事故により、クルーズ船がたどり着いた謎の島…
その島に住む先住民たちは、
迷い込んだ乗客たちを、次々と”皮”にし、
蹂躙し始めるー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ま…真梨香…?」
真梨香の父親・牧夫は、困惑しながら
そう言葉を口にすると、
真梨香はニヤリと笑みを浮かべたー。
「ー残念だけどーー、わたしはもう、”真梨香”じゃないのー」
真梨香はクスクスと笑いながら、
牧夫を見つめるー。
「ーー…ど…どういう…」
牧夫は言葉を失いながら、真梨香を見つめるー
すると、横にいた老婆が笑うー。
「ーーこの子はねー”皮”になったんだよー
君たちの言い方で言うとー、
そうだねー…
”洋服”とか、”アクセサリー”とでも言えばいいのかなー」
老婆を着ている島の住人は、
今まで着た人間たちの記憶を読み取りながら、
そう言葉を口にしたー。
「ーーわたしたちは、着れば着るほど”立場”が上がっていくのー
多くの人間を着ているのは、最強の証ー。」
真梨香がニヤニヤしながらそう言うと、
「だって、着れば着るほど、着た人間たちの”記憶”を吸収できるからー、
どんどん、頭も良くなっていくからねー」と、
笑いながら牧夫の方を見つめたー。
「ーー…ま…真梨香ーー…お、おい…しっかりしろ…!
どうしたんだよ!」
牧夫がそう叫ぶー。
がーー
真梨香は笑みを浮かべながらー
自分の後頭部に手をかざすとーー
ペリッと、その場でめくれたーーー
ぱさっ、と音を立てて、
”脱ぎ捨てられた着ぐるみ”のように横たわる真梨香ー。
その表情は、笑みを浮かべたままー固まっているー。
”脱いだ時”の表情が、そのまま固まっている状態ー。
「ま、真梨香ー!!」
慌てて真梨香に駆け寄る牧夫ー。
がー、真梨香の”中”から出て来た男は、
さらに後頭部に手をかざすとー、
今度は中から、気さくそうなおばさんが姿を現したー
「こうしてー、この島に住む住人は、
”一番たくさんの人間を着ているやつ”が、
偉くなっていくんだー」
何人もの人間を脱ぎ捨てるとー、
腕輪を光らせて、”脱ぎ捨てた20人ほどの人間”を、
宙に浮かせるー。
「ま、真梨香!」
ペラペラの娘が宙に浮かびー、またその住人に吸収されるかのように
吸い込まれるとー、
真梨香を着ている住人は、真梨香の姿になって笑みを浮かべたー。
「ーーということで、お父さんー
わたしはもう真梨香じゃないのー。
強いて名前を言うならー”お洋服”かなー?
えへへへ」
真梨香のそんな言葉に、牧夫は「ふ、ふざけるな!」と、
声を荒げるー。
がーー
「ーーーーー」
真梨香はクスッと笑うとー
「じゃあ、”わたしの記憶”の中から、とっておきの記憶を教えてあげるねー」
と、そう言葉を口にしてから、言葉を発したー
「ーーわたし、お父さんの前じゃ、”いい子”を演じてたけどー
本当は、お父さんのこと、”ウザい”って思ってたのー。」
クスクスと笑う真梨香ー
表情を歪める牧夫ー。
「ーでも、わたしが”可愛い娘”を演じてればー、
お父さん、優しくしてくれるし、何でも買ってくれるしー
要はー
お父さんは、わたしの財布ー
ううんー”ATM”とでも言えばいいかな?」
笑う真梨香ー
「う…嘘だ!真梨香にそんなことを言わせるな!」
牧夫が怒りの形相で叫ぶとー、
真梨香は「ーー”着た人間の記憶”読めるからー」と、
頭をつつきながら笑うー。
「ーー記憶が読めても、お前が本当のこと言ってるかは分からない」
牧夫がそう言い放つー。
真梨香が”お父さんはATM”なんて裏で思っていたとは思えないー。
”真梨香の記憶を読んだー”とかいいつつ、こいつは嘘を言っているに決まっているー。
がーーーー
”それを確かめる”手段もないー。
牧夫は悔しそうに真梨香の方を見つめていると、
「ーあ、お母さんもこの島に来てるはずだよね!」
と、真梨香自身の記憶を読み取った、真梨香を着た島の住人が笑ったー。
「ーお母さんも”皮”にされちゃうよー?
この島のみんなは”王”になりためにー
お前たちを血眼になって探しているんだから」
真梨香のそんな言葉と同時に、真梨香の隣にいた老婆が、
牧夫に襲い掛かって来たー。
牧夫を皮にしようとする老婆ー
「ーーーくっ…申し訳ない!」
牧夫は老婆に謝ると、老婆を蹴り飛ばして、そのままその場から
退散するーーー
「紀子ーーー…!」
浜辺に残して来た妻・紀子のことを思いながら、
牧夫は慌てて紀子たちのいる浜辺に向かって走り出したー…。
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「ーーーあ~~~!何なのこれマジで!!
うざっ!うざっ!うざっ!!!」
客船のスタッフ・汐梨は、島の中を歩きながら、
本性を露わにして、怒り狂っていたー。
普段から、表面上はニコニコしながら
裏では客に”死ね!”と、思ったり、
”早く仕事終わらねぇかな”と思っていたり、
黒い感情を隠しながら生きて来た彼女ー。
しかし、こんな島に流れ着いて、
帰るどころではなくなってしまったこの状況に、
怒りを感じずにはいられなかったー。
スマホを手に「繋がらねー!役立たず!」と、
そう叫ぶと、
ふと、少し先の方から、人の声が聞こえて来たー。
「ーーーー…あ?」
汐梨は不満そうに首を傾げながら、
その声がした方向に向かうー。
すると、そこにはーー
「ーー美海…よかった!」
客船の中でイチャイチャしているカップルの姿があったー。
その様子を物陰から見つめる汐梨ー
”あのクソカップルー
島でもイチャイチャするとか、頭おかしいんじゃない?”
汐梨は心の中でそう思いながらその様子を見つめるー。
がーーー
カップルの彼女・美海の方が
笑みを浮かべると、突然、男の方に向かってキスをし始めたー。
”ケッー…やばすぎでしょ。
公共の場でああいうことするとか、マジで公害”
汐梨はそんなことを思いながら、
背後から蹴っ飛ばしてやろうかとその二人の様子を見つめるー。
そもそも、ここは”公共の場”なのだろうかー、と、
自分でツッコミを少し入れながらも、
その二人の様子を見つめていると、
彼女・美海の方がキスをしながら、
腕につけた腕は光らせーーー
彼氏の後頭部を乱暴に掴み始めたー
”なにアレ?新手のキス?”
そんなことを思いながら汐梨が見つめていると、
彼氏が足をバタバタさせながら、ペラペラになっていき、
地面に崩れ落ちるのが見えたー
”はーー…??? え?
なにあれ? 彼氏を殺したの?”
汐梨はそんなことを思いながら、
さらにその光景を見つめていると、
美海は「ーわたしと、一つになれるよ~?ふふ」などと言いながら、
”彼氏”を着始めたーーー
「ーーこれで、”69枚”ー」
彼氏の姿になった美海は、笑みを浮かべるー。
いやー、”それ”は美海ではないー。
既に69人の人間を着ている”島の住人”の、
68枚目に美海、69枚目の皮として彼氏が犠牲になっただけー
「ーーーは……な、何…アレ…?」
汐梨はそう言葉を口にして後ずさると、
背後からーー
大男が姿を現したー。
まだ”誰の皮”も着ることができていない
この島の先住民ー。
この島には”教育”が存在しないー。
教育方法は、”島に迷い込んだ人間の皮を着て、その人間の知識を丸々戴く”ことだー。
故に、まだ”誰も着ることができていない”島の住人は
言葉すら話せないー
「うぐおおおおおおおおお!」
腕のリングを光らせながら、汐梨に襲い掛かる大男ー
だがーーー
「ーーこ、来ないで!クソ野郎!」
汐梨はそう叫びながら、持っていた鞄で思いっきり
大男の顔面を殴りつけるー。
不意打ちで転倒した大男の頭を
乱暴に怒りとパニックで何度も何度も踏みつけているとー、
やがて、その男は血を流しながら動かなくなったー
「ひ……」
汐梨は、自分が人の命を奪ったことに震えながら、
男の腕輪を見つめるー。
「ーーー……これ、さっき光ってたよねー…?」
汐梨はそう呟くと、表情を歪めながら、
その腕輪を奪い取るー。
”もしかしたら、高く売れたりしてね”
そんなことを思いながらも、汐梨は怯えた様子で
周囲を見渡すと、
「何なのこのクソ島!」と、叫びながら
そのまま逃げるようにして走り去っていったー。
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真梨香の父・牧夫が、
島の海岸沿いに戻ると、そこには”地獄絵図”が広がっていたー。
待機していた船の乗客や船員たちが
悲鳴を上げながら逃げ惑っているー。
「ーーーこ…これはー」
呆然とする牧夫ー。
島の先住民らしき男たちが、
次々と乗客を襲うー。
中には、”乗客だったはずの人間”まで、
他の乗客を襲っているー。
恐らく、既に真梨香と同じように、奴らに”着られて”いるのだろうー。
「ーーた…助けて…!」
船の乗客と思われる、お嬢様のような雰囲気の子が飛び出してくるー。
がー、牧夫がその子の方を振り返ると同時にー、
その子がぱっくりと真っ二つに割れたーー
絶望的な表情を浮かべたまま
その場に崩れ落ちるその子ー。
背後には、笑みを浮かべた見知らぬ女が立っていたー。
「ーこれで、”70枚目”かなぁー ふふ」
その女は、たった今”皮”にされたばかりのお嬢様を拾うと、
それを身に付けようとするー
「ーな、な、何のために…こんなことを!」
牧夫がそう叫ぶと、
女は笑うー。
「着れば着るほど強くなるー。
人を着れば着るほど、この島では偉くなってー、
より多くの知識を得ることができるー」
お嬢様を着終わったその相手は、
たった今、皮にされたばかりのお嬢様の姿で
そう呟くと、満足そうに笑みを浮かべるー。
「ーーーお前は、”71枚目”ー」
そう言いながら、襲い掛かって来るお嬢様ー。
がー、華奢な体格のその子を突き飛ばすと、牧夫は
何とかその場から逃げ出して、
妻・紀子の姿を探すー。
しかしーーー
ガッー
「ーー!?!?」
牧夫は表情を歪めたー。
頭を掴まれたー。
”まずいー”
牧夫はすぐにそう思ったー
だがーーー
全身から力が抜けていくのを感じるー。
歩こうとしても、歩けないー
声を出そうとしても、ひゅうっと、喉が音を鳴らすだけで
何も声が出ないー。
やがて、バランスを崩してその場に倒れ込んだ牧夫は、
何も動けず、声も発することができなかったー。
”ーーーーーそ…そんなー”
皮にされてしまった牧夫は思うー。
”皮にされても”意識は残っているのかー…とー。
しかしー…
すぐに、背後から迫って来た男が、
嬉しそうに”12枚目”と呟きながら、牧夫を身に着けていくー。
そしてーー
”完全に着られた”牧夫の意識は、そこで途切れたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー身を隠す場所を見つけましょうー。
我々の船が姿を消したことは、船の管理者や会社も気づいているでしょうから、
時間を稼げば救援が来るはずです」
客船の船長・栗林は襲撃から何とか逃れ、
島の中の木々が生い茂る場所を移動していたー。
「ーーー…夫と娘は無事でしょうかー…?」
牧夫の妻である紀子は不安そうにそう呟くー。
「ーー分かりませんー。
今はただ、無事を祈りましょう」
栗林船長はそう言うと、
船員の一人と何やら話しながら移動を始めるー。
「ーーー…」
不安そうに背後を振り返る紀子ー。
他の難を逃れた乗客たちも、
その表情はすっかりと疲れ切っているー。
がーー
その時だったー。
”ーーみ~つけた!”
そんな声が聞こえたー
「ーー!」
栗林船長が立ち止まって「しっ!」と合図をするー。
声は、木々が生い茂る場所の外からだー。
他の悲鳴が聞こえていることから、
どうやら”み~つけた”と言われたのは自分たちでは
ないようだー。
しかしー
「ーー(い、今の声ー…)」
紀子は、そう思うと同時に、木々が生い茂る場所から
飛び出していたー
「あっ!そっちは危険です!」
栗林船長がそう言葉を発するも、紀子は危険を
顧みず、声がしたほうに向かって飛び出していくー。
すると、そこにはー…
「ーーふふふふー大丈夫ー怖がることはないから」
娘の真梨香と、怯える乗客の男性の姿があったー。
「ーーま、真梨香!」
”まだ”事情を知らない母・紀子は真梨香に向かってそう叫ぶー。
しかしー
振り返った真梨香は、もう母・紀子の知る真梨香などではなかったー…
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!☆
無事に、島から脱出することはできるのかどうか、
ぜひ見届けて下さいネ~!☆
…今のところ、難しそうに見えますケド…笑
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