<憑依>とりあえず付き合うか②~困惑~

①にもどる!

文化祭の日に、
他校の女子生徒と正面衝突してしまい、
親友が、その子に憑依してしまったー。

美少女となった親友を前に、穏やかではない彼はー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーーーーーーーーー」
洋二は、親友である恭平が座っていた座席を見つめていたー。

そこには、未だに恭平の姿はないー。
それもそのはず、文化祭から1ヵ月が経過した今でも、
恭平の意識は戻らないままー。

そして、意識が戻らないのは当たり前だー。
恭平はあの日、事故でぶつかってしまった他校の女子生徒・萌々香に
憑依してしまった状態のままであるため、
恭平の身体の中は今、空っぽの状態なのだ。

「ーーはぁ~…」
洋二はため息を吐き出すー。

小さい頃から恭平といつも一緒だった洋二からしてみれば、
恭平が同じ学校にいない、というこの状況は
心底奇妙で、気味の悪いものだった。

「ーー小山ー。まぁ元気出せよ」
そんな洋二を見た別のクラスメイト・孝之(たかゆき)が
そう声を掛けて来るー。

「ーーあ、あぁー」
洋二は少しだけ困惑した表情を浮かべると、
孝之は「アイツだって、死んだわけじゃないんだからさ」と、
そう言葉を口にするー。

”そうなんだよー。死んだわけじゃないんだよー
 フツーにいるんだよ”
洋二は、内心でそう思ったものの、
萌々香に憑依した恭平から
”騒ぎが大きくなると俺も大変だし、周りも大変だから
 俺とお前だけの秘密な”と、言われていたために、
「そ、そうだなー」と、そう返事をするに留めたー。

孝之が言っているのは、
”意識不明だけど、まだ死んじゃいないから元気出せ”と、
そういう意味なのだろうー。

けれどー…
”意識不明だけど身体は生きている”どころかーー
身体は違うけど、恭平は普通に過ごしているー。

「ーーよっ!」

放課後ー
おしゃれな雰囲気の萌々香と合流すると、
洋二は「~~~~~」と、困惑の表情を浮かべながら
「お、おう」と、だけ返すー。

「ーーな、何でそんなおしゃれなんだよー…?」
洋二がそう言うと、
萌々香に憑依している恭平は、
「いや、別に深い意味はねぇよー
 この子だって今までずっと生きて来たんだし、
 急に男っぽい格好で出かけるようになったら変だろ?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーあ、あぁー、いや、まぁ、そうかー」
洋二は戸惑いながらも、萌々香に憑依している恭平の言葉に
納得の表情を浮かべるー。

「ー憑依したあとさ、スマホに保存されてる写真とか
 色々見て、持ってる服も調べて、
 こんな感じかなって、色々苦労したんだぜ?」
萌々香はそう言いながら自分のスカートを触るー。

「しっかし、スカートって頼りないよなー。
 しかもこれからだんだん寒くなって来るし、
 マジでズボン履きたいぜ」

萌々香がそう言うと、
洋二は顔を赤らめながら目を逸らす。

「ーーは???な、なんだよ?」
萌々香がそう言うと、
「いやー、じ、自分のスカート触ったりするしー
 こ、声が可愛くて」と、洋二は顔を真っ赤にしながら言うー。

「おいおいおいー1ヵ月も経つのにまだそんななのかよー。
 今まで通りでいいって言ったろ?
 身体は違うしー、男女も違うけどー
 まぁ、俺は俺だからさ 気にするなって」

萌々香に憑依してしまった恭平は、
憑依直後からずっとそう言っているー。

実際、恭平は割り切りが早く
”こうなっちまったものは仕方ねぇ”と、
女としての生活や振る舞いを覚えて
今に至っているー。

もちろん、最初はドキドキしたり戸惑ったりしたとも言っていたものの、
女に憑依してしまった、という状況に対する対応力は、
流石と言えたー。

なおも戸惑う洋二に対して、

「いや、俺もさ、
 この長い髪バッサリ切りたいし
 おしゃれとか面倒だし
 さっきも言ったけど、ズボン履きたいし?

 でもさー
 ーーいつ、元に戻れるか分からないけど
 俺が俺の身体に戻れたりー、
 あとは…この子の意識が戻って、俺が消えるみたいなことに
 なっちまったりしたときー、
 
 この子にちゃんと人生を返すためには
 俺もそれなりにこの子として生きないとダメだろ?」

と、萌々香はそう言葉を口にするー。

「ーま…まぁ、そりゃー…
洋二は静かに頷くー。

萌々香に憑依している恭平の言い分は最もだ。
萌々香に萌々香の身体を返せるときが来たときのために
”できる限り萌々香として生活を続けている”というのは、
恐らく正しい対応だとは思うー。
”もう絶対に元に戻れない”となれば、”萌々香の身体”で
自分の人生を生きていくのもアリー…かもしれない。
けど、今はまだ何も分からないのだー。

「ーーーーで…その子として上手くやっていけてるのか?」
洋二がそう言うと、
萌々香は「あぁ、あの日ぶつかった時の怪我で記憶が
曖昧なところがあるってことにしててー
一応それで病院も言ってるからー」
と、そう答えるー。

”記憶障害が起きている”とすることで
元の萌々香と違う部分があっても、
人の名前を把握してなくても、不自然じゃないようにして、
その上で”病院に通う口実”も作っているー。

「診察受けてりゃ、俺がこの子に入り込んじゃったことも
 何か掴めるかと思ったけど、
 脳には異常がないみたいなんだよな」

萌々香は”やれやれ”と言わんばかりに首を横に振るー。

「ーで、お前こそどうなんだよ?
 学校ではうまくやれてるのか?」
萌々香がそう言うと、
洋二は「あ~…いやーまぁ…寂しいけどうまくやれてるよ」と、
そう言葉を口にするー。

「ははー、流石に転校するわけにはいかないからなー」
萌々香は文化祭に遊びに来ていた他校の女子生徒。
流石に、一緒の学校に通うことはできないー。

「ーお、俺が転校するのはアリか?」
洋二が言うと、萌々香は「バカ!女子高だって言っただろ!」と、
ぱしっ!と洋二を叩くー。

「そ、そうだったー…」
洋二が苦笑いするー。

恭平が憑依してしまった”萌々香”は女子高に通っている子であったため、
洋二が本気で転校しようとしても、それはできないー。

「まぁ、せめて共学がよかったなー。
 俺からすると、異性の真っただ中にぶち込まれた感じでさー。
 みんな平気で俺の前で着替えるしー

 まぁ、そりゃそうなんだけど」

萌々香は少し苦笑いしながら言うと、
洋二は「ははー…」と、笑いながらも、
ドキドキした様子で首を振ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからさらに2か月が経過したー。

恭平の身体は相変らず意識を取り戻していない。

恭平の魂は相変らず、
萌々香に憑依した状態のままで、
既に萌々香として3ヵ月以上が
経過している状態だったー。

「ーーこれうめぇなー。
 洋二も飲むか?」

この日は、ファミレスに来ていた二人ー。
最初よりも、萌々香がさらにおしゃれになったような、
そんな気がするー。

3ヵ月経過して、”女”でいることに慣れたのだろうかー。

そんな萌々香が、このファミレスの新発売の
飲み物を口にしながら、そう言葉を口にすると、
洋二にそれを差し出して来たー。

元々、こういうことは親友であり幼馴染である二人は
”いつも普通に”やっていたことだー。

そのため、萌々香に憑依している恭平も
特に意識せずにそれを手渡すー

「え……あ…」
洋二は戸惑いながら萌々香の方を見つめると、
萌々香は表情を曇らせながら
「ん?バニラ苦手なのか?」と、
リニューアルされた新メニューのクリームソーダを手に、そう言葉を口にするー。

「ーーい、いや、好きだけどー
 その、ほらー」
洋二は心底申し訳なさそうに、萌々香のほうを見つめると、
萌々香は「?」と、首を傾げる。

すると、洋二は
「あ、いやー、今、俺がそれを飲んだら間接キスみたいに
 なっちゃうだろー…?だからー…」と、
申し訳なさそうに言葉を口にしたー。

「ーはぁ?
 ははー、いつもそうしてただろ?
 どういう想像してるんだよ」
萌々香は呆れ顔でそう言うと、
「ほら、気にせず飲めー。
 俺は俺なんだから」と、そんな言葉を続けるー。

しかし、それでも洋二は
間接キスになってしまうその状況を、
以前のように何も気にせず飲むことはできなかったー。

「ーーーーーー」
萌々香は表情を曇らせると、
「お前、俺のこと、女として意識してるのかー?」と、
困惑の表情を浮かべるー。

「ーえ…い、いやー…」
洋二は気まずそうにそう言葉を口にすると、
「確かに身体はこうだけど、中身は俺のままでー
 あの時から何も変わってないんだけどな」と、
萌々香に憑依してしまった恭平は
少しだけ寂しそうにそう言葉を続けるー。

「ーわ、分かってるよー。それは分かってるー。
 ただー…」

洋二はそこまで言葉を口にすると、
「ただー…頭では分かってても、どうしてもー」と、
萌々香の姿を見つめるー。

萌々香は大きくため息を吐き出すと、
「ーーいや、悪かったー」と、そう言葉を口にしてから、
「ー俺は俺で戸惑ってるし、こんな状態になった俺を前に
 お前はお前で戸惑ってるんだよなー」と、
納得したように頷くと、
続けて、こう言葉を口にしたー。

「ーだったら、とりあえず付き合うか」
とー。

「ーーはい?」
洋二は、困惑した表情を浮かべるー。

「ーいや、勘違いすんなよ?
 別に三カ月経過して俺の心が女になっちまったとか
 そういうことじゃないー」
萌々香はそう説明すると、さらに言葉を続けるー。

「ただ、3ヵ月この状態が続いて
 すぐに元に戻れる可能性は低い気がしてきたし、
 ずっと、このままかもしれないって思うようになったんだー。

 もちろん、この子に身体を返すことは諦めてないし
 俺は元の身体に戻りたい。

 ただー、ずっとこのままかもしれないってことも
 そろそろ考えないといけないと思ってなー」

その言葉、洋二は戸惑いながら、
萌々香を見つめるー。

「ーそれとー」
萌々香は、ふと口を開くと、
「ーお前とよく会ってるから、そろそろ周りのコが
 どんな関係~?ってうるさくてさー。
 困るんだー。
 だから、”とりあえず付き合う”ってことでどうだ?」
と、そこまで言葉を口にしてから、
じっと洋二のほうを見つめてきたー。

「ーつ、つ、つ、付き合ー…」
洋二が挙動不審な反応をしてしまうと、
萌々香は呆れ顔で首を横に振りながら
「ー”とりあえず”付き合うだけで、
 他は今までと同じさー。
 この子が目を覚ましたら、すぐに解消。
 じゃないとこの子に悪いからな」と、そう付け加えるー。

「じ、じ、じゃあー」
洋二が顔を赤らめながらそんな反応をすると、
「おっと」と、萌々香はそう言葉を口にしてから、
「ー男女の身体の関係はナシだからな?」と、
先にそう言葉を口にするー。

「ーし、し、しねぇし!!
 そういうこと言おうとしたんじゃないし!」
洋二が顔を真っ赤にしながらそう叫ぶと、
「はははーなら良かったー
 この子の身体は借りてるものだから、
 そういうことは絶対できないからなー。
 お前とも、他の奴らとも」
と、そう言葉を口にする萌々香ー。

萌々香に憑依している恭平は、
普段の少しいい加減そうな言動とは裏腹に
そういったところはとってもしっかりとしていて、
3ヵ月経過した今でも、萌々香に身体を返すことを
意識しているようだったー。

「それに、俺も男だからなー
 男とそういうことをするのは想像できないし、
 まぁ、なんだー。ちょっと抵抗があるー。

 ー…まぁ、すりゃするで女になってから
 気持ちイイのかもしれないけど、
 そういう気持ちの整理はまだつかねぇ」

萌々香はそう言葉を付け加えると、
洋二は頷くー。

「ーー分かってるよー
 俺が聞こうとしたのは、そのー…
 じゃあー、これってデートってことになるのかーってー」
洋二が照れ臭そうにそう言葉を口にするー。

そんな言葉に、萌々香は少し考えるような
仕草をしてから、
洋二のほうを見つめると、悪戯っぽく笑うー。

「ーーそうだなー。言われてみればデートだなー」

その言葉に、洋二はドキドキしたような様子で
目を逸らすと、
「おいおいおい、中身は俺だぞ?しっかりしろ」と、
萌々香は呆れ顔で、洋二の手をぱしっと叩くのだったー

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!!!☆

美少女に憑依してしまった親友との
不思議な日常…!

最後にどんな結末が待っているのかは、
明日のお楽しみデス~!!!

今日もありがとうございました~!★

続けて③をみる!

「とりあえず付き合うか」目次

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