<入れ替わり>お前でヨシ!②~深く考えない男~

”適当に入れ替わり続ける男”

入れ替わり能力を持つ彼は
後先考えない入れ替わりを続けていたー。

その結果ー…
大変な事態を次々と引き起こしてしまうー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「♪~~~」

女子高生・絵里と身体を入れ替えてから半月ー。

雅文は、絵里の身体で
女子高生ライフを送っていたー

「ーは~~…ツインテール…♡」
女子トイレの中でか鏡を見つめながら
嬉しそうに自分のツインテールに触れる絵里(雅文)ー

毎日、ツインテールを作るのは面倒だが
それでもこうして、
”可愛い絵里”が完成するのであれば
苦労も報われるー。

「ーーーあ~~…でも、なんか大分ー」
絵里(雅文)は絵里の顔を見つめながら呟くー

絵里と入れ替わってから”適当な生活”を続けている故に、
肌が荒れてきているし、
毎晩、夜更かししてお楽しみをしているせいで、
”寝不足”なのが周囲からでもすぐにわかるような、
そんな状態になってしまっているー

「ん~~”可愛い”ままでいるのって大変なんだなー
 まっ…いっか」

絵里(雅文)は”自分の身体じゃないし、
劣化して来たら別の身体にすればいいんだし”と、
笑ながら女子トイレから外に出るー

教室に戻ると、絵里の身体を奪ったあの日、
絵里と一緒に歩いていた友達が心配そうに
「最近…なんか疲れてない?大丈夫?」と、
絵里(雅文)のほうを見つめるー

「ー大丈夫大丈夫ー」
寝不足で、深夜にスマホいじりもしているためかー
目も充血している絵里(雅文)ー

”明らかに”調子が悪そうに見えるのに
”絵里本人”が全く気にしている要素を見せていない点がー、
周囲からは余計に心配で、不気味に写ったー。

その日以降も、絵里(雅文)は、お構いなしで
絵里の身体でお楽しみを続けるー

毎晩毎晩、部屋で喘ぎまくりー、
毎晩毎晩、夜更かしをしてー
毎日のように好きなものを食べまくる日々を送るー

さらに数週間経過したころにはー

「ーーーふふふふ♡」
顔色も悪くなり、少し太ったことが周囲からも
明らかに分かる状態の絵里(雅文)の様子に
誰もが異変を感じていたー

「絵里…何かあったの?」
友達が心配そうに聞いてくるー。

「ー何にもないって~!毎晩ゾクゾクドキドキしてーー
 ふふっ…♡ 思い出すだけで興奮しちゃう!」

絵里(雅文)はそう言うと、
学校に来る前に買ってきたペットボトルのコーラを
美味しそうに飲み干すー

「ーーーー」
友達が、そんなコーラのペットボトルを見つめるー

”絵里…炭酸、苦手だったはずなのにー”
そう思いながらも、絵里が妙にテンション高くー、
おかしな雰囲気であるために、それも聞けずに
困惑するー。

”絵里”は元々穏やかなタイプの子でー
絵里になった雅文としては”普通”に振る舞っている
つもりだったが、
元々の絵里とはテンションが違うため、
周囲を困惑させているー

「人生、楽しく生きなきゃ!悩んでも仕方ないし!
 あははっ」

笑いながら教室の外に向かって歩いていく
絵里(雅文)ー

「絵里…ホント…どうしちゃったの?」
友達がそんな不安を感じながら
絵里(雅文)の後ろ姿を見つめるー。

けれどー
この友達の想いは通じないー。

絵里はもう、”その身体の中”にはいないのだからー。

絵里は女性店員の身体と入れ替わった直後、車にはねられて、
歩くことも、まともな会話をすることも
出来ない状態になってしまったのだからー。

…放課後ー

「ーーーそろそろこの身体も限界かなぁ
 だいぶぽっちゃりしてきたしー」

絵里(雅文)は手を見つめながら呟くー。

短期間での激太りー。
そう言ってもいいかもしれないー

元々細身だったため、まだ”ぽっちゃり”程度だが
ここまでの短期間でここまで変われるのは
自分でもスゴイと思う。

”ーこの子の友達もいい感じだよなー
 次はあの子でヨシとするかー”

そんな風に思っていると、
ふと背後に気配を感じたー

「ーーーーー…」

絵里(雅文)は少しだけ表情を歪めるー。

だがー
次の瞬間ーーー

「ーー!?」
人通りの少ない場所に入った直後、背後から黒服の男にハンカチを当てられてー
そのまま絵里(雅文)は眠らされてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーう……」

絵里(雅文)が目を覚ますとー
そこは、人の気配のないがれきの山だったー。

「ーーーようやく見つけたよー
 お前がとんでもねぇ馬鹿だったせいで、
 こっちは迷惑してるんだー」

スクラップ工場のような場所で、
姿を現した黒服の男ー

絵里(雅文)は彼に見覚えがあったー

「ーーー!」

雅文が”入れ替わり”の力を手に入れることになった
”入れ替わり技術の実験体”を募集していたー
謎の団体の男ー

確か、実験の時の責任者だったはずー。
名前はーーーー

「え~~~えっと、名前なんでしたっけ?」
拉致されたような状況だと言うのに、
何も緊張感のない絵里(雅文)ー

「ーー入れ替わり技術担当のイシカワだ!」
黒服の男・イシカワがそう名乗ると、
絵里(雅文)は
「あぁ、ははっ!」と笑ったー。

「ーー”その力”をあまり多用するなと言ったはずだぞ?
 それも、人にバレるような使い方をして、何のつもりだ?」

イシカワがそう言うと、
絵里(雅文)は笑いながら
「いやぁ~つい…この力凄いもんで」と、
照れくさそうに笑ったー

「ーあんまり騒ぎが大きくなると、
 我々としても困るんだー
 お前にその力を与えたのは、あくまでも経過をテストするためー

 お前みたいに好き放題してもらうためじゃない。

 お前のおかげで俺も副支部長に叱られて
 困ってるんだー」

イシカワはそれだけ言うと、
笑いながら「ーはぁ、それはすみませんねぇ」と、
なおも軽い調子の絵里(雅文)を見て表情を歪めたー

「ーとんだ馬鹿野郎だな貴様は」
 自分の身の危険すら理解できていない

 お前みたいな適当なやつを選んだのが間違いだったー」

それだけ言うとイシカワは持っていた銃を
絵里(雅文)に向かって向けたー

「ーその身体ごと、死んでもらう」
イシカワがそう言うと、
絵里(雅文)は
「えっ!?えっ!?えっ!?えぇっ!?」と、
今になって自分がヤバい状態であることに気付いたのか、
足をばたばたとさせ始めたー

「死ねー」
イシカワが絵里(雅文)に銃弾を放つー

銃弾が胸部を貫き、絵里(雅文)がうめき声を
あげながら苦しみ始めるー。

「ーーー」
イシカワが”念のため”と、もう一発銃を撃とうとした
その時だったー

「あ!!!!!」
苦しんでいた絵里(雅文)が、何か変な声をあげたー

「ーーえへへへー
 死んじゃうと思ったけどー」
口から血を垂らしながら笑う絵里(雅文)はーー
指を立てて動く範囲内で手を動かすと、イシカワを指さしてー
続けて自分を指さしたー

”男でもいいや”

そう思いながら”入れ替わり”を実行した雅文ー

「ーーー!?!?!?」
拘束されて胸を撃たれた状態の絵里と入れ替わったイシカワが
表情を歪めるー

「ーなっ…!」
絵里(イシカワ)が口から血を垂らしながら
表情を歪めるー

イシカワになった雅文は笑いながら
「ちょうどその身体、劣化してきてたし、乗り換えようと思ってたからー
 あげますよ」と、へらへらと笑うー。

そしてー
そのまま出口に向かって行くイシカワ(雅文)ー

「ーーお!!おいっ!?待て!おいっ!げほっ… お… やめ…助けて!」
絵里になってしまったイシカワは
”自分が間もなく死ぬ状況”であることを察知して
悲鳴に似た叫び声をあげるー。

だがー、イシカワ(雅文)は、
「ーーおぉぉぉ~運動が得意そうな身体すげー!」と
叫びながら、絵里になったイシカワを無視して、
そのまま外へと飛び出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー次は、お前でいいか」
イシカワ(雅文)は、笑みを浮かべながら
街中で見かけた子連れの親子のー娘の方と身体を入れ替えるー

「ーーっ!」
びくっと震えた少女ー

母親が「菜穂(なほ)?どうしたの?」と、心配そうに呟くと、
菜穂(雅文)は「なんでもないよ~♡」と、ニヤニヤしながら答えー、
そのまま母親と共に歩いていくー

「ーーーママ~~~!… ママ~~~~~~!!!!」

こわもてのイシカワの身体になってしまった菜穂は、
その姿のまま”ママ~!”と叫びながら泣き始めてしまうー。

数分後には、通行人がそんなイシカワ(菜穂)を
見つめながら”ヤベェ奴がいる”と、
慌てて警察に通報したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

菜穂(雅文)は、家族に囲まれながら
少女ライフを送っていたー

”あ~、このぐらいの年頃だと、自分ではあまり
 何もしなくていいし、楽だなぁ”

「ばぶぅ!ばぶぅ~~!」
流石にバブバブ言う年齢ではないのだが、
なんとなく奇声を上げる菜穂(雅文)ー

「最近、あの子、大丈夫かしら…?」
母親が不安そうに呟くー。

「ー何か、子供なりのストレスかもしれないなー」
父親が困惑した様子で呟くー。

”菜穂の様子が明らかに変わったー”

それは、両親にも理解できているー。

「ーー…何だか最近、急に大人みたいなこと言い始めるしー」
そんな不安そうな母親を他所に、
菜穂(雅文)は、バブバブ言いながら笑みを浮かべたー。

特に物事を深く考えなくてもいいそんな生活ー
菜穂の身体になった雅文は半月以上、
のんびりと過ごしたー

なんだかよく分からないけれど、
命を狙われたこともあって、何となく疲れたー。

そのための一時休憩だー。

「ーーさてと、そろそろ…行くかな」
菜穂(雅文)はそう思いながら立ち上がるー。

菜穂の両親にも告げずに勝手に家を出たことによって
”子供がいなくなったんです!”と、
警察に相談し、誘拐事件沙汰になってしまったもののー
菜穂(雅文)にそんなことは関係ないー。

「ーへへへー 誘拐か?事故か? …か」
菜穂(雅文)は満足そうに家電量販店のテレビを
一人で見つめるー。

”菜穂がいなくなった”という事件を取り上げているニュースでは
”誘拐かもしれないし、事故かもしれない”みたいなことを
報じているー

「ー誘拐かぁ…まぁ…入れ替わりで身体を奪ってるからー 
 ーーー間違いじゃないのかもなぁ~」

そんなことをのんきに呟いているとー

「あれー…あんたー」
と、おばあさんに声を掛けられたー

「ーーん?」
菜緒(雅文)が振り返るとー
たった今、テレビ売り場のテレビに映っている菜穂の顔写真と、
菜穂(雅文)を指さしながら、
「ーーあんたー…菜穂ちゃんじゃないのかい?」と、
おばあさんが言い放ったー

「ーーあ… バレちゃったか」
菜穂(雅文)は、照れくさそうに頭をかきながら笑うー

”まぁ…堂々と街を歩いてれば、そりゃバレるかー”

そう思いながら
「ーーとりあえずお前でー」と、
おばあさんを指さして、続けて自分ー…菜穂の身体を指さすと、
おばあさんの身体になった雅文は、
そのまま「おっとっと、ババアの身体はやっぱ動きが悪いな」と、
苦笑いするー

「え…??? え???
 な、何だいこれ!?!?!?」

菜穂になったおばあさんが叫ぶー。

70代から小学校入学前の少女にー。
おばあさんにとってはラッキーな入れ替わり…と、
言えるかもしれないー。

だが、入れ替えた相手が”ラッキー”になろうが、
店員の身体と入れ替わって直後に事故に遭って人生滅茶苦茶な女子高生・絵里のように
不幸になろうが、雅文にとっては”関係ない”ーいや、”興味すらない”ことだったー。

悪いことをしているという自覚も何もないしー、
悪意もそこにはないー

「だ~めだ、この身体」
ため息をつくと、おばあさん(雅文)は、
近くを歩いていた新婚夫婦の妻を指さしー、
そのまま身体を入れ替えたー

「よっし!やっぱり若いっていいな!」
入れ替わった直後にそう叫ぶと、夫が「えっ!?え?」と、
困惑しているのを無視して、新婚夫婦の妻の身体で、
そのまま雅文は家電量販店から夫を置き去りにして
飛び出したー。

この後ー
菜穂の身体になったおばあさんは
”家出した少女”として、発見され家族の元に戻ったー。
何だかよく分からないけれど、菜穂になったおばあさんは
”2度目の人生”と嬉しそうに菜穂として生活をはじめー、
菜穂(おばあさん)の言動から、両親は
”菜穂ってもしかして人生2回目なんじゃ?”と思い始めたのだというー。

おばあさんの身体になってしまった新婚夫婦の妻は、
夫に信じてもらうことが出来ずー、
また、妻が飛び出したまま帰って来ず、音信不通になったことから
そのまま離婚・絶縁状態になり、
おばあさん(新婚夫婦の妻)は、その数か月後、持病の心臓の病で倒れ、
訳も分からないままそのまま帰らぬ人となってしまったというー

「ーーへへへへ」

が、それはそれぞれ少し先の話ー

そして、既に新婚夫婦の妻の身体から、
道端でライブをしていた知らないアイドルと身体を入れ替えていた雅文はー
”誰だか知らねぇけど、アイドルみたいだな”と笑みを浮かべながら
そのままどこかへと消えて行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーママ~~~~~! ママ~~~~~~!」

警察から釈放されたイシカワ(菜穂)を前に、
雅文に入れ替わりの力を与えた謎の団体ー
国際犯罪組織ガルフの日本支部副支部長・ミヤゾノは表情を歪めたー。

「ーーーおい…イシカワー
 例の入れ替わり馬鹿の始末はどうした?」

「ーーママ~~~~~!ママ~~~~~!」
イシカワ(菜穂)が強面の顔で、子供のように泣きじゃくっているー

「ーーバカ野郎!何がママだ!」
イシカワ(菜穂)を蹴り飛ばすと、
「ーおい、こいつを”ママのところ”に送ってやれ」
と、冷徹な指示を下すー

”イシカワ”の母親はとうの昔に病気で死んでいると聞いているー。

ミヤゾノはその”ママ”のところに送ってやれと部下に指示を下したのだー

「ーーチッー
 入れ替わり馬鹿がー。
 こうなりゃ俺が自ら出るしかないか」

ミヤゾノはそう言い放つと、サングラスをかけて、
そのままアジトの外に向かって歩き出したー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回デス~!
やりたい放題の入れ替わりの果てに待つ運命は…?

今日もありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    老い先短い老婆の身体から、未来ある幼い女の子の身体になれたおばあちゃん、ラッキーマン並みの強運ですね。

    その反面、イシカワの成人男性の身体になって、その上、組織に消されてしまった菜穂ちゃんが不憫すぎです。

    ただたまたま通りかかっただけで、幸せな新妻から、いきなり老婆になって、命まで失った新婚夫婦の妻の方も悲惨すぎます。

    あと、イシカワは油断しすぎですね。相手が危険な能力を持ってる事を知ってるんだから、眠らせたまま、有無を言わさず、さっさと始末すべきでしたね。

    そう言えば、誤字です。
    新婚夫婦のとこが、一箇所だけ、進行夫婦になってますよ(笑)。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      ラッキーな人も、酷い目に遭った人も
      色々な人がいますネ~笑

      イシカワさん…

      誤字の報告もありがとうございました~!
      進行夫婦とはいったい…笑
      修正しておきます~~!