<入れ替わり>虫歯の治療を代わってあげるよ(後編)

”虫歯の治療を代わってあげる”

いつも一人でいる幼馴染の男子からそんなことを言われた彼女は
”入れ替わり”で、虫歯治療の身代わりをお願いするー。

しかしー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

萌美になった尊が、
萌美の代わりに歯科医院に出かけてから
30分ほどが経過したー。

「ーーーーーう~ん」
尊の部屋で、尊の帰りを待つ尊(萌美)は、
一人そんな言葉を口にしたー。

最初は、”野内の身体になってるなんてすごっ!”と、
その新鮮さを噛みしめていたものの、
すぐに飽きてしまったー。

別に、”尊”に対しては好きという感情も特にないし、
尊の身体を見たいという願望も特にはないー。

さっき”男の身体”が少し気になって
アソコを見たりはしたものの、それ以上のことは
しなかったー。

好きでもない男子のアレを色々する気分には
なれなかったし、
尊の顔で色々な表情を浮かべたり、
普段は言わないようなことを言わせたりしてみるのも、
最初はドキドキしたけれど、正直なところ、
もう飽きてしまったー。

”っていうか、今更だけど自分の身体を誰かに貸すのって不安ー”

今更ながら、尊(萌美)は
そんな不安の感情に襲われていたー。

自分の身体を相手に貸している今の状態ー。
それはつまり、尊がその気になれば、
萌美の身体で何だってすることができる、ということだー。

”まさかアイツ…わたしの身体で変なことしたりしてないよねー?”
尊(萌美)は、不安そうにそんなことを思うー。

もちろん、入れ替わる前にもそれは心配したものの、
今、実際に入れ替わって、相手が”わたし”の身体で
外に出かけているというこの状況は、
不安を増幅させるには十分すぎる状況だったー。

「ーーー……まぁ」
尊(萌美)は、色々と考えた末に呟くー。

「まぁ、野内だからそれはないかー…」
尊(萌美)はそう呟くと、
「ま、いいやー」と笑みを浮かべながら
「せっかくだし、もうちょっと”男”でしかできないこと
 何かないかなぁ~」と、
のんきな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「~~~~~~~~~」

萌美(尊)はーーー

ーーーちゃんと、歯科医院にいたー。

現在はちょうど、虫歯治療を受けている最中ー

”す、すごいー”

”思ったより、怖いんだなー”

”麻酔したのに、たまにチクッてするー”

”いつ痛みが来るか分からないこの感じー…”

”ーでも、痛まないときは全然痛まないなぁ”

”あ~でも、だんだんチクチクするのも癖になるー”

萌美に話をした通り、
萌美になった尊は、虫歯治療を人生で初めて受けて、
その感触に感動していたー。

”僕は虫歯になるような歯の磨き方はしないから、
 一生虫歯の治療は受けることはできないだろうしー、
 倉石さんの歯磨きが適当でよかった”

そんな失礼なことを萌美の身体で勝手に思いながら
虫歯治療を堪能する萌美(尊)ー

萌美が実際に歯をちゃんと磨いていないのかはさておき、
尊は勝手にそう思い込んだー。

虫歯治療を受けながら、
痛みに耐えつつも、この感触に感動して、
笑みすら浮かべる萌美(尊)ー。

やがて、萌美(尊)の虫歯治療は終わり、
麻酔で口のあたりがいつもと違う感触になっているのを感じながら
「これが、虫歯の治療なんだ…」
と、嬉しそうに人生初体験を成し遂げた
達成感、とも言うべき笑みを浮かべたー

「ーーー…さて、虫歯の治療も終わったことだしー」
萌美(尊)は、そう呟くと
笑みを浮かべながら歯科医院を後にして、
そのまま歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

「ーーーーー」

尊になった萌美は、尊の身体で萌美(尊)の
帰宅を待ち続けていたー。

しかし、思ったよりも帰ってこない状態が続き、
既に出かけてから2時間近くが経過していたー。

確かに、歯医者が混雑していれば
そのぐらい時間がかかることもあるとは思うけれどー…

”う~ん…少し遅くない?野内ー”
尊(萌美)は、尊がちゃんと戻って来るのかどうか
心配になって、部屋に置かれたままの尊のスマホを手にするー。

「ーー…あ~…野内のスマホで勝手に、わたしのスマホに電話してもいいかな?」
そんなことを思いながらも、尊(萌美)は
落ち着かない様子で
”自分”に対して電話を始めるー。

がー、応答はないー

「まだ治療中ー?
 え、でもー」

尊(萌美)は、表情を歪めるー。
萌美が利用する予定だった歯科医院の
診察時間はもう30分前に終わっているのだー。

そのため、余程歯の状態が悪かったり、
治療をしていく上で、何らかのトラブルがあったりしたのでは
ない限り”治療中で電話に出ることができない”ということは
ないはずだー

”まぁ、わたしの虫歯、しばらく粘ってたから酷かったのかもしれないし”
”野内、ぼーっとしてるから電話に気付いてないのかもー?”
”それとも、もうじきに帰って来るのかなー?”

そんなことを思いながらも、
だんだんと不安を隠せないようになってきた尊(萌美)は、
”や、やっぱー、虫歯治療ぐらい自分で受ければ良かったかもー”と、
今から後悔をし始めるー。

もしー、もしも、
このまま何か悪いことに身体を使われてしまったらー…?

もしも、尊が悪意を持って何かをしようとしたらー…

「ーーー…っていうか、わたし、野内のことそんなに良く知らないしー
 あいつのこと、信じすぎてたかもー」
尊(萌美)は険しい表情を浮かべながら
そんな言葉を口にするー。

幼馴染とは言え、萌美は”野内 尊”のことを
そんなに良く知らないー。
いつも一人でいるし、恋愛とかHなことに全く興味がない”というのも、
萌美の勝手な思い込みかもしれないー。

”あいつー…虫歯の治療を受けるとか言っておきながら、
 本当は歯医者に行ってないんじゃー…?”

そう思いながら、時計を見つめるー

もう、歯科医院の診察時間が終わってからまもなく45分が経過するー。
とっくに帰ってきていてもおかしくないはずなのに、
一体どうしてー…?

「ま、まさか、身体の持ち逃げー!?」
尊(萌美)は青ざめながらそんな言葉を口にするー。

「じょ、冗談じゃないしー!
 野内の身体でこの先、生きていくなんて絶対むり!」
尊(萌美)はそう叫ぶと、慌てて出かけようと準備をし始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

出かけた直後ー、
ニヤニヤと笑みを浮かべていた萌美(尊)は、
歯科医院での治療はとっくに終えたのにも関わらず、
暗くなった夜の街を歩いていたー。

萌美(尊)は、ふとコンビニを見つけると
「ここでいいかー」と、笑みを浮かべながら
その中へと入っていくー。

”虫歯の治療を受けるだけ”だったはずの萌美(尊)ー

がー、尊はその約束を破ったのだったー。

そしてー…
コンビニでお目当ての商品を見つけると、笑みを浮かべながら
それを手にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー…はぁ…もう最悪ッ…!ただじゃおかないからー」
尊(萌美)はそう呟きながら、
玄関の扉を開けて外に飛び出そうとするー。

がー、玄関の扉を開けると同時にー

「ーぶわっ!?」
ちょうど、”帰宅”してきていた萌美(尊)のドアの扉が
ぶつかってしまい、萌美(尊)は少しだけ
吹き飛ばされて驚いたような表情を浮かべたー。

「ーーあ…あれ?倉石さんー?」
萌美(尊)の言葉に、
「ー…あ、あんたー…わ、わたしの身体を奪って逃げるつもりだったんじゃないのー?」と、
険しい表情でそう言葉を口にする尊(萌美)ー。

がー、萌美(尊)は、きょとんとした表情を浮かべながら
「ーえ…?いやーそ、そんなこと全くする気ないけどー…?」と、
不思議そうに言葉を口にするー

「じ、じゃあ、どっかで遊んでたんじゃないの!?」
萌美(尊)がそう言うと、
「ーえ…べ、別にー…ただ」と、
萌美(尊)は、コンビニで買い物した袋を見せると、
「ーー虫歯治療の体験させてくれたお礼に…これを、と思ってー」
と、少し照れくさそうに言葉を口にするー。

「ーーーあ…それ…」
尊(萌美)は、萌美(尊)が買ってきたチョコレートを見つめながら
そう呟くー。

”「それに、昨日新発売のチョコ買おうと思って
 コンビニ寄ったらどこも品切れだったし~…」

「あはは、あれは人気だから仕方ないよー」”

先日、友人の栄恵に対してそんなことをボヤいていた
今、人気の新商品だー。

「ー確かになかなか売ってなくてー…少し遅くなっちゃってー…
 なんか、ごめんなさいー」

萌美(尊)はそう言いながら頭を下げると、
「あ、お、お金は僕のお金使ったから心配しないでー。
 あ、でも、歯科治療の方は倉石さんから預かった財布から
 お金出したけどー…」と、几帳面に言葉を口にするー。

「ーーー…そ、そっかー…それを買いに行って遅くなってたんだー」
尊(萌美)がそう呟くと、
「ーーて、てっきり、身体を持ち逃げされたかとー」と、
素直に心配していたことを口にしたー。

「ーー…え…えぇ?
 だから僕ー、そういうのは興味ないってばー」
萌美(尊)は戸惑いながら言うと、
「虫歯治療体験したい以外には本当に何もー」と、
そう言葉を口にしたー。

家を出た直後にニヤけていた萌美(尊)ー
けれど、そのニヤニヤでさえも、
単純に”これから人生初の虫歯治療”と、ドキドキして
ワクワクしていただけで、
尊自身、本当に心の底から”何も”するつもりはなかったー。

「あ、それでー、もう元に戻って貰ってもいいかな?」
萌美(尊)が少し戸惑いながら言うー。

「え?あ、うんー。別にいいけど、
 そんなに慌ててどうしたの?」
尊(萌美)が、不思議そうに尋ねると、
萌美(尊)は恥ずかしそうに言葉を口にしたー。

「ーそ…その…実は、トイレがそろそろ限界でー…」

その言葉に、尊(萌美)は「えぇっ!?」と声を上げると、
苦笑いしながら
「そ…その…トイレぐらいは…いいから…ね?」と、
そんな言葉を口にしたー

「え…でも…なんか変な疑い持たれそうだと思ってー
 あ…と、というかもう限界ー

 そろそろ元にー」

萌美(尊)の様子を見て、尊(萌美)は「わ!ちょっと!漏らしちゃダメ!」と、
慌てた様子で叫ぶー。

そして、二人は無事に元に戻るのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結局ー、”尊”は、本当に何一つ、怪しい行動をしておらず、
帰宅が遅れたのも”虫歯治療体験”をさせてくれたお礼に、と、
萌美が欲しがっていたチョコを探しに行っていたためで、
本当に、それだけだったー。

「ーーで、昨日の虫歯治療どうだったの?」
友達の栄恵が、少し揶揄うような口調で言うと、
「ーーふふふー全然大丈夫だったよ」と、
萌美は得意気な表情で言葉を口にするー

「ほら~!だから言ったでしょ!そんな怖がることないって」
栄恵のそんな言葉に、萌美は笑いながら
”ま、まぁ治療を受けたのはわたしじゃないんだけどー”と、
心の中で呟くー。

昨日、代わりに虫歯治療を受けた尊は、特に
何事もなかったかのように、
いつものように一人で過ごしているー。

特に萌美に話しかけて来ることもなければ、
萌美を特別避けている様子もないー。

良くも悪くも”いつも通り”な尊ー。

そんな姿を見て、少しだけ萌美は笑うと、
「ー”次”は自分で頑張ってみようかなー」と、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後ー。

”虫歯治療”の続きの日ー。

「ーーあ、野内!この前はありがとうー
 それで、今日なんだけどー」

萌美がそんな言葉を口にすると尊は
「え? あ、あぁ、虫歯の治療だよねー。いいよ」
と、笑いながら、「まだこの前と同じで僕の家でー」と、
そう言葉を口にするー。

が、萌美は穏やかな笑みを浮かべながら
「今日は、大丈夫ー」と、笑うー。

「え?」
尊が不思議そうに首を傾げると、
萌美は「野内が平然と治療受けてるのにー、わたしがいつまでも
ビビってるなんて、なんかカッコ悪いと思って」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーだから、今日からは自分で受けてみるー」
萌美の意を決した言葉に、少し意外そうな表情を浮かべていた尊ー。

やがて、尊は「そ、そっかー。頑張って」と、少しだけ笑うと、
萌美は「本当に、ありがとうー!」と、
そんな言葉を口にしながら立ち去っていくー

尊と入れ替わって、虫歯治療を受けてもらったことで
何だか勇気を貰えた気がするー

「ーまさか、わたしが野内に勇気を貰えるなんてねー」

そう思いながら、萌美は笑みを浮かべると
歯科医院に向かって歩き出すのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

何か悪だくみしてそうで、
何も悪だくみしていない…

そんなコンセプトの入れ替わりでした~!☆

でも、もし野内くんが悪い子だったら
今頃萌美は身体を奪われてしまっていましたネ~笑

お読み下さりありがとうございました~!☆★!

コメント

  1. 匿名 より:

    普通にいい話だ……

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