<他者変身>全員影武者①~侵略~

とある王国ー。

その王国は存亡の危機に立たされていたー。

王宮にまで迫る敵軍。
しかし、王国は女王を守るため、”禁断の秘策”を発動したー。

それはー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

広大な自然と、豊富な資源から
繁栄を謳歌していた王国ー、
”ラフラ”ー。

しかし今、そのラフラ王国は存亡の危機に立たされていたー。

何故なら、
同盟を組んでいたはずの隣国
”騎士国家・カリバー”が、突如として宣戦布告をしてきたからだー。

ラフラにも、当然”兵士”はいるー。
しかし、戦闘に長けた国家ではなく、
相手との交渉や、豊富な資源、そして広大な自然・土地を武器に
これまで平和を謳歌してきた国で、
戦闘能力自体はそこまで高くはなかったー。

一方の騎士国家・カリバーは、
この世界に存在する数多くの国家の中でも
上位に位置するほど、”戦闘”においては高い実力を持つ国家ー。
”戦い”の方面に長けていないラフラ王国を壊滅させるには
十分すぎるほどの実力を兼ね備えた国家だったー。

「ーーリアナ女王ー」
側近のフレデリックがそう言葉を口にすると、
ラフラ王国の女王・リアナは困惑した表情を浮かべたー。

「ーわたしは、こんな争い、望んでいないのにー」
リアナは、民が傷ついていく姿に心底心を痛めていたー。

父である先代国王から受け継いだこの国ー。
若くして王国を受け継ぎ、それから3年ー。
問題なく平和な王国を維持してきた。

隣国のカリバーや他の国家とも上手く関係を
作り上げてきたはずだ。
それなのにどうして今になって
カリバーはこのラフラ王国に攻めて来たのだろうー。

そんなことを思いつつも、
既にラフラ王国の防衛線は次々と突破され、
敗走を重ねている状態ー。

騎士国家・カリバーの軍勢がこの王宮にも迫りつつあったー。

「ーーわたしも、これまでですねー」
女王リアナは悲しそうな表情を浮かべながらそう呟くー。

その表情は”死”を覚悟した表情。

しかし、側近のフレデリックは
「姫様、身を隠すのです」と、そう言葉を口にする。

ラフラ王国の王族は代々、民を大切にし、平和な王国を築き上げてきた。
それ故に、民たちからは非常に強い支持を得ていて、
その影響力は絶大だー。

”姫”さえ生きていれば、まだ何とかなるー。
別の同盟国である”フューリス”に助けを求めれば、
カリバーも撃退できるかもしれないー。

”魔導国家”フューリスの現国王は、
ラフラ王国の女王・リアナを妹のように可愛がってくれていて、
助けを求めれば、高い確率で助けてくれるー。

ただー、それには”眼前の危機”を突破しなければならないのも事実だったー。

「身を隠しても、”カリバー”はわたしを見つけ出すまで、
 わたしを探すでしょうー
 それに、ここは完全に包囲されましたー。
 逃げ切る道があるとはとてもー…」
弱気な様子でそう呟く女王・リアナ。

しかし、側近のフレデリックにはある”秘策”があったー。

「ー姫様ー
 ”奥の手”を使いましょう」

そう言葉を口にするフレデリック。

「奥の手ー…?」
女王リアナは少し不思議そうな表情を浮かべると、
側近のフレデリックは”できればこのような手は使いたくありませんがー”とした上で
女王リアナがここから逃げ延びるにはそれしかない、と、
そう言葉を続けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

騎士大国・カリバーの
騎士団長を務める男・レイスは
笑みを浮かべていたー。

「クククー。ラフラ王国など所詮はこの程度。
 我々カリバー騎士団に勝てる道理などなし」

レイスはそう言い放つと、王宮前の大階段を堂々と登り始めるー。

「よいか?不要な虐殺は避けよー。
 逆らう兵士は返り討ちにしても構わぬが、
 一般の民には可能な限り手を出すな」

レイスの言葉に部下の騎士たちもそれに「はっ!」と、答えるー。

騎士大国・カリバーには、カリバーなりの目的があるー。
彼らとて、ラフラ王国を滅茶苦茶にしたいわけではないし、
ラフラ王国を支配下に置いたあとに、
民から石を投げつけられるような事態は避けたいー。

だからこそ、余計な虐殺は望んでいなかったー。

「ーーー!」
王宮への大階段を進んでいた騎士団長・レイスが表情を歪めるー。

そこには、自らを縄で縛り、
膝をついた女王・リアナの姿があったからだー。

「これはこれは女王ー。何の真似ですかな?
 降伏するおつもりか?」
レイスが嬉しそうに言うと、
女王・リアナは「ええ」と、そう答えながら
「わたしはどうなっても構いませんー。が、この国の民と
 臣下たちの身の安全は保証していただきたいのですー」と、
そう言葉を続けたー。

「ーーーーー…」
騎士団長・レイスは少しだけ表情を歪めるー。

が、すぐに笑みを浮かべると
「なるほどなー。影武者かー」
と、そう言葉を口にしたー。

「影武者を降伏させて、
 本物の姫は逃げ延びようという、そういう目論見だろうが、
 そうはいかないー」

騎士団長・レイスはそう言葉を口にすると、
自らを縄で縛った状態で姿を現した女王・リアナは
表情を歪めるー。

”やはり、そう上手くは行かないかー…”

そうー
図星だった。

ここにいる女王・リアナは
側近であるフレデリックが”変身”した姿ー。

側近のフレデリックが女王リアナに進言したのは
”禁忌の術”である、”他人に変身する術”を用いて
女王リアナの姿に変身ー、
本物のリアナがその間に脱出の隙を伺うー、という作戦だった。

そして側近のフレデリックは自ら、
率先して役目を引き受けて女王リアナに変身、
こうしてリアナの身代わりになろうとしていたー。

周辺の国々にも知れ渡るほどの美貌の持ち主であるリアナ。
そのリアナの変身しているフレデリックは、
姫の美しさに改めて、感動しながらも、
己の欲望でドキドキするのではなく、
”やはり、姫様は生き延びねばならぬお人ー”と、
改めて、姫を絶対に逃がすのだと、
そんな決意を心の中でしていたー。

「ーーバレてしまっては仕方がない」
リアナに変身しているフレデリックは、
予めドレスの中に隠していた”爆弾”を、縛られた状態のまま”起動”させるー。

「ーーー!」
騎士団長・レイスはすぐにそれに気付いて退避を命じるも、
間に合わずにその爆発に包まれたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー!!!」
王宮の外から”爆発音”が聞こえたことで、
女王リアナは表情を歪めるー。

「ー今のはー」
リアナがそう言葉を口にすると、
親衛隊長の男は「恐らくフレデリック殿はー」と、
そう言葉を口にするー。

フレデリックの作戦は二段構えー。
リアナに変身した状態で降伏し、それで事が収まればそれで良し、
失敗した場合は自爆することで
カリバー国の騎士に打撃を与えると同時に、
”王宮の中に”作戦失敗を伝える役割を担っていたー。

”作戦の第2段階”を直ちにスタートさせるためにー。

「ーー姫様、どうなされますか?」
親衛隊長の男がそう言葉を口にすると、
女王リアナは一瞬躊躇うような表情を浮かべたものの、
すぐに決断したー。

「やりましょうー。フレデリックの死を無駄にするわけにはいきません」

そう言葉を口にすると、女王リアナの合図と共に
ラフラ王国一の魔術師である女が”禁忌の術”を発動したー。

そして、その術は王宮全体に効力が及び始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「フンー。レイスは戦士したかー
 愚かなやつめー」

一方、王宮前の大階段では、フレデリックの最後の爆発により、
騎士大国・カリバーの騎士団長・レイスは死亡、
別の騎士団長である男・ルードが笑みを浮かべながら
そう言葉を口にしていたー。

静まり返った城下町ー
その道端ではネズミがうろつき、排水溝の中へと入っていくー。

そんな街を歩きながら、
ルードは戦力を結集させると、
「城の中にも影武者がいるかもしれんー」と、
そう配下の騎士たちに言葉を口にした上で、
「姫らしき人物を見つけた者はすべて捕らえよ」と、
そう言葉を口にするー。

「ーラフラ王国の支えになっているのはリアナ姫だー。
 リアナ姫さえ捕らえてしまえば、ラフラなど瓦解するー」
騎士団長・ルードはそう言葉を口にすると、
意気揚々とラフラ王国の王宮の中へと足を踏み入れたー。

がーー

「ーー!?!?」
城に足を踏み入れると同時に、
”大量のリアナ姫”が、騎士大国・カリバーの騎士たちを
出迎えた。

「ーこ、これは、い、一体どういうことだ!?」
騎士団長・ルードはその異様な光景を前に
思わず声を上げるー。

数十人のリアナ姫がそこにいたのだー。

「ーわたしは、逃げも隠れもしません」
「平和を乱すあなたたちに屈したりはしない」
「ーーここから立ち去りなさいー」

リアナ姫たちが一斉にそんな言葉を口にすると、
騎士団長・ルードは呆然とした表情を浮かべるー。

”影武者”が王宮の中にいるであろうことは、
先程自爆したリアナ姫の”偽物”がいたことから、
既に覚悟はしていたー。

が、数十名のリアナ姫がいきなり、
王宮に足を踏み入れた直後に現れるのは
想定外だったー。

”いったい、どうなっているー?
騎士団長・ルードは流石に戸惑いながら、
心の中であれこれ考えを巡らせるー。

”この国には、女王に似ている人間がこんなにもいるのかー?”
そう思いつつ、ルードは王宮の最初の部屋にいる
リアナ姫たちを見つめるー。

本物のリアナ姫と”全く”と言っていいほど、
見た目に変化がないー。
声もそうだー。

国のトップには”影武者”が少なからずいる場合がある。
しかし、容姿・声・振る舞いなどあらゆる要素を
満たさなければ影武者は務まらない。

リアナ姫は周辺国にも轟く美貌の持ち主ー。
そんな彼女”そっくり”になるなど、たやすいことではないはずだー。

「ーーどういうことなんだこれはー?」
「リアナ姫は、何か特殊な能力を持っているに違いないー」
「こんな人数、どうすりゃいいんだー」

騎士団長・ルードが率いる騎士団の騎士たちに
動揺が広がっていくー。

「ー狼狽えるな!」
騎士団長・ルードはそう声を上げながらも
困惑の表情を浮かべる

騎士大国・カリバーの”王”からは、
リアナ姫を捕らえるように命令されているー。

カリバー側にも理由があってのことではあるものの、
いきなり他国に侵略し、そのトップをー、
しかも、”慈愛の姫”として知られるリアナ姫を
殺したとあれば、
周辺の他国からの批判はさらに強くなるー。

だからこそ、リアナ姫を殺めるわけにはいかないー。

「ーー痛めつけるぐらいは構わぬ。
 全員ひっ捕らえろ!」
騎士団長・ルードがそう言葉を口にすると、
武器を手に向かってくるリアナ姫たちに
立ち向かう騎士たち。

そんな様子をー
王宮の奥ー、女王の間に控えるリアナ姫は、
リアナ姫に変身した親衛隊長と共にその様子を見ていたー。

ラフラ王国一の魔術師である女が、
魔術で、王宮のホールでの戦いの映像を
表示させているー。

「ーーー恐ろしい光景ですねー」
リアナ姫が”リアナ姫に変身した”兵士たちが
戦う光景を見て、そう呟くー。

「ーーーみんな、姫様を守るために必死なのです」
リアナ姫の姿をした親衛隊長がそう言うと、
リアナ姫は少し申し訳なさそうな表情を浮かべるー。

「気に病むことはありませんー。
 これも、姫様と王国のため」

リアナ姫の姿をした親衛隊長が言うと、
リアナ姫は少し恥ずかしそうに笑うー。

「ーそれにしてもー、”わたし”に言われると
 不思議なものですねー」
とー。

「ーははーそれもそうですねー」
リアナ姫の姿をした親衛隊長がそう言葉を口にすると、
同じくリアナ姫の姿に変身した魔術師も、少しだけ笑ったー。

この魔術師の”禁断の術”で王宮内のすべての人間が
”リアナ姫”に変身しているー。

王宮内の人間は今や”全員”が影武者だー。

とは言っても、
騎士大国カリバーも、一度初めてしまった進攻を
止めることはないー。
意地でも本物のリアナ姫を見つけ出そうと躍起になっているー。

「ー騎士団長!被害は想定以上です!」
騎士団長・ルードはそんな報告を受けると
表情を歪めるー。

”どれが本物”か分からないー
そのため、殺すこともできずー、
けれど、”向こう”はこちらを撃退するべく、命を狙って来ている状態ー。

苦戦するのは当然だったー。

騎士団長・ルードは困惑の表情を浮かべると、
「増援を要請しろ」と、そう言葉を口にするのだったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

変身の術によって
王宮内の人間が全員姫に…!

こうなってしまうと、本物を見つけ出すのも一苦労ですネ~!

続きはまた明日デス~!!

続けて②をみる!

「全員影武者」目次

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他者変身<全員影武者>

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