ある日、普通に帰宅したら
”自分と全く同じ姿の人間”が先に家の中にいて、
家族と普通に話をしていたー。
しかも、家族に”自分が偽物”扱いされてしまった
彼女の運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ…はぁ…はぁ…」
真梨は、荒い息をしながら、
家から少し離れた場所で立ち止まるー。
「なんで… どうして…」
真梨は、その場に座り込んで、涙を流したー。
どうして、こんなことになってしまったのかー。
いつものように高校での1日を終えて、
いつものように帰宅したら、
既に”わたしと全く同じ姿の誰か”が、家の中にいて、
しかも、その”誰か”は、真梨のフリをして、
真梨を陥れたー。
両親にも”警察を呼ぶ”と言われてしまった真梨には、
もはや、逃げることしか思いつかなかったー。
スマホも”もう一人の真梨”の方が持っているし、
このままでは、何もすることができないー。
真梨は、一旦近くのベンチに座ってため息をつくー。
これ以上、時間が遅くなると、
女子高生の一人歩きはよくない時間帯だし、
遅くなりすぎれば、警察に声を掛けられてしまう時間帯になるー。
「ーー…早く…なんとかしないとー」
どうすれば、親に、龍太に、
”わたしが本物”だと信じてもらえるのだろうかー。
「ーーーー落ち着いて、感がなくちゃー」
真梨は、深呼吸しながら、
自分が信じてもらう方法を考えるー。
”自分の個人情報”を引き合いに出すのはダメだったー
”もう一人の真梨”の方も、どういうわけか、
真梨の個人情報を知っているようだったし、
”丸暗記”しているのか、
それとも、真梨自身の記憶をコピーでもしているのか、
真梨自身よりも正確に答えて来るー。
その結果、家族に自分自身が偽物扱いされてしまったー
「ーー指紋… 血液型ー」
真梨は、そんなことを呟くー
”真梨のそっくり”だったとしても、
流石に指紋や血液型などの部分まで
一致することは、普通に考えればありえないー。
血液型は、偶然一致する可能性はあったとしても、
指紋ー、そして、DNAレベルまで真梨と同じであるとは限らないし、
そんなことあり得ないー。
それにー
「ーーわたし…RH-だから…」
静かにそう呟く真梨。
血液型には「RH+」と「RH-」と呼ばれるものが
存在する。
多くの人間は、このうちの「RH+」の方だー
しかし、真梨は「RH-」のほうー。
”もう一人の真梨”の血液型が
偶然、真梨と同じだったとしても
「RH-」の部分まで被る可能性は低いー。
”DNA検査”とか、そういうことを言い出せば
流石にハードルは高いけれどー、
血液検査ならー。
真梨は、何とか信じてもらおうと、
今度は血液検査を引き合いに出すことを決め、
再び家の方に向かって歩き出すー。
「ーーーわたしは、負けないー」
”わたしのそっくりさん”
勝手に、”真梨”を名乗る”もう一人のわたし”の正体を
絶対に突き止めるー。
そんな風に思いながら、真梨は静かに歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーさっきの子、何だったのかしらー…?」
母親が不安そうに呟くー。
「ーーさぁ…真梨に本当にそっくりだったしな…
俺も最初、真梨本人だと思ったしー」
父親の言葉に、
”もう一人の真梨”は困惑した様子で苦笑いするー。
「ーーでもさぁ、あっちが”本物”なんてことないよな~?」
弟の龍太が、笑いながらふと、そんな言葉を口にしたー。
「ーーーちょっと~!そんなわけないでしょ!」
”もう一人の真梨”が言うと、
「ーいや、だってほら、姉さんそっくりだったし!」
と、龍太が笑いながら言うー。
「ーーも~~!そんなこと言って」
少し不機嫌そうな表情を浮かべた”もう一人の真梨”は、
ため息をつくと、龍太に対して言葉を口にするー
「大体、さっきの子はーーーー」
そんな、”もう一人の真梨”の言葉に、
龍太は「まぁ、そうだよなー」と、笑うー。
「ーっていうか、龍太、寝なくていいの?
風邪気味なんでしょ?」
真梨がそう言うと、
龍太は「へへっ…姉さんが風邪薬を買ってきてくれたおかげで
調子がいいぜ」と、笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真梨は、家の近くまで再びやってきていたー。
”血液型”を調べて貰えれば
きっと、お父さんにもお母さんにも、
そして龍太にも信じてもらうことができるはずー。
問題はー
どうやって”血液検査”をしてくれるまでに
話を進めるかどうかー。
今は”わたし”の方がみんなに疑われている状態ー
それに、血液検査は恐らく
”もう一人の真梨”にとっては都合の悪いことー。
変装してるのか、何なのか分からないけどー、
血液型まで”合わせる”ことは
現実的には不可能なはずー。
”でも、やるしかないー”
そう思って、真梨が立ち上がったその時だったー
「ーーここに、いたのかー」
背後から声がしたー
「ー!?」
真梨がドキッとして振り返ると、
そこには、怪しげな覆面の男が立っていたー
「ーーえ…」
真梨が身の危険を感じて、男のほうを見つめると、
覆面の男は言葉を続けたー。
「ーー少し予定が狂ったが、まぁ、問題はないー。」
男の言葉に、真梨は表情を歪めるー
そして、すぐにハッとしたー。
「ーも、もしかして、わたしの偽物が
家の中にいるのは、あなたの仕業ですかー?」
真梨が聞くと、
覆面の男は頷くー
「ーーその通りだー」
覆面の男は、そう呟くと、そのまま言葉を続けるー。
「ー我々は今、”人間のコピー”技術の実験をしていてなー。
”スキャン”した人間のデータを、別の人間に照射することで、
その人間を”最初にスキャンした人間”
そのものの姿、思考を持つ人間にすることができるー。
そんな、技術だー」
覆面の男の言葉に、真梨は「どういうこと?」と聞き返すとー、
「ーつまりー
宮川 真梨ー
お前を特殊な装置で”スキャン”して、
それを別の全く無関係の人間に照射することで、
そいつを”宮川 真梨”に変身させることができるー
そういうことだー」
「ーー……じゃあ、家の中にいるわたしは、
誰なのー?
真梨が
それだけ言うと、覆面の男は写真を取り出したー
そこには、男が映っているー。
「ー我々”闇.net”のモニターとして雇ったホームレスの男ー」
覆面の男は、
真梨に変身している人物は、このホームレスの男だと説明したー。
「ーで…でも、わたし、データなんて取られた覚えはー?」
さっき、覆面の男は、”真梨のデータを回収し、それを別の人間に照射することで、
その人間を真梨に変身させる”
そう、言っていたー
それをすることで、誰が相手であろうと”その人間のコピー”に等しい存在を
創り出すことができる、とー。
「ーー”学校”に協力者がいるのでなー
健康診断の際に、お前たちの”データ”を密かにスキャンさせたー。
なぁに、悪用はしないさー
あくまでこの、”変身”により”コピー”を生み出す技術の
テストのためだー」
覆面の男が少しだけ笑うー。
真梨は困惑しながらも
”もう一人、わたしがいる理由”を理解し、
覆面の男に言い放ったー
「ーーじゃあ、わたしの偽物がいるのは、
あなたたちのせいで、
今、わたしの家の中に勝手に上がっているのが、
そのホームレスの人がわたしに変身した姿ってことですよねー?
だったらー
責任もってちゃんと…お父さん、お母さんたちにも
説明してくれますかー?
わたし、偽物扱いされて困ってるんですけど」
真梨はうんざりした様子で言葉を吐き捨てたー。
「ーーあぁ、心配するなー
元々、この男を、宮川真梨に変身させて
”記憶”の部分や仕草などが、完全に変身した相手ー
宮川真梨のものになるかどうかをテストするつもりだったんだがー
その最中に事故が起きて
逃げられてしまってなー
その逃げた”宮川真梨に変身したホームレス”を俺は
回収しに来たんだー」
覆面の男の言葉に、
真梨はホッとすると、
「ーーでも、ホント迷惑なんで、こういうこと、二度とないように
して下さいね」と、うんざりした様子で呟くー。
「ーーあぁ」
覆面の男は頷きながら、真梨の方に近付いてくるー。
「ーーそうそう、さっきのお前の話ー
一つだけ”大きな勘違い”があるー」
覆面の男は、笑みを浮かべると、
真梨のほうを指差したー
「ーおまえ」
「ーー?」
真梨は首を傾げるー。
「ーーー俺が回収しに来たのは”お前”だー」
覆面の男の言葉に、
真梨は驚いてすぐに反論するー
「ーちょっ、ちょっと待ってくださいー!?
なんでわたしがー!?
ーまさか、偽物とわたしをすり替えようとでも
してるんですかー?
なんのためにー!?」
真梨がそう叫ぶとー
覆面の男は呟いたー。
「違うー。
お前が、ホームレスだー」
「ーー!?!?!?!?!?!?!?」
真梨は表情を曇らせるー
「ーーお前が、偽物ー。
家の中にいる宮川 真梨が本物だー。」
「ーーえ…うそ…そんなー?
わ、わたしは、わたしが真梨だよ!!!」
真梨が叫ぶー。
しかし、覆面の男は呆れたように呟いたー
「考えてみろー」
とー。
「ーーーーー!!」
真梨が表情を歪めるー。
すると、覆面の男は淡々と呟き始めたー。
”下校中だったのに、何故お前は学校の荷物を持っていなかったー?”
その言葉に、真梨は、
自分が学校帰りなのに荷物を持っていなかったことー、
学校の荷物は”家の中にいたほうの真梨”が持っていたことを思い出すー。
スマホも、自分ではなく、”もう一人の真梨”が持っていたー。
”お前の制服は、妙に綺麗だなー。
なぜ、新品同然なんだ?”
覆面の男の言葉に、
自分の制服が新品同然であることを改めて認識するー。
”それに、他にも思い当たるところがあるんじゃないか?”
その言葉にー
家族に対して得体の知れない違和感を感じたことを思い出すー。
それはー
”実際には、偽物である自分は、一度もあの家族と
一緒に暮らしたことがなかったからー”だ。
「ーーーちがう…わたしは…わたしは…!」
真梨が叫ぶと、覆面の男は呟いたー
「ーお前は我々が開発中の
”人間を他人に変身させて、実質上のコピーを作り出す”
技術のためのモルモットだー。
お前は宮川真梨じゃない。
お前は、ホームレスだー。
あの家にいるのが、本物ー
お前は、偽物ー」
覆面の男はそこまで言うと”だがー”と、言葉を続けるー。
「ーーー完全に自分を宮川真梨だと思い込んで
自分としての自我を失くしているーー
素晴らしいー
俺たちの技術開発はまた一歩、前へと進んだー」
「ーーーー…そんな…わたしはー…」
真梨は、膝をつきながらも、
”もう一人の真梨”が、弟・龍太の質問に
すらすら答えることができていたのは
”あっちが本物だったから”と悟るー。
移動教室の行先など、一部の記憶に靄がかかって、
はっきり思い出せなかったのは、
”自分が偽物だから”と悟るー。
「ー安心しろ。元の姿に戻れば
すぐに自分がホームレスだったと思い出すさー。
まぁー…
一度変身させた人間を”元に戻す”のを
人間でテストするのは初めてだからー
お前が、どうなるか、分からないけどなー」
覆面の男ー、
謎のネットワーク型組織”闇.nte”に所属し、
”ビショップ”というコードネームを名乗っているその男は、
不気味な笑みを浮かべると
”偽物の真梨”を連れて、そのまま車へと乗り込んでいったー。
おわり
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コメント
主人公っぽく描いていたほうの真梨が
偽物でした~!
荷物を持っていないことを示唆する描写なども
あったので、途中で気づいた人も
多いかもしれませんネ~!
お読み下さりありがとうございました!
コメント
意外性のある話は最高にいいです
データを照射して変身させることも好きだし、主人公っぽい真梨ちゃんも可愛かったなぁ
ありがとうございます~!☆
主人公っぽい…(笑)
このお話も意外性があるお話でしたネ~!