<皮>わたしの代わりに告白して!①~大胆な提案~

「わたしの代わりにわたしを着て告白して!」

昔から無茶ぶりをしてくる幼馴染に
そんなことをお願いされたー

けれどー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今日、放課後、少し話、できるかなー?」

「ーーえっ…!?えぇっ!?」

とある高校ー。

朝、
幼馴染の雪森 茜(ゆきもり あかね)から
そんなことを言われた安原 総一郎(やすはら そういちろう)は、
驚きの声を上げたー。

(え…? え…?? え…????)

「総くんに大事な話があってー」
茜の言葉に、総一郎はドキッとしながら
困惑の表情を浮かべるー

総一郎と茜は幼馴染ー
近所に住んでいた二人は小さい頃からの知り合いで、
小さい頃は特に、良く遊んでいたー。

中学生ぐらいになってから異性として意識してしまって
なかなか小さい頃のように遊べなくなってしまったもののー、
茜は今でも小さい頃のように”総くん”と呼んで、
総一郎に時々話しかけてくれるようなー、
そんな存在だったー。

そんな総一郎は、茜のことが好きだったー。

だが、総一郎と茜では住む世界が違うー。

総一郎はクラスでもあまり目立たない存在で大人しいタイプー。
一方の茜はクラスの中心的人物ー、とまではいかないものの、
同性の友達も多く、男子ともよく話をしていて、
明かく、人気のあるタイプー。

だからー、
総一郎は”好き”という想いを自分の中で封印し、
茜にその思いを伝えることはなかったー。

がーー

そんな茜に、”放課後話できるかな?”と
呼び出されたのだー

「(ま、ま、ま、まさか、雪森さんから告白っ??)」
総一郎は心の中でそんな風に思いながら、
顔を真っ赤にしていると、
茜は「ー大丈夫…?急に顔が赤くなったけど…?」と
戸惑いの表情を浮かべるー。

茜が放課後に呼び出したからなのだがー、
茜は変なところに”かなり天然”な性格で、
頭もよく、成績もよく、人付き合いも上手なのだが、
そのギャップがまた”かわいい”と、一部の男子から
言われているー。

「ーーーえ…あ、いやー」
総一郎がそう言うと、
「総くんってばー…急にインフルエンザになっちゃったのかと思った」と
笑いながら言い放つー

周囲の男子や女子の数名がー
”何でそこで急にインフルエンザなのか”と、ツッコミを入れたくなりながらも
そのまま静観するー

これが、いつもの茜だからだー。

「ーー熱、ないよね?」
何も考えずに総一郎の額に手を当てる茜。

別にあざとい計算をしているわけでも何でもなく、
ただ単に”熱、ないよね?”と思っての行動で、
それ以上でもそれ以下でもないー

「な、ないよ…ね、熱…ない!」
総一郎はそれだけやっとの思いで言うと、
周囲の”いいなぁ~”と羨ましがる男子数名の想いなど
全く想像もつかないまま、
茜は「あ!それで、放課後、時間、オッケー?」と、
再確認するー

「お、おっけー!大丈夫ー」
総一郎はついつられてそう返事をすると
顔を真っ赤にしたまま、座席の方へと戻って行ったー。

「ーやったじゃん」
総一郎の友人・兼続(かねつぐ)がそう言うと、
総一郎は「い、いやー…え?」と、顔を真っ赤にしながら
挙動不審な動きをしたー。

”ゆ、雪森さんから告白ー…ま、まさかそんなー”

キョロキョロソワソワ落ち着かない仕草をする
総一郎ー。

そんな総一郎の顔を笑いながらつねくり出すと、
友人の兼続は「夢じゃないぞ~!」と揶揄うようにして
言葉を口にしたー。

「ーあ、あ、あんまり揶揄うなよ~!直江(なおえ)~」
総一郎がそう言い放つと、
「俺は直江じゃねぇ!河原田(かわはらだ)だ!」と叫ぶー。

友人の兼続は、
名前が戦国武将と同じなため、
よく勝手に苗字を”直江”にされているー。

「ーーいいじゃん~河原田兼続より短いしー」
総一郎がそう揶揄い返すと、
「ーお~…お~~ やる気か?」と、兼続は
総一郎の顔を再び引っ張りながら遊び始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー

「ーーあ、総くんー
 急に呼び出して、ごめんねー」

茜が、総一郎を呼び出した
料理研究会が使っている部室に呼び出すと、
申し訳なさそうに微笑んだー。

茜は料理研究会の部長を務めていて、
今日は部活がないため、この部室を
待ち合わせ場所に選んだのだったー。

「ーーー…あ、ううんー全然ー
 僕、どうせ、暇だしー」

総一郎がそう言うと、
「ーーふふ、そんなこと言わないの」と、
茜は笑ったー

緊張からかー
総一郎はすぐには本題に入れないように
雑談を初めてしまうー。

茜は、料理研究会の部長を務めていながら
料理が大の苦手だー。

中学時代、家庭科の調理実習で
”伝説のハンバーグ”を作ってしまったことは
総一郎だけではなく、同じ中学出身の生徒の中では
今も記憶に新しいー。

「ーー雪森さんが料理研究会の部長なんてー
 いまだに信じられないよー」

総一郎が笑いながらそう言うと、
茜は「わたしもわたしも!ね~!」と、笑いながら返事をするー

「ーなんか、わたしもよく分からないまま
 気づいたら部長になっちゃってて!」

と、笑う茜に対して、
総一郎は「い、いったいどんな状況なんだよ…」と、小声で呟くー

流石、天然な属性も持つ茜だー。
と、変なところに関心していると、
茜が緊張した様子で口を開くー

「そ、総くん…あのねー」
ついに本題ー。

リラックスして話をしていた総一郎も
途端に緊張した様子で、茜のほうを見るー。

心臓がバクバクするー
憧れだった雪森さんに、まさか告白されるなんてー

「ーーー実はーわたし、好きな人がいてー」

「ーーはい、喜んでー!」

的外れな返事をする総一郎ー

「ーえ??え???」
笑いながら戸惑う茜ー。

「ま、まだお願いの内容、言ってないケドー」
そんな茜に、総一郎は「え…?あ?」と、戸惑っていると
茜は言葉を続けたー

「わたし、好きな人がいてー
 総くんに代わりに告白してほしいの!!!」

茜はそう叫んだー

「ーーえ…」
呆然とする総一郎ー。

ここが天国かーと、思って笑みを浮かべていたら
手を振りながらやってきた天使に蹴り飛ばされて
地獄に突き落とされた気分だー。

いや、発売日を心待ちにしてお急ぎ便で予約していた
新商品が当日に”明日到着予定”に切り替わった気分ー
とでもいうべきだろうか。

「ーーーーー…あ、はぁ…はは」
総一郎が死んだ目で笑うと、
そんなことにも気づかない茜は言うー。

「でもね、わたし、そのー恋愛とかしたことないから
 告白とか、ドキドキしちゃってできなくてー

 そこでーー…
 総くんに、代わりに告白してもらおうと思って!」

茜がそう言うと、
総一郎は「いやー僕も…恋愛とかしたことないけどー…」と
戸惑いながら返事をするー。

しかし、茜は「総くんなら絶対大丈夫!」と
自信満々に指を立てながら言うとー
「ーー兼続くんといつも話しているでしょ?」と笑うー。

「ーーか、兼続ー?あぁーうんー
 で、でもそれに何の関係がー?」

総一郎がそう言うと、
茜は「も~!総くんったら鈍いなぁ~」と
肩をぺしぺし叩きながら
「わたしが好きなのはー そのー河原田くんー」
と、微笑みながら言い放ったー

「ーか、か、か、かーー兼続のことがー!?」
総一郎がそう言うと、
思わずその場に手をついて
がっくりとしてしまったー

大好きな茜に告白されると思ったら
”好きな人がいる”と言われてー
しかも、代わりに告白してほしいと言われてー
さらにその相手が総一郎の親友である、兼続だったー。

なんてこの世は残酷なんだー。

”もう僕のライフは0だぞ…”
総一郎はそんなことを思いながら顔を上げると、
「ーいや、待って!」と言葉を叫んだー

「ーぼ、僕が兼続に告白するの?」
総一郎がそう言うと、
茜は「うん」と、堂々と頷くー

「い、いや、待ってよー
 兼続だって僕に告白されたって嬉しくもなんともー」

そこまで総一郎が言うと、
茜は「ー違うよー! 総くんには、”わたしを着て”告白してほしいの!」と、
笑いながら言い放ったー。

「ーーーーーーはい?」
総一郎はてっきり告白されると思ってドキドキしていたのだが、
今は茜のあまりにも意味不明な行動にドキドキしてしまっているー。

「ーーーき、着るってーなに?」
総一郎は混乱していたー。

全く、意味が分からないー。

「ーあ~うん…どうにかして河原田くんに告白する方法が
 ないかどうか考えていたんだけどー」

そう呟くと、茜は「見つけたの!」と、嬉しそうに宣言するー

「ほら!これ!」
茜が手にしたのは、小さな針のようなものが2本ついた
注射器のようで注射器ではない、見たこともないような道具だったー

「ーなにこれ…?」
総一郎が困惑しながら言うと、
「こっちの針で人間を皮にして、こっちの針で皮にした人間を元に戻すことができるの」と、
茜は得意気な表情で説明したー

「今からわたし、総くんに着てもらえるように試しに”皮”になるからー
 それを確認したら、こっち側の針をわたしに刺してみてー
 そしたら、わたし、人間に戻るから」

茜はそう言うと、総一郎の返事を確認することなくー
自らに銀色の針のほうを刺してー
「いたっ!」と言いながらー、すぐにー空気が抜けたかのように”皮”になったー

「ーーひっ!?」
これまで見たこともないような異様な光景に、
総一郎は思わず変な悲鳴を上げてしまうー

「ちょ!?ちょっと!?ゆ、雪森さん!?」

脱ぎ捨てられた皮のような状態になってしまった
総一郎が、パニックになりながらそう言うと、
すぐに「あ…」と、謎の道具のほうを見て、
茜に言われた通り、金色の針のほうを”皮になった茜”に刺したー。

すると、茜はたちまち膨らむような形でー、
人間の姿に戻ったー

「ふ~~ すごいでしょ?」
茜はそう言うと、「す、すごいっていうかー…な、なにそれ?」と、
総一郎は戸惑いの声を上げるー。

「ネットで手に入れたのー
 人を皮にして、他の人が”着る”ことができる道具ー。

 さっきみたいに、わたしが”皮”になったら
 総くんがわたしを”着て”くれれば
 総くんはわたしになれるんだよ~!

 わたしも隆(たかし)ー、あ、弟ねー、
 で、試してみたけど、すごいんだよ!
 ホントに隆そのものになれちゃってー!」

茜のその言葉に、
総一郎は「隆くん、災難だなぁ…」と苦笑いしながらも、
茜のほうを見て「え…まさか」と、青ざめるー

「ーそう!わたしを着て、わたしの代わりに
 河原田くんに告白して!」

嬉しそうに、満面の笑みでそう言い放つ茜ー。

”こんな怪しいものを見つけてきてー
 試すぐらいの度胸があるならー
 普通に告白すればいいのにー

 っていうか、なんで僕ー?”

そんなことを思いながら総一郎が困惑していると、
茜は「ー総くんなら、こういうお話しても信用できるし、
河原田くんとも仲が良いし!」
と、笑いながら言い放ったー

茜から、とても大きな信頼を得ているー。
そう思うと、嬉しいような、悲しいようなー。

「ーー…失敗しても、知らないよー」
総一郎がトホホな気分になりながらそう言うと
茜は「大丈夫大丈夫!総くんに任せて失敗したなら、仕方ないよ!」と
笑いながら軽い調子で言い放ったー

「ーじゃあ、明日、朝、またここで!よろしくね!」
茜はそれだけ言うと、
明日”わたしを皮にして着て、代わりに告白して、終わったらまたここで
わたしを脱いで、元に戻してもらうことにしようかな”と、明日の一連の流れを
確認してー、
そのまま「ー成功してもしなくても、今度、総くんに御馳走してあげるから!」と
言い放つと、立ち去って行ったー

好きな人にー
”わたし、好きな人がいるの”と言われた挙句ー
”わたしを着て、わたしの代わりに告白して”と言われてー
しかもその相手が親友の兼続ー。

この世界は残酷だー。

総一郎はそう思わずにはいられなかったー。

②へ続く

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コメント

明日からが本番ですネ~!
幼馴染の無茶なお願いを前に
彼はどうするのでしょうか~?

お読み下さりありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    皮物で一度皮になった人間が元に戻る話はとても珍しい……というか、ここでは初めてなのではないでしょうか?

    さらに、女の子側から自分を皮にして着てくれというのも、とても珍しい展開ですよね。

    それにしても、茜は総一郎を信頼してるようですが、総一郎次第では、茜は元に戻してもらえずに、そのまま乗っ取られてしまう可能性もあるので、色々危ういものを感じますが。

    しかも、総一郎は失恋した上に、好きな相手に自分の恋のために協力しろと、かなり残酷なお願いされていますし、精神的にあまり正常とは言えない状態だと思うので、何だか、先行きがとても不穏な気がしますね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      戻るお話はとても珍しいですネ~!

      ①の時点では平和的(?)に進んでいますが
      ②以降はどうなるか分からないデス★笑