<MC>年末年始の充実した日々

”彼女”は充実した年末年始の日々を送っていたー。

しかし、彼女はまだ知らないー
”恐るべき事態”が彼女の身に迫っているー…
ということを…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー今日でバイトも終わったし、
 わたしもやっと仕事納めだねー」

一人暮らしをしている宮下 遥香(みやした はるか)は、
カレンダーを見つめながら、嬉しそうにそう言葉を口にするー。

可愛らしいどこかメルヘンチックな雰囲気の漂う部屋で、
満足そうに”仕事納め”…冬休みに突入した解放感を味わいながら、
彼女は自分の姿を鏡で見つめるー。

昨年、大学を卒業したばかりの遥香は、
今はフリーターとして複数のバイトを掛け持ちして
働いているー。

今日は、ようやく年内最後のバイトが終わり、
仕事納めを迎えたところだったー。

「ーーーう~ん…今日も可愛いー」
自分の自己肯定感を高めるためだろうかー。
遥香は鏡で自分の姿を見つめながら、
そんな言葉を口にするー。

遥香の目に写る、鏡に写っている自分の姿は、
確かに客観的に見れば、とても可愛らしい雰囲気を
しているー。

遥香は目に写るそんな自分の姿に酔いしれながら、
「って、こんなことしてる場合じゃなかった」と、
そう言葉を口にすると、
「今日中に大掃除、終わらせちゃお」と、
そんな風に呟くー。

12月に入ってから地道にコツコツと進めて来た大掃除ー。
それも、残る場所はあと少しー。

そう思いつつ、遥香は「よし!明日からの冬休みに入る前に
ササっと終わらせちゃおう!」と、そう呟くと
遥香は大掃除をし始めるー

がーー
大掃除をし始めて少ししたところで、
遥香は表情を歪めたー。

「ーーあれ…?」
遥香は”見覚えのないビールの空き缶”が
部屋の棚の裏側に落ちているのに気づいたのだー。

「ーー…ビール…?なんでー?」
遥香はそう呟くー。

「ーわたし…ビールなんて飲まないけどー…」
そう言葉を口にしながら、遥香は
自分にとって”見覚えのない”ビールの空き缶を見つめるー。

誰が飲んだか分からないような中身のないビールの空き缶に
嫌悪感を覚えながら、それをビニール袋へと入れると、
「ー誰もわたしの家には来てないしー…」と、
そう言葉を口にしながら、考え込むー。

どうして、自分が飲まないビールの空き缶が部屋に中に転がっているのだろうー。
そんな違和感を抱きながら、
遥香がふと、姿見の方に視線を向けるー

するとそこにはーー
邪悪な笑みを浮かべた”醜悪なおじさん”の姿が見えたー。

髪は薄くなりー、
不規則な生活を送り続けて来たのだろうかー
小太りの体格ー、
さらには清潔感のない肌ー
そんな男が、じっとこちらを見つめていたー

「ひっー!?」
思わずびっくりして遥香が尻餅をついてしまうと、
慌てて背後を振り返るー。

しかし、そこには誰もいないー。

遥香は「だ、誰ー!?」と、
そう言葉を口にして立ち上がると、
今一度鏡を見つめるー。

がー、既にそこに”謎のおじさん”の姿はなく、
遥香は戸惑いながら周囲の様子を伺うことしか
できなかったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

昨日のことは”疲れていたんだよねー”と
自分の中で飲み込んだ遥香は、
友達の清美(きよみ)と遊ぶ約束をしていたために、
おしゃれな服を着て、そのまま外へと出かけるー。

するとー、同じアパートに住むおばさんが、
遥香のほうを見てイヤそうな表情を浮かべたー。

「ーあ、おはようございますー」
遥香は戸惑いながらもぺこりと頭を下げるー。

このおばさんは感じの悪いおばさんで、
遥香を見ると、いつも露骨にイヤそうな表情をしたり、
チクチクと嫌味を言ってきたりするー。

「今日もすごいわねー」
おばさんが不満そうに言葉を口にすると、
遥香は”深く関わらないようにしよう”と内心で思いつつ、
ぺこりと頭を下げて、そのまま立ち去っていくー。

そして、そのまま清美と約束している現場にたどり着くと、
清美が「あ、遥香!」と、手を挙げたー。

清美は、とてもおしゃれな子で、
今日も大胆なミニスカート姿で、その美脚を晒しているー。

そのせいもあってか、いつも周囲の視線を集めてしまうー

「ーーま、またわたしたち見られてるよー…?」
遥香が苦笑いしながら言うと、
清美は「あははー気にしない気にしないー。
見られても何か減るわけじゃないんだしー」と、
全く気にする素振りを見せずに笑い飛ばすー。

そんなやり取りをしつつ、近くのファミレスへと入っていき、
適当なテーブル席に着席すると、
遥香は清美と共に、メニューを見つめながら
自分の食べたいものを決める。

「ーーえっと、このパスタと、このパスター
 あと、ドリンクバー二人分と、
 それとポテト、あとピザをお願いしますー」

遥香がそう注文を告げると、店員は少しだけ戸惑うような
表情を浮かべるー。

清美がその反応に気付いたのか、少しだけ不満そうな表情を浮かべると、
遥香は清美が何か言うよりも早く、
「ーーそれでお願いします」と、そう繰り返すと、
店員はようやく、そのまま立ち去って行ったー。

「いっぱい食べるねーとか言いたげな顔だったよね」
清美が少し不満そうに小声で言うと、
遥香は苦笑いしながら、返事をするー。

気を取り直して、二人は楽しそうに
ランチを済ませると、
遥香も充実した1日を終えて、帰宅するのだったー。

そして、2025年が終わり、
2026年を迎えるー。

しかし、新年早々、遥香は浮かない表情を
浮かべていたー。

それもそのはずー。
”恐ろしい夢”を見たのだー

この前、大掃除をしている際に鏡に映った”謎の男”ー
あの男が、この家で勝手にビールを飲み干している夢をー。

そして、その男の横で遥香自身が
意思のない人形のように立ち尽くす夢を、
そんな夢を見たのだー。

「ーーーー…」
遥香は疲れた様子で首を横に振ると
「初夢が変なおじさんなんてー…最悪ー」と、自虐的に
そう言葉を口にするー。

しかし、今日は清美と遊びに行く”約束”があるー。
遥香はため息を吐き出しながらスマホを手にすると、
清美と連絡を取り合いー、
そのまま待ち合わせ場所へと向かうのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

友達の清美との待ち合わせ場所にやってきた遥香ー。

しかし、時間になっても”清美”は姿を現さなかったー。

「清美ー…?」
戸惑う遥香ー。

清美に今一度連絡を入れてみるものの、
清美からの返事はないー。

「ーー…な、何かあったのかなー?」
戸惑いながらも、遥香は”もう少しだけ待ってみようかなー”と、
待ち合わせ場所で清美が姿を現すのを待つことにするー。

しかし、それでも清美は姿を現さなかったー。

「ーー?」
それだけではないー。
周囲が遥香のほうを見て、
先程からどよめいているー。

「ーーえっ…な、なにー…?」
遥香は思わずそう言葉を口にしながら、
周囲を見渡すー。

すると、周囲の通行人たちが、
遥香のほうを見て笑ったり、
中には”キモッ”と、言葉を口にするようなカップルもいたー。

「ーー!?!?」
遥香は、意味が分からずに自分の身体を見下ろすー。

がー…
特に何の違和感もないー。

何を笑われているのかも分からずー、
待ち合わせをしていた清美が到着しないことにも不安を覚えながら、
遥香は、そのまま家に向かって逃げるように帰宅すると、
荒い息を吐き出しながら、
頭を抱えたー。

何かー、何かが変だー。
年末年始の充実した日々を送っているはずなのに、
何かがー。

そう思っていると、
”これで俺の人生は変わるぜー”と、
そんな男の声が頭の中に響いて来たー。

「ーー!?!?!?!?!?」
かなり至近距離で聞こえた気がする男の声ー。

遥香は怯えた様子で周囲を見渡すー。

しかし、やはり”男”の姿はないー

「い、いったいー…いったい、何なのー?」
震える遥香ー。

遥香はスマホを手に、再び清美に連絡を入れてみるー。
しかし、清美への連絡は通じないー。

遥香はガクガクと震えながら
”あの男が何かしたのかもー?”と、そんな風に思い始めるー。

年末に、”鏡”にその姿が写っていた男ー。
初夢の中に登場した男ー。
そして、恐らく今、聞こえた”謎の声”も同じ男ー。

あの男が遥香に、遥香の周りに何かしているのかもしれないー。
”暗躍”しているのかもしれない。

そんな恐怖を抱く遥香ー。

がー
そんな時だったー。

♪~~~~

インターホンが鳴り、遥香がビクッとするー。

”ーーま、まさかー…”
遥香は”謎の男”がやってきたのかと、
そんな風に思うー。

しかしー、インターホンを確認すると
相手は普通の宅急便だったー。

普通に荷物を受け取り、
遥香はその荷物に視線を向けるー。

その荷物自体にも嫌な予感を感じつつ、
その中身を確認しようとするとー、
中から出て来たのはー…

”謎の煙”だったー。

「ーー!?!?」
遥香は慌てた表情で箱を閉じようとするー。
しかし、その前に煙は消え去りー
遥香にある”変化”をもたらしたー。

「ーーー…!!!!!!」
遥香は、鏡を見つめるー。

そこに写っていたのはーー
”小太りで清潔感のない中年のおじさんが、可愛い服を着て女装している姿”
だったー。

「ーーーえ…」
髪も、メイクも、可愛らしくしようとしているものの、
元の姿が”女装が似合う感じではないおじさん”であるため、
かなり無理があるー。

「ーーーえっ… ぁ… あ… あっーー」
鏡に写っているおじさんは、年末に鏡に反射しー、
初夢に出て来てー、そして声はさっき聞こえた”声”と同じだったー。

「ーーぁ…ああああぁあああああああああ」
遥香はー、いいや、40代後半のおじさんー、木下 健吾郎(きのした けんごろう)は、
女装姿のまま、その場で悲鳴を上げたー。

彼はー”宮下 遥香”などではなかったー。
否ー、宮下 遥香など最初から存在していなかったー

”別の自分に生まれ変わるー?”
健吾郎は、12月上旬の”ある出来事”を思い出すー。

”はいー。あなた自身を”洗脳”することで、あなたは別の自分に
 生まれ変わることができるのですー。
 あなたの理想の人間にー

 名前も、姿も変えてー”

健吾郎は、12月上旬”あるサービス”と出会っていたー。
それは、”理想の自分に生まれ変われる”というサービスだったー。

自分の人生をつまらないものだと感じていた健吾郎は
そのサービスを利用したー。

”設定”の際に、
自分の新しい名前を”宮下 遥香”に設定ー、
容姿も設定し、架空の趣味や、プロフィールを設定、
さらには”架空の友達”である清美の設定も作ったー。

そしてーー
そのサービス側が用意した”装置”で、健吾郎は
”自分が設定した通りの人間になったと思い込むように”洗脳されたー。

その日以降ー
健吾郎本人は、”わたしは宮下 遥香”だと思い込み、
自分にだけは”設定した美人の姿”に見えるようになり、声もそう聞こえるようになって、
自分を別人だと思い込んだー。

存在しない友達”清美”も、見えるようになったー。

この部屋に転がっていた”ビール”は、”遥香”になる日に、先に部屋の模様替えをした際に
見えない箇所に転がっていて気付かなかったものー。

ただーー…
まだ”そのサービス”はテスト段階で不完全だったー。

健吾郎の洗脳が少しずつ解けーー
その結果、鏡に映った姿が一瞬本来の自分に見えてしまったり、
夢に本来の自分が出て来たり、声が聞こえたりー、
架空の友人として設定した清美が、消えてしまったりしたー。

”テスト”も兼ねていたサービス側が、
健吾郎の状況をこっそりと監視していて、
”これはもうダメだー”と判断、正気に戻すための
特殊な煙を荷物として送り、健吾郎を正気に戻したのだー。

「ーーーぁ…ああああああああああああああっ!!」

自分は、遥香などではなかったー
若い20代の女性などではなくー、
40代後半のおじさんだったー。

近所のおばさんがいつも変な目で見て来たのは
近所のおばさんからは”女装したおっさん”にしか見えてなかったからー。

ファミレスで変な対応をされたのは、
”女装したおっさん”が一人でやってきて、
誰もいないのに「清美~!」などと喋っていたからー。

全てを思い出した健吾郎は女装した姿のまま頭を抱えると、
その場で、この世の終わりかのような叫び声をあげるのだったー…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話完結の
ちょっと変わったタイプのMCモノでした~~!

皆様の今の人生は、ちゃんと自分の人生ですか~?★笑

こんなことになっちゃうと、恐ろしいですネ~…!

お読み下さり、ありがとうございました~!!

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