、
拓斗(晴美)は苦笑いしながらそう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーい、今のJK、なんすか?」
新人隊員が戸惑いながら言うー。

「さ…さぁ……
 ってかあの子…俺の急所をー…」
一真が痛そうにしながら、そう言葉を口にすると、
指揮官の男は戸惑いながらも
「霧島さんー聞こえますか?」と、そう言葉を口にしたー。

”ーーはいー。聞こえますー”
答えたのは、拓斗(晴美)ではなく、
晴美(拓斗)の方だったー。

女子高生の声が聞こえてきて、戸惑う指揮官ー。

「ーー…え、えっとー」

しかし、その言葉を打ち消すかのように、
晴美(拓斗)は言ったー。

”事情は後で説明しますー。
 とにかく今は、俺とこの子セットで
 霧島拓斗だと思ってください”

とー。

「ーーそ、それは、どういうー…」
指揮官の男はさらに戸惑うー。

がーー

”とにかく、お願いします!”
と、晴美(拓斗)はそう言葉を口にしたー。

「ーわ、分かりましたー
 こ、こちらから敵母船へのルートを分析してお知らせします」
指揮官の男は、状況が飲み込めないながらも、
今はそうするのが最良だと判断して、そう言葉を口にすると、
戦闘機・ヴェロスに乗る二人に対して、指示をし始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後部座席から、身を乗り出すようにして、
時には拓斗(晴美)の手を掴んだりー、
自身でレバーを手にしたりしながら、
操縦を続けていく晴美(拓斗)ー

拓斗(晴美)は”自分の胸”が時々当たることに
妙なドキドキを覚えながらも、
ついに戦闘機・ヴェロスは宇宙へと到着したー。

「す、すごいー…これが宇宙ー」
拓斗(晴美)がそう言葉を口にすると、
晴美(拓斗)は「そうだなー…」と、
自身も始めての宇宙に、少しだけ目を輝かせたー。

が、すぐに真剣な表情に戻ると、
「ー本部ー。母船への距離はー」
と、そう確認するー。

本部からの返答に、晴美(拓斗)は「よし」と、
そう呟きながら、戦闘機・ヴェロスを
エイリアンの母船の方に向かわせるー。

そして、ついに母船の姿が見えたー。

「ーーあれが…宇宙人のー」
驚く拓斗(晴美)ー。

「ーー先に説明しておくー。
 その赤いのがやつらの母船を破壊するためのミサイル、
 ”エイリアン・デストロイヤー”の発射ボタンだー。

 俺が”撃て”と言ったら、どんな状況でも、
 そのボタンを押してくれ」

晴美(拓斗)の言葉に、拓斗(晴美)は「は…はいー」と頷くー。

「ーーーお出ましかー」
晴美(拓斗)は表情を歪めるー。

眼前には、宇宙人の母船を守ろうと、
殺人ドローンが多数展開されていたー。

「ーーレバーは俺が操作するー
 君は、俺の指示通りにそっちのボタンを押してくれ」

「は、はいー」

その言葉と同時に、晴美(拓斗)は後ろの座席から、固定具を
外して身を乗り出す形で戦闘機・ヴェロスを操縦していくー。

”これは、俺にしか操作できないー。
 少しのミスで戦闘機の暴走を招くー”

晴美(拓斗)が鋭い視線を外に向けながら
エイリアンの殺人ドローンを突破していくー。

「ー俺の位置からじゃ、攻撃の発射ボタンに手が届かないー。
 俺の言う色のボタンを押してくれ!」
晴美(拓斗)の言葉に、拓斗(晴美)は「は、はいっ」と戸惑いながら、
身構えるー。

「黄色を押してくれ!」
「緑だ!」
「次は黄色!」

色分けされている攻撃ボタンを晴美(拓斗)の指示通りに押していく拓斗(晴美)ー。

周囲に展開されていたエイリアンの殺人ドローンが次々と撃墜されー、
ついに、エイリアンの母船がミサイルの射程距離に入ったー

「ー今だ!その大きいボタンを押せ!」
晴美(拓斗)の言葉に、拓斗(晴美)は戸惑いながらも
すぐにミサイル”エイリアン・デストロイヤー”の発射ボタンを押したー。

ミサイルが放たれ、エイリアンの母船に着弾するー。

エイリアンの母船に異変が生じ、溶けるようにして
腐敗していくー。

「ーミサイル着弾!エイリアンの母船に効果あり!」
晴美(拓斗)が本部にそう連絡を入れると、
無線越しに歓声が聞こえて来たー。

”ーなんか…英雄モードのわたし、かっこいいなぁ…”
普段は流されるままに生きている晴美は、
”拓斗が中身の自分”を見て、少しドキッとするー。

がー、その時だったー。

エイリアンの母船から放たれたレーザーのようなものが
戦闘機・ヴェロスに命中ー、
ヴェロスが制御不能に陥るー。

「ーぐっ…!」

「ーど、ど、ど、どうすればいいんですか!?」
拓斗(晴美)が叫ぶと、
晴美(拓斗)は「やむを得ない!地球にこの状態で着陸するー」と、
警報音が鳴り響く中、地球の方に向かって
戦闘機・ヴェロスを動かし始めるー。

エイリアンの母船は、更なる追撃を仕掛けてこようと
レーザーをチャージし始めたもののーー
それよりも先に命中した”エイリアン・デストロイヤー”による腐食が進みー、
エイリアンの母船は”崩壊”したー。

「ーーー…よし」
エイリアンの母船の崩壊を確認した晴美(拓斗)は、
「ーーかなりの衝撃が来るぞ!備えろ!」と、
そう叫ぶと、
戦闘機・ヴェロスは地球上に突入しー、
そして、そのまま”一番衝撃を和らげることができそうな”
場所を晴美(拓斗)が判断しー、
そこに不時着したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー……しっかりして下さい!」

そんな、声が聞こえたー。

拓斗が目を覚ますと、
そこは、地下施設の通路だったー。

どうやら、担架に乗せられて医務室に運び込まれているようだー。

「ーーー……俺はー…」
拓斗は、そう声を出してハッとしたー。

「ーー!」
自分の手を見つめる拓斗ー。
”元の身体”に戻っているー。

そうかー
階段から転落した時と同じように、
戦闘機不時着の際の衝撃で戻ったのかー、と
拓斗は考えるー。

「ーー…俺と一緒に乗ってた子はー?」
拓斗がそう言うと、連合軍の仲間の一真は、
「その子も無事です。怪我はしてますけど、命に別状はありません」と、
そう答えてくれたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

半月後ー

「それでは、”二人の英雄”の登場ですー」

あれから半月ー
母船を失ったエイリアンは、
殺人ドローンや、エイリアンの先兵を残してはいたものの、
戦闘は地球側が逆転ー、
地上でも安全に生活できる区域が増えて来たー。

そして、今日は”二人の英雄”の表彰が行われていたー

「ーわ、わ、わたしなんかが…英雄でいいんですかー?」
困り果てた表情を浮かべる晴美ー。

「わ、わたし、ただの高校生ですよ?」
晴美の言葉に、拓斗は少しだけ苦笑いすると、
「君だって、立派に戦ったじゃないか」と、そう言葉を口にしたー。

パニックになりながらも、
ちゃんと戦闘機の操作をしてくれたし、
晴美も立派な英雄だと、拓斗はそう言葉を口にするー。

「ーーー…あははーー…じ、じゃあ…わたしも英雄ってことでー」
晴美は少し照れ臭そうに笑うと、
人々の前に拓斗と共に立ち、
恥ずかしそうに英雄として、人々の歓声を浴びたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー雅美ー、雄太ー。
 ーーー勝ったよー。」

後日、
英雄・霧島 拓斗は、
妻と息子が眠る墓地を再び訪れていたー。

「ーーーーー」
手を合わせながら、二人のことを思い出す拓斗ー。

やがて、ひと息つくと、
拓斗は「ーーまだまだ、やることがたくさんだー」と、
”今度は復興のために、全力を尽くさないとな”と、
静かにそんな言葉を口にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ホウコクー

チキュウ コウゲキタイ ダイ1ジン カイメツ

シキュウ、ダイ2ジン、ダイ3ジンノシュツゲキヲ ヨウセイスルー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

エイリアンに侵略を受けた世界での
入れ替わりでした~!☆!

入れ替わりでこんな感じのお話は
あまり書いてなかった気がするので、
今回、こんな風に作ってみました~!☆!

最後は…侵略系のお約束…?笑

お読み下さりありがとうございました~!☆!

コメント

  1. TSマニア より:

    英雄が二人っ!!

    無事に平和に終わって良かったです!☆

    エイリアンの侵略系のストーリー書くの難しいですよネ!

    さすが無名さんデス(*´・ω・`)b

    自分の場合は無名さんのカラダでエイリアン抹殺するので

    英雄は無名さんなのデス(*´艸`)笑

    あとは任せますっ\(^o^)/笑

    • 無名 より:

      エイリアン系のお話は、
      舞台のことも色々空想しながら書いてます~!

      わわ~~!
      私は英雄なんて器じゃないのデス~笑

      • TSマニア より:

        細かいところまでしっかり勉強して描いてるなぁと思いました!

        新しいジャンルにチャレンジしたりリブート的にパワーアップしたりスゴいですネ!

        自分が無名さんのカラダでバニーガールの格好でエイリアン退治して

        無名さんのカラダから自分のカラダに戻るので

        やっぱり無名さんが英雄になる結末なのデス笑

        しかもバニーガールの格好で…(*´艸`)笑

        後は無名さんに任せました…地球の未来も…笑

        無名さん更に多忙になりますネ\(^o^)/笑

        • 無名 より:

          バニーガールの格好で英雄に…!?

          ぶるぶるなのデス……★

          せっかく毎日書いているので、
          色々なことにチャレンジデス~!