<入れ替わり>明日、君が君とは限らないから③~混沌の果て~(完)

入れ替わりが無作為に起きる中、
彼女とはぐれてしまった彼…。

混沌の世界に生きる二人の運命は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なんだよー。怖気づいたのか?」
”入れ替わりシステム”の破壊を狙う女(達夫)が言うー。

「ーー…い、いやー。
 け、けど、今まで何人も失敗してー」
新次郎(慎吾)がそう言うと、女(達夫)は「もういいー」と
それだけ言葉を口にすると、
「ーチッ、作戦直前で”相棒”の中身が変わっちまうとか、最悪だぜ」
と、それだけ呟きながら、そのまま奥に向かって行くー

「ーや、やめとけって!」
新次郎(慎吾)がそう叫ぶも、女(達夫)はそのまま奥に向かってしまうー。

「ーーー…ーー」
新次郎(慎吾)は後を追おうか考えたものの
「俺は、まだ死ねないんだー」と、そう言葉を口にすると、
女(達夫)とは反対側に向かって歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーっーーこういう時、”元の俺の身体”の方が良かったよなー」
女(達夫)は、壁をよじ登りながら、華奢な身体を見つめて、
不満そうに呟くー。

「まぁいいー」
”用意した爆弾”を手に、女(達夫)は、入れ替わりシステムを統治する
人工知能がある”中枢”へと向かおうとするー。

”入れ替わりシステム”を統治する人工知能はー
”人間は、入れ替わると喜ぶ”との考えのもとー、
人間を喜ばせようと、各地で入れ替わりを発生させ続けていたー。

元々ー、”暴走前”は、希望した人間や必要とする人間が入れ替わりー、
社会は発展していたー。
”希望した人”や”必要とする人”たちが、入れ替わりシステムを利用していたため、
その人たちは”喜んで”当然なのだー。

しかし、人工知能は”入れ替わると人間は喜ぶ”と思い込み、
人間たちを喜ばせるために、入れ替わりを無差別に発生させるようになったー。

そしてーーー
”人間を喜ばせるために頑張っている自分を破壊しようとする人間は
 「排除するべき悪」”だとー、今はそう思っていたー

「ーーククー”俺”がこの世界を救ってやるー」
女(達夫)は爆弾を手に、中枢へと近づいていくー。

しかし、その時だったー。
入れ替わりシステムが女(達夫)の動きを検知ーー
即座に”入れ替わり”が発動するー。

”女(達夫)”と”爆弾”が入れ替わりー、
女の身体を使っていた達夫は”爆弾”にー、
爆弾が女の身体になってしまうー。

中身が爆弾になった女は、目を見開いて、口を半開きにしたまま
その場に倒れ込むー。

爆弾になってしまった達夫は、”な、なんだこれー!?”と、
心の中で叫ぶー。

がー、次の瞬間ー、
”声を発する”と言う行為が、爆弾にとっては”爆発する”という行為だったのか
爆弾(達夫)は爆発ー、
女(爆弾)の身体も巻き込んで、そのまま二人ともこの世から消されてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー…!」

それから半月ー。
新次郎(慎吾)は、それ以降は入れ替わりに巻き込まれることなく
”新次郎”の身体で行動を続けていたー。

がーー
この日ーーー

「ーふふふふふふふーー
 馬鹿な男♡」

笑みを浮かべながら、チャイナドレス姿で反対側から歩いてきた女を見て、
新次郎(慎吾)は思わず表情を歪めたー。

「ーーー…あら?ーー
 わたしに何か用かしら?」

それもそのはずー
チャイナドレス姿のその女はー
彼女の”真梨香”だったからだー。

「ーーー真梨香ー…?」
新次郎(慎吾)がそう言うと、
真梨香はクスッと笑うー。

当然、真梨香は半月前に”美由紀”という子の中身と入れ替わっていて、
しかも、その後も何度か入れ替わっているため、
もう、”真梨香”ではないー。

新次郎(慎吾)も、一目見て、
”今の真梨香はもう真梨香じゃない”ということは即座に察したものの、
それでも、戸惑わずにはいられなかったー。

「ーーー…あら?”この身体”の知り合いー?」
”真梨香”がそう言うと、
「ーーそうー。真梨香って言うのねー。この身体ー。
 でも、ごめんねー。今のわたしは”亜梨沙(ありさ)”だからー」
と、真梨香になった”亜梨沙”を名乗る女がそう呟くー。

「ーこの身体、便利なのよー?
 男を誘惑するにはぴったりー。」
真梨香(亜梨沙)がクスクス笑いながら
チャイナドレス姿の自分に触れるー。

新次郎(慎吾)は怒りを覚えながらも、
「ーー俺は、その子の彼氏だー」と、そう名乗ると、
真梨香(亜梨沙)は「あらあらー」と、笑いながら
言葉を続けたー

「ーだったら、わたしが”彼女さん”の身体で
 あなたを気持ちよくしてあげようかー?」
とー。

”亜梨沙”は、真梨香の身体で男を誘惑して、
男から金品や、食料を巻き上げる行為を繰り返していたー。

新次郎(慎吾)は険しい表情を浮かべながら
「ーーーふざけるなー」と、それだけ言葉を口にすると、
真梨香(亜梨沙)の誘惑に負けずに背を向けるー。

「ーあらあらー…
 ーねぇ、わたし、あなたとしたいな♡」
真梨香(亜梨沙)が誘惑するような言葉を口にするー。

しかし、新次郎(慎吾)はそれには乗らずに
逃げるようにして走り出すー。

”やっと、真梨香と会えたと思ったのにー”

大切な人を、探し続けている新次郎(慎吾)ー
でも、慎吾が会いたいのはー”真梨香”の中身だー。
真梨香の身体じゃないー。

「真梨香ーーー…今度会えたらー、絶対にーー…
 絶対に、離れないからなー」
新次郎(慎吾)は、そう言葉を口にしながら、
荒れ果てた街を走り続けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー真梨香ーーー」
屈曲な男の身体になってもー、
ツインテールの美少女の身体になってもー、
おじいさんの身体になってもー、
病弱な少女の身体になってもー、
とにかく、慎吾は真梨香のことを探し続けたー。

大人しそうな美少女の身体になった際には、
変な男に襲われて酷い目に遭ったもののー、
それでも、とにかく慎吾は真梨香を探し続けたー。

「ーーは~~…今日も手掛かりなしかー」
OLらしき女・麗奈(れな)の身体で、ため息をつく慎吾ー。

”入れ替わりシステム”の特徴かー、
”一度”入れ替わりに巻き込まれると、それ以降は
入れ替わりに巻き込まれる可能性が高まるー。

どうして”そう”なのかは分からないものの、
人工知能の何らかの考えが作用しているのだろうー。

”最初の1回”まではそれなりに逃れることができても、
1回でも入れ替わりを体験すると、以降は、
短期間で入れ替わることも多いー。

今の”麗奈”の身体は今日で12日目ー。
麗奈(慎吾)は、息を吐き出すと、
「俺は真梨香を見つけるんだー。絶対にー」と、
そう言葉を口にしながら歩き出すー。

けれどー…”何の手がかり”も得られない状態ー。

仮に手がかりを得られたとしても、
その人物のところにたどり着いた時には
もう入れ替わっていて、”真梨香”はまたどこかに
行ってしまっている可能性もあるし、
当然”その逆”もあるー。

自分自身も、いつ入れ替わるか分からずー、
今、この世界で一度はぐれてしまった人間と再会することは困難に近かったー。

「ーせめて、スマホが使えればなぁ」
麗奈(慎吾)が戸惑いの表情を浮かべながらそう呟くー。

”スマホ”は、もう使えないー。
入れ替わりシステムの暴走が始まって以降ー、
”各企業”も”インフラ”も活動を停止したー。

何故ならー、”働いている人たち”が入れ替わってしまい、
どこも仕事にならなくなってしまったからだー。

しかもー、”遠くの人間”と入れ替わってしまう可能性もあり、
”入れ替わっちゃったら、新しい身体でそこで働くこと”も難しかったー。

どこの企業も職場も、人々の中身が入れ替わり続けるせいで、
情報も全て流出したし、牢屋の中にいる犯罪者も入れ替わりで
野に解き放たれてしまっている今、もはやどうすることもできなかったー。

”スマホが使えれば”
相手のSNSでも、メールでも、とにかく連絡を取ることはできたかもしれないー。

けど、スマホは使えないし、もうSNSやそういったものも機能を停止しているー。

”入れ替わっても、連絡を取り合って再会すればいい”
なんてことはできないのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー知ってるよー」

「えーー」

それから1か月後ー。

”健太”と名乗る女がそう言葉を口にしたー。
身体は”アイドル”だった、璃々(りり)という子の身体だが
中身は”健太”という男のようだったー。

その璃々(健太)が言ったのだー。

「ーーーもう何カ月も前だけど、僕の妹が使ってた身体と
 入れ替わった子が”真梨香”って名乗ってたー。
 彼氏と入れ替わりではぐれちゃってー、て言ってたからー、
 たぶん、君の彼女だと思うー。」

とー。

”健太”は、真梨香が最初に入れ替わってしまった際に、
偶然、遭遇した男だー。
既に真梨香は”また”入れ替わってここにはいない様子で、
健太自身も、真梨香と会ったときとは違う身体になっていたものの、
現在はサラリーマンの男の身体になっている慎吾と
”偶然”出会い、璃々(健太)がそう言葉を口にしたのだー

「ーーははーーそっかーー……」
サラリーマン(慎吾)が、寂しそうに呟くー。

璃々(健太)は、そんな”慎吾”のほうを見つめながら、
「ー僕も、妹をずっと探してるんだー。気持ちは分かるよー」と、
苦笑いするー。

「まぁでも、”この身体”だとなかなか身動きがとりにくいから
 早くまた入れ替わって欲しいんだけどねー」
璃々(健太)は”元アイドル”の身体だと、中身が違っても
変なやつらが寄ってきて面倒なのだと自虐的に笑うー。

「ーーー」
サラリーマン(慎吾)は戸惑いながらも
「お互い、見つかるといいですねー大事な人が」と、そう呟くー。

「あぁ」
璃々(健太)は静かに頷いたー。

程なくして、璃々(健太)は、”また”入れ替わって、
璃々の中身は高齢の男性になったー。

慎吾も、別の身体に移動ー、
華奢な雰囲気の香織(かおり)という子の身体になったもののー
その直後ーーー
”それ”は起きたー。

荒れくれものの集団に襲撃されて、
香織(慎吾)は、散々好き放題された挙句に
暴力を振るわれてボロボロになってしまったー

「くそー…真梨香ーーー」
香織(慎吾)は、必死に歩いていたもののー
ついに、その近くで倒れ込んで、意識を失ってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー」
香織(慎吾)が目を覚ますと、
そこは、大きなテントの中だったー

「ーーっ…」
香織(慎吾)は少し表情を歪めながら身体を起こそうとするー。

てっきり、死んだかと思ったー。
でも、ここはまだ”あの世”ではないー。

そう思いつつ、香織(慎吾)が身体を起こすと、
「ーーあ!」と、男の声がしたー。

香織(慎吾)が、顔を向けると、
そこには強面のゴツイ男がいたー。

ビクッと震える香織(慎吾)ー

「ーーご、ごめんなさいー

 きっと何か酷い目に遭ったんだろうけどー、
 心配しないでー

 こんな見た目だけど、”中身”は別人だからー」

強面の男はそれだけ言うと、
香織(慎吾)はホッと安堵の息を吐き出してから言葉を口にしたー。

「ーーここは、生存者のためのキャンプ地の一つねー。
 あー…それでーーこんな見た目だけど、
 中身はー…わたしは”真梨香”って言うんだけどー」
強面の男が、そう言葉を口にしながら笑うー。

「ま、真梨香?」
香織(慎吾)が表情を歪めるー。

「ーーあははーこの見た目で”真梨香”なんて名乗られても
 違和感凄いと思うけどー、でもー、この身体の名前は
 知らないしー」
強面の男(真梨香)がそう言うと、
香織(慎吾)は目に涙を浮かべながら言ったー。

「ーー真梨香ってー、”俺”の知ってる真梨香かー?」
とー。

”真梨香”という名前の子は他にもいるだろうー。

けれど、身体は違っても慎吾には分かるー。
この優しい話し方はーー”自分の知る真梨香”だとー。

「ーーお、俺だよ。真梨香ー。
 ”慎吾”だよー」
香織(慎吾)がそう言うと、
強面の男(真梨香)は驚いた様子で「し、慎吾!?」と、
そう声を発するー。

「ーーほ、ホントに慎吾なのー!?」
強面の男(真梨香)は、そう言うと、
香織(慎吾)は目に涙を浮かべながら頷いたー。

二人は、全く別人同士の身体になってしまいー、
性別も変わってしまったけれどー
こうしてー、奇跡的に再開を果たしたのだったー。

もちろんーー

明日には、またー
”俺”は”俺”でなくなっているかもしれないし、
”君”は”君”とは限らないー。

けれどー。それでもー、
今は再会できたことに感謝したいー、
そんな気持ちでいっぱいだったー。

そしてーー
明日、二人がここにいられるとは限らないからー
だからこそー、今を大事にー、
そして、今度また、はぐれた時のためにどう再会するか
二人で話し合いをしておこう、と、
そんな風に思うのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

はぐれた二人が無事に再会できる結末でした~!★

…この世界自体の状況はなにも解決してませんケド…笑
(解決まで描くとすごい話数が必要になっちゃいますからネ~笑)

お読み下さりありがとうございました~~!

コメント