とある客船が、突然の嵐に巻き込まれて、
謎の島へと漂着したー…
しかし、その島には”人を皮にして着る”風習を持つ
謎の先住民たちがいたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
とある客船ー。
旅行客たちを載せながら、今日もその客船は、
穏やかな海の上を航行していたー。
「ーーーえ~~!すごい~~!」
そんな船の中でひと時を過ごす
女子高生・園部 真梨香(そのべ まりか)が、
嬉しそうに外の景色を見つめながら、そう言葉を口にするー。
「でもお父さんーこういう船って高かったんじゃない?
大丈夫ー?」
真梨香が心配そうにそんな言葉を口にすると、
「ーーはははー…まぁ、でも、真梨香も4月から大学生だからなー。
また忙しくなるだろうし、少し早めの卒業祝いだよ」
と、父の牧夫(まきお)が、そんな言葉を口にしたー。
現在高校3年生の真梨香は、3月に卒業を控えているー。
既に、学校でのほとんどの授業が終わり、
今は休みの日が多い状況だー。
そんな、休みが多い時期に、
娘を楽しませてあげたい、と思った父・牧夫は
奮発してそこそこ豪華な客船での旅を企画したー。
「ーーふふ、でも、真梨香に喜んでもらえて良かったわねー」
妻の紀子(のりこ)のそんな言葉に、
牧夫は「ははー…そうだな」と、笑うー。
”娘”と険悪な状況になったりしてしまう父親も世の中には多いー。
牧夫が勤める会社にも、やはり娘と上手く行っていない父親はいるー。
しかし、牧夫の娘・真梨香とは、そういう関係になることもなく
今でも普通に仲良しの状況だー。
「ーあ、わたし、ちょっと船の中散歩してくるね~!」
真梨香がそう言いながら、客船の中を歩き始めるー。
”ーーあ~~~あ、早く終わらねぇかなぁ…”
客船の女性スタッフ・汐梨(しおり)は、
にこにこしながら乗客に接しつつ、そんな風に思っていたー。
彼女はこの客船のクルーの一人。
主に、客船内での宿泊客の接客などを担当する
フロント系の仕事をしているー。
がー…
「ーーこんな新婚旅行を考えてくれて、美海(みみ)うれしい!」
「ーーふふ、君のためなら僕は何でもするって言っただろ?」
イチャイチャしている新婚の夫婦を見つめながら、
汐梨は”クソが”と、心の中で呟くー。
最初はー”客船の中で仕事ができるなんて、毎日旅行気分で最高っ!”と、
この仕事を選んだ汐梨。
最初は、その通り楽しかったー。
しかしー、毎日毎日こういう場所で仕事をしていると、やはり飽きて来るー。
仕事は所詮、仕事でしかないー。
それが、汐梨の学んだ教訓ー。
最近は、豪華客船の中でイチャイチャしていたり、
楽しそうにしている客を見ると無性にムカつくようになってきていたー。
それでもー
「ーーそれではご案内いたしますー」
汐梨は、ニコニコ営業スマイルを浮かべながら、
新婚夫婦を案内し始めるー。
”ーーあ~あ、こいつら沈まねぇかな”
汐梨は、そんなとんでもないことを心の中で思いながら、
今日もそれを表に出さず、仕事を続けるー。
そんなー
色々な人たちの想いや、幸せを載せながら
航行する客船ー。
がーーー
「ーー栗林(くりばやし)さんー」
この客船の船長である栗林の元に、クルーが何やら
暗い表情で報告をしに来ていたー
「ーー霧?」
栗林船長は戸惑うー。
「ーはい。このあたりで霧の発生報告はないはずなのですがー」
その言葉に、栗林船長は表情を歪めながらも、
「ー分かった」と、頷くー。
程なくして、計器に異常が生じ始めるー。
現在、この客船が通過している海域では、
”都市伝説”があったー。
それはー…
”謎の白い霧”が出現し、船が消息を絶つ、という都市伝説だー。
しかし、近年はそのようなことは起きておらず、
その記録も古いことから、
単なる”迷信”として、業界では片づけられていたー。
突然の霧の出現に、嫌な予感を覚える船長ー。
そしてーー
船を強い衝撃が襲ったー
「ーー!?!?!?!?!?」
船長が困惑するー。
船のコントロールが完全に効かなくなり、
周囲の海が突然荒れ始めるー
「なんだこれはー!」
クルーズ船などの船長として、豊富な経験を持つ栗林船長ですら、
初めて遭遇する現象に困惑するー。
すぐにスタッフたちに指示を出しながら、
何とか立て直そうとするもー
どうすることもできないまま、船は強い衝撃と共にー
”未知の島”へと、漂着してしまったのだったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー……!」
突然、船内に緊急アナウンスが流れたと思ったら
強い衝撃を受けて気を失っていた真梨香が目を覚ますー。
両親と共に船旅を楽しんでいた女子高生だー。
「ーー……こ、ここはー…?」
島のような場所で目を覚ました真梨香は、
周囲を見渡すー
船が島の岩場に衝突した際に吹き飛ばされたのだろうかー。
周囲に船は見えずー、
他の乗客たちの姿も見えない状態に、
怯えた表情を浮かべる真梨香。
「ーお…お父さんー…お母さん?どこー?」
真梨香がそう呟きながら、歩き出したその時だったー
ガサッー
近くの木々が生い茂る方向から、
何か音がしたー
「ーー!」
真梨香は怯えた表情で、その音がした方向を見つめるー
すると、そこにはーーー
笑みを浮かべた、男の姿があったー。
「ーーえ………えっとー」
真梨香は怯えながらも、”ここはどこですか?”と尋ねようとするー。
がーーー
すぐに、茂みから別の人物が現れー
真梨香を取り囲むー
男もいれば、女もいるー。
原住民のような風貌の人間もいればー、
そうではなく、着飾ったような服装の人間もいるー。
がー、これだけ多くの人間に囲まれれば
恐怖心もあるー。
「ーーひっ…!? わ…わたしは…わたしは
船の事故でこの島にー…!」
真梨香は、自分の立場を必死に説明しようとしたー。
が、真梨香を取り囲んだ人々は、笑みを浮かべるー
そして、野生児のような男は、
ゴリラのようの胸をどんどん叩きながら
雄たけびを上げたー
真梨香は涙目で「た、助けて下さい!」と
そう叫ぶー。
するとーー
男たちの隙間から、”女”が姿を現したー。
年齢はー、真梨香と同じぐらいか、
少し上ー、ぐらいだろうか。
他の島の住人らしき人々よりも、高貴な雰囲気に見えるー。
その女が現れると同時に、男たちはまるで女王を迎えるかのように
膝をついたー。
女は穏やかに微笑みながら、真梨香の近くにやってくると、
「はじめましてーわたしは、この島の女王ですー」と、
真梨香に対して穏やかな口調で挨拶をしたー。
真梨香は”言葉が通じそうな”相手の出現に安堵の表情を浮かべると、
涙目のまま、その女の方を見つめるー。
そして、慌てた様子で、
「ーわたし…船の事故でー…」と、状況をその女に説明したー。
がー…
女はニヤリと笑うと、静かに言葉を口にしたー
「ーー”一番多くの人間を着ているものが”王”ー
その”掟”は忘れてませんね?」
女王を名乗る女の言葉に、
真梨香は首を傾げるー。
「そ…それは…どういうー…?」
困惑の表情を浮かべながら、真梨香がそう言葉を口にすると、
「ーさぁ”王”になるのはだぁれ?」と、
女は笑みを浮かべながら、周囲にいる島の住人たちに向かって言葉を口にしたー
真梨香はハッとするー。
意味不明な言葉は、自分に向けられたものではなく、
”島の住人たち”に向けられたものである、とー。
「ーーうがぁ!」
「ごぉぉ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「”王”は俺だ!」
「ーわたしの70枚目の”皮”になってもらうわ!」
まるで獣のような雄たけびをあげる男たちや、
意味不明な言葉を口にする島の住人たちー。
悲鳴を上げながら逃げ出そうとする真梨香ー。
がー、男の一人が真梨香に追い付くと、
腕につけた見たこともないようなリングが光りー、
真梨香は、自分が”引き裂かれる”ような、不気味な感触を感じたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー…乗客の大半が行方不明ですー」
そんな報告を聞き、戸惑いの表情を浮かべる栗林船長ー
「ー娘は…娘は無事なんですかー!?」
真梨香の母親・紀子が泣きながら船員に確認しているー。
そんな混沌とした状況の中、
真梨香の父・牧夫は表情を歪めながら言葉を口にするー
「真梨香もこの島のどこかにいるはずだー…」
船は、大破していたー。
島に漂着した際に、バラバラになったようで、
乗客は、島の色々な場所にそれぞれ流れ着いたようだー。
真梨香の両親や船長がいるこの場所には、
それなりの人数の乗客の姿があるものの、
半数以上の乗客は”行方不明”となっていちゃー。
船長が状況を確認する中、
真梨香の父・牧夫は”島の中にいるであろう”娘の真梨香を
探そうと、そんな言葉を口にしながら、
妻の紀子には「紀子はここで待ってるんだー」と、
そう言葉を口にするー。
そしてーー…
島の奥の方に進んでいくー。
がーー
程なくして、木々の先から”悲鳴”が聞こえたー
「ーーー悲鳴…?」
牧夫が困惑しながら、悲鳴がした方向に向かって行くと、
そこには、”船のスタッフ”らしき人物が、
乗客と思われる老婆に襲い掛かっていたー。
「ーーー…やめて…!やめてください!」
老婆が悲鳴を上げながら、足をばたばたとさせるー。
がー…船のスタッフの制服を着た男が、
腕につけた謎のリングを光らせると、
老婆はみるみるうちに”ペラペラ”になっていきー、
まるで、脱ぎ捨てられた着ぐるみのような状態に変わっていくー。
まるで、人間が干からびていくような、
そんな雰囲気にも見えたー
「ーー(な、なんだあれはー…)」
牧夫がそう思っていると、船のスタッフらしき男は、
「これで”2枚”」とー、
呟きながら、今”皮”にされた老婆と、その横に横たわる老婆の夫らしき、
高齢男性の”皮”を手にして笑みを浮かべるー。
スタッフらしき男が、”高齢男性”をまるで
”着ぐるみ”を着るかのように着ていくー。
「ーこれで、”8”ー」
笑みを浮かべるおじいさんー。
「ーー(ど…ど、どうなってるー?)」
船のスタッフの男が、”おじいさん”を着ると、
船のスタッフの男はおじいさんの姿・声になって、そのまま言葉を発したのだー。
さらにーー
「ーーー!!!」
牧夫が、様子を伺っていると、おじいさんは”たった今、皮にされたばかりの老婆”を
掴みー、さらにそれを”着た”ー
「ー”着れば着るほど”強くなるー
”着れば着るほど”王に近付くー
これで、9人ー」
老婆になった男は、ニヤニヤと笑みを浮かべながらそう呟くー
「~~~~~~~~」
あまりに意味の分からない光景に、牧夫は表情を歪めるー。
がーー…
その時だったー。
ガサッと、反対側の茂みから気配がしてー、
老婆の前にーーー
「ーーー(…!!!… 真梨香ー よかった無事だったのかー)」
牧夫の娘・真梨香が姿を現したのだー
「ーーーーーこの辺りには、もう”人間”はいないよ?」
老婆がニヤニヤしながら言うと、
真梨香は笑みを浮かべるー。
「ーーふぅんー残念ー
ところで、”それ”で、”何個”目ー?」
真梨香がそんな言葉を口にすると、
老婆は「これで”9”だねー」と、そう言葉を口にするー。
すると真梨香は笑いながら、
「ーわたしは”85”ー
最低でもあと16人は”欲しい”よねー」
と、そう言葉を口にしたー。
「ーーー(ま…真梨香ーー…何を言ってるんだー?)」
牧夫はそう思いながらも、
娘の姿を前に、ついその場から飛び出してしまったー
「真梨香、無事だったのかー」
と、そう言葉を発したー
「ーーーーーん?」
真梨香が不思議そうな顔をしながら首を傾げるー。
その反応に、牧夫は表情を歪めるー。
がー、すぐに真梨香は老婆のほうを見ながら笑みを浮かべたー
「ーあぁ、この”皮”の父親みたいだなー」
とー
「ーーま…真梨香ー?」
牧夫は、呆然としながら、そんな真梨香の方を見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
着れば、着るほど強くなるー
だから、”一番着ている者”が”王”ー
それが、この島の”鉄の掟”ー。
女王を名乗る女は、笑みを浮かべながら、
祭壇のようなものがある場所にやってくるー。
この島の先住民たちには、
代々伝わる神秘の力があったー。
それが”人を皮にする力”ー
そして、この島ではー
”たくさんの人を身に着けてることが”強さ”の証ー”でもあったー。
島に迷い込んだ人間を皮にしー、着て、己のモノとするー。
そして、その上からまた別の人間を着て、着て、着て、着てー
増やしていくー。
いくら着ても、”皮を着る”と、不思議な力が働き、
ちゃんとそのサイズに収まるため、何人もの人間を着ても、
ブクブクに膨れ上がるようなことはないー。
人間を着れば着るほど、色々な人間の知識を吸収し、
知能を高めていくことができるー。
教育も何も存在しないこの島で、”外部から来た人間を皮にして着る”ことは
”知識を深めること”でもあるー。
そしてー
この島で、今、一番”たくさんの人間を着ている”この人物がー
”王”ー。
彼女ー
いや、大本は”彼”かもしれないこの人物は、
既に”100人”の皮を着ているー
もしも今回、”101枚”以上の皮を着るものが現れれば、
その住人が”王”となるー。
故に、島の住人たちは王を目指して、客船の乗客たちを
血眼になって探し、皮にして、”着て”いるのだー。
「ーーー…ふふふふーーー
島に迷い込んだ人間は、みんな逃げ惑ううさぎー」
”女王”は、そう言葉を口にすると、
不気味な笑みを浮かべるながら、
自らも”101枚目の皮”を求めて歩き出すのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
迷い込んだ人間を皮にして、
着ていく風習を持つ、謎の島に迷い込んでしまった人々…!
続きはまた次回のお楽しみデス~!☆
コメント