<入れ替わり>お前でヨシ!①~適当な男~

後先考えずに適当に入れ替わりまくる
”入れ替わり能力を持つ男”ー

そんな男の適当な入れ替わりが
次々とトラブルを引き起こすー…!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

音を立てながら歩くハイヒール姿の女ー。

仕事中だったOLが、突然、一緒に歩いていた上司を無視して、
一人、歩き始めたー

「ーー三上(みかみ)さん!?ちょっと!?」
上司の男は困惑した様子で、
突然上司を無視して歩き出したOLを追いかけているー。

そして、もう一人ー。

その横にランドセルを背負った男の子が
「ぶ、部長!わたしです!」と、呼びかけているー

あまりにも、おかしな光景ー

ハイヒール姿の女は、一瞬振り返るもー
「この足見てたらさぁ…ちょっとゾクゾクしてきちゃってー へへ」と、
だけ呟いて、そのまま逃げるようにして立ち去っていくー

「ちょっと!わたしの身体!」
ランドセルを背負った少年が叫ぶー

唖然とした部長は、走り去っていく部下のOLの
後ろ姿を見つめながら、
自分の横で、”部長!わたしなんです!と叫ぶ少年のほうを見て
呆然とした表情を浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「へへへへー…!」

OLとランドセルを背負った少年は
”入れ替わって”しまっていたー

上司と一緒に歩いていたOLが突然、上司を無視して
逃げるようにして立ち去ったのはー、
ランドセルを背負った少年が”部長!わたしです!”と叫んでいたのはー
身体を入れ替えられてしまったからだー。

だがー厳密に言えば
”OLと少年”が入れ替わったわけでもないー。

何故ならー
そもそも、ランドセルを背負った少年の”中身”は
入れ替わる前から別人だったからだー。

元々の少年は、その前に別の人間と入れ替えられていて、
今は、”歯科医院の衛生士のお姉さん”の身体になっているー。

「ーーククククー」
女子トイレに駆け込んだOLは自分の美脚をニヤニヤしながら
堪能し始めるー。

「ーうへへへへへへ…この前の”歯医者のお姉さん”より
 いい足してんなぁ…」

さっきまで真面目に仕事をしていたOLとは
思えないぐらいに表情を歪めながら
自分の足を執拗に撫でまわすー。

彼女はーー
いいや、”中身”の彼は、昔から”適当”な男だったー。

”入れ替わり能力”を持つ男ー
田宮 雅文(たみや まさふみ)ー
元々の身体は”とっくの昔”に捨てたー。

最初に隣人のお姉さんと入れ替わったあと、
雅文の身体になったお姉さんが今、どうしているのかを
雅文は知らないー。

自分の身体をどのように使われようが関係なかったし、
自分の身体にも愛着はないし、
自分の身体に戻るつもりもないー。

だからー、雅文は”元自分の身体”が、
最初に入れ替わった相手ー…隣人のお姉さんに今、どう使われているのか、
全く興味がなかったー

それから雅文は何度も何度も、場当たり的な入れ替わりを
繰り返して今に至るー。

当然、一部では騒ぎにもなっているがー、
雅文は頻繁に思いつきで身体を次々と入れ替えるため、
雅文を追跡するのは困難だったー

小さい頃から”場当たり的”に適当に過ごしてきた雅文ー。

小さい頃はよく親にも怒られたし、
学校でも怒られたー

何でもなんでも、その場で”よし!これでいいや!”と、
適当な決断を下してしまうため、
社会人しても上手くいくはずもなくー
社会人1年目の際に、会社に大損害を招くミスをして、
そのままクビになったー

以降、フリーターとして働いていたが、
何度もクビになったり、
あるいは自分から”もうここでバイトするのは飽きた”と、
急に休憩中にバイトを抜け出して
そのまま帰って来ないようなこともあったー。

その日の朝はやる気があっても、
休憩中に弁当を食べている最中に急に
”よし!やめよう!”と思い立ち、
そのまま休憩中でも、バイトをやめてしまうような
そんな適当すぎる男だー。

そんな彼が、入れ替わり能力を手に入れてしまったー。

特にやることもなく、暇している時に
ネットを眺めていて偶然見つけたー
謎の団体の怪しげな”実験”に参加した雅文ー。
”入れ替わり技術の実験”という、なんとも怪しい実験で、
普通であれば参加をためらうような、そんなものだったが、
雅文は”面白そうだな 参加するか”と、即決で参加を決断ー。

”死んだら死んだで、それでよし!”と、
実験に参加ー
結果、”相手と自分を指さすだけ”で、その相手と
入れ替わることができる能力を手に入れてしまったのだー。

それから数か月が経過したのが、現在の状況だー。

入れ替えたOLの身体で、ようやくトイレから出てくると、
ニヤニヤしながらデパートの中を物色するー

”ん?アクセサリー売り場の店員さん、可愛いなぁ”
ニヤニヤしながらOL(雅文)が笑みを浮かべるー

思い立ったら後先考えずに行動するー
それが、彼の行動原理だー。

アクセサリー売り場の方にヒールの音を立てながら
歩いていくと、
「すみません!これ下さい!」と、女性店員を指さしたー

「ーー? 
 どちらでございますか?」

店員が、OL(雅文)の言葉の意味を理解できずに
一度聞き返すー。

だが、そんなものを無視して、OL(雅文)は続けて自分を指さすとー、
そのままOLと店員がビクッと震えてー
雅文は女性店員と入れ替わったー

「え…?あ、あれ…?」
突然の出来事に困惑するOL(女性店員)

今まで、自分がカウンター側に立っていたはずなのに、
急に自分が売り場側に立っている状態に変わったため、
困惑しているー

「ーーーえ???」

さらにーー
”目の前”に、自分がいるー
ニヤニヤしながら、胸を触りー、
ネイルが輝く手をペロペロと舐めている自分がー

「ーーお、お客様ー? え?」
混乱するOLの身体になった女性店員ー

しかし、女性店員になった雅文は笑みを浮かべながら
そのままカウンターから飛び出すと、その場から走り去っていくー

「え…ちょっと!?お客様!? えっ!?」
OLの身体になってしまった女性店員は
訳が分からず、走り去っていく自分の身体とー
新しい自分の身体になったOLの身体を交互に見つめながら、
困惑の表情を浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「えへへへへ…おしゃれな身体ゲットぉ」

”特に手が綺麗だー”
そんなことを思いながら店員(雅文)は
デパートから飛び出してペロペロと自分の手を舐めながら歩くー。

いかにも”店員”という格好をした状態の、
お姉さんが、ニヤニヤしながら自分の手を
ペロペロと舐めまわし、歩いているー。

そんな光景に、周囲は唖然としているものの、
店員(雅文)はお構いなしに
そのまま歩き続けるー。

「ーーーえへへへへ…いい味だなぁ…」
ペロペロと手を舐め続ける店員(雅文)ー

そんな店員(雅文)を、
ようやくOLと入れ替わってしまった女性店員が
事態を飲み込んだのか、
「ちょっと!待ってください!」と、叫びながら
デパートから出て来るー。

店員(雅文)は、それを気に留める様子もなく、
交差点が青信号になったのを確認すると、
”さぁ~て、この後は何をしようかな”と、
ニヤニヤ考えながら歩くー。

雅文の”入れ替わり”には理由がないー。
行き当たりばったりで決めているため、
”入れ替わったあと何をするか”という計画性もほとんどないー

さっきも、アクセサリー売り場の女性店員を見て
”なんかいいな”と思ったー
それだけの理由で入れ替わり、
入れ替わった後に手を舐めること以外は、特に
何の計画もしていなかったー。

「ーーーお!」
交差点を渡っている最中ー
偶然、楽しそうに友達と話をしているツインテールの女子高生を見つけるー

「ーえ~?でも、絵美(えみ)ちゃん、良かったじゃん~!」
ツインテールの子と一緒に歩いている友達の言葉が聞こえてくるー

少し恥ずかしそうに微笑む絵美ー。

何の話をしているのかは知らないがー、
そんなことは、店員(雅文)にとっては
どうでもよかったー

”あの笑顔を俺のものにしたいー”

「ヨシー…次はお前だー」
そう思いながら、
交差点を渡り終えた
絵美のほうを、指さしーーー
続けて自分を指さすー。

するとー
絵美と店員の身体が入れ替わったー。

店員の”中身”は既に女性店員本人ではなく
雅文だー。

雅文と絵美が入れ替わりー
絵美になった雅文がニヤリと笑みを浮かべるー

「んふぅ…久しぶりのツインテールぅ♡」
ニヤニヤしながら絵美(雅文)が自分の髪を触るー。

友達が急におかしな行動を取り始めた
絵美(雅文)を見て
「え…き、急になに…?」と、困惑の表情を浮かべるー

「え……あ…あれ?」
店員の身体になった絵里が戸惑いの表情を浮かべながらー
自分の身体の異変に気付くー

”高校の制服”から、突然”店員っぽい服”に変わっていることに気付きー
「ーーーあ…あれ?」と、再度首をかしげるー。

そういえば、よく見ると手もなんだかー

そう思った直後ーーー
店員(絵里)は、訳が分からないまま強い衝撃を感じて吹き飛ばされたー

「ーきゃあああああ!」
絵里(雅文)と一緒に歩いていた友達が驚きの悲鳴を上げるー

「ん?」
絵里(雅文)が交差点のほうを見ると
”さっきまで自分の身体”だった店員(絵里)が車にはねられていたー

「ーあっちゃぁ…」
ツインテールの頭をボリボリと掻きむしる絵里(雅文)ー

”そういやー、入れ替わる場所、よく考えないと
 こうなるんだよなぁ”

もうすぐ赤信号になる交差点を渡っている最中に
交差点を渡り終えた絵里と入れ替わったー

絵里からすれば”わたしは交差点を渡り終えた”状態ー
女性店員の身体になったあと、すぐに移動すれば
赤信号になる前に交差点を渡ることもできたが、
”渡り終えた”と思っている状況で、身体の様子がおかしくなり、
混乱している状況で、立ち止まってしまった店員(絵里)は
曲がって来た車にはねられてしまったー。

”まぁ、俺が轢かれたわけじゃないしいいか
 俺の身体でもないし”

そう思いながら、絵里(雅文)は、
「いこっ♪」と、友達に声を掛けると、
「え?でもあそこで人がー」と、戸惑う友達に対して
「ー別に、誰か救急車呼ぶでしょ♪」と、適当さを全開にして
そのまま立ち去って行ったー。

「ーーーー!!!!」

OLの身体になってしまった女性店員は
なんとか”自分の身体を奪ったお客様”を捕まえようと
交差点までやってきていたー

そこでーーー

「ーーーーえ…」

”自分の身体”が車にはねられて血を流して横たわっているのを
目撃してしまったー

「ーーえ… え?? え????」

”行き当たりばったりで入れ替わる”
そんな雅文に、振り回される人々ー。

雅文は”入れ替わった相手を元に戻す”こともせずに
思いつきで入れ替わり続けるためー
”雅文に選ばれた人間たち”は、今でも元に戻ることができないままの
状態が続いているー

そしてー”女性店員の身体になった女子高生・絵里”のように、
事故に遭ったり、死んでしまった人間も中にはいるー。

病院に搬送された店員(絵里)は奇跡的に助かったものの、
歩けない状態かつ、脳にも障害が残りー
まともな会話もできない状態になってしまったー

”他人の身体で、歩けない、会話もままならない”
そんな状況になってしまった店員(絵里)は、
訳が分からないまま、病院のベッドの上で、今日も
意味不明な言葉を口にしていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーえへへへへ…しばらくはツインテールJKライフだぜー
 ま、飽きたらすぐに乗り換えするけどー」

一方の、絵里(雅文)は、
過去に入れ替わった人々がどうなっているかにも
全く興味を示さず、今日も楽しそうに
己の欲望のままの生活を続けていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーおい!誰だ?あんな馬鹿に入れ替わり能力を与えたのは!」

入れ替わりの実験をしていた謎の団体の一人が、
苛立ちの表情を浮かべるー

「ーーは… 申し訳ありませんー
 ここまで馬鹿なやつだとは思わずー」

部下が言うと、
男は「ーー世間的にもだいぶ騒ぎになってきているー」と、
不満そうな表情を浮かべたー

雅文が”適当に入れ替わり”を繰り返していることで
”身体を入れ替えられた人々”が、増え、だんだんと
大きな騒ぎになっているのだー

「ーーあのバカに”警告”して来いー
 それでも話を聞かないようならー
 消せ」

男の言葉に、部下は「承知いたしました」と、
頭を下げ、そのまま部屋の外へと出て行ったー

「ーーーーーーくそっーー…
 力の持ち主がバカだとー…素晴らしい力もこのザマかー」

苛立ちを露わにしながら、男は
”身体を入れ替えられたと証言”と書かれた
ネットニュースを見つめたー

今はまだー
”ネットニュース”レベルで済んでいるー

だが、あのバカが入れ替わりを繰り返せば
やがてー社会問題になるー

そうなる前に、消してしまわねばー

男はそう呟きながら静かに、闇の中へと姿を消したー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

後先考えずに入れ替わりし放題状態…!
破滅しそうな予感しかしないですネ~☆!

…そういえば、今日から仕事初めの人も多そうですネ~!
仕事初めの皆様は頑張ってください~!
既に始まっている皆様は私と一緒に頑張りましょうネ~!

まだお休みの人は、存分にせっかくのお休みを堪能するのデス!

コメント

  1. 匿名 より:

    特別悪意を持って入れ替えてるわけではないとはいえ、一話目から既に、再起不能レベルの悲惨なことになってる被害者が出ましたね。

    とはいえ、入れ替わり被害者も、運次第では元の身体より美人だったり、金持ちだったりとかして、入れ替わって、むしろ得できる可能性もありそうですよね。

    こういう何もかもがめちゃくちゃになっていきそうなカオスな話は大好きです。
    結末がどうなるかとても楽しみですね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      今回は混沌とした入れ替わりデス~!
      本人に悪意がないのが、逆に厄介かもしれませんネ~!

      続きも楽しみにしていてください~!