<皮>着て、脱ぐ②~恐怖の果て~(完)

とある事情で大罪を犯した彼氏を庇うため、
口を閉ざす彼女。

しかし、そんな彼女を見かねた警察は
”人を皮にする力”を持つ闇の尋問人に、尋問を依頼したー。

”人を皮にする力”を持つ彼を前に、彼女はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さぁ、井嶋良一の居場所を言いなさい」
闇の尋問人を名乗る男が、そう言い放つー。

口調には穏やかな雰囲気も見え隠れしているものの、
その表情はずっと無表情のままだー。

”良一…”
梨穂は、表情を歪める。

もちろん、良一が罪を犯した、ということは理解している。
どのような理由であっても、人殺しが正当化されることは、基本的にはない。

正当防衛などというものも、ありはするけれど
良一の場合は10人以上の命を奪っているし、
”報復”されないようにと、事務員ら、”無抵抗”の人間の
命も奪ってしまったー。

ナイトメアファイナンスが”悪党”であったのは事実だし、
数々の罪を犯していた会社であるのも事実ではある。
けれど、良一の罪は免れないのも、梨穂は理解しているー。

”けどー…言えないー。
 良一は、わたしのせいでー…わたしのためにー”

良一が仮に、通行人の命を意味もなく奪ったりしたのであれば
梨穂は隠したりはしないし、
知っていることを全て警察に話すー。

けれど、今回の場合はー、
良一のしたことは”罪”であると理解していながら
理解しているからこそ、”わたしのために悪党を葬った”
良一の居場所を言うことは、梨穂にはできなかったー。

「言わないかー。ならば仕方がないー」
闇の尋問人は、梨穂に手をかざすと、
梨穂はまた、言葉では言い表しがたい苦痛を感じながら、
皮になっていくー。

「ーーーククク」
梨穂を着た闇の尋問人は、梨穂の姿で偉そうに足を組んで
イスに座ると、
「ーどうだ?いつもの自分と違う、自分の姿はー?
 雰囲気が違うだけでも、別のように見えるだろうー?」
と、梨穂の口からそんな言葉が吐き出されるー。

”自分が勝手に喋り、勝手に動いているー”

そんな、恐ろしい光景を前に、梨穂の意識は、
その現実から目を逸らそうとするー。

「ーー福山さんー。
 今は”あえて”君の意識を残している状態だが、
 意識ごと完全に乗っ取って、身体を支配することもできるー」

梨穂の身体で闇の尋問人は、髪を指でイヤらしく触りながら
笑みを浮かべるー

「つまり、今、俺が福山さん、君の身体を完全に支配して
 何十年もそのまま乗っ取り続けることもできるー。 
 意識の飛んだ君は、気付いたら50歳、60歳になっているかもしれないー。
 いいや、あるいは病院のベッドの上で
 死を待つだけのおばあさんになってるかもしれないー。

 それでも、いいのかな?」

梨穂がニヤニヤしながら、そう言い放つー

梨穂の意識は、激しく動揺して
悲鳴を上げるー。

だが、皮にしている状態の時は、梨穂の声は、
闇の尋問人には届いていないらしく、
闇の尋問人は反応を示さず、そのまま言葉を続けるー。

「ーーー気付いたら、死の直前ーー
 なんてこともあるかもしれない。
 そうはなりたくないだろう?
 井嶋良一は、どこにいるのか、知っているのであれば
 言いなさい」

闇の尋問人は、そこまで言うと、梨穂の皮を再び
脱いだー。

”後頭部”から開かれるときの感触は、
とても気持ち悪くー、そして苦痛ー。

「ーふむ…”身体を開かれる”瞬間は心地わるいか?」
その反応に気付いた闇の尋問人は、無表情のままそう言うと、
梨穂を人間の状態に戻したー

「ー井嶋良一はどこだ?」
闇の尋問人の言葉に、なおも梨穂は「知りません」と、
言葉を口にして、抵抗するー

闇の尋問人が手を光らせて、
梨穂の後頭部を再び”開く”と、梨穂が苦しそうなうめき声を上げるー。

またすぐに人間に戻し、
「井嶋良一はどこだ?」と、同じ言葉を繰り返すー

「ーはぁ…はぁ…はぁ…」
梨穂が苦しそうに闇の尋問人のほうを見つめると、
闇の尋問人は再び、梨穂を”皮”にするー

「あ… ぁ… ぁ…」
後頭部のあたりを引き裂かれるような”イヤ”な感覚ー
痛いー…ということではないけれど、
とにかく今まで感じたことのないような”気持ち悪い”感触ー。

闇の尋問人は、また梨穂を元に戻すと、
「井嶋良一はどこだ?」と、言葉を口にするー。

”ーーーーーーー”
そんな様子をこっそりと見ていた、梨穂の取り調べを行っていた
強面の刑事・郷山は表情を歪めるー

「ーーーーあれじゃまるで拷問じゃないか」
静かにそう呟いた郷山の表情には嫌悪の色が浮かんでいるー。

そんな中、闇の尋問人は、今度は梨穂の身体を再び乗っ取ると、
「ーー仕方がないな」と、呟きながら、
突然、部屋に予め用意していたカメラのようなものを
部屋の隅に設置すると、不気味な笑みを浮かべるー。

「ー言う気がないのであれば、
 君の身体を使って、お前の彼氏をおびき寄せるしかないー」

梨穂がニヤッと笑いながら、そう呟くー

”ーーど、どういうこと!?”
乗っ取られて封じられている状態の梨穂の意識が聞き返すー。

しかし、乗っ取られている最中の、梨穂の意識の言葉は
聞こえないのか、やはり反応を見せず、
闇の尋問人は、梨穂の身体で言葉を続けるー。

「ーーこれから、自首を呼びかける動画を配信するー
 まぁ、内容は普通の動画だが、
 もちろん、君の顔は全世界に晒されることになるし、
 君が逃亡中の殺人犯だということも、全世界に晒されることになるー

 だがー、彼女から呼びかけられれば、
 君の彼氏も、観念して自首するかもしれないー」

梨穂はそう言うと、
さらに言葉を続けるー。

”お、お願い…!やめて!”
梨穂の意識は震えながらそう叫ぶー。

やがて、また気持ちの悪い感覚がして、
脱ぎ捨てられた梨穂は、人間の姿に戻されるー

闇の尋問人は、皮を着ている時以外は何故か無表情ー。
表情なく、そのまま梨穂に近付いてくると、
冷たく言葉を口にする。

「ーー…君が答えないというのであればー、
 君を乗っ取って、君の実家の両親を拷問するー。

 娘に拷問される両親ー…
 素晴らしい光景だとは思わないか?」

闇の尋問人はそれだけ言うと、
「ーーーどうする?井嶋良一の場所を言うつもりにはなったか?」
と、言葉を続けるー。

梨穂は震えながらも、それでも口を閉ざしたー。

すると、闇の尋問人は、黙って梨穂を皮にしてー、
その場で、カメラを作動させ、梨穂の姿で良一に自首を促す動画を
投稿したー。

それだけではないー
梨穂の身体で、嬉しそうに妖艶な笑みを浮かべながら
服を脱ぎ始めー、
事前に用意していた紙袋から、過激なボンテージを取り出すと、
それを身に着けてカメラの前で微笑んだー

「ー君は、自分のこういう姿を見たことはあるか?」
梨穂の身体で、闇の尋問人がそう呟くー。

”梨穂からの返事”は聞こえないが、
梨穂の意識には言葉が聞こえていることは
理解している闇の尋問人は、さらに言葉を続けたー。

「ーー君みたいな美人がこんな格好をして、
 セクシーなポーズでも決めれば、
 世の男どもの中には喜ぶやつもいるだろうなー?

 答えないのであれば、君は嬉しそうにこの姿を
 全世界に晒すことになるー」

梨穂はそこまで言うと、再び”脱がれて”
人間の姿に戻されたー。

ガクガクと震えながら青ざめる梨穂ー。

「ー言えばいいんだ。言えば。」
闇の尋問人は優しい口調でそう言うと、
梨穂を見つめながら
「井嶋良一はどこだ?」と言葉を口にしたー。

梨穂は、自分の口から、良一のことを言いそうになってしまうー。
けれどー、それでも、それでも梨穂は耐えたー。

闇の尋問人は無表情のまま数度頷くと、
「ー仕方がない。こうなったら”自力”で探すしかないな」
と、梨穂を睨むー。

「君の身体で、事件を起こしまくれば、
 君を愛してるであろう彼氏は必ず釣れるー

 そうだなー
 他の男とヤリまくってる姿を、SNSに上げるのもいいかもしれないなー
 井嶋良一はどんな顔をするかー…
 実に楽しみだー。」

「ーーーーー!!!」
梨穂は今にも泣きだしそうな表情を浮かべるー

「ーーー…君を着れば、君の身体で俺は何でもできるー。
 散々分かったはずだー。
 …さぁ、これが最後だ。
 井嶋良一の場所を言いなさい」

梨穂は震えるー。

「ーー言わなければー、君の彼氏は死ぬー。
 君の身体でおびき寄せて、君の身体で井嶋良一を殺すー」

闇の尋問人の、今までで一番恐ろしい声ー。

「ーそして、君の家族も友達も君の身体で一人残らず殺すー。」
闇の尋問人にそう言われた梨穂は、ガクガクと震えるー。

「ーーそ、そんなことー… 
 な、なんでわたしが、こんな目にー」
梨穂は、震えるー。

他に凶悪犯なんていくらでもいるはずー。
なのになぜ、梨穂に対して”闇の尋問人”などという人間が
送られてくるのだろうかー。

そう思っていると、闇の尋問人は少しだけ笑みを浮かべたー…
ように見えたー。

「君が運が悪かったー」
小声で囁く闇の尋問人ー。

「ーあのナイトメアファイナンスにいた谷田という男は
 ”お偉いさん”の息子でねー。
 その人が激怒しているんだー。
 だから、こうして”闇の尋問人”である俺が送り込まれたー。
 本来、俺はもっともっとヤバいやつらの尋問を行う担当なのだがなー」

その言葉に、梨穂は絶望したー。
井嶋良一の場所を、”闇の尋問人”などという人間まで使って
吐き出させようとするのは、良一が殺した中に、
”偉い人の息子”が含まれていたからー。

つまり、”何がどうあっても”井嶋良一を見つけ出し、
そして、大きな罰を与えたいのだろうー。

「ーーまぁ、同情するよー。」
闇の尋問人はそこまで言うと、さらに小声で言葉を続けたー。

「ーー俺も仕事だー。君に”井嶋良一”の居場所を言わせなければならないー。
 
 がーー、
 ”事情”は調べたー。
 悪いようにはしないー。

 俺も、偉い奴の息子だから特別扱いーみたいのは嫌いだからなー」

闇の尋問人はそれだけ言うと、
「ーさぁ、言いなさいー」と、再び元の振る舞いに戻って呟いたー。

”良一の居場所を言うー”
それが最良の選択ー。

そう思いつつ、恐怖に既に押しつぶされかけていた梨穂は、
全ての知っていることを吐き出したー。

良一はあの山奥で身を隠すとも言っていたー。
そのことを闇の尋問人に伝えると、
闇の尋問人は「ありがとう」と、だけ呟いて
地下室の外へと姿を消したー。

ーーーが…

”井嶋良一”は、既に死亡していたー。

警察と共に訪れた良一の潜伏場所で、
良一は自ら命を絶っていたー。

”ーーこんな方法でしか、梨穂を守れなくてごめんー。”
そう書かれた遺書と、
”ー全ては俺が梨穂を守るためにやったこと。
 梨穂に罪はない”と、そう書かれたメモが置かれていたー。

そんな良一の遺体の前で、梨穂は泣き崩れるー。

「ーーーー」
警察官の郷山も、少しだけ梨穂に同情するような様子を
見つめながら、面倒臭そうに舌打ちをするのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーな、なんだ君は!?」
梨穂に付きまとっていた谷田宗吉の”父親”は、
とある大企業の会長…。

政治家とも繋がりが深く、闇金融に勤務していたダメ息子とは言え、
殺されたことに激高ー、
それが、梨穂に対して闇の尋問人を放つことに繋がったー。

がー、今ー…

「ーーー闇の尋問人」
闇の尋問人は、谷田会長に向かってそう言い放つー。

すると、谷田会長は表情を歪めるー。

「あぁ、あぁ、君がそうなのかー。
 あの女の尋問はご苦労だったな」
谷田会長がそう言うと、闇の尋問人は無表情のまま言い放ったー

「ーーお前を皮にしにきたー」
とー。

「ーーえ」
谷田会長は表情を歪めるー。

「ーーな、な、な、なぜだ!?だ、誰から依頼を受けた!?
 わ、私は尋問されるようなことは何もー!?」

偉そうな雰囲気が急に消え失せ、怯えた表情を浮かべる谷田会長ー。

「ーーーこれは仕事ではない。プライベートだ」
闇の尋問人は、そう言い放つと、谷田会長をそのまま”皮”にして
葬り去ったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー

彼氏を失い、絶望していた梨穂は、
ニュースで”谷田会長”が失踪したことを知ったー。

”谷田”の名には覚えがあるー。
ストーカーだった男と同じ名前。

つまり、闇の尋問人が言っていた”偉い人”のことなのだろうー。

”事情は調べたー。
悪いようにはしないー”

そんな、闇の尋問人の言葉を思い出す梨穂ー。

尋問で受けた心の傷は消えないし、闇の尋問人と名乗るあの男は嫌いだし、怖いー。
良一が死んでしまったショックも、何もかも消えないー。

梨穂が、絶望の淵にいることは変わらないー。

けれどー…
ほんの、ほんの少しだけ、
自分の中の何かが救われたような、そんな気がしたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ダークな皮モノでした~!

皮にされるときにイヤな感触がする…
もし、本当にそうだったら、あまりされたくないですネ~笑

お読み下さりありがとうございました~!★

※今まで、毎週土曜日が”予約投稿”での更新でしたが、
 私の仕事のスケジュールの変更により、
 土曜日⇒火曜日に変更になりました~!
 今後、土曜日は通常の更新、火曜日は予約投稿での更新になります~!
(※更新があることには変わりないので、あまり皆様に影響はありませんが、
  一応お知らせでした~!)

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皮<着て、脱ぐ>

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