<皮>着て、脱ぐ①~尋問~

大きな罪を犯した彼氏ー。

そんな彼氏を庇おうと、口を閉ざす彼女ー。

だが、そんな彼女の前に
”闇の尋問人”の異名を持つ男が、姿を現した…。

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福山 梨穂(ふくやま りほ)ー。
彼女は、口を閉ざしていたー。

「ーー福山さんー。
 あなたは、井嶋(いじま)の居場所を知っているー
 違いますか?」

警察官の男が、困惑したような表情で
そう言葉を口にするも、
やはり梨穂は口を閉ざしたままー。

井嶋とは、梨穂の彼氏である
井嶋 良一(いじま りょういち)のことだー。
彼女は、良一の居場所を知っているー。
何故なら、昨日まで同棲していたし、
良一がどこに行ったのかも知っている。

しかし、梨穂は警察にその居場所を教えるつもりは
”全く”と言っていいほどなかったー。

良一は、10人以上の人間を昨夜、殺害した。
大罪を犯した凶悪犯…
世間からはそう言われるだろうし、
梨穂自身も、良一が罪を犯したという事実は
当然、理解することは出来ている。

けれど、それでも良一の居場所を言うわけにはいかなかったー。

「ーー俺が代わろう」
今まで取り調べをしていた若手の男性刑事に変わり、
強面の中年男性の刑事がやって来るー。

昔の刑事ドラマにでも出て来そうな感じの、
そんな見た目の刑事だ。

「ーーお嬢さん、井嶋良一は12名の人間の命を奪ったー。
 あんたは、その行先ー、
 いや、行先までは知らなくても”なにか”は知ってるはずだー。
 このまま放置しておけば、やつはまた罪を重ねる可能性がある。

 ”好きな人”を売るのは辛い気持ちも分かるがー、
 ここは、知ってることを教えてくれないかー?

 なぁ?それが、これ以上犠牲者が出ないようにすることにもつながるし、
 お嬢さんの大事な井嶋良一がこれ以上罪を犯さないように
 することにもつながるしー、
 お嬢さん、あんたの身のためにもなるー」

年配の強面刑事・郷山(ごうやま)が、そう言い放つと、
梨穂は少しだけ表情を歪めるー。

このまま黙っていればー、
自分も共犯として罪に問われる可能性は十分にあるー。
いや、むしろー…

でもー…それでも、梨穂は口を開くわけにはいかなかったー。

だってー
良一は、”梨穂のため”に、その罪を犯したのだからー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

梨穂は、少し前から”あること”に悩んでいたー。

大学に通いながら
バイトに明け暮れる梨穂ー。

だが、ある日、梨穂がバイトをしている飲食店に
”そいつ”はやってきたー。

その日、客としてお店にやってきた金髪の男、
谷田 宗吉(たにた そうきち)は、
梨穂に一目ぼれをし、梨穂にアプローチを掛けて来るようになったのだー。

当然、梨穂はその男の申し出を断った。
梨穂には、良一がいるし、浮気をするようなつもりは、毛頭ないー。

だが、宗吉はその後、梨穂につきまとうようになり、
彼氏の良一にそのことを相談ー。
梨穂のバイト先である飲食店に、客として待機をし、
宗吉が姿を現すのを待って、良一はその男、谷田宗吉にこれ以上、
”梨穂”に付きまとわないように警告したー。

しかしー、それで事態は終わらなかったー。

谷田宗吉は、闇金融・ナイトメアファイナンスの社員で、
その会社を後ろ盾に、さらに梨穂や良一に対する
付きまとい行為をエスカレートさせたのだー。

やがてー、良一は
”社長と直接話を付ける必要がある”と、
ナイトメアファイナンスの本社を突き止めー、
話し合いのためにその事務所に乗り込む決意をしたー。

一人で行く、という良一に対し、無理を言って
梨穂も一緒に同行すると、
梨穂と良一は、ナイトメアファイナンスの、
その事務所に乗り込んだー。

それが、昨日のことだー。

だがー、ナイトメアファイナンスの社長、
大徳寺(だいとくじ)との話し合いは決裂したー。

ナイトメアファイナンスは
”違法行為”も、日常的に繰り返している危険な闇金融ー。

どうやら”銃”まで所持していた様子で
銃を手に、”脅迫”してきたのだー。

がー…、良一はそんな状況を前に、
”梨穂を守らないとー”ということで頭がいっぱいになりー、
自分の横にいた男からナイフを奪い取り、
ナイトメアファイナンスの社長・大徳寺を襲撃ー、
大徳寺から奪った銃で、その場にいた、大徳寺を含む8人を
全員射殺すると、
さらには、事務所の休憩室にいた男一人と女性事務員一人を
射殺ー、
トイレにいた男一人と、受付の女性を含む、
ナイトメアファイナンス本社にいた人間の命を”全て”奪ったのだー。

一人でも生かしておけば、梨穂が狙われるー。
そう思い、良一は”全員”を抹殺したのだったー。

そしてー

「ーー梨穂は今日のことは無関係だー。
 全部、俺が背負うー」

良一は、少し離れた山中で、梨穂を車から降ろすと、
そんな言葉を口にしたー。

「ーーで、でもー」
戸惑いながらそう言葉を口にする梨穂ー。

「あの会社にはカメラはなかったー
 多分、あくどいことばかりしてたから、
 自分たちの悪事が記録されることを恐れてたんだろー

 だから、ここで降りれば、梨穂は無関係だー。
 大丈夫ー」

良一はそれだけ言うと、
悲しそうに表情を浮かべる梨穂に対して、
「ー梨穂は、汚れちゃいけない」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーり…良一は、どうするの…?」
涙目でそう言うと、
良一は「俺は身を隠すよー12人も命を奪っちゃったしー
もう、俺は…」と、言葉を口にすると、

”その場所”を梨穂に対して言い放ったー。
梨穂は表情を歪めて、目に涙を浮かべるー。

「ー梨穂…ごめんなー。
 でも、梨穂を守ることができてよかったー。」

良一はそれだけ言うと、泣いている梨穂を見つめながら
その頭を優しく撫でたー

「本当に、ごめんー。
 もっと俺が上手く立ち回れる彼氏だったら
 こんなことにならず、
 梨穂に付きまとう男も撃退できたかもしれないのにー
 
 でも、もう、こうするしかなかったー」

そんな言葉に、梨穂は首を横に振るー

「わたしのせいだよー…良一は悪くない」
とー。

そう言われた良一は、少しだけ微笑むと
「今までありがとうー。 幸せになー」と、
だけ言い放ち、そのまま車でさらに山奥の道に
向かって走り去ってしまったー。

「ーー良一…」
その場に泣き崩れる梨穂ー。

1時間ぐらいは泣いていただろうかー。
けれど、良一の想いを無駄にすることはできないー、と、
梨穂は涙を拭いて立ち上がり、家へと帰宅した。

そして、翌日の今日ー、
早速良一は指名手配され、
その良一と同棲していた梨穂が、参考人として
警察に連れて来られていたー。

良一自身は、ナイトメアファイナンスから出たあとに
”わざと”自分だけが近場の監視カメラに映るようにして、
梨穂に疑いの目が行く可能性をできる限り下げようと、
そう考えて行動していたー。

その結果、直接的に容疑者となったのは良一のみで、
梨穂はあくまでも参考人として、こうして
警察署にやってきていたー。

「ーーなぁ、いい加減に言えよ。
 俺にも、我慢の限界ってもんがあるぞ?
 井嶋良一はどこにいる? あ?」
年配の刑事・郷山が怒りの形相で言葉を口にするー

気が短いのか
”あえて”怒りを露わにして、梨穂を脅して
良一の居場所を聞き出そうとしているのか、
それは分からないが
いずれにせよ、かなりの威圧感だったー

「ーわたしは、何も知りません」
あくまでも口を閉ざす梨穂。

「ーーっ!」
机をドン!と叩く郷山。

がー、
先程まで梨穂の取り調べをしていた若手の男性刑事が
今一度取り調べ室に入ってくると、郷山に対して、
何やら耳打ちをしたー

「あん?闇の尋問人?」
郷山がそう言うと、若手刑事が頷くー。

一旦二人が部屋の外に出て行くと、
しばらくして、若手の男性刑事が再び入って来たー

別室への移動を促し、案内を始める若手の男性刑事ー

だが、その途中で彼は少し気まずそうな表情を浮かべると、
こんな言葉を口にしたー

「悪いことは言いませんー福山さん。
 本当のことを言った方がいい」

その言葉に、梨穂は困惑しながら
「どういうことですか?」と聞き返すと、
「これから、あなたを取り調べるのは
 ”闇の尋問人”と恐れられている男ですー。
 ………詳しくは知りませんが、とにかく、本当のことを話した方がいいです」と、
彼はそう言葉を口にしたー。

梨穂は忠告にだけ感謝の言葉を口にすると、
地下の取調室の中で待機するように言われ、
そのまま一人になったー。

しばらくすると、再び扉が開きー、
無表情の黒服の男が入って来たー。

さっきまで声を荒げていた年配刑事・郷山も一緒だー。

しかし、無表情の男は言ったー。

「尋問は一人で行う。刑事さんは”外”へー」
とー。

郷山は少し不満そうな表情を見せたものの、
やがてそのまま外に出てくと、
取調室の中には、梨穂と、無表情の男の二人になったー。

「ーー井嶋良一。
 どこにいるか、知ってるなー?
 潔く、答えてほしい。
 でなければ、これから福山さん、
 君は恐ろしい目に遭うことになるー」

無表情のまま、闇の尋問人とやらがそう言うー。

梨穂は恐怖を感じながらも、
それを耐え、口を閉ざすー。

が、すると、闇の尋問人は、梨穂の背後に立ち、
頭に突然手をかざしたー。

「ー!?」
梨穂は、今まで感じたことのない違和感を頭に感じるー

その直後ー
自分の身体が引き裂かれるようなー、
そんな感覚を覚えたー。

一瞬、自分が殺されたかのような感覚に陥る梨穂ー。
しかし、悲鳴を出すこともできず、
やがて、自分が床に倒れ込んだような光景が
目に広がって来たー。

全身に力が入らないー
呼吸もできないー。

そう思ってパニック気味になっていると、
闇の尋問人の声が聞こえて来たー。

そしてー、部屋に用意されていた鏡の前に男が移動するとー、
「福山さんー、これが、今の君だー」と、
闇の尋問人は無表情のまま、そう呟いたー

”ーーーーな、なにこれ!?!?”

鏡に見えたのは、”まるで着ぐるみ”のようにペラペラになった
自分の姿ー。

引き裂かれたような感触は、皮にされた時に生じたものー。
力が入らず、声が出ないのも、この状態であれば頷けるー。

梨穂がパニックになっていると、
闇の尋問人は、そのまま梨穂の皮を整えー、
言葉を口にしたー

「今から、俺が君を着るー。」
とー。

”ーー!?!??!?!?”
相変わらず無表情な闇の尋問人の言葉に、
梨穂は困惑するー。

”着る”とは、どういう意味なのだろうかー。

そんな風に思っていると、闇の尋問人は、
皮になった梨穂を、鏡の前で
まるで”着ぐるみ”を身に着けるかのようにして
着こみ始めた。

みるみると、”着られていく”梨穂ー。
意識はハッキリとしていて、闇の尋問人なる男が、
梨穂の姿になっていくのが、鏡を通じてハッキリと見えたー

そして、完全に”梨穂”を着た闇の尋問人は、
まさに梨穂そのものになったー。

だがー、身体の自由は相変わらず効かないー

”ど、どうなってー…?”
梨穂が、心の中でそんな言葉を吐き出すも、
それも届いていないのか、
”梨穂を着た闇の尋問人”からは、返事は返って来ないー。

”ーーー!!!!!!!!!”
そんな中、梨穂は信じられない光景を見たー。

鏡の前に立つ梨穂が、邪悪な笑みを浮かべたのだー。
梨穂本人の意識とは、まるで関係なしにー。

”え…”
梨穂は、心の中で青ざめるー。

「ーー君を着たー。
 君の身体は今、俺が自由自在に動かすことができるー」

梨穂が、突然、そんな言葉を口にし始めたー。
もちろん、梨穂の意思ではないー。
闇の尋問人とやらが、梨穂の身体で喋っているー。

そんな光景を前に、梨穂の意識は激しく動揺するー。

「こうして、胸を揉むのもー
 スカートをめくるのもー、
 ガキみたいにジャンプするのもー、
 全て俺の自由だー。

 この身体で犯罪をすることもできるし、
 男とヤリまくって、彼氏を裏切ることもできるー。

 どうだー?
 恐ろしいだろう?」

鏡の映る梨穂が邪悪な笑みを浮かべるー。

そんな言葉に、
梨穂本人は、心の中で悲鳴を上げるとー、
次の瞬間、また”引き裂かれる”ような
気持ち悪い感触がしたー。

闇の尋問人が、梨穂を脱いだのだー。

梨穂を脱ぎ終えると、闇の尋問人は、梨穂に手をかざして
梨穂を人間に戻すー。

相変わらず無表情のまま、闇の尋問人は、口を開くー。

「ーさっき言ったようなことが現実になって欲しくはないだろう?
 さぁ、井嶋良一の場所を言いなさい」

”闇の尋問”ー
梨穂は、そんな恐ろしいことを前に、
身体を震わせながら、静かに口を開いたー…。

②へ続く

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コメント

人を皮にする力を使った尋問…
とっても恐ろしいですネ~!

続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~~!

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皮<着て、脱ぐ>

コメント