幼馴染の子からの
衝撃的すぎるお願い…
彼は戸惑いつつも
”自分が好きな幼馴染”を着て、彼女の代わりに
”自分の親友”に告白することになってしまうー。
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翌朝ー
「ーおはよ~!」
茜が笑いながら、昨日と同じ料理研究会が使っている
部室にやってくるとー、
「ーじゃあー作戦は今日の朝と放課後の2段階!」と、
指を立てながら説明し始めるー
「ーまず、朝、わたしをいったん着てもらって
河原田くんに”放課後話がある”って伝えてもらってー
それに成功したら、ここでわたしをいったん脱いでー
それで放課後になったらまた、わたしを着てもらってー、
総くんが河原田くんに”わたし”として告白するー
ってーーー
感じでいいかな?」
茜が言うと、総一郎は「あ、う、うんー」と頷くー
昨日、一晩中、総一郎は
”雪森さんが喜ぶならー”と何度も何度も自分に
言い聞かせてはいたものの、
やっぱり”辛い”のは事実だったー。
自分の好きな幼馴染の子が、他の男子のことを好きで、
しかもその子が”わたしの代わりに告白して!”とお願いしてきているー。
さらに、相手は親友ー。
”こんなお願いをできるのは総くんだけ”と言われたのは嬉しいー
でも、それは逆にー
”総くんは完全に恋愛対象外”と言われているのと同じことだー。
もちろん、茜に悪気は何もないだろうし、
茜に総一郎が好きか、嫌いか、を聞けば
少なくとも悪い感情は持っていないと思うー。
しかし、茜の総一郎に対する好意的な感情は
「LOVE」ではなく「LIKE」でしかないー。
茜のLIKEがLOVEに変わることは、この様子では
この先もまず、あり得ないだろうー
「ーどうしたの?大丈夫ー?」
茜が、考え込んでいる総一郎を心配そうにのぞき込むと、
ドキッとした総一郎が咄嗟に
「だ、大丈夫!ゆ、ゆ、雪森さんはすっごく可愛いしー
ぜ、絶対成功するよ!」と訳の分からない言葉を
口にしてしまうー
「ーえ~?ほんとに?やったあ!
じゃあ、まずは河原田くんを呼び出してね!」
茜はそう言うと、容赦なく自分に針を刺すと
「いたっ!」と、呟きながらビクッと震えてー
そのまま”皮”になったー
”着方”は昨日の夜、スマホでメッセージのやり取りをして
既に教わっているー
「ーーーー…」
”茜を着る”
そんな、奇妙すぎる体験をすることになってしまう総一郎ー
激しくドキドキしながら
茜の皮を着終えるとー
最初にー髪が手に触れてー
それだけで心臓が破裂しそうなぐらいドキッとしたー
「ーう、うわぁ…雪森さんの髪ー…」
思わずそう呟いてしまってから、
自分の口から”茜の声”が出ていることに
今まで感じたことのないぐらいの興奮を感じてしまうー。
「ーーーーうっ… うぅぅぅ…」
ドキドキしながら、茜の姿でもじもじしてしまう総一郎ー
「ーーち、ちがっ…ぼ、僕はこんなことのために
雪森さんになったんじゃー」
そうは言いつつも、今度は
”僕”と言っている茜に興奮してしまって
顔を真っ赤にしてしまうー
茜の身体で心臓をバクバクバクバクさせながらー
茜の下半身が今まで感じたことのないような
ゾクゾクする感覚を感じているのに気づきー
「だ、だめだだめだだめだ!」と、何度も何度も深呼吸を繰り返すー。
だがー、深呼吸するために何も考えずに胸のあたりに手を
当ててしまったことでー茜の胸が手に触れるー
「ーうわああああああああああ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
誰が見ているわけでもー
誰が聞いているわけでもないのにー、
一人謝罪の言葉を連呼する茜ー。
茜によれば
”皮になっている間”は、寝ているのと同じような感覚で、
夢を見たりするけど、意識はないし、
その間のことは何も分からないー、とのことだったー。
だから、謝る必要もないのだがー
総一郎の性格上、胸に手が触れるなど言語道断ー。
ついつい謝罪の言葉を何度も何度も
連呼してしまっていたー。
「ーーーふ~~~
僕みたいなやつにこんなことさせるなんてー
雪森さんもー」
そこまで言いながら
「はぅぁ…」
と、また”茜”が”僕”と言ったことにドキドキしてしまい、
首を横にぶんぶんと振ったー。
「と、とにかくー」
時計を見つめる茜ー。
”可愛らしい腕時計”をいつもしている茜ー
茜としてこんな風に時計を見つめるのを一度やってみたかったー。
またドキドキしてしまいながらも、
こんなことしてたら時間が無くなってしまうー、と、
教室に向かおうとするー
がー
今度は歩いた時のスカートの感触にドキッとしてー
スカートを上から抑えてもじもじと奇妙な行動をしてしまうー
「ーってーもう!いいから!」
茜の身体で総一郎が一人叫ぶと、そのまま教室向かうー。
”朝と放課後”
二段階構えの”作戦”を茜が提案した理由はー
”総くんも、ちゃんと授業を受けられるようにー”という心遣いー
最初、朝から放課後までずっと”着てもらって”と思っていた茜だったが
茜を着ている状態では”総一郎”が、教室に存在することはできずー…
いやー、そこに”茜を着た総一郎”はいても、
周囲から見れば”茜がいて、総一郎はいない”という状態になってしまい、
学校が”欠席”扱いになってしまうー
それを防ぐために、と、
朝、最初の学活が始まる前に茜の皮を着て、兼続を呼び出しー、
そして、一度皮を脱いで、放課後になったら
再び茜の皮を着て今度は告白するー。
そういうやり方を考えてくれたー。
そんな茜の配慮…
いや、そもそもこんなことをお願いされている時点で、
茜はやっぱりどこか抜けているような気はするけれどー
一応、気づかいに感謝しつつ、朝の学活までに
兼続を放課後に呼び出すことを、済ませて置こうと、
茜になった総一郎は、全ての邪念を払いー、
そのまま教室に向かうー。
そして、教室にたどり着くと、ズカズカと
兼続の元まで歩いていくー
普段の茜とはまるで違う歩き方に
周囲は”兼続のやつ、雪森さんを怒らせでもしたのか?”などと
誤解するー
当の兼続も、勢いよく近付いてきた茜に少し驚いたような
表情を浮かべながらー
「え…?」
と、困惑しているー
茜は顔を真っ赤にしながら
「あ、あのー…ぼ…い、いや、わたしー」
と、やっとの思いで言葉を吐き出すー
「ーーー…き、き、き、今日の、ほ、放課後にー
お話ーーーできるかな?」
茜がさらに顔を真っ赤にしながらぎこちなく言うと、
兼続も、そんな茜の様子に顔を赤くしながら
「え…あ、あ、あぁ…いいけどー」と
返事をしたー
茜は”よし”と心の中で思いながら
心の中でガッツポーズしたつもりが、
普通に茜の身体でガッツポーズしてしまうと、
とても恥ずかしい気分になって、
そのまま速足で教室から立ち去ろうとしたー
「ーあ、え!ちょ、ちょっと待って!」
兼続が慌てて茜を呼び止めるー
「ほ、放課後にどこでー?」
兼続がそう言うと、茜は「あ」と、恥ずかしそうに
兼続の前に戻ると、茜と事前に打ち合わせておいた
料理研究会の部室とは別の教室を指定すると、
「よろしく!」とだけ呟いて
そのまま逃げるように料理研究会の部室の方に
立ち去って行ったー
「はぁ…はぁ…はぁ…
こ、これ、普通に雪森さんが自分でやった方が良かったんじゃー…」
そんなことを呟きながら、料理研究会の部室で一人、
荒い息をしているとー
ふと、部室に設置された手洗い場の鏡が目に入るー
そこにはー
”茜”が映っているー
しかも、普段茜が見せないような
困り果てたようなー
恥ずかしそうな表情を浮かべながらー
思わずドキッとしてしまう茜を着た総一郎ー。
試しに、笑顔を振りまいてみたりー
普段見せないような怒った顔ー
挑発的なポーズをしたりしてみせるが、
「あ…時間!」と慌てて、茜の皮を脱ぐとー
「ど、どんな仕組みなんだこれー」と、
慌てて2つの針がついた道具の金色の針のほうを刺して、
茜を人間に戻したー
「ふ~~~…どうだった?」
目覚めた茜が、寝起きのような表情でそう言うと、
総一郎は「あ、え、え~っと…」と、顔を赤らめながら
兼続を呼び出すことには成功したことを告げたー。
「ーやった!第1ステージクリアだね!
さすが総くん!
やっぱ総くんは頼りになるなぁ~」
嬉しそうに拍手するような仕草をする茜。
別に茜は総一郎のことを揶揄っているのではなくー
単純に喜んで、単純に総一郎のことを頼りになると思って感謝していたー
しかし、総一郎からすれば
”好きな幼馴染の身体になる”ということは本当に
ドキドキしてしまうことだったし、
総一郎からすれば、何よりも”好きな子の身体で親友に告白する”という
残酷なことをやらされている状態だったー
いっそのことー、茜に悪意があってこういうことを
させられているのであれば、まだ踏ん切りもつくー。
”僕の大好きな雪森さんは、こういう人だったんだー”と思うことができるからー
けど、幼馴染の総一郎は知っているー
茜は、総一郎の好意にまるで気づいておらず、
何の悪意も悪気もなく、純粋に”幼馴染”としてお願いしていてー
純粋に幼馴染として感謝して、喜んでいるー。
”幼馴染として大好き”な総一郎に対しー、
茜は仮に兼続と付き合うことになっても
変わらず接するだろうし、
疎遠になったりすることも、何もないだろうー
だからこそ、余計に辛いー。
「ーーーあとは放課後だね!
もし成功したら総くんに一生ありがとうを伝えないと!」
茜が嬉しそうにそう言いながら、伸びをするような
仕草をして、「あ、そろそろ教室に行かないとね」
と、微笑んだー。
その笑顔にもドキッとしてしまう総一郎ー
思わず顔を赤らめてしまうと、
茜は「ー大丈夫ー失敗しても全然怒らないし!気にしないで!」と
総一郎が顔を赤らめた理由を全く違う方向に解釈して笑うー。
「ーー失敗しても、総くんには何も責任はないし
ただわたしに魅力がなかっただけのことだから
全部わたしの責任!」
総一郎の手を握りながらそう言うと、
茜は「だから、気楽に、ね?」と笑うー
「ーそ、そ、それならー雪森さんが気楽に告白すればー…」
総一郎が思わずツッコミを入れると、
茜は「それは…無理ーー」と、顔を真っ赤にして目を逸らすー。
「ーーちょ、ちょ!そんなんじゃ、告白に成功しても
先が心配だなぁ~」
総一郎がそう言うと、茜は「こ、告白だけ!あ、あとはがんばる…」と
恥ずかしそうに言いながら
「ほら!教室にいこっ!」と、総一郎の手を引っ張ったー
茜の中では”小さい頃の感覚”のまま、何も、
総一郎に対する感情が変わっていないー
茜にとって総一郎は”幼馴染”であり、
性別がどうこうで全く見ていないー
だから、小さい頃と同じように何の計算もなく手を繋ぐし、
そこに何の打算もないー。
幼馴染に対する接し方が、昔のまま止まっていることがー
”昔とは違う感情”を抱く総一郎を苦しめてしまうー。
「ーーーー雪森さんーぼ、僕ー」
教室に向かう途中ー、ふいに総一郎は茜に対してそう呟いたー
「ん?どうしたの~?」
笑う茜ー。
だがー
総一郎には、やっぱり想いを伝えることができなかったー
想いを伝えた瞬間ー
この関係が、壊れてしまうー
そんな気がしたからー。
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放課後ー
放課後に突入してすぐ、料理研究会の部室にやってきた二人ー。
総一郎の親友・兼続は別の部活の部室に呼び出してあるー。
待ち合わせ場所を同じにすると”皮にする場面”を
見られる可能性があるからだー。
改めて計画を再確認する二人。
そして、確認を終えると、茜は笑顔で総一郎を励ます言葉を口にするー。
「ーーー頑張って!総くんならできる!
失敗しても、お礼はするから安心して!」
茜がそう言うと、
総一郎は「う、うんー」と言いながら
緊張した様子でゴクリと唾を飲み込んだー。
茜が、再び2つの針をついた道具を手にすると、
そのうちの銀色の針のほうをプスッと自分に向かって刺したー。
「いたぃっ!」
茜がいつも通り、そう呟くと、そのままぷしゅ~っと空気が抜けるようにー
そのまま床に崩れ落ちたー
「ーーーー」
総一郎は、そんな茜の皮を手にすると、
それを身に着け始めるー
「ーーー僕ー…」
茜を身に着けた総一郎は複雑そうな表情を浮かべながらー、
そのまま、兼続が待つ教室に向かって歩き出したー
③へ続く
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コメント
少し不穏な感じも…☆!?
次回が最終回デス~!!
コメント
考えてみたら、この話、憑依とか入れ替わりでもやれそうですね。
いずれにしろ、本当に信頼出来る相手に任せないと自分の身体を奪われる恐れがあることに違いはありませんけどね。
ところで、読んでいて気になったのですが、茜は言葉通り、自分の変わりに告白して欲しいだけなんですかね? なにか、別の目的とか真意があったりとかしないのかな?
前の憑依薬を彼氏にプレゼントとした彼女の話みたいに、総一郎を試してたりとか。
深読みのし過ぎかもしれませんが、
ここの作品を読んでいると、つい、色々と疑い深くなってしまいます(笑)
いつもありがとうございます~!☆☆
確かに疑心暗鬼になっちゃう気持ちも分かります~☆
答えは…☆
明日のお楽しみデス~笑