<入れ替わり>明日、君が君とは限らないから①~暴走~

人類に大きな発展をもたらしていた
”入れ替わりシステム”が暴走してしまったー。

システムは制御不能に陥り、各地で
”入れ替わり”現象が続発ー。

世界は緩やかな終わりへと向かっていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーみ、美咲(みさき)ど、どうしちゃったのー!?」
共に行動していた親友・美咲の豹変に戸惑い、
声を上げるのはー
”数か月前”まで、大学に通っていた元・女子大生の
片桐 真梨香(かたぎり まりか)ー。

真梨香は、目の前にいる同じく元・女子大生の
志藤 美咲(しどう みさき)に向かって声をかけていたー。

真梨香と美咲が”元”大学生なのは
何か悪さをして退学になったわけではないし、
本人が自分から辞めたわけでもないー。

社会がーー
”崩壊”状態に陥ってしまい、
大学自体の機能が停止してしまったのだー。

「ーーーへへへへへっー
 2連続で”美女”なんて最高だぜー」
真梨香の親友・美咲は、先ほどまで浮かべていた
困り果てた表情とはまるで別人のような
下品な笑みを浮かべながら、ニヤニヤとそう言葉を口にするー。

「ー美咲!!」
真梨香が、”おかしくなってしまった親友”に対して、
そう叫ぶー。

けれどー…真梨香も分かっているー。
”美咲”の身に何が起きたのかー。

そして、今の美咲に声をかけても、もはや”意味がない”ことも、
真梨香はちゃんと理解しているー。

けれど、”親友”にも”それ”が起きてしまった”現実”を
受け入れるのには時間がかかったー。

それだけ、ショックだったー。

「真梨香ー…もう、あれは志藤さんじゃないー」
悲しむ真梨香の横から、穏やかなー
けれども険しさも感じられる口調でそう言葉を口にしたのは、
”元”男子大学生の小野田 慎吾(おのだ しんご)

真梨香と同じ大学に通っていた男子で、
真梨香の”彼氏”ー。

「ーー分かってるー…分かってるー…けどーーー」
真梨香は心底悲しそうに言葉を口にすると、
美咲を見つめるー。

「ーへへへへ そんな顔すんなってー
 へへーお前”この女”の友達だろー?」
美咲がニヤニヤしながら、そう言葉を口にすると、
真梨香は「美咲の身体で変なことしないで!」と、そう叫んだー。

「ーーー!」
がー、慎吾はそんな美咲に声をかけるー。

「ー入れ替わりは同じ場所で連続して起きることもあるからー、
 ここにいたらまずいー。
 早く離れないとー」

とー。

その言葉に、真梨香は悲しそうにしながらも、
慎吾に手を引かれるようにして、その場から離れていくー。

この世界は、今ーー
”入れ替わりシステム”の暴走によって、
崩壊状態にあったー。

数百年前ー
この世界では、”入れ替わりシステム”が開発されたー。
人間と人間を入れ替えることができる技術で、
”互いに同意した人間同士”が入れ替わったり、
一時的に入れ替わりを楽しむことができるお店、
また、病院などで手術を怖がる患者の代わりに、
”手術を代わる”など、様々な用途で
入れ替わりは活用され、発展してきたー。

”入れ替わり”は、法律上でしっかりとしたルールの元で運用され、
また、制御用の人工知能により、”悪用”できないように
厳格な基準の元で運用されてきたー。

がーーー
その”制御用の人工知能”が暴走し、
入れ替わりシステム自体が暴走してしまったー。

”入れ替わった人々が喜ぶ姿”を見続けた人工知能は
やがて、”入れ替われば入れ替わるほど、人間は喜ぶ”と
そう思ってしまったー。

”そんなに入れ替わりたいなら、みんな入れ替えてあげないといけない”と、
そう思ってしまったー。

その結果ー、世界中の人間に”入れ替わり”が無差別で発生するようになってしまい、
世界はあっという間に崩壊し始めていたー。

大学も機能しなくなり、
”誰が”
”今”
”どこにいるのか”も、全く分からない状態ー。

慎吾も、真梨香も、互いの家族は既に”入れ替わって”しまっていて、
”どこに”いるのか分からないー。
どんな姿なのかも分からず、消息不明の状態だー。

慎吾・真梨香の二人は”まだ”自分の身体で
逃げ惑っていたものの、このままではいずれ
自分たちも”急に”誰かと入れ替わってしまう可能性は十分にあるー。

「ーーーー……わたしも、美咲みたいになっちゃうのかなー」
近くの建物の影までやってくると、真梨香はそう呟くー。

「ーー分からないー…」
慎吾は周囲の様子を見つめながらそう言葉を口にするー。

「ーでもーー…
 たとえ真梨香がおっさんになっても、おばさんになってもー
 逆に赤ちゃんになっても、
 俺が真梨香を探し出して守るからー」
慎吾がそう言葉を口にすると、
真梨香は少しだけ安堵の表情を浮かべながらー、
「ーー赤ちゃんと入れ替わっちゃったりしたらー
 喋れるのかなー?」と、そう言葉を口にするー。

「ーさぁ…でも、”ペラペラしゃべる赤ちゃん”は
 見たことないから、
 赤ちゃんの身体になると、成長するまで喋れないのかもなー」
慎吾はそう言うと、真梨香のほうを見つめるー。

明日ー
”真梨香”が”真梨香”でいてくれるかどうかも分からないー。
今のこの世界は、そんな状況だー。

1分後には、真梨香と”誰か”が入れ替わってー、
真梨香が真梨香でなくなってしまうかもしれないー。

1分後にはー、慎吾が誰かと入れ替わる可能性もあるー。

そんな、過酷な世界ー。

”入れ替わりシステムの暴走”
当然ー、人類は手をこまねいてそれを見ていたわけではないー。

入れ替わりシステムが暴走した直後ー、
システムを管理する”世界入れ替わり機構”の技術主任である
スコットは、ただちにシステムをシャットダウンしようとしたー。

がーーー

人工知能は既に”自我”に目覚めてしまっていたー。

”どうして、人間が喜ぶことをしようとしているのにー、
 人間は僕を消そうとするのー?”

そんな疑問を抱いた人工知能ー。

そしてーーー
”人間を喜ばせようとしている僕を消そうとする人間は、悪”
だと、そう判断してしまったー。

システムをシャットダウンしようとしたスコットは、
”ハエ”と身体を入れ替えられてしまい、
シャットダウンに失敗ー。

強制的に電源を切断しようとした”世界入れ替わり機構”の代業、
スティーブンも、”人類の敵”として、アリと身体を入れ替えられてしまったー。

しかも、入れ替わりシステムの電源は”宇宙”に打ち上げた衛星から
太陽光エネルギーで賄っていて、そう簡単には停止できないー。

事態を重く見た各国は、ミサイルで衛星を破壊、
入れ替わりシステムへの電力供給を絶ち、
入れ替わりシステムを止めようとしたものの、
ミサイルを発射した直後、それを察知した人工知能によって、
”各国の司令官”と、”ミサイル”が入れ替わってしまい、
”物体と入れ替わった”司令官たちはその場で廃人状態となり、
発射後、宇宙の衛星に正確に命中させるために、操作を要するタイプで
あったために、操作する人間がいなくなり、ミサイルは衛星に命中せずー、
そのまま宇宙で爆散したー。

当然、ミサイルと入れ替えられてしまった各国の司令官は
ミサイルとして爆発し、そのまま中身は戻ってこなかったー。

”逆らう人間”は
容赦なく虫ー、
そして虫だけではなく、”物体”とも入れ替えてしまう人工知能ー。

もはや、入れ替わりシステムの暴走を止める手立てはなく、
また”入れ替わりシステム”に危害を加えようとした人間が
ことごとく”入れ替わり”によって
排除されたことによって、各国の重鎮や、
”世界入れ替わり機構”の人々は、もはや
”入れ替わりシステム”に手出しすることをやめてしまったー。

自分も”虫”と入れ替えられてしまうかもしれないー。
自分も”物体”と入れ替えられてしまうかもしれないー。
そう思ったらー、何もできなかったー。

そしてー…今に至るー。
人類は何もできないまま、世界中の人々・生物を
いつでも入れ替えることができる”入れ替わりシステム”に
翻弄される状態になりー、
社会は崩壊状態になってしまったー。

誰がいつ、誰と入れ替わるか分からないー。
そんな社会は、簡単に崩壊してしまったのだー

「ーーー…これから、どうするのー?」
真梨香が不安そうに呟くと、
慎吾は険しい表情を浮かべながら、
「ーまずはこの近くから離れようー」と、
そう呟くー。

一度入れ替わりが発生した場所ではー、
付近で連鎖して入れ替わりが起きやすい傾向にあるー。

一緒に行動していた真梨香の親友・美咲が入れ替わってしまった以上ー、
この近くでまた入れ替わりが連鎖して起きる可能性があるー。

入れ替わりシステムを運用している人工知能の”傾向”の一つだー。

もちろん、地球のあらゆる場所で入れ替わりは起きていて、
今この瞬間、慎吾たちがいる地球の反対側で入れ替わりが起きることも
あるけれど、一度入れ替わりが発生した場所は、その近い時間に
入れ替わりが連鎖することが多くー、一緒にいた人が入れ替わってしまったら
”逃げる”というのが鉄則だったー。

「ーーーーー」
慎吾は、笑いながら胸を揉んでいる女が視界に入り、表情を歪めるー。

人々の中には”入れ替わり”を望む人間もいるー。

慎吾の友人だった男の一人も”ガチャみたいで面白れぇじゃねぇか”などと
最初の頃は言っていて、”美少女になりてぇ!”などと叫んでいたー。

その友人が”今”どんな身体でいるのかは分からないが、
世の中には”誰かになりたい”と願う人間もいるー。

「ーーーーー真梨香ーー
 この先に、避難施設があったはーーー」

慎吾はそこまで言いかけて表情を歪めたー

”声”が違うー
いやーーー”立っている場所”もー。

「ーー!?!?!?!?!?!?!?」
慎吾が自分の身体を見下ろすと、そこにはーー
”胸”が見えたー
しかもーーーその右手はちょうど”胸”を揉んでいる最中だったのかー、
胸に触れていてー、服は乱れていたー。

「えっー」
声も”女”の声だー。

「ーーー!!」
慎吾は即座に察したー。

”入れ替わってしまった”のだとー。

「ーーーー!!」
今まで、一度も入れ替わることなく、
なんとかやり過ごしてきていた慎吾ー。

しかし、それは別に慎吾が特別だったからではなくー、
単なる”運”ー

が、ついにその運も尽きて、制服姿の女子高生と
入れ替わってしまったー。

「ーーー…!」
少女になってしまった慎吾は表情を歪めるー。

入れ替わった瞬間の状況からー、
この子は、胸を揉んでいたー…気がするー。
身体も妙にゾクゾクしているし、イヤな予感がするー。

何故ならーー
”慎吾”と入れ替わったこの子の中身が、”この子”とは限らないのだー

「ーーー」
曲がり角の鏡で顔を確認するー
穏やかで優しそうな子には見えるー。

けどー、入れ替わりが蔓延するこの世界では、
慎吾と入れ替わったこの子の中身が、既に”変質者”である可能性も
十分にあるのだー。

もしも、そうだった場合ー
彼女の真梨香と一緒にいる”慎吾”の中身はーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーぐへへへへへーー」
”慎吾”が突然笑い出すー。

「ーえ…ど、どうしたのー?」
真梨香が怯えた表情を浮かべると、
慎吾はニヤリと笑ったー

「ーあ~あ…せっかく可愛い子の身体だったのにー
 男になっちまったー」
そう呟く慎吾ー。

「ーーえ……し、慎吾ー…?」
不安そうに言葉を口にしながら、真梨香は後ずさるー。

がー、前の前にいる”慎吾”は、
もう真梨香の知る慎吾じゃなかったー。

慎吾はたった今、別の場所にいた女子高生の”中身”だった
変態男と入れ替わってしまい、
慎吾の身体を今使っているのは、変態男ー。

「ーーまぁいいやーちょうど近くに可愛い子発見~」
慎吾(変態男)はニヤニヤしながら真梨香に近付くと、
真梨香の腕を掴んで、笑いながら
無理矢理真梨香の胸を触るー

「ちょっ!?や、やめて!」
真梨香が悲鳴を上げるー。

「ーぐへへへ この男はお前のなんだ?
 兄か?彼氏か?友達か?」
慎吾(変態男)はそう言いながら、真梨香に襲い掛かるー。

真梨香が目に涙を浮かべながら悲鳴を上げたその時だったー。

背後からー、
突然、慎吾(変態男)の身体に何かが叩きつけられて、
慎吾(変態男)は気絶してその場に倒れ込むーー

「ーーーえ」
真梨香が顔を上げると、
そこにはー、見知らぬ女子高生の姿があったー

「ーー真梨香ーー…俺… 慎吾だよー」
女子高生・菜々美(ななみ)の身体と入れ替わってしまった慎吾ー。

慎吾は”偶然”菜々美がいる場所が、さっきまでいた場所の近くだと
気付き、真梨香の元に駆け付けたのだったー。

入れ替わる相手は完全にランダムー。
地球の反対側の人間と入れ替わることもあれば
たまたま近くの人間と入れ替わることもあるー。

走れば数分の距離の女子高生と入れ替わった慎吾は、
入れ替わり相手の菜々美の身体で、真梨香を助けに駆け付けたー。

「し、慎吾なのー?」
戸惑う真梨香ー。

菜々美(慎吾)は静かに頷くと、
「ーーー”俺”が目を覚ます前に逃げようー」と、
気絶した”元自分”を見つめながら静かにそう呟いたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

入れ替わりシステムが暴走している
世界でのお話デス~!!!

こんな風に、いつ入れ替わりが起きるか分からない状態だと
大変ですネ~…!

続きはまた明日デス!!

コメント