いじめっ子が、自分のいじめていた相手と
”融合”してしまったー。
融合してしまった彼らの運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー大丈夫?」
その声にハッとする
”鉄男”と”沙耶”が融合してしまった状態の”鉄耶”ー。
そこにはー
担任の女性教師である菊原 花楓の姿があったー。
「ーーだ…大丈夫ですー」
”鉄耶”は、それだけ言葉を口にして、
そのまま立ち去ろうとするー。
が、次の瞬間、くるっと振り返って
「先生!たすけて!」と、”沙耶”の意識がそう言葉を口にするー。
「ーう、うるせぇ…!」
”鉄男”の意思が、”鉄耶”の身体を動かして
またその場から立ち去ろうとするー。
そんな様子に菊原先生は
「ーところであなたーー…誰?」と、表情を歪めたー。
鉄男と沙耶が融合し、
一見すると”女子”のような顔立ちの生徒ー。
しかし、菊原先生には当然、そんな生徒見覚えはないー。
「ーーえ…えっとー…」
鉄男が、戸惑いの表情を浮かべると、
沙耶の方が、勝手に全てを口にしたー。
「か、か、勝島くんが、理科室にわたしを呼び出してー…
それでー、勝島くんが変な薬を作っててーーー」
そう言い始める”鉄耶”ー。
あわてて右手が”鉄耶”の口を塞ごうとするも、
左手が、それを阻止して、喋り続けるー。
全ての事情を口にした”鉄耶”はー、
「た、助けて下さいー」と、
菊原先生に対して、嘆願するようにそう言葉を口にしたー。
「ーー…ち、ちょっと待ってー
えー…
も、もしかして勝島くんと野村さん…なの?」
と、全てを説明された菊原先生は戸惑った様子で言うー。
確かに目の前にいる女子っぽい生徒は
”鉄男”と”沙耶”を混ぜて2で割ったような
そんな顔に見えなくもないー。
「ーーーー…そ、そうなんですー…
か、身体も混ざっちゃってー」
そう言いながら、恥ずかしそうにスカートを触る”鉄耶”ー。
「ーー…ち、ちょっと、待っててー」
菊原先生がそう言葉を口にすると同時に、
「ーーくそっ!余計なこと言いやがって」と、
鉄男の意識が不満そうに呟きー、
なおもその場から”逃げ”ようとするー。
がー、
「ーーこんなままじゃーー…嫌だよー…!」
と、沙耶の意識が抵抗して、
鉄男が一歩進むと、
沙耶が一歩後退するを繰り返しー、
その場から身動きが取れなくなってしまうー。
「テメェええええええ!」
不満そうに、鉄男は”鉄耶”の身体を動かして、
自分を殴りつけるー。
「いたっ!」
周囲から見れば”自分で自分を殴って痛がっている”
そんな状況を前に、担任の菊原先生も困惑するー。
「ーーーー先生…た、助けてー」
そう嘆願する”鉄耶”を前に、菊原先生は
「と、とりあえずまずは保健室に行きましょう」と、
そう言葉を口にしてから、保健室へと”鉄耶”を移動させたー。
その後ー
”鉄耶”は保健室の先生に確認して貰った上で、
”どうやら本当に二人が融合した状態”であると
先生たちは判断、
病院へとそのまま足を運ぶことになったー。
「ーこれは…いったいー…」
病院の先生は、困惑するー。
「ーー…」
”鉄男”は、口を閉ざしー、
”沙耶”の方が、泣きながら状況を説明するー。
病院内で検査を行った結果ー、
”血液型”も、A型の鉄男とO型の沙耶の血液型が混じり、
通常のA・Oとは異なる状況になっていることやー、
二人分の脳波が存在すること、
男と女、両方の特徴が体内でも確認できることなど、
色々な点が確認されたー。
しかしー、”元に戻す方法”は分からず、
”しばらくの間、このまま生活をするか、
あるいは入院するか”という2つの選択から
選ぶことになったー。
”沙耶”は、入院でも良かったのだが、
”鉄男”が強く反発ー。
互いの両親も加わり、意見が割れる中ー、
結果的に鉄男と沙耶は、融合したまま
学校に通いつつ、病院にも通うー…ということに決まったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
「ーーおぅ」
”鉄耶”ーー
沙耶と融合してしまった鉄男が、
共に沙耶をいじめていた男子、卓と昌平の二人に声をかけたー。
がー、卓が少し気まずそうに”無視”を始めるー。
「ーーおいおい、んだよー
身体はあのばい菌野郎と融合しちまったけどー
俺は俺だからさー」
鉄耶がそう言い放つー。
がー、
昌平は眼鏡をいじりながら言ったー。
「ー悪いけど、あっちに行ってくれるかなー
僕たちにも”それ”が移るかもしれないー」
昌平が冷たく言うー。
「ーな…ふ、ふざけなんな!こんな姿でも、俺は俺だぞ!」
”鉄耶”が怒りの形相で言うー。
だがー
昌平は「ーーリスクヘッジだよ。得体の知れないやつとは
関わらない」と、眼鏡をいじりながらそう言い放つー。
仕方がなく、鉄耶はもう一人の友人の卓に向かって
「俺は、俺だよなー?」とそう言い放つも、
卓は気味悪そうに、”鉄耶”を見たー
「わりぃけど、融合とか、訳分かんねぇー…
正直、キモいからー…話しかけないでくれよ」
と、そう言葉を口にしながらー。
「ーーー!!」
その言葉に、強いショックを受ける”鉄耶”ー
いじめを受けていた側の沙耶の意識が
”キモい”と言う言葉に反応したのだー
「ーおっ…おぇっ…」
”鉄耶”が、気持ち悪くなりながら、
そのまま座席の方に戻って行くー。
クラスメイトたちが、ざわざわと”融合した二人”を指差すー。
「あぁくそっーなんでーなんでこんなことにー」
”鉄男”が、融合した身体で不満そうにそう呟くー。
”っていうかヤバくねー、二人が合体するとか訳分かんねぇ”
”身体、どうなってるんだろうなー”
”鉄男のやつも、ばい菌だったってことだろ?”
”っていうか、キモすぎー”
そんな言葉が、周囲から聞こえて来るー。
「ーーーなんで…なんでわたしがこんなー」
目から涙がこぼれだして
”鉄耶”はそのまま泣き始めてしまうー。
「お…おい!俺の身体で泣くんじゃねぇ!」
鉄男の意識がそう叫ぶも、
”沙耶”の意識が激しいショックを受けたからか、
強い吐き気に襲われて、ついにそのまま自分の座席で
吐いてしまうー
「うわっ!汚ねぇな!」
隣の男子生徒が声を上げるー。
周囲の笑い声ー
周囲の冷やかす声ー。
「ーう、うるせぇ!俺は、俺は好きでこんなやつとくっついたんじゃねぇ!」
鉄男は”鉄耶”の身体で、大声でそう叫ぶー。
けれどー
周囲はそんな”鉄耶”を見て笑ったり、気味悪がったり、
距離を取ったりするばかりー
「ーう…うあああああああああああっ!」
”鉄耶”は、その場でしゃがみ込むと、頭を抱えながら
叫び声を上げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
数日間、学校を休んだ”鉄耶”は学校へと復帰したー。
”もうこんな状態で学校に行きたくない”という沙耶を
無視して、鉄男は学校へと向かい、
強引に学校へやってきた”鉄耶”ー。
しかしーーー
「ーうわっー」
「ーーば、化け物が来たぞ!」
「また吐くんじゃね?」
”鉄耶”が教室に入っただけで教室がざわめくー。
「ーーうるせぇ!」
女のような声でそう叫ぶと、鉄耶は、
”俺はこんなやつらの言うこと、気にしねぇ”と、
強気の態度で自分の座席に座ったー。
がーー
「よぅ 怪物」
友人だった卓が、そんな言葉を口にしながら
声をかけて来るー。
「ーーて…テメェ…!
今まで仲良くしてやってたことを忘れたのかー?」
怒りの形相で声を上げる”鉄耶”ー。
だがーーー
「ーー俺が仲良かったのは、お前みたいな化け物じゃないしー」と
卓はニヤニヤしながらそう言葉を口にしたー。
”いじめっ子”だった立場が、”いじめられっ子”にー。
「ーふざけやがって!」
”鉄耶”が怒りの形相を向けると、
周囲のクラスメイトたちの冷たい視線を感じて、
”鉄耶”は、動きを止めるー
「く…くそっ!何なんだよお前ら!
俺のことを変な目で見やがって!」
沙耶と合体してしまった鉄男は怒り心頭、という様子でそう叫ぶー。
だがーー
”沙耶”が、泣きだしてしまい、
融合してしまっている状態の二人の身体は
その場で泣き始めてしまうー。
周囲の笑い声が響き渡るー。
「ーーもう…いやだ… いやだぁあああああああ…」
その場で子供のように泣き始める”鉄耶”ー。
駆け付けた担任の菊原先生が止めに入りー、
その場は何とか収まったものの、
”鉄耶”は、学校に登校することはできなくなってしまったー…。
不登校になってしまった鉄耶ー。
融合してしまった二人を、元に戻す術も見つからないー。
当時”理科室でふざけて混ぜた”薬品ー
その組み合わせは鉄男も覚えておらず、
先生立ち合いのもと、色々試してみたものの
”同じ現象”が起きることは2度となかったー。
そしてー…
お互いの両親たちも、”融合してしまった我が子”を前に
戸惑うことしかできず、
鉄男の両親は、沙耶の両親側に平謝りー、
沙耶の両親は酷く落ち込んでしまい、
母親は入院することになってしまったー。
そんな中ー、
沙耶は心を閉ざし、鉄男は沙耶の身体で
自暴自棄になって夜遊びを繰り返すようになってしまっていたー。
「ーーーーーあ~~~!くそっ!」
ゲームセンターで夜まで遊びながら”鉄耶”が言葉を口にするー。
ゴスロリ風の派手な服装で夜の街をウロついていた鉄耶ー。
家にもほとんど帰らず、
完全に自暴自棄な生活を続けている状態ー。
”沙耶”は、心を閉ざし、
もうほとんど表に出て来ない状況で、
自暴自棄になった”鉄男”が、
融合した二人ー”鉄耶”の身体の主導権を
実質的に握っているー…
そんな状態だったー。
「ーーは~~~…」
ゲームセンターでゲームを遊び終えて、
大きくため息をつく”鉄耶”ー。
何とかして手に入れたお金も底をつきたー。
「くそっ…一度家に帰るかー?
いや、ーどいつもこいつもクソしかいねぇ」
”鉄耶”はそう呟くと、
自分の身体を見つめてから笑みを浮かべるー。
”男のアレはついたままだけど、
”女”としても、たぶんー…十分、通用するよな?”
そんなことを思いながら、ニヤッと笑った
”鉄耶”は、
自分の身体を使って稼げばいい、と
恐ろしい考えにたどり着いてしまうー。
そしてー、
夜の街で、男に手当たり次第声をかけ始める”鉄耶”ー
がー、”鉄男”は、可愛らしく振る舞うことが
得意ーーなんてことはなかったし、
一見、女に見えるとは言っても、
実際には二人が”融合”してしまった状態であってー、
”女”ではないー。
身体には女と男、両方の特徴が存在しているー。
「くっそー…なかなか上手く行かねぇ…」
鉄男は、うんざりした様子で”融合”してしまった
自分の身体を見つめるー。
「よりによって、なんでこんなやつとー」
怒りの形相で、自分の身体を見つめる”鉄耶”ー。
鉄男は思うー。
どうせ融合するなら、
”こんなやつ”じゃなくて、もっともっと可愛い子が良かったとー。
「ーー全部全部お前のせいだからなー!」
鉄男の意識が、そう言葉を口にするー。
沙耶は心を閉ざしているのか、もうほとんど反応しないー。
「くそっ!!全部俺に押し付けやがって!
このばい菌野郎!」
融合してもなお、悪口を止める様子を見せない鉄男ー。
うんざりした様子で、
「お、あそこに引っかかりそうな男発見!」と、
ニヤニヤしながら踏切を渡り始めるー。
「ー少しは、俺の役に立てよなー
このクズ野郎」
自分の身体に対してそう言い放つ”鉄耶”ー
が、その時だったー。
「ーーーーー…!?!?」
身体が、突然重くなるー。
「ーーーあ?」
”鉄耶”は、表情を歪めるーー。
踏切が鳴り始めて、”鉄耶”もそれに気づくと、
困惑した表情を浮かべながら
「お、おい…テメェ…!」と、
鉄男の意識が叫ぶー。
”もうーーー…疲れたーー
もう、全部、イヤなのー”
そんな沙耶の声が聞こえて来るー。
沙耶の意識が、”鉄耶”の身体を、
踏切の中に無理矢理とどめようとしているのだー。
「ふ…ふざけんな!おいっ!」
”鉄男”の意識が必死に踏切の外に出ようと一歩を踏み出すー。
が、一歩を踏み出すと、一歩下がる…
それを繰り返してしまう”鉄耶”ー
「おい!!!ふざけんな!!!おいっ!」
そうこうしているうちに、電車が近づいて来てー…
「おいっ!!!!馬鹿野郎!!
やめろ!!やめろ!!
た、たすけてーー!!!」
鉄男は、ついに情けない声で悲鳴を上げるー。
しかしー…
身体は思うように動かなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーー…」
病院ー。
「ーーーーーー……あれ……」
目を覚ました”鉄耶”は、
「ーーわたし…まだー」と、そう呟くー。
いじめっ子と融合してしまい、
死を望んだ沙耶ー。
しかしー
まだ、生きていたようだー。
「ーーーー……」
”鉄耶”は、ふと、あることに気付くー。
”中にいた”もう一人の意識ー…
”鉄男”の意識が”いない”ー。
沙耶はそのことに気付いたー。
”強い死の恐怖を感じたこと”が原因かー、
それとも、”電車に轢かれて昏睡状態にに陥っていた”ことが原因かー。
融合した二人の身体から”鉄男”の意識だけが消滅したー。
いじめっ子であった鉄男にー、
罰が下ったのかもしれないー。
「ーーーー」
”鉄耶”は少しだけ安堵の表情を浮かべるー。
これからも、大変な日々は続くかもしれないー。
でもーーー…
捨てようとしていたこの命ー。
もう少しだけ生きてみるのもいいかもしれないー。
沙耶は、”鉄男が消えた”
融合してこの身体で、そんな風に思うのだったー。
おわり
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コメント
久しぶりの融合モノでした~!☆
死亡エンド…かと思ったら、
なんとか無事に生き延びることができましたネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
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