<入れ替わり>英雄なんかじゃないんですけど!②~戸惑い~

エイリアンの母船を破壊するための
ミッションに向かうはずだった”英雄”と呼ばれる男ー。

しかし、ミッション直前に彼は入れ替わってしまい…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーこ、これは一体どういう状況ですかー?」
晴美(拓斗)が言うと、
「ーーあなたは階段から転落しましてー、
 ここに運び込まれたってわけです」と、
医師は少し面倒臭そうに説明したー。

「ーーー…」
驚いた様子で、晴美(拓斗)は、自分の髪を触ってー、
続けて胸に手を触れるー。

下心からではなかったのか、
表情を歪めると、「ーーーー…俺は、”女”ですか?」ろ、
そう言葉を口にしたー。

「ーーーーーーはぁ?」
医師が思わず変な声を出すー。

がー、すぐに思い出したかのように、
「そういえばさっき、君と一緒に階段から落ちた連合軍の
 隊員さんが、”わたしは高校生なんです!”とか言ってたなー」と、
さっきの拓斗(晴美)の姿を思い出しながら医師はそう言ったー。

「ーーーーーー」
医師は困惑したような表情を浮かべながら、
「ーも、もしかして、き、霧島さんー?」と、
拓斗の名を口にするー。

「ーはいー。俺は霧島ですー。
 これは、いったいどういうことです?」

晴美(拓斗)がそう言うと、
医師は慌てた様子で、
「ほ、ほ、ホントに入れ替わってるんですかー?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーー入れ替わり…?ち、ちょっと落ち着いて下さいー。
 どうして俺は、こんな身体にー?」

晴美(拓斗)が聞き返すー。
目を覚ましたばかりで、拓斗はまだ
”自分の身体が女になっている”ことぐらいしか
理解できていないようだー。

「ーーこ、これをご覧くださいー」
医師は、よろよろと歩きながら
鏡を手にすると、その姿を晴美(拓斗)に見せたー

「これはー…階段で落ちて来た子ー…」
晴美(拓斗)は自分の姿を見てようやく理解したー。

「ーー俺がこの子になってるってことはー…
 この子はー…」

晴美(拓斗)が戸惑いながら言うと、
「え、えぇーー…わ、わたしは村野 晴美だと
 ずっとそう言ってましたー」と、医師は困惑した表情を浮かべたー。

”任務に行きたくなくて、40代のおっさんが、女子高生を自称しているー”
医師は、さっき、そう解釈してしまって
まともに取り合わなかったー。

が、後から目を覚ました晴美(拓斗)の態度を見て
医師は本当に二人が入れ替わったのだと、認めざるを得ない状況になり、
焦っていたー。

「ーー…落ち着いて下さいー」
慌てている医師を落ち着かせるために、その両肩を両手でつかむと、
医師は少しドキッとした表情を浮かべたー。

その反応に、晴美(拓斗)も一瞬戸惑いながらも、
「俺の身体は、今、どこです?」と、
晴美(拓斗)はそう確認するー。

「そ、それが、さっき、地球連合軍のお仲間がやってきてー
 指令区の方に行きましたがー」

医師が申し訳なさそうに言うと、
晴美(拓斗)は慌てた様子で医務室の外に向かって走り出すー。

「ーー治療、ありがとうございました。失礼します」
それだけ叫んで、医務室を飛び出した晴美(拓斗)ー

今日は、地球周辺に滞在するエイリアンの母船を
最新鋭の戦闘機・ヴェロスを使い、破壊しに行くミッションに臨むー。

が、このままでは
拓斗の身体になった晴美がそのミッションに臨むことになって
しまうかもしれないー。

しかしー、いくら拓斗の身体であっても、
”ヴェロス”の操縦はそう簡単にはできないー。

拓斗と共にテストを受けた、あらゆる分野のエキスパートが
軒並み、ヴェロスの操縦に耐えることはできなかったのだからー。

このままではー、
拓斗は自分自身の身体を失い、晴美という子は
元の身体に戻れないまま死にー、
そして1機しか存在しないヴェロスも破壊されてしまうー。

そんなこと、あってはならないー。

慌てて、連合軍の司令部がある指令区画に向かうため、
広い地下を走る晴美(拓斗)ー

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
荒い息が口から漏れ出し、
”いつもの自分の身体”よりも体力がないことを
改めて思い知らされるー。

「ーくそっー…」
晴美(拓斗)は少し表情を歪めながらも、
今一度走り出そうとしたその時だったー。

「ーへへへー可愛いじゃんー」
背後から、そんな声がしたー。

金髪の二人組の男が姿を現すー。

「ーーチッ」
晴美(拓斗)は表情を歪めるー。

地下の巨大避難施設には、
”荒れくれ者”も多く存在するー。

既に、エイリアンの攻撃により
元々の社会システムは崩壊していてー、
地上にも、地下の巨大避難施設にも、
ならず者とでも呼べばよいのだろうかー。

そういった人間は多数存在しているー。

”治安”は
大幅に悪化ー。
かつてのように、気を抜けるタイミングは
この世界には存在しないー。

「ーーへへへへ、俺たちと遊ぼうぜ?」
二人組の男がニヤニヤしながら近づいて来るー。

「ーー悪いが、今、お前たちに構ってる暇はないー」
晴美(拓斗)はそのまま、その場を突破しようとするー。

だがーー
男の一人が、晴美(拓斗)の腕を掴んだー。

「ーやめとけ。
 見た目はこんなだけど、俺は男だぞ」

晴美(拓斗)はそう言い放つー。

「ーはぁ?だったら、これは何だぁ?」
ニヤニヤしながら、男の一人が晴美(拓斗)の胸を触るー。

「ーー…っ…中身は男なんだー
 中身が男の女なんて、嫌だろ?
 さっさと手を離せ」

晴美(拓斗)がそう言うと、もう一人の男が
晴美(拓斗)のスカートの上からアソコのあたりに触れながら
「へへー間違いねぇ 女だー」と、ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

「ーー中身が男だろうが、何だろうが関係ねぇよー
 身体は”女”なんだからー」
二人組の男の一人がニヤニヤしながらそう言い放つと、
晴美(拓斗)は表情を歪めながら言葉を口にしたー。

「もう一度だけ言うー。
 ”やめとけ”」

とー。

が、男たち二人は、そんな晴美(拓斗)の言葉に
聞く耳を持たず、そのまま晴美(拓斗)に対して、
欲望の限りを尽くそうと動き始めたー。

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「ーいやぁ、すごいですよねぇ…
 さすが”英雄”ー」

拓斗の同僚である地球連合軍の隊員・一真が
感心した様子で
最新鋭の戦闘機”ヴェロス”を見つめるー。

「ーー霧島さんー
 俺もここから、サポートしますから!
 期待しててくださいね!」
一真のその言葉に、
拓斗(晴美)は「え…あ…は、はいー」と、
暗い表情で頷くー。

”晴美”は昔から押しに弱い性格ー。
どんどんどんどん、”英雄”と言われて
周囲から期待されて、
そのまま宇宙へのミッションをやらされてしまいそうな、
そんな感じに陥っていたー。

ここに来て、”わ、わたしは英雄じゃありません!”とは言えなかったー。

心の中では
”わたし、英雄じゃないんですけど!”
”わたし、霧島拓斗じゃないんですけど!”
と、何度叫んだことかー。

けれど、その言葉を口にすることは出来ず、
ついに、最新鋭の戦闘機”ヴェロス”を発進させるための
地下格納・発射場にやってきてしまっていたー。

「それにしても、島野さんー。
 今日、霧島さん、少し暗くないっすか?」

まだ新米の連合軍隊員が言うー。

一真は「ー霧島さんほどの人でも、緊張するってことさー
命懸けのミッションなんだから」と、
間違った解釈を、自信満々に言い放つー。

「それもそうっすね」
新人隊員も頷くー。

地球の命運を左右するはずのミッションなのに、
軽い感じの人間や、新人隊員までその場に居合わせているのにも
理由があるー。

既に、”人材不足”なのだー。

エイリアンの出現から3年ー。
元々、軍を指揮していたような上層部やー、
ベテラン隊員の多くは既に”戦死”しているー。

そのため、一真のようなそこまで実績のない隊員もいるし、
新米の連合軍隊員が、世界の命運を左右するような
このミッションの場に居合わせているー。

もう、”それしかいない”からだー。

”ど、ど、ど、どうしようー…”
”大丈夫…大丈夫ー”
”この飛行機で宇宙に行って、宇宙人のUFOみたいのを壊すだけみたいだし”
”そ、それは終われば地球は平和になるんだもんね?”

追いつめられた拓斗(晴美)はついに頭の中で
そんなことを考え始めてしまうー。

自暴自棄気味になって
”何とかなるはず”と、そんな風に思い始めてしまっていたー。

「ーーーそれでは、最終チェックを行います」
整備士が、戦闘機・ヴェロスの最終チェックを始めるー。

「ー霧島さん、”英雄”と共にミッションに参加できることを
 光栄に思いますー」
隊員の一人の言葉に、拓斗(晴美)は
混乱したまま「こ、こ、こちらこそー」と、答えるー

”こ、怖いけどー…
 英雄って呼ばれるのは何だか心地いいかもー…”

そんなことまで考えてしまいながら、
拓斗(晴美)は、戸惑いの表情を浮かべると
”どうせー…宇宙人にそのうち滅ぼされるんだしー”と、
そんなことを考えながら、周囲に言われるがままに
出撃の瞬間を待つのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「だからやめとけと言っただろ?」
晴美(拓斗)は、絡んで来た男たちを撃退すると、
そう言葉を口にしたー。

身体は違えど、”あらゆる武術”を身に着けている拓斗が
この男たちを撃退するのは、そう難しくなかったー。

”まぁ、でも、いつもより身体の動きも悪かったし
 力もなかったから、こいつらがヤバい奴らだったら
 危なかったなー」

晴美(拓斗)は自分の華奢な手を見つめるー。

晴美の身体では、普段と同じように動くことも
戦うこともできないー。
なんとか、自分の知識を応用して、この男たちを
倒したものの、相手が”口だけの威勢のいいやつ”じゃなかったら、
やられていたかもしれないー。

晴美(拓斗)は、そんなことを思いつつ、
地下内に存在する司令部を目指したー。

そしてーー

「ー君!この先は”連合軍”の関係者しか入れないよ」
警備員の男が言うー。

「ーーいや、すまないー
 こんな姿だが、俺だー。霧島拓斗だー。」

晴美(拓斗)がそう言うと、
警備員の男が戸惑うー。

「ーーははははっ!お嬢さんー
 冗談はよくないよー。

 ”英雄”に憧れる気持ちは分かるー
 けど、ごめんなー
 ここには入れることはできないんだー」

その言葉に、
晴美(拓斗)は「識別番号はー」と、
”霧島拓斗”の地球連合軍の隊員としての識別番号を口にするー。

「ーーーー!?」
外部には漏れていないはずの番号を口にした
晴美(拓斗)を前に、
警備員の男は、もう一人、横に立っていた男に
ヒソヒソと話し始めるー。

「ー念のため、照合してみろ」
その言葉に、警備員の男は頷くと、
「ー少し待ってくれー」と、そう言いながら
通信し始めるー。

「ーー霧島拓斗の識別番号を確認したいー」
警備員の男が、通信相手にそう言うと、
通信相手は”霧島拓斗”の識別番号を口にしたー。

「ーーーー!!」
今、晴美(拓斗)が口にした番号と同じだー。

「ーあ、ありがとうございます」
警備員の男はそれだけ言うと、
晴美(拓斗)の方を見たー。

「どうして、霧島さんの番号をー…」
警備員の男がそう言うと、
晴美(拓斗)は答えたー。

「俺が霧島拓斗だからだー」
とー。

「ーいや、しかしー…
 霧島さんは先ほど中にー」
警備員の男がなおも戸惑いながら言うー。

そんな彼に対して、
晴美(拓斗)は「それが”この子だ”」と、
自分の身体に触れながら言うと、
「とにかく、通してくれ」と、そう叫んだー。

「ーし、しかしー」
警備員の男がなおも食い下がるー。

セキュリティ上、簡単に通せないのは
晴美(拓斗)にも分かっているー。

がーーー

「ーー”英雄”の道を阻むのか?」
晴美(拓斗)が、晴美の身体で出せる限界の気迫で、
警備員を睨みつけるー。

こういう、”俺は英雄だぞ”みたいなことはしたくなかったが
今は緊急事態ー。
早くしないと、拓斗(晴美)がそのまま任務に出発してしまう
可能性もあるー。

「ーーい…い…… いえ、し、失礼いたしましたー」
晴美(拓斗)の気迫に、”本物の霧島拓斗”だと確信した
警備員の男が頭を下げるー。

「すまないな」
晴美(拓斗)は、そう小さく呟くと、
そのまま入口を突破して、戦闘機・ヴェロスが用意されている
地下発射場へと向かうのだったー

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~~!!

二人の運命と、
地球の運命をぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!☆

コメント

  1. TSマニア より:

    スゴい展開になってきましたぁ~~~!★

    地球の運命と二人の運命は…

    今回の入れ替わりは周りの人達が信用してくれる人、多いですネ…

    自分が地球救いたいですけど

    自分が無名さんのカラダでセクシーで可愛いバニーガールになってエイリアンを接待するぐらいなのデス(*´艸`)笑

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!☆

      周りが信じてくれやすい状況だと、
      あまりドタバタせずに済みますネ~!

      …エイリアンさんにそれが通用するかどうかは分からないのデス…!

      • TSマニア より:

        エイリアンさん接待するフリしてエイリアンさんを亡きものにします~☆\(^o^)/☆

        最終回、楽しみにしてまっすぅ(^^)