<融合>いじめていたアイツになってしまった(前編)

クラスメイトの子をいじめていた
いじめっ子の男子ー。

しかしある日、彼女を理科室に呼び出して
いつものようにイジメていたらー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお前、寄ってくんなよ!菌が移る!」

いかにも意地悪そうな悪ガキという雰囲気の
男子高校生・勝島 鉄男(かつしま てつお)が
そう言葉を口にすると、
小柄で気弱な雰囲気の女子生徒・野村 沙耶(のむら さや)は
「ご、ごめんなさい…」と、怯えた様子でそう言葉を口にしたー。

「ーははは、鉄男さ~、少しは優しくしてやれよ」
クラスメイトの一人で鉄男の親友である、羽野 卓(はの すぐる)は
笑いながらそんな言葉を口にするー。

「そうそう、相手は女子なんだからー」
眼鏡をかけた陰険そうな雰囲気の友人・小森 昌平(こもり しょうへい)も、
そう言葉を口にすると、
鉄男は、沙耶本人に聞こえるように
ゲラゲラと笑いながら
「あいつが女子!?あいつはただのウイルスだろ!人間じゃねぇし!」
と、とんでもない言葉を口にしたー。

ゲラゲラと笑う三人ー。

沙耶は、そんな過酷な日常に
耐えて、耐えて、耐える日々を送り続けていたー。

がー、そんなある日のことだったー。

昼休みに、理科室に呼び出された沙耶は、
怯えながら理科室へとやってくるー。

「ーー…か、勝手に入ったら、まずいよー」
沙耶がそう言い放つも、
鉄男は笑いながら「うるせぇよー。早く入って来いよ」と、
理科室の入口で躊躇する沙耶を中に呼び寄せたー。

中には、鉄男の親友である卓の姿も見えたー。

「ーーで、昌平のやつは?」
鉄男がそう言うと、横にいた卓は「いつものリスクヘッジだよ」と、
苦笑いしながら首を横に振ったー。

眼鏡をかけた昌平は”リスクヘッジ”に執着する男で、
とにかく、リスクとなることを避けたがるタイプー。
今日も、”昼休みに理科室に勝手に入るのはリスクだ”として、
この場にはやってこなかったー。

「ーへへへ、昌平も小心者だな」
ニヤニヤ笑いながら鉄男は「ま、いいやー」と、
そう言葉を口にしながら、沙耶の方を見つめると、
理科室の薬品を勝手にビーカーの中に複数入れて、
それを混ぜながら、笑みを浮かべたー

「へへへー
 ばい菌のお前を消毒してやろうと思ってなー」

まるで子供のように”やっていいこと”と”やってはいけないこと”の
判別すらできないのか、鉄男がニヤニヤしながらそう言い放つと、
沙耶は怯えた様子で「や…やめて…」と、弱弱しく言葉を吐き出すー。

「ーお、おい、それ変な煙出てるぞー」
鉄男の隣にいた卓がそう声を上げながら、
理科室にあった薬品を手当たり次第混ぜた結果、
不気味な煙が出始めたビーカーを指差すー。

「ーうぉっ!?なんだこれ!?うぉっ!?」
鉄男もそれに気づき、声を上げるー。

「ーや、やっべぇ!」
卓は、いち早くビーカーの近くから離れて、
そのまま窓際の方に向かうー。

が、鉄男は「へへーこれでお前を消毒してやるぜ!」と、
不気味な煙が出ているビーカーを手に、
怯えている沙耶の方に近付くー。

「ーーた…助けて…!」
怯えた様子の沙耶ー。
それを無視して、鉄男がその薬品を沙耶の方に投げようとした
その時だったー。

煙がさらに強まりー、
視界の全てを覆いつくすー。

「ぐぇっ!?何も見えねぇ!?どうなってやがる!?」
「ーみ、見えない… いや… やめて!」

鉄男と沙耶の声が聞こえるー。
二人が煙に包まれているほうを見ながら、
鉄男の親友・卓は「お、おいっ!」と、戸惑ったような声を上げるー。

がー、二人からの返事がなくなりー、
卓はみるみると青ざめていくー。

「ーや…やべ… お、俺…知らね!」
そう言いながら理科室から逃走しようとした
その時だったー。

「ーーーー……!」
二人を包んでいた煙が晴れていきーーー…
そして、その中からー…

髪の長い女子生徒が姿を現したー。

「ーーー……え…」
卓は、そんな女子生徒の方を見ながら表情を歪めるー。

何故ならー、
煙の中から出て来たのは、
沙耶ではなく、鉄男でもなかったからだー

「ーーえ…だ、誰ー?」
卓が戸惑いながら言うと、
「ーーお………あ……あれ?」
と、その女子生徒は自分の手を見つめながら
困惑するー。

「ーーお…… 俺…ど、どうなってー?
 え……こ、声がー…?」

その女子生徒はそう言ったー。

声は少し低いが、確かに女子の声に聞こえるー。

「ーー………え………」
卓は、そんな”謎の女子”を前に困惑するー。

スカートを履いているその女子生徒ーーー
しかし、それを見てその女子生徒は
「え…お、俺がスカート…?なんだこれー…?」と、
呟きながら、さらには自分の胸を見て
ニヤニヤしながらそれを揉み始めたー。

「ーーーーーー」
呆然としてその様子を見ていた卓はあることに気付くー。

目の前にいる女子生徒のスカートが
妙に膨らんでいるー。

それにー、上の制服は、”鉄男”が着ていた
セーターに見えるー。

いったい、どうなってー?

「ーうぉぉぉ!?」
胸を揉んでいた女子生徒は、自分の”棒”が勃起したことに気付きー、
笑みを浮かべるー。

しかし、次の瞬間ー
「ひっ!?な、なにこれ…!?」と、そんな言葉を口にすると、
「ーーーーお、俺の口が勝手に!?」と、続けて一人で言葉を口にしたー。

「ーー…お、おい…い、いったいどうなってー?
 お、お、お前…だ、誰だよー?」

卓が戸惑いながら言うと、
その女子生徒は、戸惑いながら
「お、俺だよー…て、鉄男だよー な、何が起きたんだ?」と、
逆に卓に問いかけて来たー。

「ーーー…い、いや…お、お前ーー…
 お、女にー…」
卓が困惑しながら言うと、
その女子生徒は「ーーか、鏡を見せてくれー」と、
そう言葉を口にしたー。

しかしー、その直後
「か、勝手に喋らないで!」と泣きそうになりながら
自分の頭を抱えだすー

「ーう、うるせぇ!お前は黙ってろ!」
さらにその女子生徒がそう言葉を口にすると、
卓は、鏡を探すことも忘れて、戸惑いの表情を浮かべ、
立ち尽くしているー。

「ーーす、卓、は、早く鏡をーーー!
 あぁぁ!うぜぇ!勝手に動くんじゃねぇ!」
と、そう叫ぶー。

よく聞くと、その声は、鉄男と
いじめを受けていた”沙耶”が混じったようなー、
そんな不気味な声にも聞こえるー。

「ーーお…お前ー
 もしかしてー、あ、あの”菌”と合体しちまったんじゃー?」
卓が後ずさりながら、女子生徒の方を見つめるー。

「ーー…ーーー…~~~…」
”鉄男”を名乗る女子らしき生徒は表情を歪めながら
「お、おい!どうなってんだよこれ!ど、どうにかしてくれよ!」と、
声を荒げるー。

自分の状況をようやく理解してきたのか、
”鉄男”を名乗るその子は、卓に向かって助けを求めるような
表情を浮かべたー

「ーーて、て、て、鉄耶ーーー…」
卓は、鉄男と沙耶の名前を混ぜた名前で、
その女子らしき生徒を呼ぶとー、
「ーふ、ふざけんな!」と、鉄男を名乗る生徒は
そう叫んだー。

「ーーーー…」
が、卓は青ざめたまま、理科室から逃げるようにして
逃走すると、鉄男を名乗っていたその子は
突然、その場で蹲って泣き始めるー。

「ーーわたしーーどうしちゃったのー わたしー」
いじめられていた”沙耶”の意識が、そう言葉を口にするー。

「ーーおい!!うるせぇな!黙れ!」
理科室で蹲りながら声を上げるのは鉄男の意識ー。

適当に色々なものを混ぜ合わせた薬品から発された
ガスを吸ってしまった二人はー、
”融合”してしまい、二人の意識と身体が混じり合った
”一人の人間”になってしまったのだー。

「ーーー身体を勝手に動かしたり、喋ったら
 ぶん殴るからな!黙ってろ!」
泣きながら蹲っていた鉄男と沙耶が融合してしまった存在ー…
”鉄耶”は、そう声を上げると、
涙を面倒臭そうに拭きながら立ち上がるー。

身体がピクッと動くー。

しかし、鉄男は「お前は動かすんじゃねぇ!」と
怒りの形相で叫ぶと、
「どうしてこんなことにー」と、イライラした様子で、
そのまま理科室の外に出たー。

すぐに、男子トイレに駆け込むと、
そのまま鏡を確認するー。

そこには”どちらかと言うと”女子に見られそうな雰囲気の顔が
映し出されていたー。

髪もそれなりに長いー。

胸もあるー。

確かに、この容姿なら女子に見られてしまっても
仕方がないー。

だが、”男のアレ”もついたままだし、
声は鉄男と沙耶が混じったような、
少し低めの女子っぽいような声になっているー。

「くそっ!よりによって俺が菌と合体しちまうなんてー
 どうなってるんだー!」

沙耶と融合した状態にも関わらず、平気で沙耶のことを
”菌”と言い放つー。

そこに男子生徒が入って来るー。

いじめに加担している友人の一人ー、
リスクヘッジ男の昌平だー。

「ーー…!?」
男子トイレに”女子”がいることに驚いたのか、
トイレが本当に男子トイレかどうかを確認する素振りを見せる昌平ー。

がー、”鉄耶”は、すぐに
「お、俺だ!鉄男だ!」と、そう声を上げると、
理科室で起きた出来事を説明したー。

「ーーつまり、君が勝島だと、そう言いたいのか?」
昌平は眼鏡をいじりながら表情を曇らせると、
「そ、そうだ!そうなんだよ!」と、声を上げるー。

しかしーー

「ーおっと!触らないでくれ」
”鉄耶”が、昌平に触れようとすると、昌平は
そう言いながら、身を引いたー。

「ーーあ?」
”鉄耶”がそう言葉を口にするとー、
「仮に君の話が本当ならー、その身体は君のものでもあり、 
 ”菌”のものでもあるー。
 汚らわしいから、触れないでくれるかな?」
と、昌平が嫌味っぽく言ったー。

「ーーな…なんだとテメー!」
”鉄耶”がそう言い放つと、
昌平はさらに続けるー。

「”合体”だか、”融合”だか知らないがー、
 そんな得体の知れない状態のやつと一緒にいると
 僕にもそれが移るかもしれないー。
 
 悪いけど、僕はこれで失礼するよ」

と、そう言いながら、男子トイレに入って来たのにも関わらず
そのまま何もせずに昌平は立ち去っていくー。

「っ!おい!ふざけんな!」
”鉄耶”が、そう声を上げるも、昌平は振り向くことなく、
別の男子トイレの方に向かっていくー。

そのときだったー。
昼休み終了を告げるチャイムが鳴るー。

まもなく、5時間目の授業が始まることを思い出した
”鉄耶”は、表情を歪めるー。

「ぐっ…くそーこいつと融合したまま、
 授業になんかでれねぇ…」

”鉄耶”となってしまった鉄男は
困惑した表情を浮かべてつつ、
どうするかを考えるー。

「ーーだ、誰かに相談しないとー」
沙耶の意識がそんな言葉を口にするー

「うるせぇ!お前は黙ってろ!
 大体、こんなことになったのはお前のせいなんだからな!」
鉄男の意識が、融合した身体でそう叫ぶー。

しかしーー

「ーーわ、わたしは何も…してないもん…!
 そ、それに、このままじゃ、勝島くんだって困るでしょ?」

と、沙耶の意識がさらに、
二人が融合してしまった状態の身体ー”鉄耶”の身体で
言葉を口にするー。

「うるせぇ!黙ってろ!」
そう言いながら、自分の頬を叩く鉄男ー。

がーー

「いってぇなクソッ!」
自分を叩けば、当然痛いー。

そうー
今の”融合してしまった状態”は、
沙耶からしてみれば”反撃を受けにくい状態”でもあったのだー。

「ーー…元に戻るために、先生に相談しないとー」
”鉄耶”の身体の主導権を得た沙耶が、
そのまま職員室に向かおうとするー

「ふ…ふざけんなー…
 お前みたいな奴とくっついたなんて、死んでも言えねぇー」

”鉄耶”の身体を、鉄男が、沙耶がそれぞれ動かそうとしてー、
職員室の方に向かったり、
逆に離れようとしたちを繰り返しているー。

やがてー
二人が無理に別方向に進もうとしたことで
バランスを崩して、その場で転倒してしまうー。

慌てて、鉄男が”鉄耶”となった身体を動かそうとした
その時だったー。

「ー大丈夫?」

「ーー!」
”鉄耶”が顔を上げると、
そこには担任の女性教師・菊原 花楓(きくはら かえで)の
姿があったー…。

<後編>へ続く

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コメント

たまに書く融合モノデス~!☆

今回はいじめっ子といじめられっ子の融合…!

(火曜日の作品は予約投稿している都合上)続きは来週になりますが、
楽しみにしていて下さいネ~!

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