<憑依>命を捨てる彼女①~身勝手な理由~

”誰かに憑依して、誰かを道連れにしたい”
そんな理由で憑依薬を手にした男ー。

その男に、彼女が憑依されてしまい、
彼女は自ら命を捨てようとし始めるー。

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「ーじゃあ、今日はそろそろ帰るよー。
 とりあえず、パソコンの調子が治ってよかったー」

男子大学生の村沢 優斗(むらさわ ゆうと)が、
そんな言葉を口にしながら、
彼女の部屋にあるノートパソコンを見つめるー。

「ーうん!本当にありがとう!
 諦める前に優斗にお願いしてよかったぁ…」
安堵した様子でそう呟くのは、
優斗と同じ大学に通う優斗の彼女・崎森 愛奈(さきもり まな)ー。

愛奈と優斗は幼馴染の間柄で、
中学時代は、別々の学校だったものの、高校で再会ー。
大学も偶然同じ大学に通っているという状況だー。

そんな二人は、現在、一人暮らしをしていてー、
互いにお互いの家を行き来するようなことも多いー。

異性を家に上げるー…ということも気にならないぐらいに、
2人の信頼は固かったー。
小さい頃からずっと一緒である故に、
”彼氏と彼女”というよりも、兄妹ー、あるいは姉弟と似たような
感覚なのかもしれないー。

「ーー今度、何かお礼するね!」
愛奈がそう言うと、優斗は「はははー、そんな気を使うなって」と笑うー。

愛奈は、とても可愛いー。
高校時代も、大学時代も、他の男子からもとても人気のある子だー。

しかしー、愛奈本人は、”わたしは優斗にしか興味がないの!”と、
公言しているぐらいに、優斗一筋なタイプで、
そのせいで、一部の男子から嫉妬の対象になっていたり、
揶揄われたりすることも、時々あるぐらいだー。

小さい頃から愛奈は「大きくなったら優斗くんと結婚するのー!」などと
よく騒いでいて、
大きくなっても”そのまま”ーーそんな感じだ。

普通、小さい頃にそういうことを言っていても、十中八九”子供だからこそ”の発言で
言う側も、言われる側も本気と思っておらず、実際にも
そうならないことが多いー…。

けれど、愛奈の場合、小さい頃からずっと本気だったようで、
中学時代、親の仕事の都合で地方に移住して、優斗と離れたものの、
優斗がいなくて寂しい!といつも落ち込んでいたことから
高校入学のタイミングで、親が少し無理をしてこちらに戻ってきて、
優斗と再会を果たしたー。

優斗自身も、愛奈のことは嫌いではなく、
大切な幼馴染だったために再会後に意気投合、
そのまま付き合い始めて今に至っているー。

「あ、そういえば今度の土曜日だけど、帰りにここに寄らない?」
愛奈が楽しそうにスマホを手にするー。

今度の土曜日には、二人で遊園地に行く約束をしていて、
その帰りにご飯を食べるお店の話題を口にする愛奈ー

「お~いいじゃん!美味しそう」
優斗も、そんな風に楽しそうに笑うと、
話しながらしていた帰宅の準備を終え、
「よし」と、持ってきた荷物を鞄に入れると、
「じゃあ、また何かあったらー」と、愛奈の家の玄関に向かうー。

「ーーーもう少しゆっくりしていけばいいのに~」
愛奈が笑いながら言うと、
優斗は「ーはははー、そろそろ洗濯物取り込まないといけないしー」と、
笑いながら返事をするー。

愛奈は少し名残惜しそうに「じゃあ、また明日ー」と、そう呟くと
優斗は「あぁ。また明日ー」と、頷きながら、
そのまま玄関から外に出たー。

「ーーー」
満足そうに、愛奈は自分の部屋の方に戻ってくると、
優斗に直してもらったノートパソコンを見つめながら微笑むー。

がー…その時だったー。

「ーーうっ!?!?」
ピクッ、と突然震える愛奈ー。

しばらくそのまま、瞳を震わせていたもののー、
やがて、愛奈は少しだけ笑みを浮かべたー

「ーーふふ…まさか、”本当に憑依できる”なんてー」
愛奈はそう呟くと、自分の両手を見つめながら笑みを浮かべるー。

「ーーーこの子、すっごく可愛いしー…
 この子でいいやー」

愛奈はそう呟くと、ノートパソコンへの興味も、
優斗への愛情も一瞬で失いー、
そのまま立ち上がると、
「早速死のう」と、笑みを浮かべたー。

愛奈は、部屋中を雑に探すと、
”首を吊る”のに使えるものを見つけ出し、
天井を見上げるー。

手早く”首吊り”の準備を進めていく愛奈ー。

「ーーー」

彼はーーー
”自殺”を考えている男ー。

そんな彼は、”一人で死ぬのは寂しいから”というとんでもない理由で
ネット上で見かけた憑依薬を使いー、
愛奈に憑依したー。

別に、彼は愛奈の知り合いでも何でもないー。
ただ、”誰でもいいから”一緒に死んでもらおうと、
そう思い、偶然街中で見かけた愛奈に狙いを定めー、
そして、彼氏が帰ったチャンスを狙い、憑依したー。

全ては、死ぬためだけにー。

「よし!準備完了!」
嬉しそうに笑う愛奈ー。
愛奈は何のためらいもなく、首をひっかけると、
そのまま台を蹴り飛ばして「誰だか知らないけど、一緒に死のうね♡」と、
笑みを浮かべたー

首を吊りー、足場を蹴り飛ばして、
もう後戻りできない状態になった愛奈ー。
愛奈は”勝手に”満足そうな笑みを浮かべたまま
自殺させられそうになってしまうー。

がー…
その時だったー。

玄関の扉が開きー…
彼氏の優斗が、愛奈の家に戻って来たー。

「ーーー!?!?!?」

「ーー!?!??!?!?」

死のうとしていた”憑依されている愛奈”と
優斗、その両方が驚きの表情を浮かべるー。

「ま…愛奈ー!?な、なにをやってー!?」
既にかなり苦しそうな愛奈の様子を見て、慌てて優斗は、
吊り下がっている愛奈を救出するー

げほげほと苦しそうに咳き込む愛奈ー。

「ーーーま…愛奈!い、いったいどうして自殺なんか!?」
優斗がそう叫ぶと、
愛奈はゲホゲホとしながら「ーーお…お前はこの女のー…」と、
呟きながら、「余計なことをー」と、
あまりの苦しさからか、涙目の状態で、
優斗を見つめたー

「ど、どうしてこんなことー…!?」
優斗は、ただひたすらに戸惑っているー。

”ついさっきまで”いつも通りにしていて、
来週の土曜日の遊園地のことも楽しそうに話していた愛奈が、
突然自殺をしようとするなんて、優斗にはとても信じられなかったー

「ーーせっかくあと少しで死ねるところだったのにー」
愛奈はそれだけ言うと、今度は台所の方に歩き出すー

「ーま…愛奈?」
愛奈の様子がなんだかおかしいー
そう思いながら、愛奈のほうを見ていると、
愛奈が台所にあった包丁を手にしようとしたー

「ーー!!!」
優斗はすぐに、今度は包丁で自殺しようとしていることに気付きー、
愛奈に突進すると、包丁は吹き飛び、愛奈はその場に倒れ込んだー

「ーくそっ!邪魔するなよ!」
愛奈が声を荒げるー

「ーーま…愛奈…!い、一体どうしたんだ!?
 り、理由を説明してくれー!
 何か悩んでるなら、俺が聞くから!」

優斗が必死に叫ぶー。
すると、愛奈はクスクスと笑いながら言葉を口にしたー

「別に、この女は何も悩んでないと思うよー

 まぁ…詳しくは知らないけどー」

愛奈はそう言うと、
あまりにも”変な言い回し”に、困惑する優斗ー。

そんな優斗を他所に、愛奈は
「っていうかお前、さっき帰ったよねー?
 なんでまたこの女の家にー?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーーー」
優斗は戸惑いながら、
「ー忘れ物してたからー…
 インターホンも鳴らしたけど、返事がないから
 合鍵で家に入ったー」と、そう説明したー。

確かに、机の上には優斗のものらしき、USBメモリが置かれているー。
愛奈のパソコンの調子が悪い、と聞いた優斗が持ち込んでいたもののようだー。

インターホンは、首を吊り始めたあとだったためか、
死ぬことばかり考えていて、愛奈には聞こえなかったー。

「ーーーチッ」
愛奈は不満そうに舌打ちをすると、
少しだけ笑ったー

「ーまぁ、いいやーーーーーー」
そう呟くと、
「ー僕ー…いや、わたし、とにかく死にたいの」
と、クスクスしながら笑う愛奈ー。

「ーーお、落ち着けって…
 まず、落ち着いて話をしよう」

優斗が戸惑いの表情を浮かべながらそう言葉を口にすると、
愛奈は「ー毒でも飲んで死のうかなぁー…あ!それとも飛び降りとか!」と、
嬉しそうに言葉を口にするー。

「ーーま、愛奈!自分が何を言ってるのか分かってるのか!?」
優斗は悲しそうに、けれども真剣に、
愛奈のことを大切に思うからこそ、そんな言葉を口にするー。

それでも愛奈はクスクスと笑いながら
「ーあんたが止めても、わたし、死ぬから!」と、
挑発的な笑みを浮かべると、
今度はそのまま自分の首を絞め始めたー。

「ーーや、やめろって!」
優斗が必死にそれを止めようとするも、
愛奈はそんな優斗を振り払って、
「邪魔すんなよ!僕は今日、死ぬって決めたんだ!」と、
声を荒げるー。

その言動に、優斗は「ーー…お…お前は誰だー…?」と、
直感的にそんな言葉を口にするー。

さっきから、愛奈の様子がおかしいー。
とても、”愛奈本人の意思”とは思えないー。

もちろん、目の前にいるのは”愛奈”だとは思うし、
こんなそっくりさんが、都合よく愛奈の家にいるわけがないー。

でも、どうしても、優斗には
そう叫ばずにはいられなかったー。

「ーーあはは… な~に言っちゃってるの?
 わたしは…”愛奈”だよぉ~?」

愛奈はニヤニヤしながらそう言い放つー。

しかし、優斗はその反応から、
”今、目の前にいる愛奈は普通じゃない状況”だという
確信をさらに強めて叫ぶー。

「ーーーーー愛奈は、自殺なんかしない!」
とー。

その”断定”する口調の優斗の言葉に、
愛奈はフッと笑うと、
元々、愛奈に憑依した男も
それほど”憑依のこと”を隠そうとしていなかったのか、
あっさりと”それ”を認めたー。

「ーーふふー。まぁいいやー
 そうだよー。その通りだよー
 この女は、自殺なんかしようとしてなかったと思うよー」

愛奈はそう言うと、
笑みを浮かべながら、
「でも、今、この身体は僕のものー
 そして僕は”自殺”したいんだー」と、
ニヤリと笑みを浮かべたー。

「ーー…ど…ど…どういうことだー…?」
優斗が表情を歪めながら愛奈の方を見つめるー。

すると、愛奈は笑みを浮かべながら
「ーー”憑依”」と、そう呟くー。

「ーー憑依…?」
優斗の表情は、さらに曇っていくー。
突然の訳の分からない状況に、どうすればいいかも分からないー。

「ーーそう…
 分かりやすく言えば、
 今、この女は、僕に身体を乗っ取られて僕に動かされているんだ!」

得意気にそう説明する愛奈ー

「ーーな…なんだって?!」
優斗は震えながら、目の前にいる愛奈を改めて見つめるー

「ー身体は”愛奈”って子だけどー、中身は”僕”ってことだよー」
愛奈はさらに分かりやすくそう説明すると、
優斗は震えながら「お…お前…!ま、愛奈を殺そうとしたのか!?」と、
声を荒げるー。

しかし、愛奈はうすら笑みを浮かべながら、
「違うよー。法律的にはー、
 僕はーそうだな…”行方不明”になってー、
 この子は”自殺”ってことになるからー、人殺しじゃないよ」
と、そう言葉を口にするー

「ーふ、ふざけんな! 
 ま、愛奈に憑依して自殺するってことは、人殺しじゃないか!」
優斗が声を荒げるも、愛奈は
「違うよー。”わたし”の自殺だよ?」と、クスクスと笑うー。

「俺は法律上の話をしてるんじゃない!」
優斗が、そう言葉を口にすると、
「ー愛奈から出て行け!」と、愛奈の腕を掴みながら言うー。

「ーー…ふふーい・や・だー。
 僕はさー、もうこんな世の中から消えたいんだー。
 でも、どうせ消えるなら、一人じゃ寂しいからー
 誰かに一緒に死んでほしくてさー。
 たまたま可愛いこの子を見つけたから、
 この子に一緒に死んでもらうことにしたってわけ」

愛奈が堂々と言い放つー

「ふ…ふ…ふざけんな…!
 お前は、無関係の人間の命を奪おうとしてるんだぞ!」
優斗が叫ぶー

「あぁ、そうだねー
 でも、僕はどうせ死ぬからもう関係ないー」

愛奈はあっさりとそう答えるー

「ーーー愛奈には愛奈の人生があるんだー!
 頼むから、やめてくれ!」
優斗はなおも叫ぶー。

しかしー

「ー興味ない。どうせ僕は死ぬんだし、
 将来があるこんな可愛い子を一緒に死なせるなんてー
 むしろ興奮するじゃん」

愛奈は顔を赤らめながら笑うー。

「ーーーく…お前…!そんなことしたら地獄に落ちるぞ!」
優斗が必死に叫ぶー。

「ー地獄なんてないよ。天国もー。
 死んだら土に還るだけー。だから関係ないー」

愛奈に憑依した男は、全く何を言っても聞き入れる様子はないー

「お、お前だって、死んだりしたら悲しむ人がー」
優斗がそう言いかけると、
愛奈は笑ったー

「いないよ。僕が死んでも悲しむ人間はいない。
 僕に失うものもないー。」

愛奈はそれだけ言うと、優斗の手を振り払って言い放ったー

「ーとにかく、この女と一緒に僕は死ぬからー」
とー。

”守るべきものも、失うべきものもないー
 ただ、死を望む男ー”

そんな男に憑依されてしまった愛奈は、再び包丁を手にすると、
笑みを浮かべたー…

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

とっても危険な相手に憑依されてしまいました~…!

大切な人を人質に取られているも同然の
この状況にどう立ち向かうのかはー…
また、明日以降のお楽しみデス~!

今日もありがとうございました~~!☆!

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