<憑依>とりあえず付き合うか③~人生~(完)

②にもどる!

事故で他校の女子生徒に憑依してしまった親友ー。

それから数か月が経過しても憑依したままの親友から
”とりあえず付き合うか”と、そう提案されてー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー~~~なんだよ、その格好ー」
萌々香に憑依している恭平が
呆れ顔でそう言葉を口にするー。

”とりあえず”付き合い始めてから半月ほどー。

今日も、”いつも通り”
二人で適当な場所に遊びに行こうと、そんな約束をして、
その待ち合わせ場所に萌々香はやってきていたー。

がー、
そこに現れた洋二はいつもとは違う、
どこかおしゃれな感じの服装でやってきていたー。

「ーーえ…い、いや…で、で、で、デートだから
 少しは、と、思ってー」
洋二が戸惑いの表情を浮かべながら、
気まずそうにそう言うと、
萌々香は「あのなぁ~…」と、首を横に振りながら
「ー今まで通りでいいんだぞ?」と、改めてそう言葉を口にするー

「大体、俺にカッコいいところ見せてどうするんだよー。
 確かに、この子に憑依しちゃって身体は女になっちまったけど、
 中身は男なんだから、
 カッコいいお前を見たってドキッ!とか、きゅん!とかしないぞ?」

萌々香が歩きながらそう言うと、
洋二は「ーーま、まぁーそ、そりゃそうかー」と、
そう言いながらも、どこか納得したように頷くー。

「ーー大体、お前は俺にどうして欲しいんだ?
 身も心も女になって”洋二くん大好き!”とか、
 そういうこと言って欲しいのか?」

萌々香に憑依している恭平からそう指摘されると、
洋二は少し考えるような表情を浮かべてから、
「ん~~~~… ん~~~~~…?」と、
さらに考え込むー。

「ーなんか、あれなんだよなー
 正直、頭がバグってる感じー。

 恭平って分かってるのに、身体はそうだからさー
 なんかこう、頭がぐちゃぐちゃ~!っとなって」

洋二はそう言葉を口にするー。

「ー確かに、恭平の言う通り、
 恭平から”大好き!”って言われたいーーって
 わけじゃないと思うけど、
 でも、好きになってもらいたいって気持ちも
 どこかにあるような…変な感じでー」

洋二はさらにそこまで言葉を付け加えると、
「うぁ~~~!くそっ!俺は何を言ってるんだ!」と、
”自分でもよく分からなくなってきた!”と言いたげな
仕草をしてみせるー。

そんな洋二を見つめながら、
萌々香は少しだけ笑うと、
「ごめんなー。俺のせいで混乱させて」と、
そう言葉を口にするー。

萌々香のその言葉に、洋二は
「い、いやー、そ、そんなことはー」と、
そう言葉を返すと、
萌々香のどこか切なさそうな表情を見て、
中身が親友だと思いながらもドキッとしてしまうのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

元に戻れないまま、”1年”が経過してしまったー。

恭平は相変わらず、”萌々香”に身体を返すことを想定した上での
生活を送っているー。

”大学受験”も、萌々香が元々目指していた大学が
分かったために、萌々香に憑依している恭平からすれば
全く興味のない分野ではあったものの、
萌々香のためにと、その勉強を全力でしていたー。

「ーーー全然こういう分野分からないからさー。大変だよ」

カフェの店内ー。
勉強しながら、萌々香がそう言葉を口にすると、
「ーーだよなぁ…」と、洋二はそう言葉を口にするー。

萌々香はどうやら、パティシエを目指していたようで、
恭平からすれば全く分からない未知の分野だー。

しかし、”萌々香”の意識がいつ目覚めるかー、
あるいは恭平が萌々香の身体から何らかの原因で追い出されて
自分の身体に戻れたりするか、分からないー。

そのため、恭平は”萌々香のために”と、全く興味のなかった
お菓子職人の道を必死に目指し、勉強していたー。

「ーーーーーー恭平ー。
 でも、もし”ずっと”戻れなかったらー?」
洋二は、そんな萌々香を見つめながらそう言葉を口にするー。

「ーーん?」
萌々香が少し不思議そうに洋二のほうを見つめ返すと、
「ーずっと戻れなかったら、恭平ー、お前の人生はどうなるんだ?」
と、洋二は悲しそうに言葉を口にするー。

「ーーー~~~…俺の人生かぁ」
萌々香は椅子に寄りかかると、
少しだけ溜息をつくー。

萌々香に憑依してしまったことで、恭平は
”萌々香に気を遣いながら生きている”状態が続いているー。

本来、自分がやりたかったこともあっただろうし、
この先だって、ずっと萌々香として生きていくのであれば
恭平の人生は大きく狂ってしまったことになるー。

「ーー…まぁ、でもさー
 俺なんかより、この子の方が辛いだろ?
 だって、俺は他人の身体とは言え、こうして一応普通に
 ここにいて、普通に生活できてるー。

 でも、この子はー…
 俺のせいで、身体の中でずっと眠ってるのかー
 あるいは、もう消えちまったのかー」

萌々香が悲しそうな表情を浮かべるー。

たとえ、”自分の人生”を送ることができなくなってしまったとしても、
こうして”日々を過ごせる”というだけで、マシなのだとー。

「ーーーー…でもー」
洋二がそう言うと、萌々香は
「心配してくれるのは嬉しいけどさ、俺は大丈夫」と、
そう言葉を口にすると、
そのまま穏やかに笑ってから、勉強のための本に視線を落としたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

恭平の身体は意識を取り戻さないままー、
萌々香本人の意識も、萌々香の身体の中で目覚めないまま
時ばかりが過ぎていくー。

ついに、恭平は萌々香の身体で高校を卒業し、
萌々香としてパティシエの道へと進んだー。

大学生になってから、洋二は都合が合えば、
萌々香とあったー。

”とりあえず”付き合う状態も続いているー。

その状態はさらに続き、やがて二人は大学も卒業ー。

”萌々香”は、パティシエの道を順調に歩んでいたー。

「ーーーあははー大丈夫ー心配しないでー
 それなりに上手くやってるからー」

大学を卒業した萌々香ー。
未だに”恭平”が憑依した状態ではあるものの
最初の数年とは違い、
洋二と二人きりでも”女”のような言動が増えたー。

「ーーーーあ~ごめんねー
 洋二といる時以外、女として振る舞うからさー
 癖ってやつだよ」

萌々香が、ふと思い出したかのようにそう言うと、
洋二は苦笑いしながら
「ー好きな方で話せばいいよ」と、そう返すー。

「ーははー。
 まぁでも、お前といる時はできれば男として話したいかなー

 そうしないとさーー…
 俺が俺だったこと、忘れちまいそうでさ」

萌々香はそう言うと、
洋二は「ははー…まぁ、そうかもなー」と、少しだけ笑うー。

そんな会話をしつつ、
歩いていた二人ー。

ふと、萌々香は思い出したかのように
「あ~そうだ、あのさー」と、そう言葉を口にすると、
「ー好きな子、出来たりしたら俺のこと、気にしなくていいからなー?
 こんな訳の分からない状況の俺にズルズル突き合せちまってー」と、
萌々香はそう続けたー。

「ーーん、あ、いやー」
洋二は少し戸惑いながら返事をするー。

”とりあえず付き合う”
そんな状況が大学を卒業した今でも続いているー。

ただ、萌々香に憑依している恭平は
”男なのか、女なのかもよく分からない状況の自分”に
これ以上突き合せるのは、申し訳ないとそう思い始めていたー。

がーー

「ーーお前がいいんだ」
洋二はそう言い放つー。

「ーーーーははー…だから俺は、女として男にきゅんとしたりはしないってー
 昔も言ったよなー?」
萌々香が苦笑いしながら言うと、
洋二は「それでもいいんだー。男女とかじゃなくてー、とにかく、一緒にいたいー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーー仕方のないやつだなー」
萌々香は苦笑いすると、「この子が目覚めるまでな」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、さらに時は流れたー。

二人とも30代に突入したものの、
やっぱり、”萌々香本人”の意識は目覚めたりせず、
萌々香に憑依している状態の恭平も、
元の身体に戻ることは出来ない状態が続いていたー。

恭平の身体も、中身が”萌々香”の身体に憑依してしまっているために
相変わらず目覚めることはないままだ。

「ーーーー」

今日は休日ー。
洋二はテレビ番組を見つめるー。

今や人気パティシエとして活躍している萌々香が
出演しているのだー。

「ーーーーははー
 ホントに恭平のやつ、有名人になったよなぁ」
洋二はどこか寂しそうにそんな言葉を口にするー。

”この子がいつの日か、目を覚ました時のため”
萌々香に憑依している恭平は、そう言いながら
萌々香が目指していたものを目指し、
ついにその分野で有名人になってしまったー。

「ースゲェなぁー…」
洋二はテレビ番組の中でお菓子を作りながら
嬉しそうにしている萌々香を見て、
感心した様子で呟くー。

ただー…

「ーーーー」
洋二は、テレビに出演している萌々香の表情を見て
少しだけ寂しそうにすると、大きくため息を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー今度さ、新しいお店を開くことになってー」
萌々香が、そう言葉を口にするー。

二人は今でもよく会っていて、
今日も、洋二の家に萌々香が遊びにやってきていたー。

洋二は「へ~すごいじゃん」と、そう返しながら
萌々香のほうを見つめるー。

「ーーーー」
そして、今まで言わないようにしていたことを、
意を決したように口にしたー。

「ーーーーなぁ、恭平ー…
 無理してないか?」
とー。

「ーーん?」
萌々香が少し表情を曇らせるー。

「ーーホントは、辛いんだろー?
 今の仕事ー」
洋二がそう言うと、萌々香は少しだけ笑いながら
「そ、そんなことないよー。わたし、毎日楽しくー」
と、萌々香がそこまで言いかけるー。

がーー

洋二は言ったー。

「もう、いいんじゃないかー。
 俺たちも、もう30を過ぎたー。

 ーーーこのままずっと、その子の人生をなぞってー、
 終わりでいいのか?」

とー。

「ーーーーー」
萌々香は言葉を止めるー。

「ーーもう十分やったと思うんだー。
 確かに、その子はそうなった瞬間、自由も何もかも失ったけどー
 でも、恭平はもう十分やったー

 お前まで自分の人生を失うことを、
 その子も望んでないんじゃないかー?

 もう、そろそろー、
 好きなことしても、お前の人生を少しは生きてもいいと思うんだー」

洋二がそう言うと、
萌々香は少しだけ笑いながら頷いたー。

「ーーーー…辛いさー。
 俺は、お菓子作りに興味なんてないしー
 最近じゃ、タレントみたいな感じになっててさー」

萌々香は本音を吐き出すと、
「ー俺はー、誰なんだろうなってー、分からなくなるー」と
弱々しくそう言葉を口にしたー。

そしてー、
萌々香は少しだけ躊躇ってから
言葉を口にしたー

「俺はもうー、野崎 恭平には戻れないんだなー」
とー。

「ーーーー」
洋二は涙目でそう呟く萌々香を見て、
思わず萌々香を抱きしめてしまうと、
いつもなら”やめろ!気持ち悪いな”みたいなことを言われそうな
行動であるにも関わらず、萌々香は何も言わなかったー。

「ーーーーまだー…まだ、自分の人生を歩めるー
 今からでもー

 もう、恭平は十分頑張ったんだー。だからー」

洋二はそう言葉を口にすると、
「これからは自分の人生を生きていいと思うんだー」
と、そう続けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数年後ー。

「ーーーうぇぇ…気持ちわりぃ…」

萌々香がそう言葉を口にするー。

洋二は少し心配そうに
「だ、大丈夫かー?」と、そう言葉を口にすると、
萌々香は言ったー。

「体調の話じゃねぇよー
 まさか俺がお前の子供を出産することになるなんてー
 
 想像したら気持ち悪くなってきたー」

とー。

あのあとー、萌々香はパティシエを引退ー、
現在は恭平が元々やりたかった仕事をしているー。

加えてー、あれから2年後に萌々香は洋二と結婚ー、
”お前と結婚とか、ないわ”と言いつつも、
最終的にはそうなったー。

そして、今では洋二との子供を妊娠しているー。

「ー高校の頃の俺に、
 ”俺は将来、洋二のやつとの子供を出産するんだぞ って
 言いに行ったら、俺、ひっくり返るぞ多分」

萌々香がそう言葉を口にすると、
洋二は苦笑いしながら
「ーーははーごめんなー。俺なんかでー」と、
そう言葉を返すー。

が、萌々香は少しだけ考えたあとに微笑むと、
「ーーーいやー、俺も、お前がいいー」と、
穏やかな表情で言葉を口にするのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

事故で他校の女子生徒に憑依してしまった
親友との日々を描いた作品でした~~★!

憑依されちゃった子は災難ですケド、
もうここまで元に戻らない状態だと、
仕方ないことですネ~…!

お読み下さり、ありがとうございました~★!

「とりあえず付き合うか」目次

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