<憑依>憑依闘技場①~邪悪なる地~

”憑依闘技場”

そこは、憑依して乗っ取った身体で
容赦ない戦いを繰り広げる危険な闘技場ー。

そこでは、今日も身体を乗っ取られた人々が
自分の意思とは関係なく、過激な戦いを繰り広げていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーんふふふふふふふ… 俺の勝ちかなぁ?」

闘技場ー。
そこでは、セーラー服姿の女子高生と、大人しそうな雰囲気の女子大生が
戦いを繰り広げていたー

「ーーくそっ!使えねぇ身体だぜ」
眼鏡をかけた女子大生の方は、既に割れている眼鏡を乱暴に
投げ捨てると、そのままナイフを手に、女子高生の方に襲い掛かっていくー

「ーへへへへー
 制服姿で攻撃を避けるのー、ゾクゾクするぜー」
嬉しそうに笑いながら、ナイフを避けていく女子高生ー

髪が揺れる様子にも、興奮しながら笑みを浮かべると、
相手のナイフを叩き落とし、
女子大生を蹴り飛ばすー。

「とどめだー」
邪悪な笑みを浮かべながらそう呟くと、
そのまま彼女は、倒れ込んだ女子大生の手を力強く踏みにじっていくー

巻き起こる歓声ー。

二人がバトルを繰り広げている金網で囲まれたリングの外にはー、
大勢の客が集まっているー。

”由美(ゆみ)” VS ”葵(あおい)”
スクリーンにはそう表示されていて、
バトルを繰り広げている女子高生と女子大生の顔写真が
そこに表示されているー。

「ーーふへへへへ いいぞ!殺れ!とどめを刺せ!」
「ー負けるな~!葵ちゃん!」

歓声が上がるその中で、女子高生・由美は笑うー。

「ー可愛い身体で、可愛い子をいたぶるー
 それが、俺の至福の時間だー」
下品な笑みを浮かべながら涎を垂らす由美ー。

表情を歪める葵ー。

彼女たちは、元々”こんなヤバい子”たちではないー。

女子大生の葵は、見た目通り真面目で物静かな子だったしー、
女子高生の由美は、明るく気配りのできる優しい子だったー。

しかしー、二人は今”憑依”されているー。

ここは”憑依闘技場”ー。
裏社会の人間たちが運営する危険な闘技場で、
”憑依”により、乗っ取った身体で戦う恐るべき闘技場ー。

由美も、葵も、この憑依闘技場に登録している”憑依闘士”の男たちに
憑依されて、自分の意思とは関係なく殺し合いをさせられているのだー。

盛り上がる会場ー

そこに、高校の制服を着た男子が乱入してくるー

「ゆ、由美!?!? な、何をしてんだ!?由美!?」
叫ぶ男子高校生ー。
どうやら、憑依されて戦わせられている女子高生・由美の
彼氏か、あるいは友人か、兄かー…
関係者のようだー。

「ーーーーん~?なんだお前?」
由美は葵を踏みにじりながら、面倒臭そうに、その男子高校生のほうを見つめるー。

男子高校生が何やら叫ぶ中、
由美は嬉しそうに葵の頭を乱暴に足で踏みにじると、
「ーー今いいところなんだからよー。黙ってろよ」と、乱暴な口調で言い放つー

「ゆ…由美…ど、どうしちゃったんだー?」
彼は、由美と連絡がつかなくなったことを心配し、
由美の足取りを追ってここまでたどり着いたー。

ちょうど、”由美”のことが大好きな女友達が、
由美の現在位置を知るためのアプリを勝手に使っていて、
その子の協力を得て、ここにたどり着いたのだー。

その女友達の存在は、厄介な存在でヤバい子だったけれどー、
由美と突然連絡が取れなくなった、という緊急事態においては
思わぬ形で役に立ったー。

「ーーククククー
 こいつの彼氏かー?
 まぁ、登校中に憑依しちまったし、心配するのも当然か」
由美は、そう呟きながらも、
「目の前で彼女が人殺しをするさまが見れるなんてラッキーだな!」と、
笑みを浮かべながら、男子高校生のほうを見て叫んだー。

「ーー彼女!?」
男子高校生が困惑するー。

どうやら”彼氏”ではないのかもしれないー。
由美がそう思いながら、葵にとどめを刺そうとしたその時だったー。

「ーー!?」
由美が、足元に激痛が走ったのを感じて、 葵の方に視線を向けるー

「ーーえへへへ…こんな時のためにもう1本ナイフを持っておいてよかったぁ」
葵がニヤニヤと笑いながら、血のついたナイフを見せ付けるー。

由美が”男子高校生”に気を取られている隙に
葵は隠し持っていたナイフを取り出し、由美の足を切りつけたのだー

「がっ」
あまりの痛みに膝をつく由美ー。
スカートにも血が飛び散っているー。

「ーゆ、由美!や、やめろ!!!」
男子高校生が必死に叫ぶも、
観客たちが「これからいいところなんだからよ!」と、
ブーイングを彼に浴びせて来るー。

「ーー死ね」
葵が、冷たい口調でバランスを崩した由美の首を切りつけると、
信じられないほどの血を噴き出しながら
由美が苦しそうにその場に倒れ込みー、
セーラー服が血に染まっていく。

「ゆ、由美!!!!!!!!!!」
男子高校生が真っ青になって叫ぶー。

だが、倒れ込んだ由美は、首を抑えながら
笑みを浮かべていたー

「くそっ…今回は俺の負けかー…油断したぜ」
明らかに、これから死ぬそんな状況でも、由美は笑っているー

葵は笑みを浮かべながら「ーへへへー。最後まで油断すんなって」と、言い放つと、
由美は「クククー…それにしても、このすぅっと力が抜けて、感じる”死”は…
たまんねぇな」と、弱弱しく呟きー、そして、動かなくなるー。

闘技場の中に大歓声が上がるー。

「ーーーえへへ…わたしの勝ち~♡」
葵が嬉しそうにピースしながら、開いた金網のゲートから
外に出て行くー。

由美の身体からは煙のようなものが抜け出しー、
そのまま、闘技場のスタッフらしき黒服の男たちが
”由美”の身体をまるでゴミのように処分し始めるー。

「おい!何やってんだ!おいっ!」
闘技場のリングの部分まで降りて来た男子高校生が叫ぶー。

が、周囲は彼を完全に無視しているー。

笑いながら息絶えている由美を見て、
彼は激しい怒りを覚えたー。

由美は、”幼馴染”ー。
今でもずっと仲良しで、いつかは付き合えればうれしいー
などと、そんな風にも思っていた間柄ー。

その由美が、こんなー

「ーうああああああああああああああああ!!!」
あまりの光景に、怒り狂った彼は、
葵が最後に使い、そのままリング状に投げ捨てられていたナイフを
手にすると、
リングから立ち去り、笑みを浮かべながら観客たちに手を振っていた
葵に向かって突進したー

「ぐぶっ」
刺された葵が表情を歪めるー。

「ーーーー…由美の…由美の仇だ!」
彼がそう叫ぶと、葵は振り返りながら笑みを浮かべたー

「ーーあぁぁ…この”身体”気に入ってたのにぃ…」
葵は、流れる血を見ながら笑うと、
男子高校生のほうを見て、さらに邪悪な笑みを浮かべたー

「ーー残念だけど、”この身体”も被害者なのになぁ」
と、そう呟きながらー

「そ、そ、それは、どういうー…?」
葵の言葉に、動揺する男子高校生ー

「君の、彼女ー…かな? と同じー…。
 身体を”使われた”被害者ー」

葵はそこまで言葉を口にすると、血を吐き出しながら
その場に倒れ込むー。

「ーゆ、由美は彼女じゃねぇ…!
 って、ていうか、どういうことだ!」
男子高校生がそう叫ぶと、
「ー自分で体験してみなよー」と、葵は笑いながら、
そのまま動かなくなるー。

葵の身体からは、由美のときと同じように
煙のようなものがあふれ出すー。

そしてーー、
その煙が”男子高校生”に入り込んだー

「うっー…」
ビクンと震えて、すぐに笑みを浮かべると、
「ーーへへへ…”マザー”もう1戦、お願いします!」と、闘技場の上の方にある
ガラス張りの部屋の方に向かって叫んだー。

そこに立っていた”マザー”と呼ばれた女は笑みを浮かべると、
「ーーでは、次の試合を組みましょう」と、そう囁いたー。

そして、たった今憑依されてしまった
男子高校生の肇(はじめ)と、既に憑依されて試合待ちだった聡子(さとこ)の
試合が始まったー。

聡子は、”近所のおばさん”という感じの女で、
家に帰る途中に憑依されて、ここで戦わせられているー。

「おばさんが武器を持って戦うーゾクゾクするぜぇ」
聡子に憑依している男はそう言いながら、肇との戦いを
スタートさせるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーここね……」
どこか冷めたようなー、そんな感じを感じさせる女子高生が
”憑依闘技場”の前にやって来るー。

”憑依闘技場”は、当然、一般の人間には知られていないー。
犯罪組織や、荒れくれ者ー、裏社会に集まる人間の一部が知るのみで、
その場所を突き止めることも難しいー。

しかし、この少女ー…角野 咲月(すみの さつき)は、
”憑依闘技場”の場所を突き止め、ここにやってきていたー。

全ては”姉”を救うためー。

半年前ー、咲月の姉である久美(くみ)が突然失踪したー。
当然、両親は警察に捜索願を届け出て、
警察による捜査も行われたー。

だが、久美は見つからなかったー。

それでも、諦めることなく一人、姉の行方を追い求めた咲月は
ついに、その居場所を突き止めた。

それが、”憑依闘技場”。

しかし、警察にそのことを話しても
”憑依闘技場”のことを信じてもらうことはできず、
止むを得ず、咲月は憑依闘技場にいる姉・久美を
自分で救い出す決意をしていたー。

「ーーー…お姉ちゃん…必ずわたしが助けるから」
そう呟きながら、咲月は憑依闘技場の受付の前に立つー。

「ーーー”銀狼”の笹川(ささがわ)だ」
咲月は、受付の前で”あえて”自分の胸を触りながら、
そう言葉を口にするー。

”他人の身体を乗っ取って憑依闘技場に出入りしていて”
かつ、”最近はほとんど憑依闘技場に顔を出していない人物”を
調べ上げて、勝手にその男が所属する組織名と、その名を名乗ったー。

咲月は憑依などされていないー。
が、”憑依されているフリ”をして、憑依闘技場に潜り込もうとしているのだー。

「ー笹川さんー。お久しぶりですー。へへ。今日も可愛い子の身体を
 選びましたねー」

受付の男のそんな言葉に、咲月は嫌悪感を覚えながらも
「だろ?やっぱ女の身体は気持ちいいぜ」と、男のような振る舞いを
しながら、そう言葉を口にするー。

問題なく受付を通過し、中に入り込むとー、
ちょうど”試合”が行われていたー。

「ーーあはははは!じっくり、じっくり、いたぶってあげるー」
女が、”相手”を一方的に痛めつけているー。

実力差があるのか、対戦相手のOL風の女は既にボロボロだー。

「ーーー」
咲月は、最初、気付かなかったー。

だが、闘技場のスクリーンに映し出されている名前を見て、
咲月は表情を歪めるー。

”久美”ー

そう、一方的に相手を傷めつけている方の女はー、
咲月が探し続けた”お姉ちゃん”だったのだー

”お、お姉ちゃんー!”
声を上げそうになりながらも、”憑依されている子”のフリをしている
咲月は、それを心の中で押しとどめるー。

姉・久美のほうを観客席から見つめる咲月ー。
”あまりにも”変わりすぎて、すぐに姉の久美だと気付けなかったー。

やがて、久美は対戦相手の女を笑いながら
拷問し始めるー。

「ーさすが、”拷問女王”だぜ!」
観客の一人が、そう叫ぶー。

”拷問女王ー?お姉ちゃんはそんな人じゃないー
 勝手にそんなことさせないでー”

咲月は心の中で激しい怒りを覚えると、
なんとか”姉・久美”と接触する方法を考え始めるー。

「クククー俺ならアイツを倒せるのにな」
”観客”の横であえて、”憑依された女”のフリをして咲月が
そう言葉を口にすると、
「ーへへー。あんたも参加者か?やめとけやめとけー
 拷問女王の久美さんには、誰も勝てやしないよー」
と、観客があざ笑うかのように言葉を口にするー

「いいや、勝てる」
それでも、勝てると豪語してみせる咲月ー。

そんな咲月を見て、男は興味を持ったのか、
「久美さんは”3連勝”以上した相手の勝負しか受けないー。
 まずは3連勝するんだな」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーーーー」
咲月は表情を歪めるー。

”対戦相手の死”が勝利条件ではないものの、
”身体が死んでも”、憑依者は死なないために降参する人間は少ないー。

事実上、”相手を殺さなければ”勝利することはできないー

がー、

”お姉ちゃんを救うために、ここまで来たんだからー”

咲月は険しい表情で決意を固めると
”憑依闘技場”での戦いに身を投じることを、決めるのだったー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依した身体を、危険な娯楽のために使っている
恐ろしいお話ですネ~!

どんな結末が待っているのか、ぜひ見届けて下さいネ~!
今日もありがとうございました~!

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