<憑依>命を捨てる彼女②~阻止~

命を絶とうとする男に憑依されてしまった彼女。

嬉々として命を捨てようとする彼女を
なんとか守ろうとする彼の運命は…?

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再び包丁を手にした愛奈を取り押さえようとする優斗ー。

がーー
そんな優斗に対して、愛奈は包丁を向けるー。

「ーまずは、お前を殺してから、
 ゆっくり自殺してもいいんだよ?」

愛奈がクスッと笑うー。

「ーーーぐ…」
優斗は表情を歪めるー。

そうだー…
愛奈に憑依したこの男には、
もはや”怖いモノ”なんて全く存在しないー。

愛奈として死ぬことを邪魔しようとする
優斗の身も、危ないのだー。

「ーーー…カップルの無理心中ってのもいいかもね?ふふー。」
愛奈はそう言うと、包丁を楽しそうに見つめるー。

「ーーーーーー…」
”くそっー”
優斗は、内心で何とか愛奈を救う方法を考えようとするー。

”死のうとしている人間”を救うことは難しいー。
しかも、”今の愛奈”の場合、自分の意思ではなく、
別人の意思によって死なされようとしているー。

それを阻止するのは、さらに難しいー。

「ーーーふふふー
 そんな顔しないでよー。
 僕はただ、”他人の身体”で自殺したかっただけなんだからー
 邪魔しなければ、お前には何もしないよ」

愛奈はそう言うと、再び自分に刃物を向けたー。

「ーおいっ!やめろ!」
優斗はそう叫ぶと、必死に言葉を吐き出すー。

「ーーた、他人の身体で死にたいだけなら、
 ま、愛奈の身体じゃなくてもいいだろ!?

 俺みたいな”邪魔者”がいないと、そっちだって
 こうやって止められて面倒だろ!?」

優斗がそう叫ぶー。

”愛奈”の代わりに誰かを犠牲にするような言い方で、
優斗も、自分自身、嫌な言い方だとは思っていたものの、
とにかく今は、愛奈に憑依した男を止めないといけない一心で、
思いついた言葉をとにかく発していたー。

「ーーまぁ、ねー。
 別に僕はこの子に恨みがあるわけじゃないし、
 この子のことも知らないー。

 でも、一人で死ぬのは寂しいだろ?」

愛奈の言葉に、
「ーーだ、誰でもいいなら!」と、優斗は声をさらに張り上げるー。

「誰でもいいならー…
 せめて悪いことしたやつとか、そういうやつに憑依しろよ!」
優斗はなおも叫ぶー。

その方が、誰かに感謝されるかもしれないぞ!と、
優斗はそんな言葉も付け加えたー。

「ーーうーん…興味ないな。
 死ねば感謝されようと、恨まれようと、同じじゃん?」

愛奈はそれだけ言うと、包丁を自分に突き刺そうとしたー。
慌てて愛奈の方に向かって走りー、包丁を取り上げようとするーーー

がーー…
その包丁が、愛奈の手に切り傷をつけてしまうー。

愛奈の手から血が流れるー

「ーーま、愛奈っ!!!」
優斗は、悲痛な叫び声を上げるー。

「ーーーーへへへへー…
 早く、死なせてほしいな♡」

愛奈の口調を真似るような形でそう言葉を口にする愛奈ー。

血が流れるのもお構いなしに、もう一度包丁を拾おうとする愛奈に対し
「やめろって!」と、包丁を取り上げて、愛奈から離れた方向に
投げつけるー。

「ーーーあ~~……」
ニヤニヤしていた愛奈が不愉快そうに髪を掻きむしると、
「ー邪魔だなー…いい加減にしろよ」と、
そう言葉を口にしながら、包丁の方に向かって走り出すー。

優斗は愛奈を取り押さえるー。

「ーーやめろって…!愛奈の身体で勝手なことをするのは
 許さないぞー!」

優斗がそう叫ぶー。

幸い、相手は”愛奈”の身体だー。
中身の男が、屈強な男なのか、それとも貧弱そうな男なのかは
知らないが、愛奈は運動が得意な方ではなく、
身体つきも華奢な感じであるためー、
優斗の力で、愛奈の動きを押さえることは十分に可能だったー。

「ーーだ、大体…!
 ひ、憑依って、幽霊みたいなやつだろ!?
 愛奈の身体で自殺したって、お前が死ねるとは限らないだろ!?」

優斗がそう叫ぶと、
愛奈はニヤニヤしながら「大丈夫ー。憑依したまま死ねば、中身も死ぬから」と、
笑みを浮かべながら言うー。

”身体”が死んでも、中身は死なずに
また次の身体に移動できるー…

”憑依”には、そんなイメージが優斗の中にはあったー。
昔見た映画だか、漫画だか忘れてしまったけれど、
”憑依した人間”が死んでも中身は死なない敵が出て来るような作品を
見たことがあるー。

が、少なくとも今、愛奈に憑依している男の”憑依”は、
”憑依したまま死ぬ”と、中の人も一緒に死ぬタイプのようだー。

「ーー僕さー、もう生きてても意味ないんだー。
 だから、早く離してくれよ」

優斗に取り押さえられた状態の愛奈が笑みを浮かべながら言うー。

「ーーー…ふ、ふざけんな…!
 お前はそうでも、愛奈はまだ死にたいなんて思ってないんだ!」

優斗が声を荒げるー。

それでも、愛奈に憑依している男に言葉は届かないー。

「たとえそうだとしても、一人で死ぬより、なんかこの方が
 面白いかなってー」

愛奈に憑依している男は言うー。

”犯罪者”として死ぬつもりはないー、と。
だから、事件を起こすようなことはしなかったのだとー。

しかし”憑依”なら、”愛奈に憑依した男”自身は、犯罪者には
ならずに、他人を道連れにして、死ぬことができるー。
だから、憑依を選んだのだとー。

「ーー”憑依”なら、この女が”自殺”したってことになって
 世間では終わりだからねー。
 ふふー…だから僕は、”憑依”で誰かを道連れにして
 死のうと思ったんだー

 で、”一緒に死んでくれる人”を探して、
 憑依薬を飲んだ後、霊のような状態になって
 彷徨ってたところー、この可愛い子を見つけたってわけさ!」

愛奈は取り押さえられながら、そう言葉を口にすると、
「ーー生涯独身で、恋愛経験もなくて、キモいって言われ続けた僕のような
 男がー、こんな可愛い子と一緒に死ねるなんて、最高だろ?」
と、言葉を続けたー。

「ーーーふざけるな…!絶対にそんなことはさせないー。
 お前が愛奈から出て行くまで、俺はずっとこうして
 愛奈の身体を押さえてるからな!」

優斗がそう叫ぶー。

「はははー…いつまでもつかな?
 お前だって、トイレに行きたくなるだろうし、
 このままじゃご飯も食べられないー。

 お前は大学生だろ?
 大学にも行けなくなってしまうー。

 ずっと、こんな風に僕を取り押さえておくことなんて、無理さ」

愛奈の言葉に、優斗は「それでも、俺はお前を自殺させない!」と、
怒りの形相で叫ぶー。

「大学は何日休んだって構わないし、
 トイレだっていくらでも我慢してやる!!!
 お前が愛奈が出てくまで、俺は永遠にお前を自由にさせない!!」

怒りの形相でそう叫ぶ優斗ー。
その気迫に、愛奈はほんの少しだけ気圧されたような雰囲気を見せながらも
ククク…と、笑うー。

「無理だねー。
 考えてもみなよー。
 ”ずっと寝ないで”この子の身体を押さえることなんかできやしないー。

 手錠でも家の中にあれば別だけどー、
 ないだろ? ふふー」

愛奈のそんな言葉に、優斗は、
”何か…何か手はないのかー”と、そう思いながら、
少し離れた場所にあるスマホを見つめるー。

「ーーーー…」
”誰か”に力を貸してもらえば、交代制で”愛奈”を見張ることができるー。
愛奈に憑依したこの男が、愛奈の身体で自殺してしまわないようにー、
愛奈を交代制で見張ることができればー…

「ーーー…」
優斗は、力を貸してくれそうな人を、頭の中で思い浮かべるー。

自分自身の友人ー、愛奈の友人、愛奈の家族ー…
助けてくれそうな人間はそれなりにいるー。

”憑依”などというこの状況を信じてもらえるかどうかは
別問題だがー、どうにかして、協力者を増やすことができればー…

そして、愛奈を見張りながら、
なんとか”憑依”という恐るべき状況から愛奈を解放することができれば、
愛奈を死なせずに済むかもしれないー。

そう思いながら、スマホを手にしようとするー

がーー
愛奈から少し離れた隙に、愛奈は玄関の方に向かって
逃げ始めるー。

「ーおい!!!」
優斗は叫ぶー。

「ーーははは!僕は絶対に死ぬぞ!この子と一緒に!」
愛奈が嬉しそうに笑いながらそう言い返してくるー。

「ーーま、まてっ!おいっ!」
誰かに協力をお願いすることもできないまま、
優斗が何とか愛奈に追い付いて、愛奈の腕を掴むと、
「絶対、愛奈を死なせたりしない」と、
必死にそう言葉を口にするー。

「ーー…ホント、邪魔だなぁ」
愛奈は、優斗の手を振りほどこうとしながらも、
”愛奈の力”では、優斗の手を振りほどけないことを
改めて悟ると、にやりと笑みを浮かべたー。

「ーーーーそうだー…ふふ」
愛奈の邪悪な笑みー。

その笑みを見て、咄嗟にイヤな予感を覚える優斗ー。
愛奈が何を仕掛けて来るのかは分からなかったが、
何かを思いついた顔だー。

そう思っているとー、突然ー

「ーーぐぉっ!?!?」
優斗は、苦しそうな声を上げるー。

「ーーえへへへー
 邪魔するからこうなるんだよー」

愛奈はー、
優斗の”急所”を蹴りつけると、
苦しむ優斗を見つめながら、ニヤニヤとそんな言葉を口にしたー。

耐えがたい激痛に蹲る優斗ー。
それでも、その痛みを押さえて、必死に立ち上がろうとするー。

「ーーあははは!わたし、自殺しま~す♡」
玄関までたどり着いた愛奈は嬉しそうにそう叫ぶと、
そのまま家から飛び出してしまうー。

「ーーー…ま、愛奈!」
激痛に耐えながら、優斗は必死に自分の身体を
突き動かすー。

”ふ…ふざけんなー…このままじゃ愛奈が殺されるー
 動け…俺の身体ー”

痛みなどに苦しんでいる場合ではないー。
このままだと、愛奈が本当に”自殺”させられてしまうー。

「ーー愛奈!おいっ!」
優斗は、家から飛び出して愛奈を追いかけながら叫ぶー。

”足”は優斗の方が早いー。
愛奈は運動は苦手な方で、走るのもそんなに早くないー。

それは、”愛奈の身体”の持ち主が変わろうとも、
変わりないはずだー。

優斗は、何とか愛奈を止める方法はないか、
頭をフル回転させながら考えるー。

「ーーーー!」

”そうだ”と、あることを思いつく優斗ー。
とにかく、できることは何でもしないといけないー。

「お、おいっ!
 せ、せっかく愛奈の身体に憑依したんだから、
 そんなに死に急ぐなって!
 愛奈の身体で色々してみようとか、思わないのか!」

優斗はそう叫んだー

もちろん、そんなことさせたくはないし、
愛奈の身体で好き放題するなんて許せないー。

けれど、それでも”自殺”されるよりマシだー。

愛奈の意思じゃないのに自殺させられるー
なんてことになれば、愛奈本人にとっても、
優斗にとっても最悪の結末でしかないー。

さっきー、”憑依された愛奈”の振る舞いに
少しドキッとしてしまった自分の感情を思い起こしながら、
”愛奈に憑依した男も、こう言えば自殺を思いとどまるかもしれない”と、
そう思ったのだー。

そうして、時間を稼ぐうちに打開策をー…

「ーー僕、女にも男にも興味ないんだ!
 残念だったね!」

愛奈が笑いながら言い返してくるー。

「まぁ、せっかくだから揉むぐらいはしておこうかー」
走りながら自分の胸を嬉しそうに揉む愛奈ー

「くそっ…!ダメだこいつー…絶対に死ぬ気だー…」

大通りが近付いているー。
優斗は青ざめながら咄嗟に叫んだー

「ーーだ、誰か!その女を捕まえて下さい!
 俺の財布が!」

とー。

「ーーー」
前を走っている愛奈は振り返ると、少し驚いた表情を浮かべるー。

当然、財布を盗られたなどというのは嘘だー。
しかし、この際、なんでもいいー
とにかく、愛奈の動きを止めたいー。

どんな手段を使ってでもー。

がーー

「ーきゃ~~~~~~~~~~~~~~~!」
愛奈が突然叫んだー。

「ー痴漢がわたしを追いかけてきますぅ~!助けて下さい~!」
とー。

「ーーー!!!」
優斗の”財布を盗まれた!”という言葉は
愛奈の悲鳴によって”上書き”されー、愛奈の言葉を信じた
周囲の通行人が、優斗を取り押さえようとするー

「おいっ!違うんだ!どいてください!
 このままだと、愛奈が!」

通行人に取り押さえられた優斗のほうを振り返りながら
愛奈はニヤッと笑うー。

そのまま走り去っていく愛奈ー
通行人に取り押さえられた優斗は、怒りの叫び声を
上げることしかできなかったー…

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!☆

無事に救出できるエンドか、
それとも失敗か…

それは、明日のお楽しみデス~!!

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