謎の島の中で
次々と”皮”にされていく人々。
残る乗客たちは、何とかこの事態を打開しようとするもー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーま、真梨香…?」
呆然とする母・紀子ー。
振り返った娘・真梨香は
いつもとは別人のような不気味な笑みを浮かべながら
「お母さんー」と、そう呟くと、
「お母さんも、”着られて”楽になろ?この島に、身を委ねるの」と
笑いながら近づいてい来るー
「ーま…真梨香…ど、どうしちゃったのー…?」
後ずさる母・紀子ー。
しかし、真梨香は止まらないー
「どうってー?
わたしは、どうもしないよー?」
真梨香はクスクスと笑うー。
まだ、”この女”は、状況を理解できていないー。
そう思った、真梨香を着ている島の住人は、
母親である紀子に近付いていくー。
戸惑う紀子ー
しかしー、そんな紀子に対しー、”男”が叫んだー。
「ーーに、逃げて下さい!!!」
とー
「ー!?」
紀子が男の方を見つめるー。
紀子が飛び出す前に、乗っ取られた真梨香に襲われそうになっていた男だー。
「ーーその娘さんは、奴らに”乗っ取られて”います!
見た目は娘さんですけど、もう娘さんじゃありません!逃げて下さい!」
男のそんな叫び声に、紀子は戸惑うー。
「ーーー…何言ってるの?わたしは、わたしだよ」
不愉快そうにそう呟く真梨香ー。
「ーーー逃げて!早く!」
男がなおも叫ぶー。
戸惑う紀子に対し、
「ーあなたまで乗っ取られたら、誰が娘さんを助けるんですか!?
一度逃げて下さい!」と、男は必死に叫んだー。
「ーーー……!」
その言葉に、紀子は心を動かされるー。
そう、逃げないといけないー。
「ーーごめんー真梨香ー」
紀子はそう言葉を口にすると、真梨香に背を向けて
逃げ始めるー。
「ーーチッ」
”獲物”を逃した真梨香は男の方に向かって行くと、
男を突然蹴り飛ばしたー。
「ぐあっ!」
悲鳴を上げる男ー。
「余計なこと、しやがって!」
”真梨香”が、これまでに人に暴力など振るったことはあっただろうかー。
そんな真梨香が、男に殴る・蹴るの暴力を振るうと、
男は苦しそうにしながらも言葉を続けたー
「ー大勢の乗客を乗せた船が消息を絶てば
必ず助けが来るー。
あの人が逃げたのは、無駄じゃないー」
男がそう呟くー。
がー、真梨香は笑ったー
「ーこの島は、海の流れの都合で”自然に”は、絶対にたどり着けないー。
それに、上空には分厚い雲がいつもあるからー…
衛星でも探知されないー。
誰も、この島にはたどり着けないー」
真梨香は笑うー。
この島はーー
”未知の島”ー
普通にたどり着くことはできないー。
島に伝わる呪術により、周辺の海域を航行する船をおびき寄せー、
”獲物”としているがー、
自然とこの場所に船や飛行機がたどり着くことはないー。
仮に、客船が行方不明になっても、
外界の人間にこの場所を見つけ出すことはできないー。
「あなたで89枚目の皮ー」
真梨香はニヤニヤしながら腕のリングを光らせながら
男に手をかざすと、
男はもがきながら、皮になっていくー
男の皮を、真梨香の皮の上から着こむと、
男の姿になったその住人は笑みを浮かべたー
「ーう~ん…あの娘の方がいいなぁ」
ニヤニヤしながら、男は腕のリングを光らせるー
すると、男の皮がねじれてー、
すぐに真梨香の姿に変わっていくー。
皮にした人間をどんどん”重ね着”している島の住人たちー。
が、こうして腕輪の力を使うことで、
”一番上に着ている皮”をすぐに入れ替えることができるー。
”着ている皮”全ての中から、表面に着る皮をいつでも
変えることができるのだー
再び、真梨香になった島の住人は、
満足そうに唇を触ると、ニヤニヤしながら、ゆっくりと歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー!!」
真梨香の母・紀子とはぐれた、船の船長・栗林たちは、
島の住人たちに囲まれていたー。
先住民のような男たちー。
雄たけびを上げる男たちは、まだ”0枚”のこの島の住人たちー。
まだ、誰の皮も着ることができていないー。
この島には”教育”がないため、
外部からやってきた人間を”一人も着ていない”住人は
会話をすることもできないー。
会話できるようになっている島の住人は全員、
”外からやってきた人間を皮にして乗っ取ったとき”に
読み取れる記憶で、”言葉”を覚えているー。
故に、まだ誰の皮も着ることができていない
島の住人たちは、”言葉”も話せないー
「うがああああ!」
襲い掛かって来る島の住人たちー。
一人、また一人と皮にされていくー。
栗林船長は、途中で拾った木の棒を手に、必死に応戦するー。
そしてーー
ガッ!
振った木の棒が、島の住人の一人の頭に当たり、
その住人が吹き飛ぶー。
吹き飛んだ住人は、岩場に頭を打ち付けて
そのまま血を流して動かなくなったのを見て、
栗林船長は震えながらも”こうしないと、生きて帰れない”と、
自分に言い聞かせて棒を振るー。
「ー皆さんは先にー!」
栗林船長が、乗員や乗客たちをなおも守ろうとそう叫ぶー。
がーーー
振り返った時には、既に栗林船長と行動していた
残りの船員や乗客たちは”皮”にされてしまっていたー
「そ…そんなー」
栗林船長は呆然としながらも、その場から走り去るー。
一緒に行動していた乗客たち以外にも、
乗客はまだこの島にたくさんいるはずだー。
可能性がある限り、諦めるわけにはいかないー。
栗林船長はそう思いながら、木々の中を駆け抜けー、
その場から何とか逃げ延びたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー…はぁ…はぁ…はぁ…真梨香ー…」
母・紀子が、木々の中を移動していると、
やがて、先ほどいた海岸沿いとは別の広い場所に出たー。
「ーーーはぁ…これから…どうしたらー…」
紀子は、何とか娘の真梨香を助ける方法を考えようと、
大きく息を吐き出すー。
がー
その時だったー
「ーー!」
人の気配がして、紀子が驚きながら振り返るとー…
そこにはー、夫の牧夫の姿があったー
「ーーの、紀子!よかった!無事だったのか!」
牧夫のそんな言葉に、紀子は心底安堵した様子で、
「よかったー…」と、泣きつくー。
そして、真梨香のことを告げると、
牧夫は「大丈夫。大丈夫だからー」と、紀子を
抱きしめながら、優しく言葉を口にしたー。
だがーーーー
「ーーーー」
ニヤリと笑みを浮かべる牧夫ー。
牧夫は既に”皮”にされて乗っ取られているー。
妻の紀子は、そのことを知らないー。
「ーーわたしたち…これから…どうなっちゃうのー?」
不安そうな紀子ー。
そんな紀子に対して、牧夫は言葉を続けるー。
「ー大丈夫。何も心配はいらないよー」
優しくそう言葉を口にしながら、
腕のリングを光らせてー、牧夫は紀子を”皮”にするー。
安心した表情のまま皮になって、その場に崩れ落ちた紀子を
見つめると、牧夫は
「ー何も心配はいらないー。」と、今一度言葉を口にするー
「もう、何も考えなくていいんだからー」
牧夫はそれだけ言うと、ニヤリと笑みを浮かべながら、
そのまま”紀子”を回収して、そのまま静かに歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーふふー
今回も”わたし”を超えられる者はいないようねー」
この島では”力”が、全てー。
”着ている皮の枚数”は力の象徴ー。
多くの人間を着れば着るほど、色々な人間の姿が自分のものになるし、
着れば着るほど、その人間の知識を得て、博識になっていくー。
”女王”を名乗るこの女は、現在”106枚”の皮を着ているー。
今回、船が漂着した時点では”100枚”だったが、
今回、新たに6人を乗っ取り、着こんだー。
「ーーー」
”一番たくさんの皮を着ているやつが偉い”ー
それが、この島の鉄の掟ー。
遥か昔から続く、この島の風習ー。
なぜ、”それ”が始まったのかは、
現在”王”である彼女自身も、知らないー。
大昔、この島では獣を狩り、獣の毛皮を剥いで、
それを着て、自らの力を誇示していたらしく、
それが、”人を皮にして着る”に繋がったのかもしれないー。
いずれにせよー、
”人を着れば着るほど”、色々な容姿を使い分けることが
できるようになるし、
外部の人間の記憶がどんどんどんどん手に入るために、
”王”にふさわしい存在になるい、ということは、
この島の人間は全員がそう思っていたー。
そしてー、この島の住人は
”この島”に強い愛着を持ち、強い仲間意識を持っているー。
そのため”着ている皮の枚数”の掟には絶対に従うし、
仲間割れをすることもないー。
皮を奪い合って、島の住人同士が争い始めてしまうようなことは、
この島では絶対に起きないー。
それほどまでに、
島の住人にとって”掟”と”仲間”と”故郷”は絶対であり、
”自分よりたくさん着ているやつに従う”のだー。
「ーーふふふー
今回”引き寄せた”人間たちも残り少なくなったみたいだしー…
そろそろ”お祭り”も終わりねー」
”女王”は満足そうに島の高台からそう呟くと、
そのままゆっくりと歩き出すー。
がーー
その時だったー
「ーー!?!?」
女王の目の前に、突然、人が飛び出して来たー
「ーーあぁ…もう!なんなの!!ウザい!」
血走った目でそう叫ぶ女ー
女王が言葉を発しようとしたその直後ー
その女は、怒り狂った様子で”女王”の方に向かって来たー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーや…や…やめろ!やめてくれ!」
栗林船長は、捕らえられていたー。
「ーーお前は、仲間を殺した」
「ー仲間殺し、この島では、罪!」
「ーー邪悪なる魂は、島の炎が浄化する!」
乗っ取られた真梨香や、美海、船員の男ー
そして、先住民たちに取り囲まれて、
捕獲されてしまった栗林船長ー
栗林船長は必死に命乞いをしたものの、
聞き入れてもらえず、そのまま”皮”にされてしまうー。
そしてーー
真梨香や美海たちは、そんな栗林船長の皮を見つめると、
「ー”邪悪”な皮は着れば、闇に染まる」と、呟きながら
栗林船長の”皮”に火をつけ始めるー。
”島”では仲間殺しは万死に値する罪ー。
先程、逃げる際に先住民の命を奪った栗林船長は、
この島の住人からすれば”邪悪なる悪魔”ー
そんな”悪魔の皮”は、この島の住人たちは着ずに
”燃やして”浄化する風習があるー
”ーーお、おいっ!やめろっ!おいっ!”
皮にされたものの、まだ誰にも着られていない栗林船長には
まだ意識があったー。
しかし、意識があっても、身動きもできず、声も発することができないー。
栗林船長の”皮”は、そのまま島の炎によって
焼き尽くされていくー
その様子を、真梨香や美海ー
乗っ取られた人々は嬉しそうに見つめていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
漂着した船の住人は”全滅”したー。
一人残らず”皮”にされるか、”浄化”されて、全滅ー。
島の住人たちの”次の王を決める宴”は終わったー。
「ーー3期連続かぁー
残念ー」
乗っ取られた真梨香は、
少し悔しそうに呟くー。
真梨香を含む”96枚”の皮を着ている
この島の住人は、
”107枚”の皮を着ている”女王”の方を見つめるー。
「ーーー次”外部の人間”がやってくるのはいつかなぁ」
真梨香はそう呟きながら”女王”の方を見つめるー。
「ーーーわたしが、女王ー」
女王は、嬉しそうに微笑むー。
「ーーはははーもうすでに3連勝で、3期目だろ?」
気さくそうな男の皮を着ている住人が言うと、
”女王”は少し笑みを浮かべながら”そうねー”と、言葉を口にするー
”わたしが、女王ー…
ふふーなんて最高なのー?”
女王は、笑みを浮かべるー。
彼女はーーーー
船のスタッフだった女性・汐梨ー。
汐梨は、島の住人である大男に襲われた際に
大男を返り討ちにして、”人を皮にする力”を持つリングを奪い取っていたー。
その後も、島の中を徘徊していた汐梨は、
他の乗客たちが”光る腕輪”で、皮にされていく姿を何度か目撃したー。
そうしているうちに”偶然”、”女王”がいる場所にたどり着いた汐梨は、
”女王”を襲撃したー。
”女王”を皮にし、その時点で、106枚の皮を着ていた女王を、”中の人”ごと
支配したのだー。
島の住人を皮にして着こんだことで、島の風習も理解した汐梨は、
思ったー
”これってー、わたしが女王になるんじゃないー?”
とー。
そしてーーー
汐梨は”女王”となったー。
”女王”として君臨していた”姿”で
島の住人たちの前に”女王”として立つ汐梨ー
”なるほどねー…相手が”何枚着ている”かは、
腕輪をかざすと見えるってわけねー。
でも、中の人が誰かまでは分からないみたいだからー…
わたしが女王を、着こんでいた皮全部丸ごと乗っ取ったことには
誰も気付かないってことねー”
汐梨はそう思いながら、
”ーそもそもわたしの人生なんてクソだったしー
ここで女王をするのも楽しいかもー”と、
不気味な笑みを浮かべると、
島の住人たちを見つめながら、今一度、噛みしめるように、
嬉しそうに言葉を口にしたー。
「ーーーわたしは、女王ー」
とー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~~!☆
唯一残った彼女だけは、
これから島の女王として楽しく(?)生活していきそうですネ~!
お読み下さりありがとうございました~~!
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